ややオチャラケが過ぎる『99.9-刑事専門弁護士』だが… | 週刊テヅカジン

週刊テヅカジン

手束仁が語る、週刊webエッセイ

 15年前に起きた某村で起きたワイナリーでの事件り判決に対して疑問を持った弁護士が、その事実を徹底して確認していく。当時を再現していきながら、本当のところにたどり着いていくというのが『99.9-刑事専門弁護士―THE MOVIE』(木村☺ひさし監督)だ。

 作品の根幹としては、かなりシリアスで正義を追及していくというものではあるが、作風としてはコメディ要素を散りばめて、深刻になりすぎないように軽いタッチで表現していこうという意図でもあろうか。ただ、ボクの個人的な印象としては、いささかオチャラケが過ぎるんじゃないかなぁというところもあった。正直なところ、しょうもないダジャレとか、それぞれの誇張表現なんかは、まあ、どうでもいいかというところでもあった。あんまりウィットの効いたものとも思えなかったのでね。

 だけど、作品の背骨はしっかりとしていて、15年前の事件の事実を追及していく。事実を確認していく中で、新しいことがわかっていくというストーリー。

 型破りな弁護士事務所ということになっているが、そのキャラクターで見せているというところもあるのだろう。だから、いくらか個性的すぎる設定になっているということだろうか。

 主人公の松本潤が演じる深山弁護士は「事件を芝居などで再現していきながら、その中にある事実を見出していく」という独特の手法である。それを再現していくところも、この作品の見どころとになっていた。再現しながら、当時の映像との比較の中で可能か不可能か、何が出来て何が出来ないのかといったようなことを確認していく。そこで、疑問に思ったことを掘り下げていくということで、このあたりは、「なるほど、そういうもんか」と思わせてくれる説得力もあった。

 この企画の原点は、2016年と2018年にTBSの日曜劇場で放映されて、高視聴率を上げたということで、その人気に基づいてのものだという。タイトルの意味は、日本の刑事事件は99.9%、起訴されたら有罪判決が下されると言うことである。つまり、起訴されてしまえば、検察側の描いたストーリーに向かって進んでいってしまうケースが多いという。つまり、再審でも逆転はほとんとど不可能だということである。

 そんな法治国家の日本社会に対して一石を投じていくというところがあたのかどうかはわからないけれども、事実を集めていけば、そうではないかったということもわかるという要素も示されていた。

 実際にこうした手法があるのかどうかはわからない。だけど、観ている側としては、興味を惹かれるところでもあったかな。

 ただし、これは難しいことでもあるけれども、事実と真実も似ていてまったくのイコールではない。事実を拾い集めていくことで、どこかでことの真実が歪んでしまうこともなきにしもあらずだ。それが、我々が生きている人間社会のとても難しいところでもある。また、それだからいかに誠実に生きていかなくてはいけないのかという認識にもなっていくということではないのだろうか。

 オチャラケ演出も多かったけれども、その根っこにおいては、案外、人間が生きていくための真実、誠実さをどう見出していくのかということを問うているような気もした作品だった。