『カフカと強さと弱さ』(3)「弱いということ」 | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

◆弱いということ

カフカは手紙にも日記にも、
自分の弱さについて、
くり返しくり返し書いている。

「私は自分の知っている人のうち最も痩せた人間です……
 力は小さく……
 体操、もちろんごく軽いものですが……
 大概かるく心臓がいたみ、腹の筋肉がぴくぴくします」

(フェリーツェへの手紙1912年11月1日 A)

「こんな体では何事も成しとげることはできない……
 内部の火を維持するためのわずかな脂肪すらなく……
 近頃しばしばチクチク痛むこの衰弱した心臓は、
 どうしたら血液をこの長い足の末端まで送りこむことができるのだろうか」

(日記1911年11月22日 A)

「ぼくはこの人生に必要な要件を、
 ぼくの知るかぎり、なにひとつ備えておらず、
 ただ普遍的な人間的弱みしかもっていない」

(八折り判ノート第4冊 A)

「未来へとぼくは歩いていくことができず、
 未来へ倒れこむ、未来へ転げこむ、未来へよろめきこむ、それならできますが、
 一番よくできるのはじっとねていることです」

(フェリーツェへの手紙1913年2月28日~3月1日 A)