呉の宿の不思議現象 | こうのの日々

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漫画家こうの史代です。
夫とキエリボウシインコのTさんと、福知山市で暮らしています。

こんにちは! こうの史代です。

 

<前回のあらすじ>

というわけで、先週月曜から水曜までは広島と呉に行っていました。

月曜は、呉市川尻町のお墓参りに行きました。

これな。

 

 

 

安芸川尻駅から列車に乗って、呉駅に着いたのは夕方でした。

呉駅の1階のスーパーマーケットで、カップ麺とカット野菜とアジフライとヨーグルトを買いました。

そして、歩いていつもの宿に向かいました。

この、いつもの宿。

高くも安くもない、普通のビジネスホテルです。

しかし、わたしにとっては、とても思い出深い大切な場所です。

「この世界の片隅に」の取材のため、勇気を出して初めてひとりでホテルを取ったのがここでした。

現在発売中の「夕凪の街 桜の国 新装版」(コアミックス刊)の「広島紀行」にちょっとだけ描いていました。2008年のことですね。宣伝でごめんよー。

以来、わたしには、あちこち足を運んで描く、という新しい選択肢が出来ました。

あれからもう15年経つけれど、ここに来るとなんとなく初心に帰れる気がするのです。

 

ちなみに、この宿ではこれまで2度ほど、小さな不思議体験をしています。

 

1度めは確か「この世界の片隅に」の連載終了直後のことでした。

大和ミュージアムで原画展とサイン会を開催していただけることになり、わたしは呉にやって来ました。

その前日、わたしはベッドに正座して、手を合わせました。

「おかげ様で描き終えられました。ありがとうございました」と呟きました。

その瞬間、トン、と壁が叩き返されたのです。

けっこうはっきりと大きな音でした。

 

2度めは去年あたりだったかな。

わたしはもう寝ようとベッドに横たわって、壁の方を向いていました。

誰に言うでもなく「また呉に来られてよかった。ありがとう」と呟きました。

すると、また目の前の壁が、トン、と叩き返されました。

またはっきりとした大きな音でした。

 

家鳴りにしては、この1回きりしか鳴らなかったし、隣の部屋の人が叩いたにしては振動もなく、壁の裏というよりはこちら側から叩いたように音がくっきりしていたのでした。

なので、「ほほう、ここには座敷童子が居ってんじゃね」と思っています。

ええ。

ざ、座敷童子、と思うことにしているのです!

 

というわけで、驚きはしてもそれほど怖くはありません。

 

翌日の準備を進めながら、合間に買ってきた食料をいただいて、お風呂に入って、24時頃に布団に入りました。

そして、夜中に目が覚めました。

枕元のアラームが、2:00に鳴り出したからです!

部屋のアラームはこれまで一度も仕掛けたことがなかった、という以前にその存在を知らなかったので、何が起きたのかわからずしばらく右往左往しました。

「ははあ、偶然何かが当たって、スイッチを入れてしまったんだな」と思いました。

それにしても。

「前の宿泊者よ。あんた2:00に仕掛けて何を始めるつもりだったんじゃ!?」

と虚空に突っ込みながら、翌日に備えてまた寝ました。

 

この宿の良いところの1つは、広島行きの高速バスの停留所から近いところです。

火曜日は、便利に比治山大学に行って、講義を終えて、再びこの宿に戻ってきました。

 

ぼんやりテレビを見ながらまたカップ麺をいただいて、お風呂に入って、コーヒーを飲みながら漫画の構想を練って、23時頃に布団に入りました。

アラームは、切っていることをしっかり確認して、しかも念のため7:00に合わせて、眠りにつきました。

しかし、またもや夜中に目が覚めました。

部屋の中央あたりの床が、ドスン、と大きく鳴ったからです!

何となく球状の硬いものが落ちたような音でした。

時計を見ると、2:15です。

「ん、夢かな」と思うことにしました。

そしてまた寝ようとしました。

ピタン、ピタン、…。

今度は洗面所の水滴の音がします。

見に行っても、蛇口からは水は出ていないし音もしません。

「水道管の中で鳴っているんだな。仕方ないな」と思って、布団に入りました。

で、ウトウトしていると。

    ちん、    ちん、

ピタン、   ピタン、   …。

高い音が混じって、だんだん音楽になってきました。

「ドリフのコントかっつうの!!」

とまた虚空に突っ込んでから寝ました。

 

水曜日は、呉市立美術館にちょっとうかがいました。

で、呉駅から広島に向かう列車に乗ろうとしました。

お財布を出して、改札を通ろうとしたら…。

ICOCAがありません!

ポケットや鞄を探って、またお財布をくまなく調べましたが、やっぱりありません。

宿に忘れたか、美術館でソファーに座った弾みにでもポケットから落としたのだろうと思いました。

戻ろうとしましたが、

「考えてみたら、もう千円も入っていなかったっけ。あんまり時間もないし、あとで連絡するとして、もう切符を買って帰ろう」と思い直して、お財布を持って券売機に近づいてふと見たら!

ICOCAが入っているではありませんか!!!

しかも最初に「無い」ことに気付いたし2度も調べた位置に!!!

 

何となく、これはまたあいつの仕業だな、と思いました。

「あんたはあそこの宿に居ってもらわんと、次に泊まりに行く楽しみが減るでしょうが!」

とこっそり虚空に突っ込んで、座敷童子さんとお別れして帰りました。

 

この宿、名前を出したいところですが、怖いから行くのやめようと思われてもいけないし、あんまり人気になって予約が取れなくなっても困るからな…。

行ってみたいな、とお思いのあなたは、まあ上の記述や次回の記事から絞り込んで探してみてね。

 

ではまたね!