前田正子「保育園問題」 | 世界文学登攀行

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世界文学の最高峰を登攀したいという気概でこんなブログのタイトルにしましたが、最近、本当の壁ものぼるようになりました。

保育園問題
――待機児童、保育士不足、建設反対運動


著者は横浜副市長を務め、現在は学者でもある。
体系づけられた大きな視点でとらえる問題の全貌と、行政という実務の最前線の肌感覚が伝わってきて、非常にわかりやすかった。


保育園が不足している。待機児童がたくさんいる。
保育園を増やすには、施設が足りない、人が足りない。
待機児童の分だけ保育園を増やすと、行けるんだったらうちも行かせたいという潜在需要が掘り起こされてしまい、さらに多くの保育園が必要になる。
しかし、十分な保育園の設置は、財政を強く圧迫する。
様々な条件の中で、最適解というものはなく、非常に難しい問題であることを知る。


その背景には、少子高齢化という強烈な人口動態の中で、労働人口が不足し、働ける女性にはどんどん働いてもらわないと、社会が回らなくなっている、そういう世の中の要請がある。


自分に子供がいるとかいないとかそういう問題ではない。
一つの社会の縮図が、保育園問題なのである。


働き手がどんどん減っていき、介護すべき高齢者、育てるべき子供をどうして行くのか、今後ますます加速する日本の大きな問題である。
非常に勉強になる読書であった。



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