歌声あふれる山(山梨県) | 鳥の思い出

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5月4日、山梨県。

今年は4月20日前後に自宅(川崎市)近くでコルリやコマドリの声を聞くことができた。それ自体幸運なことではあるのだが、やはり観察や撮影もしたくなるのが人情。ハードルを下げて既知の生息地を訪ねることにした。2022年8月以来である。

 

前日のうちにクルマに荷を積み、午前2時台に自宅を出発。山域に入り車窓にオオルリやキビタキ、コルリの声が届くと思わず停車してしまうのだが、ほどほどにして目的の林道へ急いだ。

 

本日の1枚目はカケス。いたるところに現れる。芽吹きの山の早朝はさすがに寒く、薄手のダウンに助けられた。

 

この笹の絨毯こそ、コマドリの生息する環境である。ここに来れば少なくとも声は聞けると確信していたのに、実際に聞いたら懐かしさなのか安堵感なのか、ちょっと涙がこみ上げた。それだけ特別な鳥だということだろうか。

 

背後すぐ近くからコルリの声がしてわれに帰る。

 

この時期のコルリは高い位置でも活発にさえずる。瑠璃色の焦げた、ありがちな証拠写真(~_~;)

 

少し進み、林道がカーブするところでまたコマドリの声がした。雄雌ペアでいるらしく笹薮の縁(へり)からチチチチ…と地鳴きが聞こえて来る。身を低くして、道に出てくるのを待つのが良さそう。

 

思ったより遠くの枝に雄が姿を現した。チャンスを活かしきれなかったが、まだ6時台。再登場に期待しつつ、周辺の探索を始めた。

 

枝がガサガサ動いた先にソウシチョウ。のどに黄色〜橙色の部分があり、そこだけ目に入ると一瞬コマドリかと期待することがあるような、ないような。

 

ヒガラが苔を採りに来ていた。斜面の岩陰に巣作りをしているようだった。

 

ヤブサメもその名の通り笹薮を好む鳥である。ここに来始めたころ、時期を逸してヤブサメオンリーという成果で帰ったこともある。

 

クロジの生息は以前から確認していたのだけど、初めてさえずりを聞いた。ホオジロ科としては単調、よく言えば素朴なメロディーで、不覚にも意識の外に追いやられていたのだろう。

 

 

さて、笹薮の縁以外にコマドリ拝謁を期待できる環境といえば、沢すじである。沢は水場でもあり、餌場でもある。コマドリは方角まちまちで数分おきに鳴いており、待てばいつか視界に入るはず。

 

ミソサザイが橋の上流下流を行き来していた。上流側で雌と接触したあと、数十メートル離れた下流でも活発にさえずる。証拠を押さえたわけではないが、単なる縄張り主張だけでなく別の雌にもアピールしているのだろう。

 

いつの間にか11時。お昼にでもしようといったん沢を離れようとしたところでコマドリ雌が出てきた。まさか私が立ち去るのがわかったわけではないと思うが。

 

さて、クルマに戻って弁当を食べた後は、少し標高を下げてみることにした。夏山に限らず、鳥見のゴールデンタイムである朝が終わると、帰ってもいいかなという気分になる。そんな散漫で気だるい午後。

 

クルマの前をクロツグミが通過したので、停車すると声はまだ近かった。車から降りずにしばらく待つと、雄雌ペアで舗装路上に出てきた。小さな虫でもいるのか、ずっと路上をつついていた。

 

早口で複雑なさえずりの主はコサメビタキ。ペアでいたので、これから営巣か、すでに営巣中であろう。

 

コガラ。夕刻にかけては主に、マミジロ実績のある水場で待ってみたが、来たのはカラ類のみ。たいした成果なく夕暮れをむかえた。

 

うーん、ちょっと物足りない。ひとつ泊まって翌朝もコマドリの沢へ行くことに決めた。キャンプサイトで早々に質素な夕食をとり、7時には寝袋に入った。テントにはかすかにフクロウの声が届いた。

 

★★★

 

明くる5月5日。当然まだ暗い時間に目覚めたのだが、「経験したことのある」締め付けられるような頭痛をおぼえた。久々に飲んだスコッチの影響、つまり二日酔いである。たいした量ではなかったのに。寝不足と、もしかしたら標高差が重なったのだろう。ひとりで盛り上がりすぎたかな・・・不覚であった。

 

まあそのうち回復するだろう。なんとか日が出ないうちに活動を開始した。コマドリの沢に近づくと、昨日聞こえなかったジュウイチ、そして確実なマミジロの声を聞いた。なかなか姿を捉えられない者たちである。

 

ミソサザイは昨日と同様に活発だった。黄色い花はヤマネコノメソウだろうか。

 

さて、コマドリが沢を渡りそうなポイントに目星をつけて、簡易的なブラインドを設置した。コマドリの地鳴きは小さいので、沢音に消されてしまう。視覚がたのみ。

 

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カワガラスが二度沢の上を通過したほか、身を隠していない背後側に何度かミソサザイが来た(笑)。


待つこと20分ほど、向こうの斜面(丸囲いの沢よりさらに遠く)にコマドリ雌が現れた。続いて雄も。

 

 


雌は巣材を集めていた。私自身は初めて見る場面であったが、考えてみれば繁殖期なのだから営巣するのは当たり前である。kaatsfield的にはギリギリの写真。これ以上の張り込みはやめることにした。


★★★


林道に戻ると、昨日と同じくクロジ雄がさえずっていた。

ときどき笹薮の中に下りた。下りたあたりには雌の姿もあった。クロジもまた、そのあたりで営巣あるいは放卵中なのだろう。



近くに黒っぽい鳥が来て、もういっちょクロジかなと思ったらルリビタキ。今回の記事で唯一まったく声を発することなく、高い方へ向かっていった。


アカハラはここではかなり垂直分布が広く、個体数も多い。しかし動きは速く、楽に撮れるかというとそうでもない。


時刻は9時過ぎ。十分がんばったし午後は渋滞が約束されている。このあたりで帰途へ。いつしか頭痛はまったく消失していた。


コルリ、ルリビタキときたのだから青いヒタキ三種揃えたかったが、いちばん見やすいはずのオオルリが不発に終わってしまった。次ここに来たらマミジロも探したい。とはいえ他にも行きたいところがあり、梅雨入り前の再訪はちょっと難しいかもしれない。


というわけで、充実の探鳥ソロキャンプでした(キャンプに関してはそのうち余裕があれば紹介します)。最後までお読みただきありがとうございました。