湖南料理と上海蟹
早朝の香港空港。せっかく早起きしたのに45分のDelayとは、軽く肩透かしを食らった気分。先ほどチェックインカウンターで遭遇したモデルっぽい10数人の美女達も、きっとガッカリしているだろうなと、JALに代わって余計な心配をしてあげる。この成田便も含めて、4日間で5本の飛行機に乗った事になる今回の出張。上海での駐在員時代を思い起こし、今尚こうして中国と関われている事に不思議な縁を感じる。そして今回も、それぞれの地で個性的に語ってくれた大陸の友人達の印象的な言葉が、鮮明に蘇ってくる。「新工場の建設総費用は日本円で8億円です。私も含め出資者は5名。総面積は80,000m2(東京ドーム6個分)。来年4月から本格稼動です。ポッキーさんの会社からは全体の40%の生産量を見込んでいます。これからワーカー集めるために、募集地域を拡げて送迎用のバスも10台購入しますよ。」(湖南省・長沙にて)最近になって偶然にも同い年だとわかった旧知の台湾人の社長が、さりげなく語る壮大な夢と実行力。その実現の一助となるはずのこちらからの明確なオーダーのコミットは、単年でしか出来ていない事が、逆にじんわりと無言のプレッシャーとなってのしかかる。そうは言っても所詮自分は一サラリーマン。仮にこのプロジェクトが失敗しても、すべての責任を負わされるわけでも財産を没収されるわけでもない。そう考える事自体が、改めて彼との器や了見の違いを表面化させて、感心したり少しばかりの劣等感を覚えてみたり。本場の湖南料理の香辛料のピリッとした辛さは、舌ばかりでなくそんな心の中にも染み渡った。「1週間の仕事の内、80%は会議ばかりですよ。しかも会議をしても何も決まらない。皆さん、自分で責任取りたくないから、結論出さないですよ。」(上海にて)5月にも再会した駐在時代の部下であったリー君は、今や大手日系流通業でPBブランドの企画開発の担当課長。中国人にしては、自己主張を強く表に出さない方の彼のボヤキだからこそ、余計に日本的な組織の問題の奥深さは感じる。その一方で、彼の会社の中国における拡大戦略は着々と進行しているわけだから、少なくとも自分の下で働いていた時よりもずっと充実しているはずだと、勝手に満足したり卑下してみたり。とりあえずこの時期が旬のオスの上海蟹の濃厚な味で、つまらぬ感情は封印してしまう事とした。「ポッキーさん、私の気持ちはあなたの会社の人間と同じ気持ちでいます。だからお互いの仕事が成功するように、もっともっとコミュニケーションをとっていかないと、いけないですよ。」(深センにて)最近は現場とのやり取りもかなり頻繁に行われているようだったので、その辺りはすっかり安心していたつもりだったのだが、握りしめた両の拳を上下に振り降ろし、口角泡を飛ばしながら李さんが熱く語る。またまたちょっとしたボタンの掛け違いがあったのか? 部下達は皆真面目で仕事熱心なのだが、コミュニケーションという意味では、日本人同士でも中国人に対しても、まだまだ言葉足らずの面が否めない。特に中国人に対しては、少々失礼と思われるくらいのストレートな物言いの方が間違いなく信頼関係が深まるのだと、常々話しているつもりなのだが、こればっかりは理屈じゃなく場数だから仕方がないか。「信じて、任せて、育てる」のがマネジメント。李さんには、十分にそちらの思いは受け取っている事を告げて、後は現場同士に任せようと10年ものの紹興酒で乾杯!4日間という短い間ではあったものの、相変わらず中国という国とそこに住む友人達は、心の中まで温暖化が進んでしまっているような島国のぬる~い1サラリーマンに対して、それなりの刺激を与えてくれた。今回はいずれの場所でも何処かしら受け身で終わってしまったが、次回またこの大陸に足を踏み入れる時は、必ずや攻めに転じてみせようと疲れた身体と心に誓おうとする。よし、このモチベーションを保つために、帰国便は極力居眠りを避けて、読みかけの「海賊と呼ばれた男」を読破するぞ! と大きく伸びをしたところで最終の搭乗案内が入った。「~日本航空公司JL736次航班 前往東京的旅客請注意~現在開始登機了」再見!また、来るよ