Winny | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:松本優作
キャスト:東出昌大/三浦貴大/皆川猿時
配給:KDDI/ナカチカ
公開:2023年3月
時間:127分




“Winny”という言葉を聞いたことがあるだろうか? 今から20年前,東大大学院研究科助手だった金子勇氏が開発したファイル共有ソフトで,インターネット上で繋がる複数のパソコンでファイルを共有するソフトの名だ。画期的なソフトで,不可能とされていた大容量データの送受信を可能にしたが,その性能の高さから映画やゲーム,音楽などの著作物データが許可なく流通し,著作権侵害と指摘され問題となった。

さらに,その特性を悪用した情報漏洩系ウイルスも流行。感染すると意図せぬデータが流出してしまい,警察や自衛隊の内部資料,企業の顧客情報や個人所有のファイルなどがインターネット上に漏洩。インターネット上に漏洩したファイルは,その性質上,削除が困難であるため,当時の安倍官房長官が会見を開き「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は,パソコンで“Winny”を使わないことです」と呼びかけるなど社会問題となり,新しい技術を開発しただけの金子勇氏までもが逮捕されてしまう。

今夜紹介するのは,この実話を題材にした社会派作品『Winny』。便利な技術が犯罪などに悪用されると,開発者自身も責任を負わなければならないのか? という日本のソフト開発の未来そのものを揺るがした“Winny事件”を題材に,金子氏と彼の裁判を支えた弁護士・壇俊光氏の道のりを描いた社会派ドラマだ。監督は『ぜんぶ、ボクのせい』(2022年・ビターズ・エンド)の松本優作。

2002年,開発者・金子勇(東出昌大)は,簡単にファイルを共有できる革新的なソフト“Winny”を開発し,試用版を“2ちゃんねる”に公開する。彗星のごとく現れた“Winny”は,利用者同士が直接データのやり取りができるシステムで,瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし,その裏で大量の映画やゲーム,音楽などが違法にアップロードされ,ダウンロードする若者も続出したことから,次第に社会問題化していく。

違法コピーした者たちが次々と逮捕される中,ついに開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑で2004年に逮捕。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は,弁護を引き受けることになり桂(皆川猿時),浜崎(和田正人),秋田(吹越満)らと弁護団を結成。裁判で警察の逮捕の不当性を主張していく。その頃,愛媛県警の巡査部長・仙波(吉岡秀隆)は,署内に横行するニセ領収書による裏金作りに憤っていたのだったが…。

開発者の権利と未来を守る弁護団vs警察・検察側の権力やメディアとの戦いについては,リアリティに溢れた演技と映像に感服。ただ,実はこの作品,ポスターにある「無実を勝ち取った7年」は描かれていない。第一審判決までの2年が中心で,その後の5年については説明に留まっている。ただ,見る者としては,やはり結審まで見届けたかったと思うのだ。その上で,繰り返されてはならない事件について,もっと知らしめ,世論を煽るべきじゃなかったのか? って。その点だけが残念。


映画クタ評:★★★★


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