介護施設づくりの基礎知識 その11「浴槽」
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
前回は浴室で使用する床材についてお伝えしましたが、今日はその浴室で使用する浴槽についてです。
浴室の浴槽を選ぶ際には、どのような点に配慮すべきでしょうか。
どんなものを採用するかについては、いろいろ検討しますよね。
・素材
・大きさ
・コスト
・メンテナンス性
・保温性 等々
また、機能性だけでなく、リラックスできる見た目や、肌触りの良さなども大きな要素だと思います。
今日は素材毎に特徴を紹介させていただきます。
・ポリバス
浴槽というと、一般的に思い浮かぶのはこれでしょうか。
白やパステルカラーの樹脂の浴槽です。
介護施設で使用する場合は、埋め込みタイプでなく浴槽の横が同じ樹脂でカバーされている(エプロン)ものを選び半埋め込みで設置することが多いと思います。
サイズは基本的にはカタログに載っているもののなかから選ぶ必要があり、自由にはならないことが多いです。
また、木に比べると滑るので、必要に応じて滑り止め等を使用する必要があります。
・ステンレス
水に強い素材ということでステンレスの浴槽も見かけます。
金属ですので比較的加工はしやすく、高価になると思いますが特注のサイズや形状で製作することも可能でしょう。
ただ、見た目は冷たそうでリラックス感はあまりなく、とても滑るので滑り止めの使用は必須です。
また金属は熱伝導率が高く、お湯が冷めやすいという欠点もあります。
・木製
一番リラックス感があるのは木の浴槽でしょう。
見た目だけでなく、浴槽のふちを握ったり、中に入ったときの肌触りも良いのではないでしょうか。
入浴を嫌がる利用者さんでも、木の風呂を勧めると入浴してもらえるということもあるようですね。
木は加工が容易ですので、サイズのオーダーや特殊な加工(浴槽のふちを握りやすくする等)も可能です。
また熱伝導率が低く、一番保温性が良いのは実は木の浴槽です。
木の浴槽を採用する際に一番問題となるのはメンテナンス性。
どうしてもカビの発生などがあり、他の素材が半永久的に使用できるのに対し、定期的に交換する必要がでてきます。
どれだけしっかりメンテナンスしても、10年程度が寿命ではないかと思いますので、消耗品だという割り切りも必要です。
・石やタイル
介護施設では滅多に見ることはないですが、石やタイルで浴槽を作ることもあります。
使用する例で多いのは、個別の浴槽でなく複数で使用する大きな浴槽を作る場合ですね。
介助を受けながら利用するというよりも、ご自分で入浴できる方が利用するというイメージかと思います。
デイサービスなどで、温泉的な演出をするには効果があると思いますが、介護が必要な方の使い勝手の確保は難しいです。
*****
以下に素材毎の特徴をまとめます。
<ポリバス>
サイズの柔軟性× コスト○ メンテナンス性○ 保温性△ 防滑性△
<ステンレス>
サイズの柔軟性△ コスト△ メンテナンス性○ 保温性× 防滑性×
<木>
サイズの柔軟性○ コスト△ メンテナンス性× 保温性○ 防滑性○
<石など>
サイズの柔軟性○ コスト× メンテナンス性△ 保温性△ 防滑性△
FRP素材でも使いやすさに配慮した形状の製品も発売されていますし、ステンレスでもサイズオーダが不可のものもあると思います。
また木製でもしっかり防水加工されていて、容易にメンテナンスできる製品もありますが、その分木の香りなどを楽しむことはできないですね。
上記はあくまで目安とお考えください。
また一番大切な使い勝手についてはあえて記載していません。それも含めた検討が必要になると思います。
*****
このように浴槽ひとつでも色々な素材があります。
介護施設の設計時には、どんな入浴を行うべきかしっかり検討し、それが満足できるような浴槽で計画してください。

使い勝手が良く心地よい木製の浴槽
実際に計画を進める際や設計上でのご質問などあればメール等でお問合せください。
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介護施設づくりの基礎知識 その10「浴室の床材」
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
今回も床材についてですが、今日は特に浴室の床に的を絞ってお伝えしたいと思います。
浴室は裸・裸足で利用する場所ですし、床はお湯で濡れています。
この特殊な状況でどんな床材が良いのかを選ぶ必要があるのです。
結論から言うと、完璧な床材は無いです。
それぞれに長所・短所がありますので、何を重視して選定するのかしっかり考える必要があります。
<滑りにくさ>
浴室での転倒は即ケガにつながりますが、浴室の床はお湯で濡れるのでどうしても滑りやすくなります。
なぜお湯があると滑るのか。
それは床材と足の間にお湯(水)が入り込むからです。
これを防ぐには表面に細かな穴があいているような素材にする必要があるわけですが、自然にこのような形状になっている素材があります。
それは伊豆若草石や十和田石といった名称で呼ばれている「緑色凝灰岩」です。
浴室で良く使用されていますが、デザイン性だけでなく滑りにくいという特徴を生かした使い方になっているわけです。
細かな穴があるため、他の石とくらべるとひやっとしにくいことや吸音性があることも特徴ですね。
滑りにくいですが、もしも転んでしまったらそれなりに固いのでケガをする可能性はあると思います。
でも今までケガをしたということは聞いたことがありません。それだけ滑りにくさの機能が優れているということなのでしょう。
<衝撃吸収性>
浴室に使う床材で衝撃吸収ができるものは少ないです。
床材メーカーさんから衝撃吸収性のある床材が発売されていますが、安全と呼べるレベルにはまだ達していないように思います。
私が唯一思いつくのは「畳」です。
「えっ畳?」と思われると思いますが、和風旅館などでも畳を浴室の床材に採用している例はあります。
ここで使われているのは普通のイグサの畳ではなく、いくつかの会社から発売されれいる「洗える畳」と呼ばれるタイプのものになります。
畳は床に固定するわけではなく、コンクリートの床の上に置くだけです。
ですので床を少し低くしておき、畳を置いたときに丁度良い高さになるように施工します。
入浴が終わったら畳を取り外して洗う必要があります。
メンテナンスはそれなりに大変、広い浴室の場合は採用に覚悟が必要かと思います。
でも雰囲気は良いのでぜひ一度試していただきたい床材ですね。
<あたたかみ>
浴室の床に足を着けた途端に「ひやっ」とするのは誰でも嫌なものです。
あらかじめお湯を床に撒いておく配慮を行えばそれ程問題にはならないかと思いますが、そんな配慮がなくても暖かい方がより良いのかと思います。
床材メーカーさんから、タイルの冷たい床をリフォームするための材料が何種類か発売されています。
発泡性のビニル床シートが多いようですね。
これらの商品を使うことで、ひやっとする感覚が緩和されそうです。
*****
このように浴室に使える床材にも様々なものがあります。
介護施設の設計時には、浴室の床についても求める機能が満足できるようぜひ配慮して計画してください!

