奥田 英朗(著)「オリンピックの身代金(上・下)」を読了。
オリンピックの身代金(上) (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
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オリンピックの身代金(下) (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
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東京オリンピックが舞台です。
もちろん物語はフィクションでありますが、東京オリンピックの頃の日本の雰囲気が非常によく伝わってきます。

そして、本書のテーマのひとつである東京と地方との格差はいまだ解決しておらず、労働者間・労働者と資本家との階級差も、実は形を変えて存在しているように思います。
この48年間を経て、日本は何が変わったのか、何が変わらなかったのか、考える必要性を感じさせる一冊でもありました。

東京オリンピックの開催は、昭和39年(1964年)。
その年は、私自身が生まれた年でもあります。
そして、オリンピックに合わせて新幹線が開通した年でもあります。

日本が戦後の荒廃から再度立ち上がって、今度は、経済という手段をもって世界の一流国の仲間入りをせんと願っていた時代。1970年には、大阪万博も開催され、日本は高度成長期の繁栄を謳歌していくことになります。

その時代とともに、自分は育ちました。親にとっては青春の時代でもありました。
小さいころ、家のテレビは白黒テレビでした。洗濯機の脱水機は手でローラを回転させる方式でした。電話は、まだ引かれておらず、近所の電話機を借りにいった記憶があります。

あれから、約半世紀が経過しました。
テレビは、大画面のカラーテレビになりました。洗濯機は全自動で乾燥までしてくれます。電話は、子供まで含めて一人一台でスマートフォンになりました。

日本が裕福になったことは間違いのないことです。
しかし、今の日本が元気をなくしている、という漠然とした思いも、皆が共通して持っている感想ではないかと思います。

豊かさを手に入れた後の次の目標が明確にならず、皆が一丸となってひとつの目標に向かって何かをなそうとする熱気を持てなくなっていることに加え、東日本大震災の経験を通して、今まで信奉してきた科学文明への自身も揺らいでいるのが、昨今の日本の空気であり、それを打破してくれない政治に不満をぶつけている状況にあるように思います。

その豊かさを作り上げてくれた、自分達の親の世代に感謝しつつ、我々は次の世代に何を残せるのか。
日本の次の生き方への方向性を見つけたい。そんなことを考えました。


稲盛 和夫(著)「新版・敬天愛人 ゼロからの挑戦」を読了。

新版 敬天愛人 ゼロからの挑戦 (PHPビジネス新書)/PHP研究所
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以前に書いたように、2011/10/30の第14回世界経営者会議で、稲盛さんの講演をお聞きして、非常に感銘と感動を受けました。

それ以降、稲盛さんの思想にもっと触れてみたいと考えていましたが、今回、本書を手に取る機会を得ました。

本書の最終章「フィロソフィで会社は甦る-日本航空債権に携わって」で記載されている内容は、世界経営者会議での講演内容とほぼ同じ内容でしたので、講演を思い出しながら読みましたが、肉声の講演は、もっと迫力がありましたね。一方で、書き物には、文字として反芻できる、という利点もあります。両方を体験できた自分はラッキーでした。

私なりの解釈ですが、稲盛さんの強みは、「人間として正しいことなのか、悪しきことなのか」という人間として最もプリミティブな価値観を経営者の芯として持っておられることなのではないかと思いました。

人間として正しいことをすることで、一時的に損をすることはあっても、他利が巡って自分に返ってくる。これは、子供の頃に「正直に生きよ」と親から躾をうけたことと通じるものを感じます。

暇と安楽から生まれるものは、単なる思い付きでしかなく、緊迫感を持って真摯な態度で物事に対処しているときにのみ、神が創造の手を差し伸べてくれる、という言葉も、「神」という言い方が適切かどうかは別として、親から「一生懸命生きよ」と言われたことと相通じるところがあります。

経営において考えるべきこと、身につけるべきことは数多くあるのでしょうが、つきつめると、経営は「人間として社員やお客様と共に生きる」ということなのかもしれません。

鈴木 博毅(著)「「超」入門  失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ」を読了。

「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ/鈴木 博毅
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「失敗の本質」シリーズが話題になっているのを見て、読みたいと思っていましたが、あのシリーズを全部読んでいる時間が取れそうにないため、本書を手に取りました。

amazonの書評を見ると、本書は、解説書としては散々な評価なのですね(苦笑)。

しかし、自分としては、23項目に渡って書かれている内容は、腑に落ちることばかりでした。解説書と思わずに読めば、良書なのではないでしょうか。

想定外というほどの状況に置かれている現在の日本にとって、失敗の本質から学ぶことは、非常に多いと思います。

23項目全てが「同意」なのですが、特に自分としても大きくうなずけたことをいくつか覚書としてメモしておきます(本書そのままの言葉ではなく、自分なりの解釈で書いている部分もありますので、ご承知おきのほど)。

・[03]から
日本は、成功するための戦略を策定して指標化する能力が不足している。がゆえに、成功した体験のコピーに陥り、戦略によって成功を再現・継続させることができない

・[08]から
イノベーションを創造するには、「①既存の指標を発見し → ②敵の指標を無効化し → ③新たな指標で戦う」という3ステップで実現する。既に無効になった同じ指標を追求し続けるだけでは、敗北が待っている

・[11]から
日本は、成功の本質ではなく、型と外見だけを伝承する。勝利した経験から、活用できる戦略(What)を受け継ぐべきなのにもかかわらず、「虎の巻」として型(How)だけを伝承するために、学ぶべきことを劣化・矮小化してしまう

・[16]から
人事評価と人材配置は、組織メンバに強い影響力を持つ。無謀でも勇壮で大言壮語する人材を高く評価するような人事は、無責任で無謀な(能力のない)指揮官と参謀の温床になる。結果として、それは競合を利する結果になる

・[22]から
空気を読むことがグループシンク(集団浅慮)につながり、論理的に考えれば誤りである戦略に突き進むことを許容してします。また、サンクコスト(埋没費用)という概念を理解しないことで、方向転換や撤退もできない。


いずれにせよ、訓練による戦術を磨くだけではなく戦略的な思考が必要であり、その戦略を実現し事業拡大するための適切な指標を追求すること。そして、追求すべき指標は変わり得ることを想定し、いつまでも過去の成功にしがみついた指標を追い求めるのではなく自ら勝負の土俵を変える(イノベーションを起こす)ことを目指すことが重要ということ。

そのためには、現場のリッチな情報を問題意識を強く持つトップが入手する環境を醸成し、適切な経営判断を行っていくことが、「失敗の本質」から学ぶべきことではないかと思います。