「あんた、やりませんか。副自治会長」
「いやぁ…」
脇の下を冷たい汗が流れる。
ボクは必死に断る理由を考えた。
「こ、広報がやりたいので…」
「広報は管理組合の役職名です。副自治会長と兼務できますよ」
「え…いや…」
考えろ。考えろ。えーと…
「自治会に参加するのも初めてなのに、そんな大役は…」
「副自治会長は二名です。そこまでの大役じゃありませんよ。
それに皆でバックアップするから大丈夫です」
追撃の手はゆるまない。
それがワダさんの悲鳴の効果である事は間違いなかった。
「し、仕事が忙しいので…」
「仕事を持っている方は多いですよ。私もそうです」
「子供が二人いて、まだ小さいですし…」
「自治会の仕事をする時間帯がお子さんが寝た後にすればいい。
夜なら少しは時間ができるでしょう?」
夜はイラストの仕事があるし、ブログも書きたい。
マヨとビールを飲みながらテレビを観るのも大切な時間だ。
だがそんな言い訳は聞き入れてもらえそうにない。
「共稼ぎなんですよ。だから家事もあるし、他にも…」
「できる時間でできるだけの事をやってくれればいいんです。
できない事をやってくれとお願いしているわけじゃない」
段々と退路を断たれていく。
冷静に、淡々と。
じわじわと、確実に。
必死に浮かべた笑みが、凍りついていくのが自分でもわかった。
<続く>
人気ブログランキングに参加中!
1クリックお願いします。