15_副理事の恐怖 | 日陰で絵日記

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 「副理事長は…どなたか立候補者はいらっしゃいますか?」




 一応、といった感じでエンドウさんは尋ねた。


 視線はボクに固定したままだ。


 何故ボクの方を見ているのか…理由はわからない。



 見られたからと言って立候補するわけもないので、ニコニコしながら

 ボクは自分の後を見た。

 「ボクの後に誰かがいて、その人を見てるんですよね?」という小芝居だ。

 そんな事でかわせるとは思えないが…。





 「立候補者はいませんか。私が決めてしまってもいいんですが…」





 え?




 ボクは耳を疑った。

 理事長って、そんな権限まであるの?





 「一応みなさんに聞いてみましょうか。…あなたはどうです? やりませんか?」


 





     日陰で絵日記-oshituke
 


 …やはり聞かれたか。




 ボクはごにょごにょと「いやぁ…副理事なんて…」とはっきりしない言い方をした。




 するとエンドウさんは言った。



 「他に何かやりたいものでもあるんですか?」



 そうきたか!



 ボクは大いに慌てながら、「広報っていうのがあるって聞いたんで…それを…」


 と、事前にお義母さんから仕入れてきた情報を口にした。




 「なるほど。やりたい係があるなら仕方ないですね。では、そちらの方は?」




 時計まわりで一人一人聞いていく。

 これはなかなか…怖いな…。




 「私は駐輪をやりたくて…」

 「仕事が忙しいから、副理事なんてつとめられないよ」

 「すいません、私はちょっと…」

 「私にもちょっと大任過ぎますよ」




 各々が必死に断っていく。


 きちんとした理由がないと断れそうにないところが怖い。


 エンドウさんの口調は威圧的ではないが、淡々とした

 冷静さに独特のプレッシャーがある。



 



 順番から行くと次はワダさんだった。

 だがエンドウさんは、何故かワダさんを飛ばそうとした。




 「私はなんだってやりますよ」




 と、ワダさんは飛ばされた事を意外そうに言った。




 だがエンドウさんは小さく首を振った。






 「あんたには、別にやってもらいたい事があるんでね」


  

 結局名指しは順繰りまわって、最初にエンドウさんを理事長に推薦した、

 ヒカワさんに回ってきた。





 「ヒカワさん、どうです。やってくれますか?」




 「…私はエンドウ派なんでね、やれと言われればなんでもやりますよ。

  推薦した責任もあるしね」




 どうやらエンドウさんとヒカワさんの間には、信頼関係があるらしい。

 

 結局副理事長は、ヒカワさんに決まった。








 「…では、次は自治会長を決めましょう」




 任命会議は、なかなか終わりが見えない。




    

 <続く>  






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