『光る君へ』大河が面白いと救われる | 華月洞からのたより

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NHK大河ドラマ『光る君へ』

始まる前は「毎週美しい平安絵巻見られるの楽しみ!」と思っていました。

今、20話まで来ましたけれど、平安時代の装束や美術(セット)の美しさも期待以上なら、ストーリーの面白さも期待以上!

拙者すっかりはまってますわ。

 

 

 

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大石静さんの脚本、素晴らしい。

大河ドラマを書くのは、脚本家にとって大きな仕事でしょう。

それに加えて世界最古の長編小説と言われる「源氏物語」の作者紫式部の生涯を描くというのは、同じ女流作家(脚本家)として

厳かな仕事だろうと想像します。

 

大石さんの本からは、紫式部への畏敬の念、「まひろ」への深い愛情が伝わってきます。

史料の少ない紫式部の生涯を描こうとすれば、まるっと創作になることは大前提です。

大石さんは『源氏物語』に結実した紫式部の「なにか」を探し当て、それをまひろの生涯として再構築する作業に取り組まれているように感じます。

 

のちに「物語」に描かれる人間模様、理性ではどうにもならない想い、人の滑稽さや愚かさ、狡猾さ、この世の理不尽、痛みや悲しみが、好奇心旺盛で前向きなまひろの心の内に降り積もるように堆積していく様子。

「源氏物語のあのシーンね」と連想させるシーンも、まひろの(または道長の)人生のひとコマとして自然に織り込まれていく様子は、「これぞ匠の技」というほかありません。

 

(匠の技といえば、この時代の慣習との整合性をとった上で、まひろちゃんを五節の舞姫にしてしまった辣腕ぶりには驚きました。吉高由里子さんの美しかったこと!

帝と上位の殿上人しかご覧になれなかったものを、シモジモの者が美しい映像で見ることが出来るとは、ああ現代って令和の世って有難い。これは大河史上もっとも美しい映像かもしれないと、息を詰めて見入りましたよ。)

 

 

まひろ、道長という主役だけではなく、大石さんの温かいまなざしが各キャラクターを包んでいますね。

あまり悪く描かれる人物が出て来ないんじゃないかとも思われますが、どうなりますか。

 

『紫式部日記』で一刀両断に書き捨てられている清少納言も、『光る君へ』では仲良しですしね。

清少納言と紫式部は宮中に出仕していた時期がかぶらないので、宮中で会うことはなかったでしょうが、それ以外で全く面識がなかったとは誰も言い切れないわけで、そこを突いてきましたね。

 まひろとの関係はフィクションであっても、清少納言も実に、実に魅力的に描かれていてファーストサマーウイカさんも脳内清少納言とぴったり重なっています。

20話など心の中で「頑張れ!せー/しょーなごーん!」と応援してしまいましたわ。

次回予告の「春はあけぼの・・・」には泣きそうになったし。

 

少しさかのぼって物語序盤の悪役、初回に幼いまひろちゃんの母を殺めた藤原道兼(道長の兄)の最期にも、心を打たれました。

演出の変更を申し出た道長役の柄本佑さんの感性もさすがですが、演者をその道長像に導いたのはそこに至るまでの脚本です。

 

普段なら「本が神っ!」と書くところですが、平安期の物語ですから「本が御仏っ!」ですかね。

 

 

「光る君へ」が、このままわくわくドキドキを味あわせてくれますように。

見事に結実しますように。