「…では、今期は私が管理組合の理事長をつとめます」
そう明言してから、
「大変な仕事です。みなさんの協力無しではとてもやれないでしょう。よろしくお願いします」
きれいなあいさつでまとめた。
どこか上滑りな印象だ。
エンドウさんが理事長になるのは、はじめから決まっていたような気がした。
事前協議があったとは言わない。
だが暗黙の了解というか、アイコンタクトというか…。
「エンドウさんが適任」な空気が、一部の理事たちにあったのは確かだろう。
それでも周囲からの推薦という体裁にしたのは、もちろん言質を取る意味もあるだろうが、
それ以上に「だって~彼が言うから仕方なく~」などという「受け身」を気取る女の子
的な、あくまで「自分が望んだ事ではなく、相手から求められたから」なスタンスを取る為の
演出に思えた。
満場一致で理事長となったエンドウさんは、しかしそれを喜ぶでもなく、淡々と続けた。
「さて、では次は副理事長を決めなければなりませんね」
そしてゆっくりと、隣に座っているボクの方を見た。
<続く>
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