カフカの日記や手紙が、
古本でしか入手できないことを嘆きましたが、
ついに、一部は新刊で読めるようになります!
カフカの『ミレナへの手紙』の新訳が、
6月10日に発売予定です!
『ミレナへの手紙』の詳細情報
新刊で入手できるようになることも嬉しいですし、
翻訳が増えるということも嬉しいです。
翻訳は多いほうがいいですから。
旧新潮社全集と、
決定版カフカ全集(こちらも新潮社)では、
辻瑆氏が訳しておられました。
今回は、
訳者は、池内紀氏で、
出版社は、白水社です。
白水社からは池内紀氏訳で、カフカの小説全集が出ています。
そこに、これから手紙や日記を足していくのかもしれません!
もしそうなら、
これから『フェリーツェへの手紙』や『日記』やその他の手紙も
順次、出版されていくのかもしれません!
そうだといいですね。
なお、上記の本の説明に、
「日付を入れる習慣がなかったカフカの手紙は、
配列によって意味がまったく変わってくる。
新編集による、恋人宛ての書簡集。」
とあります。
この配列というのは、どういうことかと言うと、
ブロート版のカフカ全集では、
『ミレナへの手紙』は、
ミレナから直接、カフカの手紙を託された、
評論家の友人ヴィリー・ハースが編纂していました。
ハースはできる限り、手紙を順番通りに配列しましたが、
迷う部分もあったことが、当人のあとがきからもうかがわれます。
その後、配列を改善した、
ユルゲン・ボルンとミヒャエル・ミュラーの編纂による
『ミレナへの手紙・増補改訂版』が出ました。
Briefe an Milena/Fischer Taschenbuch Verlag GmbH

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でも、この本の配列についても、
批判版カフカ全集の編集者の一人であるヨスト・シレマイトが、
日付推定を修正する論文を発表しました。
シレマイトの配列は決定版となるかと思われましたが、
さらにそれに異論をとなえる人もいます。
例によって、こういうことはきりがありません。
従来の『ミレナへの手紙』の邦訳は、
ハース版でした。
今回は、ユルゲン・ボルンとミヒャエル・ミュラー版なのか、
それともシレマイトの配列なのか、
おそらくはどちらかでしょう。
なお、
ミレナへの手紙の写真が掲載されている本もあります。
Drei Briefe an Milena Jesenska/Stroemfeld Verlag

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ミレナという女性は、
カフカの小説をチェコ語に翻訳した人で、
その翻訳の見事さをカフカも賞賛しています。
カフカにとってミレナは、
フェリーツェに次いで重要な女性で、
『ミレナへの手紙』は、
『フェリーツェへの手紙』に次いで面白いです。
『ミレナへの手紙』には、
カフカの素晴らしい言葉がたくさん出てきます。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいものです。
『絶望名人』で引用した次の言葉も、
『ミレナへの手紙』に書かれているものです。
ミルクのコップを口のところに持ちあげるのさえ怖くなります。
そのコップが、目の前で砕け散り、破片が顔に飛んでくることも、
起きないとは限らないからです。