甲子園でセンバツも開幕してたが、果たして新基準の低反発バットの現実は…? | 週刊テヅカジン

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手束仁が語る、週刊webエッセイ

 開幕試合からいきなりタイブレーク突入で、初日から、2試合がタイブレークとなった、今年の第96回選抜高校野球大会。

 今年度から、新基準の低反発バットの使用ということで、長打は少なくなるのではないかかという見方もあった。実際、本塁打はまだ飛び出していないようだし、左中間や右中間をグーンと破っていく甲子園独特の長打は、あまり見られていないのではないかとという感じだ。また、ファウルの打球などが、思っているよりも手前で落ちてしまっているというのも現実かなぁと思う。

陽は舞い踊る甲子園…🎵 という感じの春の甲子園

 ただ、長打が著しく減ったのかというと、現実には、多くの一般的な学校では案外そうでもないのではないかなというのが、今のところの感想だ。

 というのは、甲子園の全国レベルの学校に限ったことではなく、広くすそ野の方まで見渡してみると、案外長打が出ているという気がする。

 ボクは、3月1週目の対外試合解禁となった日から、現場に通って観戦取材を続けてきているが、都立校同士の「東・葛飾野」「足立新田・総合工科」という試合では、3試合で何と8本もの三塁打を観た。さらには総合工科のグラウンドでは柵越本塁打も1本観た。また、両翼95mの豊橋市営球場でも、岡崎工科の鈴木裕也君が2打席連続でスタンドに入れる本塁打を放った。

 甲子園出場を果たした豊川の甲子園出発前の練習試合でも、静清との試合では両校合わせて三塁打と二塁打が3本ずつ。静清と滋賀学園の試合では、滋賀学園の2番打者渡瀬君がランニング本塁打を放つなど両校で5長打。滋賀学園と豊川の試合でも投手戦だったが、三塁打は3本出ている。

 この要因の一つに、外野手が前めに守っているということもあるのではないかという気がする。だから、野手の間を抜けると、打球を追いかけていく時間が長くなっていき、そのことで三塁打が多くなっているのではないかと思う。また、俊足の選手でベースランニングが巧みであれば、ランニングホームランにもなるのではないかと思える。

 ただ、以前によく見られたプルヒッターが三塁線、一塁線を速い打球で破っていくような長打というのは少なくなったのではないかと感じている。ボクが見てきた三塁打の多くが右中間や左中間をゴロで破っていく感じだった。ということは、低い打球を打ちつけていけば、案外長打になっていくのではないかとも感じた。

試合前には、審判員が入念に道具を確認する

 よほどのパワーヒッターではない限り、大谷翔平のようなアッパースイングではなくて、レベルスイング~ダウンスイング気味の方が、新基準バットに対しては対応できるのではないかという気がしている。

 また、選手によっては「新基準バットは、木のバットと感覚が似ている」ということで、春季大会までの間には、木製バットと使い分けながら、大会でどちらを使用するのかを決めていきたいという考えの選手もいた。

 野球は、道具を使用するスポーツで、しかも、その影響力は大きい。特にバットは、その戦術を大きく変えていく可能性もある。それだけに、今季の高校野球は、まだまだ試行錯誤しながら変化していくのではないかと思う

今年で100年になるという阪神甲子園球場

 それにしても、新基準バットは1本が35000~40000円近くもするという。従来の金属バットの倍近い値段だという。日本高野連と各都道府県高野連から3+2本のバットが支給されたというが、もちろんそれだけでは足りない。それほど潤沢な予算を持ち合わせていない学校にとっては大変な出費となる。また「マイバット」を持ちたいという選手の保護者にとっても、痛い出費であろう。合わせて、モノを大事にする心を育てていって貰えれば、それも一つの教育的効果とも言えようか。