キャスト:菅田将暉/原田美枝子/長澤まさみ
配給:東宝/ギャガ
公開:2022年9月
時間:104分
映画プロデューサーとして『バクマン。』『ラストレター』『竜とそばかすの姫』『すずめの戸締まり』など数多くの作品を大ヒットさせてきた川村元気。さらに,小説家として『世界から猫が消えたなら』『億男』といった話題作の原作も生み出す,マルチな才能の持ち主だ。
そんな川村元気が2019年に発表した4作目となる小説『百花』を自らの監督デビュー作として映像化したのが今夜紹介する『百花』。彼自身の祖母が認知症になったことをきっかけに,人間の記憶の謎に挑んだ原作。自らの手で映画にしたのは,自分の思いを見る者に伝えることへのこだわりだったのかもしれない。
レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)は,社内結婚をした香織(長澤まさみ)との間に,まもなく子供が生まれようとしていた。しかし,ピアノ教室を開き女手ひとつで自分を育ててくれた母・百合子(原田美枝子)との間には,子供の頃のある“事件”が原因で深い溝が生まれてしまい,今もその溝を埋められずにいた。
そんなある日,一人暮らしをしている母の認知症が判明する。徐々に記憶を失っていく中で,「半分の花火が見たい」と不可解な言葉を口にするようになる母の姿に戸惑いを隠せない泉。百合子が記憶を失うたびに,泉は母との思い出を蘇らせていく。母子としての時間を取り戻すかのように,母を支えていこうとする泉。そんな折,百合子の部屋で見つけた1冊の日記。そこに綴られていたのは,泉が知らなかったあの“事件”の真相だったのだが…。
「人間の脳の働きをそのまま映像化したかった。僕らの生きている実人生に当然ながらカットはかからないので,全て1シーン1カット」と言っていた川村監督の思いを,原田美枝子が迫真の演技で見る者の心奥を揺さぶる。
交互に描かれる母・百合子と,一人息子・泉の記憶。2人の断絶と和解,そこに新たな命の誕生を織り込んで,親になるということや,認知症という現代の課題が綴られ,記憶の正体へと導いていく。
川村監督の「記憶は決定的に主観だからこそ,誰かを疑ったり憎ませたりもする。だがそれこそが,誰かと一緒にいよう,愛し合おうとする力にもなりえる」というメッセージが全編に溢れた秀作。派手なシーンがあるわけではないのに打たれる。そんな,やや贔屓目を加えて5つ★付けてしまった。
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