3月歌舞伎座『寺子屋』、役者の迫力に場内が息を殺す!! 菊之助の松王、愛之助の武部源蔵 | ふうせんのブログ

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小林蕗子のブログです。2013年5月に始めたときはプロフィールに本名を明示していましたが、消えてしまいましたので、ここに表示します。。
主に歌舞伎や本のことなどを、自分のメモ的に発信したいなあって思っています。よろしく!!

【歌舞伎の本格的な世代交代への期待 ③】の原稿も準備していたのですが、その前に、
【團十郎襲名披露から、歌舞伎の本格的な世代交代への期待①】
で取り上げち尾上菊之助を再度登場!!
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3月歌舞伎座、『寺子屋』を観てきました。

松王の尾上菊之助、武部源蔵の片岡愛之助

この両者の緊迫感に、私は息を殺す!
その熱演に拍車する観客も多かったが、私は〈ここで拍手したら、何かが消えてしまいそう〉で、拍手なしに、ただただ意気を殺して見つめるばかりでした。
そして、菊之助の祖父・七代目尾上梅幸の著書『拍手は幕が下りてから』を思い出していました。
あの本で梅幸が言いたかったのは、
観客に「拍手は幕が下りてからにしてね」と言いたかったのではなく、
役者に「観客が拍手もできないほど、感動で緊迫した舞台を創れ」と

言いたかったのですよね。

帰宅して歌舞伎美人のサイトをひらくと、
【菊之助、愛之助が語る歌舞伎座「三月大歌舞伎」、「四月大歌舞伎」】2024/03/22

一部引用――――――
初役で挑戦する菊之助は
「先人たちが築いてきた宝物ですので、憧れの気持ちをもち、名作に日々挑ませていただいています。『寺子屋』は登場人物が少ないなかで緊迫した状況をつくり出さなければなりません。最後の場面では“にっこりと笑って”という愛之助さんのせりふをいただいて、“笑いましたか”と泣き笑いに繋げていきます。愛之助さん演じる源蔵に息をいただいて、勤めさせていただいてます」と。

その松王丸に対峙する愛之助は、
「源蔵はとても重く、(演じていて)精神的につらいお役です。けれども、菊之助さんがおっしゃった息の掛け合い、芝居のキャッチボールが気持ちよく、とても楽しいです。毎日始まる前にわくわくするんです。物語は重いですが、“今日もできる、よし!”という裏腹な気持ちで顔(化粧)をしながら始まり、毎日幸せです」と。
――――――引用終わり


この二人の話、役者魂としてたいへん納得できます。
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松王丸の菊之助が登場

銀鼠の衣裳にハッとさせられ、……
勘三郎の時と一緒だ。そういえば、これは「音羽屋型」と言っていたわね。
今回の松王丸のビシュアルは、歌舞伎美人のサイトより、ナタリーのサイトのほうが、見やすいです。画像は5点あり、拡大もできます。
https://natalie.mu/stage/news/561692

 

さらに検索すると、つぎの記事がでてきました。
ようこそ歌舞伎へ/「菅原伝授手習鑑』「寺子屋」二代目松本白鸚 2017年12月26日

 

一部引用――――――
松王丸を何度か勤めたあとに中村屋のおじ(十七世勘三郎)の舞台を拝見しました。おじは音羽屋系(尾上菊五郎家)の銀鼠に雪持ち松の衣裳でした。おじは時代物でも非常にリアルな演技をした人です。六代目の型に自分の工夫を入れたのだと思います。咳の仕方もよりリアルになっていました。
 おじに習ったことはありませんが、舞台を拝見していましたので、その咳の仕方も勉強させていただきました。哲ちゃん(十八世勘三郎)の松王丸で源蔵に出たことがありますが、哲ちゃんも中村屋のおじのような咳をしていました。
――――――引用終わり

そこで思い出すのが、
2011年12月の平成中村座

菊之助が初めて平成中村座に参加しました。
そして、勘三郎の松王丸に、菊之助の武部源蔵。
【平成中村座十二月大歌舞伎 菊之助が意気込みを語りました】

一部引用――――――
「中村勘三郎のお兄様と食事をご一緒した時に、自分の思いを伝えさせていただいたことが今回の公演につながりました。父(尾上菊五郎)の理解も得て、私の思い描いていた夢が12月の平成中村座で実現します。本当に挑戦です。お兄様の胸を借りて体当たりで勤めさせていただきたいと思っています」。
――――――引用終わり
このインタビューには六代目菊五郎の名は出てきませんし、あの時には気が付かなかったけれど、
いま思えば、あの時から菊之助の「思い」や「夢」のなかには、〈音羽屋型の松王丸を、自分の代で演じたい。取り戻したい〉ということもあったのでしょうね。
そのために勘三郎の松王丸と対峙する武部源蔵で共演することが夢でしたし、それが叶ったのですね。

そのことを叶えた勘三郎も、素晴らしい!!


そして、それが今年3月の舞台につながったのだと思いたいです。
なお、ご存知のように、勘三郎の母方の祖父は六代目菊五郎で、血の繋がりは勘三郎にあります。
一方、音羽屋・尾上菊五郎家の家は、将来菊之助が継いでいくことになりますから、藝も継ぐ、ということですね。

ただ、勘三郎の演じ方とはだいぶ違っていた感じです。吉右衛門とも違って、かなり独自の松王丸を創っていたと思います。

首実験の所作が音羽屋型なのかしら、浄瑠璃の竹本葵大夫が、Xに書かれていたようですが、ちょっと今分かりません。

ともかく、今月の菊之助と愛之助の「寺子屋」は、是非観てほしい舞台です。
26日までですから、見逃されたかたは、来月の配信もあります。
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愛之助については、別の項目で書きたいと思っています。

今回も長くなりましたので、ここでブログアップします。

4月15日以降は、こんな長いブログはアップできないみたいですね。
そのことも、また後日書きます。

 

なお、中川右介の3月歌舞伎座の記事は

突然、大相撲の話。尊富士の怪我は治って、今日登場できるかな?

優勝するかな? 期待してます。

※ なお、敬称についてですが、プロの芸術家や文筆家の方は広い意味での公人ですので、舞台そのものや作品について記す時は、私は敬称を付けません。昔からの慣例です。プライベートな内容と思われる時は「さん」の敬称を付けます。よろしくご了承ください。