この映画『空白』をどういう思いで観ていくのがいいのか考えていた | (株)ジャスト・プランニングも、何だかんだで15年目を突破した

(株)ジャスト・プランニングも、何だかんだで15年目を突破した

ついこの間始めたばかりだと思っていたこの会社も、干支で言うとひと回りを越えて、15年目に突入してしまった。その間には、コロナ禍や事務所の引っ越しも含めていろいろなこともあったかな。そんなことを思うと、まあ、よくここまで持っているかなというところだろうか。

 バブル最盛期から崩壊時にあった広島ヤクザの実態と県警との構図を描いた『孤狼の血 LEVEL2』(白石和弥・監督)では、狂気の刑事を演じて迫力満点だった松阪桃李。その彼が、今度はまったく異なる、地方都市のミニスーパーの店長を演じる。そして、その店長が万引き少女を見つけて、追いかけていったところに彼女が車にはねられる。そこから、目まぐるしくストーリーが展開していくのが、映画🎥が『空白』(𠮷田恵輔・監督脚本)である。

 その少女の父親を古田新太がまさに大怪演をしていくことで、迫力が増していく。

 娘の無実を信じて、証明しようと行動していく父親は、やがてその行動が、どんどん狂気化していくようになる。店長を激しく厳しく追及していくうちに、いつしかモンスターと化していくのだ。ターゲットは店長だけではない。学校にも、「娘はいじめられていて、万引きを強要されていたのではないか」と押し入っていく。さらには、直接の事故の原因となった運転士していた女性に対しても…、いくら謝っても必要以上に恫喝していく。

 そして、そのニュースを報じていくメディアに対しても、すべてを理性を排除した怒りで対処していく。そんな狂気ぶりだが、「こういうオヤジもおるだろうな」と思わせる、リアリティもあった。

 起きた結果としての事実は女子中学生の事故死である。そして、その彼女が万引きをしたのかもしれないという疑惑。それを見つけた店長が追いかけていくのだけれども、その背景にあったものは、ただ単に万引き事件ということだけではすまされない家族関係や、家庭の状況も推察されていく。彼女は、精神的には決して満たされてはいなかったということも察せられる。しかも、それを誰にも言えないでいたということである…。

 そんな中で起きてまった事故。店長が万引き疑惑で女子中学生を追いかけた事実。彼女の両親は離婚していて、彼女自身は父親に引き取られてはいたものの、気持ちは開いてはいなかったという事実。学校では、地味な存在だけれども、美術部で丁寧に絵を描いていたという事実。そんな背景が洗い出されていく。

 そして、父親の怒りの鉾先はいつしかどこへ向かっているのかわからなくなっていく。そうしてモンスター化していくのだけれども、実は、こうしたことは多かれ少なかれ今の世の中にないとは言えない現実問題でもあるのではないだろうか。学校で言われるところのモンスターペアレンツなんかもそうかもしれないし、必要以上に医療ミスを追及していく患者側なんかも一歩間違ったらそうなっていきかねない。メディアのあり方を含めて、そんな、今の時代の社会的不安も、鋭く突いているとも言えよう。

「みんな、どこで折り合いつけているんだろうかなぁ」

 という、ラスト近くでのモンスターオヤジの言葉が妙に切実でもあった。

 そう、結局我々はいろんなトラブルを抱えたりしながらも、どこかで折り合いをつけながら次へ向かっているのだということを再認識した。

 愛知県蒲郡市がロケ地ということで、映像的には三河湾の海が映し出される。海は広くて大きい。そして、空も広くて大きい。だけど人の心は狭い。ラスト前のイルカ雲の絵は、そんな思いを表現していたのかどうかはわからないけれども、まったく思いが通じなくて分かり合えなかった父と娘だったけれども、何らかの意味を示しているのかもしれない。

 役者的には、古田新太の怪演はすさまじい。さらに松坂桃李もさることながら、彼にちょっと気のあるおせっかいオバサンの寺島しのぶのベタベタで圧倒的存在感が、映画の質をさらに高めていっていたようにも思う。