ざっくり感想「ウルトラマン」第21話~第30話 | 怪獣玩具に魅せられて

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『ウルトラマン』第21話~第30話まで ざっくり感想 

【第21話】

「噴煙突破せよ」(毒ガス怪獣ケムラー登場)

 ホシノ君大活躍の回。まさかのビートル発進操作を彼が行うとは。他にもイデさんにヒントを与えたり、ウルトラマンにケムラーの背中を向けさせたりと、最初から最後までホシノ君ありきの展開に。ケムラーの造形が素晴らしく、あの胡乱な目が毒煙の中から覗くシーンは中々に怖い上、相当に強い。山麓の市街地戦では、四つ足這い這い怪獣の組み合わせが良くて、普段はあまり見られない極めて低い位置からの街中セットが見られるところもポイント。「女子どもの……」という今となっちゃあ中々に問題になりそうなセリフが飛び交う話でもあるが、ウルトラマン全39話の中でも強敵の部類に入るケムラー攻略のカギが他ならぬ「子ども」のホシノ君の手に託されているなど、全体にバランスよく作られている作品だと思う。

 

 

 

【第22話】

「地上破壊工作」(地底怪獣テレスドン登場)

 全体的に影が濃い印象で、ちょっとノワール的と言うか、ダーティーな雰囲気が漂う。その中でテレスドンと科特隊のの対決が展開する。奥行きの広いセットを縦横無尽に歩くテレスドンと、ひっきりなしに破裂する火薬。夜の街で炸裂する火花が本当に美しい。テレスドンのデザインが非常にシンプルな分巨大感が引き立っていて、街中を進軍する画の迫力の凄まじいことよ。地底人の「破壊工作員」的な侵略方法も上手く考えたもので、最終の狙いがウルトラマンそのものにあるというのも全39話の中で唯一無二のものか。最初は他の星からの侵略にミスリードさせて、灯台下暗しの真相を持ってくるあたりも上手いと思った。

 

 

 

【第23話】

「故郷は地球」(棲星怪獣ジャミラ登場)

 「人間が怪獣化した」ということを示すために「故郷は地球」と銘打つこのネーミングセンスがまず最高。観た人の心に大なり小なり傷を残す作品で、第15話同様、科特隊やウルトラマンがヒーローになり得ない話。しかも今回は子どもが主役には置かれていない上、時々ギョッとするようなセリフもある。かくいう私も子どもの頃にトラウマになった話の一つで、展開がどうというよりジャミラの正体を明かすシーンでのモノクロの写真が雰囲気ありすぎた。ラスト、イデ隊員の言葉が心に重く伸し掛かる。視聴者側に近いところにいて、親近感のあるイデ隊員。迂闊なところも多いキャラクターではあるけれど、自己言及的な問いの全てを一任された、非常に重要なポジションであることが分かる。

 

 

 

【第24話】

「海底科学基地」(深海怪獣グビラ)

 前作でイデ隊員がフィーチャーされたので、今回の話では他の隊員にも焦点があてられる。一つの話の中でムラマツキャップやフジ隊員、ホシノ君のそれぞれの責任感、勇気が示され、その展開一つ一つにも無理がない。特に今回は、ここぞという時に取り乱してくれる「ダメな大人代表」も同上しているため、必然的にキャップが立派に見える。事実上のムラマツキャップ回かな。一方で、自分のミス(ではないのだけれど)挽回のために頑張るフジ隊員など、科特隊一人一人の使命感に燃える姿には手本とすべき「理想の大人象」が見える。深海怪獣グビラとの戦いは、むしろ陸上に上がってからの方が面白いが、第14話以降で大規模な水特撮ができなくなったことが一因しているのかも。

 

 

【第25話】

「怪彗星ツイフォン」(彗星怪獣ドラコ・冷凍怪獣ギガス・どくろ怪獣レッドキング二代目登場)

 彗星接近による地球消滅の危機! これまたスケールの大きいスタートで、東宝『妖星ゴラス』はこの展開だけで一本映画になっている。今話はそこはあくまで導入として、中盤~後半にかけて日本アルプスでの怪獣バトル展開になっていくが、電子機器が使えなくなったり、水爆爆発の危険が生じたり、怪獣が飛来したりと、彗星の影響が複層的に次の展開に繋がっていくのが素晴らしい。ドラコ・ギガス・レッドキングともに格闘しやすいシルエットで、雪山を舞台に三者三様の殴り合いは見ごたえがある。水爆を呑み込んでいるために爆散させられないレッドキングの対応に最後まで苦慮するなど、ラスト最大の問題が人類の作り出した「業」に起因していくのも面白い。

 

 

 

