仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年8月26日号

 

2025年8月22日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 2 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 3 Tu me rends bête - Maître Gims, Damso

 4 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 5 Viano - RK, Genezio

 6 Ruinart - R2

 7 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 8 Appelle ta copine - Maître Gims

 9 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 10 Adoriano - Niska

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 D&P à vie - JuL

 3 Terminal 7 - Djadja & Dinaz

 4 Mega BBL - Théodora

 5 HIT ME HARD AND SOFT - Billie Eilish

 6 Nés pour briller - L2B

 7 BĒYĀH - Damso

 8 Focus - KeBlack

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 BDLM Vol.1 - Tiakola

 

 今週はMaître GimsとLa Mano 1.9による「Parisienne」がシングルチャートの新たな1位になりました。リリック(paroles)の「Avenue Montaigne(モンテーニュ通り)」は、パリ8区にある高級ブランドショップ街。前週まで1位の「Soleil bleu」は2位に後退しています。3位にMaître GimsとDamsoの「Tu me rends bête」(あんた、私をバカにするの)が初登場。リリックにさりげなく戦争反対のメッセージを忍ばせてくるMaître Gims先生は今週、トップ10に4曲がチャートインしています。

 

Genezio

 シングルチャートで前週の8位から5位に浮上した「Viano」(ヴィアノ)で23歳のアルジェリア系ラッパーRKとデュオしているGenezio(ジェネツィオ)は、2021年ソロデビュー。ヴェルサイユに近いイヴリーヌ(Yvelines/78)県Le Chesnay(ル・シェネ)生まれで、ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)出身の22歳。コンゴ系と言っても旧ベルギー領のコンゴ民主共和国(首都はキンシャサ)ではなく旧フランス領のコンゴ共和国のほうで、少年時代にその首都のBrazzaville(ブラザヴィル)に住んだこともあります。

 アメリカのラッパーYoung Thug(ヤング・サグ)やアトランタのバウンス・ミュージックの影響を受けますが、コンピュータ好きで高校時代はサウンドエンジニアもやっていました。その頃、友人たちと音楽活動を始めた時のグループ名「la Gé」がステージネームの起源です。

 アルバムチャート1位は7週連続でMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」でした。5位にアメリカの才女、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)が2024年5月に出した「HIT ME HARD AND SOFT」が、なぜか再浮上。彼女とDjadja & Dinazが割り込んできた玉突きで、以下のチャートイン曲は前週から順位を下げています。

 ニューリリースが途絶える夏も、もうすぐ終わります。秋の新作ラッシュでどんなアルバムが飛び出してくるか、今から楽しみです。

 

Djadja & Dinaz(ジャジャ&ディナズ)


Djadja&Dinaz

 今週のアルバムチャートで、6月27日リリースで7月4日付では1位にもなった「Terminal 7」(ターミナル7)が3位でトップ10に再浮上したDjadja & Dinaz(ジャジャ&ディナズ)は、共にセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県モー(Meaux)出身という幼なじみのマブダチ(マイメン)で、現在28歳のヒップホップ・デュオ。彼らについては2023年3月14日号で触れていますが、それから1年半が経過したので、その後の活躍も含めて改めてくわしくご紹介します。

 本名は、DjadjaはGianni Bellou(ジャンニ・ベロウ/両親はアルジェリア系とイタリア系)、DinazはAzzedine Hedhli(アズディン・エドリ/両親はチュニジア系とアルジェリア系)といいます。デビューは2014年でしたが、その年末にリリースした「Laisse-nous faire notre biff」(「俺たちのやり方でやらせてくれ」という意味)によって全仏の注目を浴びます。と言っても曲それ自体ではなく、パーキングで彼らを交えた12人が「実弾射撃」を撃ちあうMVの映像が警察沙汰になったからでした。死傷者はいませんが裁判で4人が懲役刑の判決を受けています。

※ビデオ編集の段階で銃声音を入れれば逮捕されることはないのですが……。日本の刑事ドラマのロケではモデルガンの引き金を引くたびに俳優に口で「パン」「パン」と言わせて音入れのタイミングの目印にしていました。渡哲也さんが「徹子の部屋」で「子どもの遊びみたいで、すごく恥ずかしかった」と言っていました。

