小説『君も幽霊なんか？』
徳村慎
昨日の夜にさ、僕の周りを飛ぶ、光る霊に会ったんよ。ネオンのようにも感じられるような青とか緑の光がね、丸い光やったり尾を引く流れ星やったりするんやけどね、シルエットが人間に近くなるやつもおって(居て)さ。僕は女の霊の頭を撫でたんよね。別の霊とはキスしたわ。女の霊たちは分裂して増えてくんよ。前はね、こんな霊に会ったら怖くて震えたもんやったけどね。今は、ちゃう。でもね。不思議なもんで、頭を撫でた霊が分裂して、じっとうずくまっとるんよ。頭撫でたやつはアソコしゃぶらせたりしたったんやけどさ。でも分裂して、左足の膝の辺りでじっとしとるんよね。でもこわない(怖くない)んやで。なんっていうんかな？……ペットっぽいっちゅうか、魂の抜けた存在みたいになっとるんよ。まあ、むしろ魂だけやから幽霊なんやけどさ。生霊なんか死んだやつなんか知らんで。でも、いっぱいおったわ。ありゃ、1人じゃないんやね。僕は、いっぱい恨みを持たれとるんかも知れんわ。ははは。しゃぁないな(仕方がないな)
。僕の魂まで奪おうとするやなんて女にモテるのも辛(つら)いわ。ってか、女っていうか幽霊やっちゅうねん。笑えるわ。ははは。一時期ホモには、ようモテたけどな。モテんでええやん。そんなんに。いや、でも、女やったら幽霊でも大歓迎やで。なぁんちゃって。ただな、あいつら話もせんとじっと僕を見とったわ。まあ、怖いか怖ないかで言うたら、まあ、昔は怖かったけど。こいつら僕の彼女になり損なったやつらなんか、逆に僕が憧れとった人らなんか知らんけどさ。まあ、どうせやったら金髪碧眼のロリータの幽霊が欲しいトコやけど、まあ、それは置いといて。え？……置いとくなって？……じゃあ、話そか？……アニメっぽいのやとさ、ロリ巨乳が好きやけどさ。まあ、でもツルペタでもええかな？……なんてな。でも、それからおっきい(大きい)尻の女の幽霊に掴まってな。まあ、楽しんだんやけどさ。青い髪の青い瞳のソバカス女が出て来てさ。もちろん幽霊やで？……そいつが浮気したって怒るんよ。知るかっちゅうんじゃ。お前の身体に魅力無い
んじゃ、言うて追い払ったら復讐したる、とか言いながら消えてったわ。まあ、僕の若い頃の自分が顔出したって感じでさ。自分でも冷たいなぁ、と思いながらも、こんなもんやな、とも思ってさぁ。女の幽霊は眠る前にやって来るんやけどさ。最近、化物の影やったら読書灯だけの暗い部屋でよう見るんよ。ちょっと絵に描いたりするんやけどな。なんて言うんやろな？……狂ったデッサンみたいな感じやわ。ああ、僕の頭が狂ったって？……まあ、確かに頭だけじゃなく顔も性格も悪いけどさ。はははは。そうとちゃうわ。狂ったっていうのは間違ったっていうかさ。人物を描くなら骨があって肉があってって描くやんか？……あ、ゴメン、知らんか。まあ、描くんよね。それが正確なデッサンやわ。それを形が狂ったように描くデッサンっていうかさ。まあ、そんなんが狂ったデッサンやな。だって、そう見えるんやもん。で、おねえさん見た時も幽霊やとおもた(思った)で。こりゃ幽霊やッて。なんな、生きとるんか、って安心したけどさ。昨日が昨日やったから、今日のも、
おねえさんも霊やとおもてさ。こうやって服脱がせてパジャマ着せたるのはね。服着たまんまやと疲れが取れんからなんよ。え？……自分で出来るって？……いや、脱がせて着せる楽しみが無いやん。結構、胸あるね。痛っ。殴らんでもええやん。あれ？……手ェも痛ッ。齧(かじ)りやる。やめて。おねえさん、人間ちゃうん？……誰？……おねえさん、ホンマ、誰？……僕、誰と話しとったん？……え？……ウソ？……今、なんにもしてないのにギターが鳴ったで。うわ。やめて。誰も、おらへん(居ない)。あああ。後ろから首締めんといて。このままやったら……僕……死ぬ……かも。心臓痛い。空気、空気吸えへん。ギターがうるさい。ああ、1弦が切れる。ギター鳴らさんといて。夜中でうるさいやんか。幽霊さん。頼むわ。眠らせて。いや、死ぬって意味じゃないよ。静かに眠らせて。ああ。あああ。うう。うーん。ふう。……夢か。夢にしちゃ、首と心臓痛いな。もう朝か？……ちゃう。電気点(つ)いとるんや。夜中か。あ……ギターの弦切
れとる。ウソ。ちょ、待て。鏡……。マジか。首に紫の指の跡があるやん。え？……もしかして心臓もか？……アカン。マジか。あの、おねえさん、一体誰やったんや？……あんな人知っとったか？……色んな女の子に似とるけど。そのどれでもないよな。ふう。取り敢(あ)えず、電気消して寝よ。あ、こんにちは。押入れから今日は出て来たんや？……黒髪のツインテール可愛いなぁ。布団に入りぃや。君も幽霊なんか？
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