日本人の苗字、いわば「姓」はおよそ12万あると言われます
が、元をたどると1つの糸でつながっているケースも少なくあ
りません。つまり、一族というわけです。
古代、日本人は土地を持ち、開墾すると、田畑にして稲の苗
を分け合っていました。それと「姓」を結びつけていたから、
「苗字」という字を使うのです。
まさに直結しているのが、「田」がつく苗字です。苗を入手した
人は、敬意を表して「田中」とされました。その苗を一族で分け、
同じく「田」のつく名前を名乗るのですが、入手した家とは分家
になるので、新たに苗字を考えます。
「池田」「山田」「吉田」「内田」「岡田」「太田」「和田」、そして上
に田がつく「田村」「田島」「田辺」など、日本には「田」がつく苗
字が多いのは、そのためだそうです。この人たちは、ルーツを
たどるとどこかでつながっているケースも、少なくないそうです。
これとは別に、面白いのが「藤原」姓です。藤原といえば紫式
部の本名が藤原であった他、藤原道長など、平安時代の大
権力者でした。そしてこの藤原は、一族が各地にいたそうです。
地方で「藤原」をそのまま名乗るケースもありますが、土地と自
分たちのオリジナリティーを主張して、アレンジすることも、多か
ったようです。
たとえば、加賀の藤原氏は「加藤」、近江の藤原氏は「近藤」、そ
して遠江の藤原氏は「遠藤」と名乗ったということです。
江戸時代に「武士以外は苗字を名乗れない」とされていたように
言われますが、それは公の場で名乗れないだけで、農民も含め
ほとんどの庶民が「苗字」を持って名乗り合っていたそうです。