 どこかのユーチューバーのように、ろくでもないことで有名になったこのコンビですが、2016年のデビューアルバム「On s'promet」は最高5位。2017年の「Dans l'arène」は最高4位、2018年の「Le revers de la Médaille」は最高2位、2019年の「Drôle de mentalité」は最高3位で、2021年の「Spleen」(「憂鬱」あるいは「脾臓」)が初の最高1位になります。2023年のスタジオアルバム「Alpha」も最高1位でした。「Terminal 7」は約2年ぶりの新作で、3作連続最高1位です。

 シングルのほうでは2019年に「Possédé」が最高3位、「Un million par mois」が最高10位とトップ10入り。2020年の「Perdu」は最高4位。2021年には「À cœur ouvert」がシングル初の最高1位に、「Dans le réseau」が最高7位になっています。2023年は「La force tranquille」で最高7位、「Capitaine」で最高5位になっており、フランスのヒップホップデュオとしては今やPNL(ぺネル)やBigflo et Oli(ビッグフロー&オリ)と並び立つくらいの人気を得ています。

 2023年12月にはパリのベルシー地区にある17000席収容のAccor Arena(アコー・アリーナ)で連続2日間のコンサートを成功させ、その動員力を証明しています。

 では、約2年のブランク(充電期間?)を経て2025年6月にリリースされたシングル「Avancer」をお聴きください。アルバム「Terminal 7」に収録されています。そのリリック(paroles)は、たとえば「L'amour,c'est nocif comme le tabac」(拙訳:愛、それはタバコのように有害だ)というような物憂げなフレーズの連続。う~ん。アルバム「Spleen」から4年たっても、気分はいまだにボードレール(Baudelaire)ですか?

 

Djadja & Dinaz(ジャジャ&ディナズ) - Avancer

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年8月19日号

 

2025年8月15日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 2 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 3 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 4 Ruinart - R2

 5 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 6 Appelle ta copine - Maître Gims

 7 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 8 Viano - RK, Genezuio

 9 Piano - Werenoi, Maître Gims

 10 Adoriano - Niska

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 D&P à vie - JuL

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Nés pour briller - L2B

 5 BĒYĀH - Damso

 6 Focus - KeBlack

 7 Diamant noir - Werenoi

 8 BDLM Vol.1 - Tiakola

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters cast

 

 今週はシングルチャートに多少の変動がありました。1位は「Soleil bleu」で変わりませんが、Maître Gims(メイトル・ギムス)とLa Mano 1.9による「Parisienne」が前週の5位から2位に、Maître Gimsの「Appelle ta copine」が前週の9位から6位にランクアップ。先生は今週、シングル2位、5位、6位、9位とアルバム1位にからんでいて、お忙しいです。

 8位にはセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県モー(Meaux)出身の23歳のアルジェリア系ラッパーRKと、ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)生まれの22歳のコンゴ系ラッパーGenezuio(ジェネツィオ)による「Viano」(ヴィアノ)が登場。タイトルはメルセデス・ベンツの車種名で、歌詞で「欲しい」「欲しい」と連呼しています。ミニバンにピアノは入りきらないと思いますが、どうぞお買い求めください。10位には自称PSG熱烈応援団長Niska(ニスカ)の「Adoriano」が入りました。

 

Maître Gims

 アルバムチャート1位は6週連続でMaître Gims先生の「Le Nord se souvient:L'Odyssée」。以下トップ10は順位の入れ替えがあっただけで前週と顔ぶれが同じです。8月はヴァカンスシーズンでニューリリースが途絶えますので……。

 

Nono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)


Nono La Grinta

 8月13日、イタリアのウディネで行われたサッカーのUEFAスーパーカップで、チャンピオンズリーグ(CL)覇者のパリ・サンジェルマン(PSG)が、ヨーロッパリーグ覇者のトッテナム・ホットスパー(イングランド)をPK戦で破って、正真正銘のヨーロッパ覇者になりました。6~7月のクラブ・ワールドカップ(CWC)では決勝でチェルシー(イングランド)に優勝を譲っているものの、PSGは計4冠を獲得して24-25シーズンの最後を「パリの年」として締めくくりました。

