JUNK HEAD | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:堀貴秀
キャスト:堀貴秀/三宅敦子/杉山雄治
配給:ギャガ
公開:2021年3月
時間:99分




静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしてカメラで撮影するコマ撮り。CG全盛の現在にあって,その労力は驚愕に値する。それもたった1人で,総ショット数約14万コマ,フィギュアはすべて手作りという熱量で,7年という歳月をかけて完成した驚異のSF長編ストップモーション・アニメ『JUNK HEAD』を今夜は紹介。

独学で映像表現を学んだという堀貴秀監督。内装業の仕事で作業場を持っており,そこに手作りで半年かけて制作された1/6セット。生まれたキャラクターたちの紡ぐ物語は,北米最大のジャンル映画祭とも言われる“ファンタジア国際映画祭”で最優秀長編アニメーション賞を受賞。『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞に輝いたギレルモ・デル・トロ監督は,“同じ高みを目指す才能”として堀監督を絶賛した。

繰り返される環境破壊により,人の住めなくなるほどに地上が汚染された時代。地下開発を目指した人類は,その労働力として人工生命体“マリガン”を創造する。ところが自我に目覚め,人類に反乱を起こした“マリガン”によって,地下は乗っ取られてしまう。

それから1600年。遺伝子操作で永遠とも言える生命を得た人類は,その代償として生殖能力を失っていた。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり,人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は,独自に進化していた“マリガン”の調査を開始。政府が募集した地下調査員に名乗りを上げたのは,生徒が激減したダンス講師のパートン(堀貴秀)だった。地下に潜入し,死と隣り合わせになることで命を実感したバートンは,マリガンたちと協力し,人類再生の道を探る。そうして,広大な地下世界の迷宮で,クセ者揃いの“マリガン”との奇想天外な冒険が始まるのだったが…。

堀監督が1人で挑んだのはセットと撮影だけではない。実際には3~4人のスタッフが入れ替わり制で作業を行ったとはいうものの,原案,絵コンテ,脚本,編集,演出,照明,アニメーター,デザイン,人形,衣装,映像効果など,映画として成り立たせるための全ての作業を,ほぼ1人で担当。そしてそのクオリティと独創性とディストピア感は秀逸。声優が雇えないので自分で声を当て,演技のスキルもないため,喋っている言葉の意味を音で伝えて表現するためのオリジナル言語にしたというのも,ワールドワイドな味となっている。

当初から3部作として製作されているというのこの『JUNK WORLD』。期待される続編は来年の完成を目指して製作中という。


映画クタ評:★★★★