壁画のできるまで・その1 | こうのの日々

こうのの日々

漫画家こうの史代です。
夫とキエリボウシインコのTさんと、福知山市で暮らしています。

こんにちは! こうの史代です。

 

今朝お伝えしましたように、

おりづるタワーの「Wall Art Project」に参加しております。

 

最初は確か夏頃に、知人経由でお誘いいただいたのでした。

壁画か…やったことないしな。

公開で作画か…時間と体力は無限にあるわけではないからな…「サインください」が1人でもいたら、周りも「誰か知らんけどとりあえず我も我も…」となって延々やり続けても結局、それでも出来なかった人の恨みを買うんだよな…ええ。いま好感度下げまくっている自覚はありますとも…。

そもそもこれ絵の仕事だもんな…そろそろ漫画に専念したいもんな。

断ろう。

と考えて、即刻断ったのでした。

 

なのに、なぜかずっと気になって、夜も眠れない日が続きました。

このブログの「おみくじの不思議」(2021.9.18)で書いている「断ったけど気になっていたある仕事」とは、これのことでした。

いや、なぜか、ではないことはわかっていました。

断る理由しかなくても、描いてみたい作品があったから、悩んでいたのです。

断ったにもかかわらず、寝ている間も、ああしよう、こうしようと構想を練って、ラフ案まで作ってしまったのでした。

 

もう一度、相談だけでもさせてもらおうかな。

いやいや、もう他の人に決まっていたら迷惑だよね…。

と、くよくよ迷って、結局その知人に連絡を取ったのはひと月後でした。

 

おりづるタワーの人に、ラフ案を送って、ありがたいことに「これで進めましょう」とご返信をいただいて、

初めておりづるタワーを訪れたのは、10月末のことでした。

このブログの「記憶の中の木(を訪ねて)」(2021.11.2~3)で書いている「10:30からの人と会う約束」というのは、この時のことです。

 

おりづるタワーは、不思議な空間でした。

見慣れたはずの広島の街も、平和公園も、知らない街のようで美しく見えました。

10月末、この壁には、佐藤秀峰さんの描きおろしのサイレント漫画作品のパネルが飾られていました。

わたしの担当となる5層目は、全面に巨大パネルが貼られていました。

ちなみに写っているのは、初打ち合わせを取材に来られたテレビ局のカメラマンさんです。

 

ラフ案を見たカメラマンさんはまず、「この絵『すずさん』じゃないけど、みんなガッカリしませんか」と聞きました。

さあー。わたしはその「みんな」じゃないから分かりませんな。

そして、その「みんな」は、すずさんを描いたとしても、ポーズが違う、絵柄が映画と違う、でいずれにしても何かしら理由をつけてガッカリするでしょうな。

そして申し訳ないですが本物の大多数の「みんな」は…わたしという作家も「すずさん」も知らんと思うぞ!

こういう言葉は、せいぜいわたしがノーベル賞作家にでもなった後で言って欲しいものですな。

 

このパネルは1月中に外される予定でした。

その後、足場を組んで、養生して、塗料と下地を塗られます。

色も選べましたが、元の壁の色に塗ってもらうことにしました。

そして2月には、こうなっていました!

 

その2に続きます。

ではまたね!