1月3日、多摩丘陵。
正月休み最終日で気分は下降線の朝。まず直近の小公園からスタートした。ルリビタキの気配はあれど姿は見えず、杉林コーナーへ。ここでは年末にツミ雄成鳥の採餌を観察した実績がある。付近の木をチェックしていると…
小型のタカが1個体、樹間から現れて通過し、林内に消えた(現場は本物、タカは合成です、念のため笑)。目で追えたのは1秒あるかないかという間。それでも、確実に体下面には赤みがあった。となると先日見たツミ雄成鳥が有力だが、ハイタカ雄成鳥もあり得る。
ダメモトで、そのタカが向かった先の方角へ行ってみた。仮に林縁に止まったら同定できるかもしれない。
おおっ、本当に止まっているではないか!
ほらな。あきらめたら確率はゼロ、ダメモトでも動けばゼロではなくなるのだ。ひとりぼっちでも得意満面の私。
目が黄色い。ツミ雄なら赤いはず…となるとハイタカ雄なのか!?タカは小鳥みたいにヒョイっと振り返ることはあまりない。地形的に私が回り込むのも無理があるので、前側(下面)を見られるとしたら飛び立つときだろう。せっかくなら撮影しようと、待って20分後。
まあ当然ながら向こう側に飛び立ったわけだが、胸腹は見える限り単調な褐色の横斑で、赤みというほどのものはない。
ここに至ってようやく気づいた。はじめに林間を飛んだ赤みのあるタカと、枝に止まっていたタカは別個体だったのである。
何のバイアスもない状態でこの姿を見たら、おそらく識別同定には苦労しなかった。脇腹に赤みといえるものはなく、体とのバランス的に尾は短め。頭部の濃色部分は頬まで*あり、喉の真ん中に1本の縦線(鰓線)がある。ツミ雌成鳥である。
*『フィールドガイド日本の猛禽類vol.03ハイタカ』
振り返るに、この個体が約20分間も止まっている間、いつ飛んでしまうのかとソワソワするばかりで、細部まで観察していなかった。
思い込みというものは本当に怖い。いったん選択肢を絞ってしまうと、ほかの可能性を抹消していまう。識別点を知っていてもそこを見ようとすらしなくなる。こうやって人は誤認の道を突き進むのだろう。
★★★
さて、時刻はまだ9時前。メインの大公園へ進んだ。アカゲラ、ノスリの記録があるが写真は残っていない。小一時間うろうろして、池のほとりを(三度目くらいに)通りかかったとき、パシャパシャと音が聞こえて、水面に波ができていた。その方角に双眼鏡を向けると、水浴び中のタカ!
上がって横枝に止まったその個体は、前回ここで見たハイタカ雌幼鳥ではなかった。
眉なし、黄色い目、頭部の濃色部分は目の下端まで*。胸腹は赤みの強い横斑。これこそ絵に描いたようなハイタカ雄成鳥だよ。さきほどの誤認とぬか喜びから即日あっさり救済されるとは。こんな日もあるんだなあ(//∇//)
*『フィールドガイド日本の猛禽類vol.03ハイタカ』
すぐに林内に入りいったん見失ったが、30分ほど待つと再び開けた枝に止まってくれた。
水浴び後、羽の手入れは入念で、計1時間程度は水辺で休息をとっていた。猛禽は一般に警戒心が強いが、水浴び後はリラックスしているように見えて、不用意に近づかなければ止まり姿をゆっくり観察できるチャンスかもしれない。
ハイタカ雄とツミ雌。後ろ姿はやはり似ている。ツミのほうが頭でっかちで寸詰まりに見えるが、姿勢も影響するだろう。頭部については、どちらも眉斑を欠き、虹彩は黄色で、アイリングはあまり目立たない。ろう膜も嘴もあまり変わらないように思う。頬の赤み以外では尾羽がいちばん違うかな。ツミ雌の尾羽はハイタカ雄に比べて縞模様が明瞭で先端が角ばって見える。
上面の色はたしかにハイタカ雄では青灰色、ツミ雌では褐色よりに見える。ただし背景、カメラの設定、表示する画面でまったく変わるので、色はあくまで後出し。よほどわかりやすい違いでなければ、識別の根拠とするのはためらわれる。
私は飛翔下面での識別には慣れているが、止まり姿でどこがどう違うのかというのをあまり細かく意識したことがなかった。一点にこだわらず多角的によく観察していきたいと思う。
それより何より、さっき飛んでいた個体が、いま止まっている個体だとは限らない。止まっている個体が知らないうちに入れ替わる可能性だってある。さんざん気をつけていたのになあ…(^^;;
★★★
というわけで、今回もまた中途半端な識別記事になってしまいました(笑)KBY2023の反動なのか、年が明けてからは多摩川にさえ行かず散歩圏内に引きこもっています。 ハイタカ属関係はもう少し続くかもしれません。ぜひまたご訪問ください。