古典的名著『民間説話 世界の昔話とその分類』が復刊に! 類話を知るのは楽しいですよ! | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『民間説話 世界の昔話とその分類』スティス・トンプソン
が復刊になりました!


復刊ドットコム『民間説話 世界の昔話とその分類』

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民話や昔話は、それ自体も面白いですが、
類話を知ると、
さらに面白さが倍増します。

民話は、その地域に根ざしたものを思われていて、
たしかに、そういう面はあるのですが、
じつは、同じような話が世界中にあったりします。

なぜかと言うと、
ひとつには、
人から人、口から口に、広がっていったためです。
徒歩で生きていた時代でも、
お話というのは、意外なほど広がっていっています。

ただ、それだけではなく、
まったく別々に、まったく別の場所で、
同じようなお話が誕生してもいます。

その理由を、
ユングの「集団的無意識」に求める必要はないでしょう。
同じ地球で、同じ人間が暮らしているのですから、
同じ物語が生まれるのは、むしろ当然です。

そして、
多くの地域に類話があり、
長い時代を経ても残っている話というのは、
それだけ、人間の普遍的な部分をとられているということです。
地域の特殊性がつきつめられて、
普遍性に達しているわけです。

だから、民話や昔話は面白いのです。
現代文学も、
しばしば民話や昔話まで立ち戻って、
そこから再出発します。
最近ではマルケスなど、
まさにそうですね。

そして、
これはまったく逆のことを言うようですが、
同じ話なのに、地域ごとにちがいがあること、
つまり、その地域ならではの味付けが、
これまた比較してみると、面白いのです。

というわけで、
類話を知るというのは、
昔話の楽しみの中でも、
醍醐味と言えます。

ご興味のある方は、この機会にぜひどうぞ。
残念ながら、またすぐに絶版になるでしょうから。