浴室床を畳にした例です。
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介護施設づくりの基礎知識 その9「床材の安全性」
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。
介護施設の床材を検討する際に一番気をつけたいこと。
それは、「安全性」です。
なぜか?
その理由と具体策を今日はお伝えします。
介護施設内の事故で心配されるのは「転倒・骨折」かと思います。
骨折が起きると、様々なことに影響がでます。
まず骨折したご本人は、当分入院しての治療が必要になるでしょう。
介護施設内では自由に動いて排泄をトイレで行っていた方でも、病院ではそうはいきません。
ベッドに寝かせられきりで食事はおかゆ、排泄はおむつに…
となってしまいます。
その状態になってしまって、また元の元気な状態まで戻すためには相当の努力が必要になります。
骨折してしまった利用者を担当していた職員さんはどうでしょうか。
骨折させてしまった、ということが精神的に大きなショックになるはずです。
行っているケアが間違っていなくても、後悔や反省をしてしまいその後の仕事にも影響が出そうです。
そして施設としては、入院中は介護報酬がなくなります。
戻られた利用者への対応も大変ですが、その前の期間に収入が無くなってしまうことの方が経営的には痛手です。
こんなに大きな影響があるのですから、防げる転倒・骨折は積極的に防ぐべきです。
(でも決して利用者の行動を制限するようなことをしないことは大切です)
どうしたらよいでしょうか?
建物側でできることは2つあります。
一つは、重心が大きく動くときに、しっかり体を支えられるような配慮を行うことです。
ベッドから車椅子に移乗するとき、
車椅子から便器に移乗するとき、
車椅子からシャワーチェアに移乗するとき 等々
これらの動作の際に、体をしっかり支えることができるよう適切な手すり等を設けるようにします。(今日はこの説明は省きます)
もう一つは、転倒してしまったときにも体をやさしく受け止めるように床に工夫を行うことです。
介護施設の建物は、鉄筋コンクリート造か鉄骨造が一般的ですが、どちらも床はコンクリート製。
ですので、その上に床材を貼るわけですが、ここでどんな素材を選んでも思ったほど衝撃の吸収性能は高まりません。
介護施設で一番選ばれている塩ビ製の「長尺シート」はもちろん、柔らかい「クッションシート」や「タイルカーペット」でも実は衝撃吸収の性能は十分ではないのです。
JISで安全基準の数値を設定していますが、クッションシートやタイルカーペットをそのまま貼っても基準値を下回ることができないのです。
ではどうしたら良いか。
解決方法は2点あります。
一つは床材とコンクリートの間に、衝撃吸収のシートを貼ることです。
これを行うことで、確実に基準値を下回ることができます。
もう一つの方法は床を2重床にするという方法です。「置き床」という言い方もしますね。
2重床にすると、2重床の床材の「たわみ」により衝撃を吸収することができるようになります。
衝撃吸収の効果は衝撃吸収シートよりも高く、衝撃吸収効果がもっとも高いと思われる床材である「畳」に近い数値になります。
衝撃吸収シートを使うと、床が少し沈むような感覚がありますが、2重床でしたらそのようなこともありません。
必要なときだけ材料が「たわんで」衝撃を和らげてくれる2重床はとてもオススメです。
このようなことをお勧めすると、「話はわかるけどコストが…」と言われそうですね。
当然2重床にすると工事費はアップします。
施設が大きい場合には、数百万のコストアップになることもあるでしょう。
でも、対策を施さなければ必ず発生するであろう「骨折・入院」を防止できるのですから、介護報酬のことを考えるとすぐに元がとれるはずです。
ぜひ建設時だけでなく、運営時のコストまで考えた上で必要なことにはコストをかける努力をしていただきたいと思います。
介護施設の設計時には、床材による「安全の確保」にぜひ配慮してください。



どれも2重床にした例です。見た目ではわからないですね。
実際に計画を進める際や設計上でのご質問などあればメール等でお問合せください。
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