竜とそばかすの姫 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:Belle
監督:細田守
キャスト:中村佳穂/成田凌/染谷将太
配給:東宝/GKIDS
公開:2021年7月
時間:121分




未来のミライ』から3年,細田守監督の新作予告を見た時には,アップデートされた『サマーウォーズ』的なイメージしか感じられなかった。しかし,カンヌ国際映画祭のワールドプレミア上映や,国内公開の好評を耳にし,公開直後に劇場へと足を運ぶ。編成の都合で今頃になってしまったので,すでにご覧の方も多いかもしれないが,今夜は遅れ馳せ『竜とそばかすの姫』を紹介。

自然豊かな高知の田舎に暮らす17歳の女子高生・すず(中村佳穂)。歌うことが好きな彼女だったが,幼い頃に事故で母親(島本須美)を亡くして以来,人前では歌うことができなくなっていた。父(役所広司)との間にはいつしか溝が生まれ,現実の世界に心を閉ざし,曲を作ることだけが生きる糧となっていた。そんなある日,親友のヒロちゃん(幾田りら)に誘われ,全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界“U(ユー)”に足を踏み入れたすず。

“U”では誰もが“As(アズ)”と呼ばれるアバターで現実とは別の人生を生きていた。“ベル”という名の“As”で“U”の世界では思う存分に歌えたすずは,ヒロちゃんのプロデュースで瞬く間に歌姫として世界中の人気者になる。ついに“U”内でのコンサートが開かれることになるが,その会場に“竜(佐藤健)”と呼ばれる謎の存在が現れ,彼女のコンサートを台無しにしてしまう。やがて乱暴な竜の正体探しが始まり,“U”と現実世界の両方から竜を排除しようとする動きが加速していくのだったが…。

『サマーウォーズ』の“OZ”とは較べものにならないほどスケールアップした“U”。こんなアプリ欲しいかも♪ と観る者に思わせながら,高知の田舎の美しい風景と,見ているだけで楽しくなるグラフィカルな巨大ネット都市“U”を往復する緩急の心地よさ。そこに炎上,歌,恋愛と友情,親子のドラマといった,細田ワールドの魅力的な要素と新しい挑戦が詰め込まれ,さらに『美女と野獣』のプリンセスと同じ名前でフランス語で「美しい」を意味する“ベル”が,心を閉ざして野獣のように振るまう竜と踊るシーンまである。

多彩な情報が精査され,キチンとひとつの物語に帰結していくのも現代社会を見事に反映しているが,ストーリーにも構成にも,大きなサプライズがあるわけではない。なのに気がつくと作品世界に呑まれていて,さらに気づくと涙が溢れている。穏やかに「さすが細田監督!」と呟きながら劇場を後にする心の爽快感。

声の出演は他に,成田凌,染谷将太,玉城ティナ,宮野真守,石黒賢 など超豪華。“U”の世界,未経験な方はぜひ劇場の大きなスクリーンで!


映画クタ評:★★★★★


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