ドミトリイ・バーキンの追悼文「早すぎる死の遺産」 | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

ドミトリイ・バーキン『出身国』の訳者の秋草俊一郎さんが、
群像社発行の『ロシア文化通信 群 GUN』
http://www.gunzosha.com/gun.html
ドミトリイ・バーキンの追悼文「早すぎる死の遺産」を寄稿しておられます。




その中に「本業のトラック運転手を引退したあとに、心置きなく執筆に専念してくれるのではないかと期待」していたのに残念とある。本当にそう。
残された作品でわかっているのは、短編11本と長編の第1章のみ。
もともと寡作だったのか、トラック運転手をしていて時間がなかったせいなのか。

好きでトラック運転手をしていたのならいいが、生活のためだったとしたら、じつに悲しい。
賞を受賞したときも、奥さんが来て賞金だけ持って帰ったそうだから、生活のためだった感じもする。
パンのための仕事に時間をとられずに、じっくり書くことに集中できる期間を、ぜひ人生で持ってほしかった。

作家を目指しながらも、生活のために別の仕事をせざるをえず、仕事に時間と活力を奪われて、思うように書けずに悩んでいる人は、おそらく少なくないだろう。
そういう人には、身につまされる最期ではないだろうか……。

残されたわずかな作品をぜひ多くの人に読んでほしいものです。

ドミトリイ・バーキンが、カフカのようにパンのための仕事に苦しんでいた人なのか、
それとも作家よりもトラック運転手でありたかった人なのか、
本当のところはわかりませんが……。

『出身国』
http://gunzosha.cart.fc2.com/ca15/170/p-r-s/