常緑樹である松は非常に生命力が強く、
不要な枝を落としながら、また葉は枯れながら
同時に新しく芽吹き、成長をとめることなく
冬の寒気に耐えて緑の葉を保ちます。


厳しいときにこそ真価を表す。
他の木々が葉を落とし朽ち果ててゆくなかで
ようやく姿を現し、ひときわ緑を放つ。
その姿が一層青々と佇んで見えるため
「不老」と称されることも。


松は環境のちがいに順応する力を持ち、
その環境のちがいによって姿を激変させます。
まさしく、自分の位置をわきまえている人。

冬の厳しい強い風を浴びても微動だにしない
力強さ、堂々とした態度。
断崖絶壁にもしっかりと根を張ることから、
忍耐強くたくましい人。またそのさま。


また、老齢の松(老松)ほど迫力のある鱗をつけ
重厚感を醸し出すため
年齢を重ねてもなお興味や好奇心を持ち続け、
活力が絶えない人を表します。


不変不老霊力仙友寿(ジュ)永遠
松は「末永い繁栄」を願う祈りの象徴として。






力強く真っ直ぐ上に、天へと向かって育つ竹。

竹は成長すると龍になり天を駆け巡るとされ、
ゆえに筍(竹の子)は「龍孫(りゅうそん)」と称され
ます。


松と同じく常緑樹である竹は、硬いけれど
折れにくく、よくしなることから、
臨機応変に対応できる人。
かたい信念と柔軟な思考を持ち合わせた人。
またそのさま。 

そして中が空洞であることから、
隠し立てのない人。素直な人。またそのさま。


また、竹には節があることから、
節度をわきまえた人。
相手の領域を侵食せず、相手の好みや価値観を
受け入れ、個性を尊重する人。
逆境にあっても節操を守り通す意志の強い人
表します。


虚心高潔高節寒玉(福)。竹林=結界
竹報平安竹は「平安」の象徴として。






厳冬の中、百花に先駆けて花を開かせる梅は、
人々に春の訪れを告げ喜びを伝えてくれます。

そのため、
厳しい状況におかれても、凛としていて、
少しの笑みを忘れないでいる人。
自分から行動に移す人。混迷の世においては
底力を発揮する人。


また、暗闇の中でほのかな香しい香を漂わせる
ことから、誰もみていないところでも気高く、
慎み深くいる人。またそのさま。


玉骨清純五福(五枚の花びら→五つの幸福を開く)
梅は「清楚」の象徴として。






ひとつの寓意(暗示)として。

自然物を借り、
そこに自己の願望や理想を託して表現した、
“精神世界”


中でももっとも私たちに馴染み深いのが、
この「歳寒三友(さいかんさんゆう)でしょう。



「三友」という言葉は『論語』に登場します。
そこに松・竹・梅を当てだしたのは宋代から。
後に「歳寒三友」となり、画題のひとつに。

「三友」は、松・竹・梅にかぎらず、
他のものに置き換えることもできるため、
あくまで“ひとつの象徴”として捉えてください。


ちなみに、
松・竹・梅に蘭が加わると「四友」になります。
「四友」に石が加わると「五清」に。

他にも、竹と梅で「歳寒ニ雅」、
梅と寒菊で「歳寒ニ友」に…


このように、
自然物の取り合わせ方により画題の名称も様々。



「歳寒三友」は、
日本には平安時代に伝来し、江戸時代以降に
「松竹梅(しょうちくばい)と呼ばれ流行。



名数画譜全四冊(天/地/人/附録) 大原東野
文化七年(1810年)序刊の後刷  木版画


江戸時代後期に刊行された書物
『名数画譜(めいすうがふ)には、「松竹梅」は
やはり「歳寒三友」として紹介されています。↓





『名数画譜については、こちらの記事でも
ふれています。↓




寒い時節に… 

「歳寒三友」は、ちょうど正月頃に床の間などに
掛けられる画であったため、いつしか、

松竹梅 = “おめでたい” という意に。




厳冬の季節に集まった、三人の友。

ある意味では
“おめでたい”ことなのかもしれませんが…


「歳寒三友、それは
共に苦難を乗り越えてきた友の姿。

または、
共に苦難を乗り越えようとしている友の姿。


“苦難な時代に結ばれた友情”

表している──




そして

この「歳寒三友」の掛軸の画に添えられた、
月(満月)、水(川/海)、石(山/岩)。

松林を抜ける満月の明かり。
石の上を流れる清らかな泉。


どれだけの時が流れようとも(流水)、
私たちのこの関係は、いつまでもいつまでも
変わることはない(寿石)でしょう。

またそうありたい・・・


暗ければ暗いほど感じられる明るさ(月光)。
陰りも欠けもない今このひととき(満月)を、
かけがえのない友と
こうして円満(満月)に酒を酌み交わせることは、
何より格別なこと。

(↑ 私の勝手な妄想)



・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 




あと何回夜が来れば再会できるだろう。

その日まで、
ここに掛けておこう  ・  ・  ・




平安如意


壬寅 小寒 暗夜
KANAME



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