◆絶望を描いているのではない
カフカがあんまり自分の弱さを強調しているので、
批評家の中には、
「カフカは意思が弱く、心理的に不具であった」
「カフカは——意気阻喪し、不満で、絶望的で」
(エドモンド・ウィルソン C)
などとカフカをけなしている人もいる。
しかし、それは間違いなわけだ。
また、イギリスのW・H・オーデンなど多数の作家たちは、
カフカの小説が「絶望と罪悪感に終わってしまうことを非難した」(城山良彦 C)
というが、これも的外れな非難だ。
たしかにカフカの小説には現実に苦しめられる人間が出てくる。
しかし、カフカはその苦悩を描いているのではなく、
「その弱さによってとらえられる現実」を描いているのである。