陸羽よ、

あなたが仰るとおりだった──




奈良県山辺郡山添村 「瑞徳舎」









早朝の大和高原。

晴れ上がった空。
空気が澄みわたっています。





無農薬・無施肥。自然栽培の茶園。

茶を飲む側にとって、
それにこしたことはない。



社会のリズムに合わせるより、
自然のリズムに寄り添うほうが、素直に頷ける。


自ずから然り。



















塵外に身を置いて
















一心一葉。

この日だけの特別な摘みかた。




柔らかく張りのある新芽、煌めく緑。








茶摘みを終えたら…



これから「餅茶」造りが始まります。












茶小屋に満ちるこころ安らぐ清らかな香り…

































読萬巻書   行萬里路。



理屈と実践。思索と体験。

何事もそうだと思いますが、
自分で実際にやってみる、試してみることで、
みえてくる景色があります。

するとその景色が、
先人が書き残した言葉(表現)の真意を体感的に
理解する上での大事な手立てとなってくれ…


そこには思わぬ発見や気づきがある。
昨日まで常識とされてきた解釈が一気に覆ること
だってある。

けっして正解とは言えなくても、
より正解(陸羽の茶)に近づくことはできる。
と、師匠は言う。



やってみてこそ。

“知ってなんぼじゃなく、感じてなんぼ” だと。














味や香は主観にすぎず…  とても曖昧なもの。
いったい何が味を決めるのでしょうね。

どうやら舌の味覚だけではなさそうですよ。



胃腸でも認識されるみたいですが、
環境、体調、心境、経験、記憶の中にある味に
よってもその都度変わります。

所詮は、感じる味なんてその程度。
人のこころの感覚は数値化できませんものね。


“美味しいお茶”というのは、人それぞれ。
それよりも、
美味しくお茶をいただくためにどう過ごすか。

そのときの行為が“味”となる。
















すべての道具が『茶経』に基づき復元されています












『茶経』は唐代の陸羽(りくう/733-804)によって
著された世界最古の茶書です。

『茶経』には、茶の起源、製茶法とその道具、
茶器、茶の煮たて方、飲み方、茶の歴史、産地に
よる品質まで、じつに詳細に述べられています。

陸羽の美意識、独特な文学的表現も特徴です。
まさしくその比喩するとおり。



茶聖と呼ばれる陸羽。
陸羽はたんなる文筆家ではない。
学者でもない。詩人でもない。茶人でもない。

“文人”なのだ。




『茶経』を肌で知られる大変貴重な機会でした。











師匠によって現代に再現された『茶経』の茶。



私は師の姿を介して、陸羽をみた。

一碗の茶を楽しみながら、
味わっていたのは、文人茶の“精神”だった。











目に見えぬ美しい風が、
私を蓬莱山へと運んでゆく 


ありのままの自分でいられる
“もといた場所”




束の間の中に永遠を閉じこめて ・ ・ ・





甲辰四月下澣
KANAME




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