今日はカフカの誕生日!しかもカフカの生誕130周年!最近出たカフカの本と復刊希望本 | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

今日7月3日は、
カフカの誕生日です!
しかも、
カフカは1883年の生まれなので、
今年はちょうど生誕130周年なんです!

いやー、おめでたい!

130年前の今日、カフカは生まれたんですねー
感慨深いです。

カフカがいるのといないのでは、
現代文学はまったくちがったものになっているはずで、
なんとも大きな存在です。
当人は、高い背をまるめて、小さく細く弱くあろうとした人ですが。

Twitterで教えていただいたのですが、
今日、朝目が覚めたら、
Googleのトップ画面が虫になっていたそうです。

Google

Googleさんもやりますね。
ちゃんとリンゴも描いてあるんですよ。

生誕130周年ということで、
何かイベントでもあるといいですけどねー。

カフカ関連の本の復刊はぜひこの機会にしてほしいですね!


以下、
最近出たカフカ関連の本と、
復刊してほしいカフカの本を、
いくつか挙げてみたいと思います。
抜けがあったり、
他にも推薦本があったら、
ぜひコメント欄でお知らせください!


まず最初は自分の本(笑)

絶望名人カフカの人生論/飛鳥新社

¥1,500
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めでたく復刊になった、
『ゲーテとの対話』と並ぶ、
対話の名作。

カフカとの対話―― 手記と追想 (始まりの本)/みすず書房

¥3,990
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先日もご紹介した、新編集版の新訳!
カフカ好きなら必携本。

ミレナへの手紙/白水社

¥3,465
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ミレナに関しては、こういう素晴らしい本も出ました。

ミレナ 記事と手紙――カフカから遠く離れて/みすず書房

¥3,360
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評論では、音楽と、映画に関するものが、
続けて2冊出ました。

カフカと“民族”音楽/水声社

¥3,675
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カフカと映画/白水社

¥3,570
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カフカと映画に関しては、以前からこういう本もあります。
ゼーバルトも、とてもほめている本です。

カフカ、映画に行く/みすず書房

¥2,625
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カフカの新しい入門書として、この川島先生の本もおすすめです。

カフカ『変身』 2012年5月 (100分 de 名著)/NHK出版

¥550
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……


さて、今度は復刊してほしい本です。

まずは、なんといってもこれ!!!

決定版 カフカ全集/新潮社

¥30,582
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この全集は、日記や手紙も含んでおり、
いまだに決定版と言えます。


これが復刊されないのは、
きっとブロート版の翻訳であるためでしょう。
「ブロート版はブロートが勝手に手を入れている。
 新しく編集し直した批判版や、
 草稿そのままを再現した史的批判版が出ているから、
 そちらの翻訳を読みたい」
と思う人が多いはずで、
出版社もそれがわかっているから、
ブロート版を復刊しても売れないと思っているのではないでしょうか。

かつては私もそう思い込んでいたのですが、
『訴訟(審判)』を訳すときに、
ブロート版と、カフカの生原稿をつきあわせて、
そのちがいをすべて洗い出してみたところ、
まったくもって、ブロートの編集は、誠実としか言いようがありませんでした。

これは私だけが言っていることではなく、
もうずっと以前から、
ケルン大学のエメリヒ教授などは、
「原稿の写真版を調べたが、
 文章記号の疑問や読みにくい原稿の読みちがえによって起った
 きわめて少数のあやまりのほかには、
 意識的に変更を加えた原文侵害というものはどこにも見あたらなかった」
「ブロートは多くの点で批判的でないやりかたをしたかもしれないが、
 もともと刊本ということに明るい文献学者ではないのだから、やむをえない。
 ちゃんとしたテキストを刊行しようとする彼の誠実な努力は
 何びとも否定することができない」

と言っています。
まったくその通りだと思います。

一般の人でも読みやすくするために、
ブロートが大胆な手の入れ方をしているのもたしかです。
ノートの中から、断片を拾い出して、短編としてあつかったり。

でも、だからこそ、今でも、
一般に読むには(とくに最初に読むには)、
ブロート版がいちばん適しているのではないかと思います。

研究者でもない限り、
ブロート版を避ける意味はまったくないと思います。

だいたいが、
ブロート版とカフカの生原稿の差よりも、
原文と翻訳の差のほうが、
はるかに大きいです。

ブロート版か批判版かということより、
誰の翻訳で読むかということのほうが、
よほど重要です。

この『決定版カフカ全集』は翻訳もいいですし、
先にも書いたように、
日記や手紙が入っているのは、これしかありません。
ぜひとも復刊してほしいものです!


フランツ・カフカ (1972年)/みすず書房

¥価格不明
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ブロートの書いた、カフカの伝記本です。
これもカフカ好きにとっては必携本です。
いろんなカフカのエピソードがとても面白いです。

なぜこんな重要な本が絶版のままなのか?
これもまたブロートの悪評のせいではないかと思います。
「ブロートの描くカフカ像は歪んでいる」
という評判のせいで、読み手が少ないのでしょう。
まったく、もったいないことです。

ブロートの描くカフカ像が歪んでいる、
というのは、たしかに本当のことです。
ブロートは熱心なシオニストです。
いわば宗教家なわけで、
どうしても何も言うにも宗教的になってしまいます。
カフカの小説の解釈も、宗教的なので、
トンデモ解釈です。

でも、これは、
牧師さんとか、坊さんとかが言っていると思えば、
さほど批判するようなことでもありません。
そういう人が言うことが抹香臭いのは仕方ないことで、
それを割り引いて読めばいいだけのことです。

その行いから、ブロートの誠実な人柄は疑いようもないですし、
カフカと親友であったことも本当ですし、
そういう友人関係の中でのさまざまなエピソードは、
他の誰にも語れない大切なものです。
ぜひ復刊してほしいし、
復刊されたら、多くの人に読んでほしいです。


なんだか、ブロート擁護みたいになってしまいましたが。

最後にまた自分の本を(笑)
絶版本です。
これは出版社がなくなってしまったので、
復刊の望みはありませんが……。




逮捕+終り―『訴訟』より/創樹社

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