8月の歌舞伎・メモ | ふうせんのブログ

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小林蕗子のブログです。2013年5月に始めたときはプロフィールに本名を明示していましたが、消えてしまいましたので、ここに表示します。。
主に歌舞伎や本のことなどを、自分のメモ的に発信したいなあって思っています。よろしく!!

9月になってしまいました。
なかなかブログが書けずに、ご無沙汰しています。
8月も、ちゃんと観劇には出かけていました。

8月10日、歌舞伎座・納涼歌舞伎第3部。
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/print/576
8月14日、歌舞伎座・納涼歌舞伎第1部。
8月16日、国立劇場小劇場【第24回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演】初日http://www.kabuki.or.jp/densyou/benkyoukai/h30_goudou.html
8月17日、新橋演舞場・新作歌舞伎『NARUTO』。
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/print/556
8月21日、歌舞伎座・納涼歌舞伎第2部。
8月25日、歌舞伎座ギャラリー【第4回歌舞伎懐かし堂】
http://www.kabuki-bito.jp/news/4884
『其小唄夢廓(そのこうたゆめもよしわら)』(昭和49年10月歌舞伎座)白井権八:十四世守田勘弥、三浦屋小紫:坂東玉三郎。
勘弥は翌年昭和50年3月に68歳で亡くなるので、67歳の権八と、24歳の玉三郎の小紫
8月27日、国立劇場小劇場・尾上右近 自主公演【第四回 研の會】。 
http://www.kabuki-bito.jp/news/4779

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【若手のパワーに圧倒された8月】

① 中村芝のぶ&中村橋吾の『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』
【第24回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演】
もちろん『寿曽我対面』も『勢獅子』も、みなさん一所懸命でした。
げれども、中村芝のぶ(頓兵衛娘お舟)は、1988年に国立劇場第9期歌舞伎俳優研修修了し、先代中村芝翫に入門、2000年4月に名題昇進しているベテランですから、ほかの演目の出演者とは〈藝格が違う〉素晴らしさでした。
私が説明するまでもなく、知る人ぞ知る、美しさと藝の確かさで定評のある女方さん。
中村勘三郎がご存命の頃は、いろんなお役で抜擢されていましたから、芝のぶファンの方も大勢いらっしゃる。
私も、そのファンの一人。
去年の8月は、歌舞伎座・納涼歌舞伎で久しぶりにお役がついて、私のブログは【8月歌舞伎座、中村芝のぶに感激】https://ameblo.jp/kabukidaisuki888/entry-12302450807.html
なお、今までにも色々なお役がついていた、といっても脇役ですから、今回のように主役=頓兵衛娘お舟を演じることは、今後はありえないことです。
ですから舞台に立つ意気込みが、全然違う。全身全霊という言葉そのものの熱演でした。
2015年の【第21回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演】でも「十種香」の八重垣姫を演じています。
この時も素晴らしかった! 
その時点で、「合同公演に挑戦できるギリギリの年齢なので…」と言ってらしたけれど、今年は本当に最後の挑戦でした。
去年8月に、尾上右近の【研の會】でも『神霊矢口渡』を観ました。右近のお舟も熱演で素晴らしかったのですが、それに勝るとも劣らない芝のぶのお舟。
中村芝のぶのような役者が、本公演では主役になれないのは、歌舞伎界にとって、もったいないことです。
さて、『神霊矢口渡』は、後半に大きな見せ場があるのですけれど、その中心となるのは、お舟と敵役の父・頓兵衛。
この頓兵衛を演じたのが中村橋吾。さすがに上手い!! 存在感もたっぷり。
橋吾も、2000年国立劇場第15期歌舞伎俳優研修修了後、先代中村芝翫に入門、2013年4月に名題昇進。
芝のぶが50歳とすると、橋吾は12歳年下の年齢。
二人とも「若手」と言うのには無理があるけれど、二人の舞台には、日頃の精進+「若手パワー」の真摯な心と身体が溢れて、清々しい空気さえ流れるラストでした。

なお、【第24回 稚魚の会・歌舞伎会合同公演】についての詳しい内容や感想は、いつもながら
doremifabianさんのブログ、https://ameblo.jp/madamfabian/entry-12399104977.html
ハナさんのブログ、https://ameblo.jp/mknjb/entry-12400218369.html

② 坂東巳之助&中村隼人&中村梅丸の『NARUTO -ナルト-』
この『NARUTO』こそ、〈これでもか、これでもか〉と言わんばかりに、若いパーワーが全開!! 
岸本斉史による漫画を舞台化したものということですが、私はその漫画は読んでいません。
それでも、『ワンピース』以上に歌舞伎として楽しかった。
舞台は忍者の里ですから、歌舞伎にふさわしい設定ですよね。
坂東巳之助(9月で30歳)演じる〈うずまきナルト〉、