【第26話】

「怪獣殿下 前編」(古代怪獣ゴモラ・怪奇植物スフラン登場)

 怪獣を運び出すという『キング・コング』的なスタートから一気に怪獣迎撃バトルへ。シリーズ初の前後編作で、とにかくセットのスケールと弾着の規模が凄い。六甲山での自衛隊とゴモラの攻防では、煙と火花でゴモラの姿が消える瞬間すらあった。パワータイプとしては随一の強さを誇るゴモラに、ウルトラマンも徹底的に痛めつけられる。人間サイドで言うと、今回の少年枠はホシノ君ではなくオサム君。第15話に登場するムシバ君同様の怪獣少年だが、この子はとにかく絵が上手い上に、まあ何と向こう見ずで逞しいことか。この子のお父さんの暢気さも笑いのアクセント。今回は六甲山と工事現場と言う、割と僻地的なところで怪獣アクションを見せることに徹していて、スケールは次回、大爆発する。

 

 

【第27話】

「怪獣殿下 後編」(古代怪獣ゴモラ登場)

 いよいよ舞台は大阪市街へ! ところどころに当時の大阪の街の空撮が入り、同じみの名所もいくつか発見できる。作戦本部が大阪タワーに設置されたり、大阪城が最後の決闘の場となり、堀端を走る科特隊のシーンがあったりとロケハンが豪華。市街地戦では無数に飛び交う火花の中でゴモラの尻尾を切り離すことに成功し、大阪城では戦車隊との戦いを経てウルトラマンとの最終決戦へ。大阪城は1955年『ゴジラの逆襲』に次いで再び破壊されることになるが、この大迫力の「画」をテレビシリーズでやってしまったことに驚かされる。当時、多くの少年少女にとって忘れられない一作になっただろうことは想像に難くなく、ある芸人が子どもの頃にこの話をテレビで見た後に大阪城に遊びに行き、ゴモラに破壊されていたはずの大阪城がそこに立派に立っていて、「あるやん!」と突っ込んだことがあったとか。

 

 

 

【第28話】

「人間標本5・6」(三面怪人ダダ登場)

 スケールの大きな市街地アクションから、場所を限定したサスペンスまで、『ウルトラマン』が手掛ける舞台は実に多様。あるいは大阪前後編でお金を使いすぎたのかも。全39話の中ではとびっきり変な話である上、まあまあなホラー回。しかし脚本と演出の力によって見ごたえのある一作に仕上がっている。大阪前後編では本部にて指揮を執っていたムラマツキャップの体当たりアクション全開な回で、謎の女とのやりとりなどオトナなムードが漂う。ダダが中盤で姿を借りた職員役の人は、第12話「ミイラの叫び」に登場した警備員のおっさんと同じ人? この人はとにかく顔が怖く、この話がホラー回として捉えられるのも大部分、この人の怪演のせい。

 

 

【第29話】

「地底への挑戦」(黄金怪獣ゴルドン登場)

 初っ端から村一つ壊滅する大惨事。怪獣のために救助も上手く進まないということで科特隊に出動命令。この展開のスピーディーさよ。今回はジェットビートル2機+地底戦車ペルシダーの空中と地底の連携作戦で、「ウルトラ作戦第一号」の地底バージョンと言ったところか。そして科特隊単体でゴルドンを一匹倒してしまうあたり、いかにこの組織の作戦が優秀であるかが分かる。しかしゴルドンはもう一匹いて……という展開のツイストが見事で、今回ほど科特隊が方々でピンチに陥るのも珍しい。この回はウルトラマンの立ち位置も絶妙で、ペルシダー救出は彼にしかできないことだったろう。

 

 

 

【第30話】

「まぼろしの雪山」(伝説怪獣ウー登場)

 特撮ヒーローものにおいて「村八分」を真っ向から描く異色作で、雪ん子が最後、誰にも理解されずに最期を迎える当たり、中々容赦ないストーリー。あの村人を殺してしまった落とし穴は、本当に雪ん子が掘ったものなのか? その前の展開を見るとあるいは……と、より暗黒な真相を妄想してしまうような、とかく雪のように冷たく底知れぬ話になっている。第15話・23話に続く、ウルトラマンや科特隊がヒーローとして歓迎されない回で、真相に近づく手前で軽はずみに言ってしまったことが雪ん子と科特隊との間に絶対に癒せない分断を生んでしまうことになる。今回の加害者に、これまではずっと善側や共感できる側に立っていた「子どもたち」を持ってきているあたりも、思い切った試み。だからこそ最後、科特隊には「まぼろし」で片づけずに向き合って欲しかったが、そこまで辛い話にするのはさすがに無理な相談だったのだろう。