黄檗山萬福禅寺 法堂(重文)





梁川星巌 七絶詩




秋風は水面を磨くように払いのぞき、
その上を泳ぐ鴨の波がほのかに煌めいています。

やがて山際から大きな月が姿を現しました。

先ほどまで雨が降っていたというのに、
月は曇りなく望むことができ、
空気はいっそう澄みわたっています。

水面に映る月はまるで凍ったかのように、
水の真ん中で静かに輝いていました。





なんと澄みわたる世界でしょうか。

梁川星巌(やながわ せいがん/1789-1858)晩年の作。
暮れゆく秋は人生の終焉を予感しているように
感じます。


広々とした水面に一羽の小さな鴨。
きっと、鴨は星巌自身を表しているのでしょう。

様々な波風や激しい大雨がくり返すような人生を
歩んできた星巌ですが、
とうとう眼前には曇りなき景色が広がり、
そこに煌々と輝く満月が登り始めます。

満月は、欠けがない=一切悩みのない世界。
禅の世界では「悟り」を意味します。

月は心を映す鏡。




“一点の陰りもない人生の終焉”




スッキリと晴れ渡る心。

人生の最後は
そういう心の状態でありたい ・














癸卯 寒露前夜

KANAME 記



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