もう、5年前になってしまったのかと感慨深いものがある。全国高校野球選手権大会の大会歌「栄冠は君に輝く」の作詞者加賀大介の半生を綴ったドキュメンタリー小説を、ちょうど今頃刊行させて戴いた。『ああ栄冠は君に輝く~加賀大介物語~全国高校野球大会歌誕生秘話』(双葉社・刊)である。
その後、元々の企画の発起人でもあったタキオン・ジャパンの稲塚秀夫さんによって、映画化されてDVDとしても売られている。
高校野球の前身となる全国中等学校優勝野球大会が開催されたのが1915(大正4)年のことだ。それから100年を経た年、2015(平成27)年に、それを機にということで、刊行させていただいた。そもそもの話で言うと、当初の企画は、その数年前からにあった。朝日放送開局50周年企画というところからのものだった。
それが、いろんな大人の事情というヤツで頓挫しっぱなしになって、朝日新聞出版で進めかかっていた書籍の企画も没となった。だからと言って、「ああ、そうですか」と諦められるものではない。「未練がましい」という言葉があるけれども、こと企画に関してはボクは執念深い。女性に関しては、振られたら、「ああ、そうですか」と諦められるところはあるかもしれんが、書籍の企画に関してはそうはいかん、蛇のような執念深さでそれてこうも企画を持って幾つも回った挙句に、双葉社が乗ってくれた。
企画が実現して、石川県の加賀大介さんの奥さんでもあった加賀道子さんを能美市に訪ねて行った。当時で90歳をいくつか超えていらっしゃったのだけれども、背筋も伸びてしゃきっとしていた。
ちょっと話をして、映画用の撮影をして後、すぐ近くにあるという加賀大介氏のお墓にも案内された。墓石に「憩」と書かれたその墓が他とは少し異彩を放っていた。
それに感動したのは、刊行した際に献本させていただいたら、お礼の手紙を戴いたことだった。その達筆ぶりと丁寧な文字にびっくりさせられた。
加賀道子さんは当時、今でも短歌会を継続していて、「教室の会議室なんかは、今でも私が連絡して取っているんですよ」なんて言っていた。それに、その際の短歌も、事前にプリントに印刷しておくということだったが、「今は、パソコンでやれるから、手書きよりは楽でいいんですよ」なんて言っていて、ボクはビックリし尽してしまった。
ただ、これだけ達筆で上品な文字を書かれるのであれば、「手書きの方がより味わいも深くなるのではないのかなぁなんか」ていうことを、あとになって思った。

加賀大介さんそのものの人生は、波乱万丈というよりは、いささか栄冠に輝ききれなかったところがあったという事実は否めない。
だけど、半世紀以上も歌い続けられ、今後もなお、継承されていくであろう稀代の名曲の作詞者として、その名は永遠に残ることは間違いない。そして、その作曲者こそ、現在の朝ドラのモデルでもある『エール📣』の古関裕而なのである。