中村隼人(11月で25歳)演じる〈うちはサスケ〉、

二人はそれぞれに大きな宿命を抱えている。
〈うずまきナルト〉の身体には、九尾の狐という巨大な化け物が封印されているのだが、当人には知らされていない。
〈うちはサスケ〉は、子どものころに、兄が両親を含む一族全員を殺す姿を目撃している。
詳しいストーリーは省略しますけれど、敵と見方が複雑に入り乱れての闘争が激しく展開されるんですね。 
立師は、アクションコーディネーターの諸鍛冶裕太と、歌舞伎立師の坂東大和。この二人の立師が創り出す大立ち回りを、巳之助と隼人という若さ全開のパワーで、大奮闘!! それが見事な藝になっていて、熱気ムンムン!!
「ワンピース歌舞伎」は若手を成長させたわね。
2015年の初演の時点で、巳之助はすでに身体の動きも軽やかに『ワンピース』を先導するような存在だったけれど、隼人の方は身体が重い感じだったのね。
それが今回は、隼人の身体にキレがあって、動きも美しかった! 
隼人の〈うちはサスケ〉の方が、性格的に孤独だったりニヒルだったり、難しいはず。
隼人の容貌から考えると、年を重ねるに従って孤独な忍者サスケの存在感はもっと深まるはずだから、今後再演を重ねてほしいな。
中村梅丸〈春野サクラ〉も、生き生きと楽しそうに大奮闘。嬉しかった! 9月で22歳になります。
梅丸は、2009年歌舞伎座さよなら公演、吉右衛門の『勧進帳』の時に太刀持ちで登場! 
「あの子は誰?」って注目するほど、正座姿が立派で可愛かった。
調べたら、2006年、9歳の時に中村梅玉の部屋子になっていたのね。それまでは気が付かなかったのだけれど、それ以降はずっと注目して、応援してきたから、今回の大活躍は嬉しかった!
若い役者たちが、一心不乱に頑張る姿は、心地よいなー。

その若手の活躍を支える、市川猿弥〈自来也〉、市川笑也〈綱手〉、市川笑三郎〈大蛇丸〉。この三人の活躍が、とても嬉しい!!
そしてラスボス市川猿之助〈うちはマダラ〉、貫禄たっぷりの存在感。

8月は歌舞伎座納涼でも、若手育成で尽力していたけれど、そろそろ澤瀉屋のお家芸『伊達の十役』とか…、観たいです。

③ 尾上右近&中村壱太郎の『封印切』『二人椀久』
尾上右近(26歳)の自主公演【研の會】も、今年で4回目。
去年は、『神霊矢口渡』のお舟がメインで、女方でしたけれど、立ち回りあり、アクションありの女方。
今年は、逆に立役なのだけれど、『封印切』の亀屋忠兵衛も、『二人椀久』の椀屋久兵衛もアクションなし。
相手役として、今年は中村壱太郎(28歳)を迎えての公演。
なんと言っても、『二人椀久』が素晴らしかった!! 

右近の椀久&壱太郎の松山太夫、新しい名コンビの誕生!!
もちろん若いですから、中村富十郎&先代の中村雀右衛門、片岡仁左衛門&坂東玉三郎、といった大人の雰囲気はまだまだですけれど、美しさ、舞踊の上手さ、品のあるたたずまい、二人の均衡がとれているのが嬉しい。
この『二人椀久』は本公演でも観たい!! 
『封印切』の忠兵衛、右近は初役ですから、やはり勉強会と言う感じでしたけれど、必死で挑戦している姿は清々しい。
梅川の壱太郎は若いとはいえ、お家芸ですから、役が身体に馴染んでいますよね。
おえんの上村吉弥も上方のベテランの女方。梅川&忠兵衛を陰で支える役どころですが、それ以上に、この芝居そのものを支えていました。
なによりも、八右衛門の中村亀鶴。ほんとに上手い! 忠兵衛を封印切へと追い込んでいくのだけれど、上方のユーモアも醸し出されて、初役の忠兵衛としては演じやすかったと思いました。
しかも、このベテランさん達が、自主公演【研の會】をしっかり盛り上げようと、右近と同じように一途な気持ちで清々しい舞台を創っていたことが、しっかり伝わりました。

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歌舞伎座・納涼歌舞伎についても書きたかったけれど、また改めて書きたいと思います。

9月の歌舞伎は、まず
9月2日は、巡業・西コース、片岡愛之助と中村壱太郎の『義経千本桜』を立川の会場で観ます。
9月3日は、歌舞伎座・昼の部、『金閣寺』の中村児太郎の雪姫、中村福助の慶寿院尼を観るのが楽しみです。
咳が時々出るのが困りものなのですが、咳止め薬をのんだり、のど飴なめて、頑張ります。

おやすみなさい。

※ なお、敬称についてですが、プロの芸術家や文筆家の方は広い意味での公人ですので、舞台そのものや作品について記す時は、私は敬称を付けません。昔からの慣例です。プライベートな内容と思われる時は「さん」の敬称を付けます。よろしくご了承ください。