どちらも、名前は聞いたことがあっても、
どんな人なのかは、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
二人とも作家です。
240年以上、読まれ続けている恋愛小説。
それがゲーテの代表作『若きウェルテルの悩み』です。
100年以上、出だしが衝撃的と言われて続けている小説。
それがカフカの代表作『変身』です。(「朝、目が覚めたら、虫になっていた」)
ゲーテはこんな外見です。

カフカはこんな外見です。

でも、その人がどんな人なのか、いちばんよくわかるのは、
こんなことを言ったという「言葉」
こんなことをしたという「エピソード」
ではないでしょうか。
昨日引用した言葉でもわかるように、
ゲーテは希望に満ちた人でした。
カフカは絶望に満ちた人でした。
つまり、光と影のように、対照的な二人なのです。
でも、この二人を並べてみたのは、
二人がまるっきりちがう人間だからではありません。
「月とスッポン」「提灯と釣り鐘」という言葉がありますが、
比較したくなるのは、両者が似ているからこそです。
(月もスッポンも丸い、提灯も釣り鐘もぶら下がっている、という共通点があります)
ゲーテとカフカは、じつはとても似ているところがあります。
二人とも、裕福な家に生まれました。
でも父方はもともとは低い身分でした。
二人とも、父親の期待を背負わされました。
そして、父親とうまくいきませんでした。
二人とも、父親の意向で法律を学びました。
でも、当人は文学の道に進みたいと願っていました。
また、二人とも、画家になりたいと思ったことがあります。
二人とも、お気に入りの妹がいました。
二人とも、作家以外に仕事を持っていました。役人でした。
二人とも、朗読が好きでした。
二人とも、自然がとても好きでした。
二人とも、自分の原稿をよく焼いていました。
また、未完成な作品がたくさんあります。
二人とも、自殺を考え、思いとどまったことがあります。
二人とも、恋愛をする度に、名作を書いています。
恋愛と名作が連動しているのです。
ゲーテは一八世紀を代表する作家で、カフカは二〇世紀を代表する作家です。
後に続く作家たちに決定的な影響を与えたという点でも二人は共通しています。
対照的だけどよく似ている二人は、
光と影というより、
同じ光によってできた、輝きと、影なのかもしれません。
(つづく)
希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話/飛鳥新社

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