 そのPSGが5月31日、CL決勝でインテルに勝った直後、歌詞はPSGともサッカーともほとんど関係ないのにTikTokで再生数が爆増した曲がありました。それがパリ19区出身のコンゴ系ラッパー、Nono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)の「Paris」です。SNEPシングルチャートではCL決勝直後の6月6日付で3位初登場。6月13日付、6月20日は2位、6月27日付、7月4日付は5位、7月11日付は6位、7月18日付は9位、7月25日付、8月1日付は8位、8月8日付は10位。スーパーカップ決勝直後の今週8月15日付では17位に退きましたが、10週連続でトップ10圏内にあり、すでにプラチナディスク認定を受けています。

 Nono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)は2002年2月、パリの北東端、19区ウルク(Ourcq)地区生まれで23歳。ラ・ヴィレット公園や、パリ市民の飲料水を確保するためにナポレオン1世が建設させたウルク運河に近く、地下鉄メトロ5号線(北駅、東駅、レピュブリック広場、オステルリッツ駅を通る)のウルク駅があります。外国人、移民も少なくないエリアですが、環状道路ペリフェリック(旧城壁)の内側にある分、治安が特段悪そうなイメージはありません。

 ノノ・ラ・グリンタは18歳だった2020年、NJKというグループに加入して音楽活動を始め、2023年末にEP「LA QUOIII?」を出してソロデビュー。La Mano 1.9をフィーチャーしたシングルの「La Quoi?」が話題になりました。2024年は6月に「ON THE RADAR」「a Griiint」を、2025年は4月に「RESTART」をリリースし、フランスのヒップホップシーンで頭角をあらわします。大ヒット曲の「Paris」は「RESTART」の収録曲です。

 スタイルとしては同じパリ19区出身の若手ラッパーLa Mano 1.9と同様にニューヨーク・ドリルの影響を受けていて、2023年には自らのヒップホップチーム「La Hasba 22」を結成してEP「75022」を出しています。75022は現実には存在しない「パリ22区」の郵便番号です。パリ市の行政区は20区までで、シャルル・ド=ゴール国際空港の空港公団がメディア向けに「パリ21区」を勝手に自称しているので、22区にしたわけでしょう。Hasba 22は、応援団長のNiskaをフィーチャーしてPSGのブラッドリー・バルコラ選手に捧げた曲「BARCOLA」が今年ヒットしています。

  さて「Paris」のリリック(paroles)ですが、「J'suis parisien comme Mbappé」(拙訳:僕はエムバペのようなパリジャンさ)と言いながら、内容はいけない葉っぱ、職務質問大好き警官、妖しい女、環状道路を暴走するバイクなどが登場するギャングスタ風味のハードコア・ラップで、最後に「C'est soit l'oseille ou la mort」(拙訳:それはカネなのか、それとも死なのか)とシニカルに締めます。そのへんはニューヨーク・ドリル直輸入ですか?

※「oseille」は本来は酸っぱい野菜オゼイユのことですが、転じてカネを指す俗語。他に「grisbi」「blé」「fric」など、フランス語にはカネを意味する俗語がいろいろあります。それは、昔はジャン・ギャバンが出ていたようなフィルム・ノワールの、今はフレンチラップの基礎知識ですか?

 

Nono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ) - Paris

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年8月12日号

 

2025年8月8日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Soleil bleu - Bleu Soleil, Luiza

 2 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 3 Ruinart - R2

 4 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 5 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 6 Toi et moi - JuL

 7 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 8 Ninao - Maître Gims

 9 Appelle ta copine - Maître Gims

 10 Paris - Nono La Grinta

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 D&P à vie - JuL

 3 BĒYĀH - Damso

 4 Nés pour briller - L2B

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Focus - KeBlack

 7 BDLM Vol.1 - Tiakola

 8 Diamant noir - Werenoi

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters cast

 

 シングルチャート1位は3週連続でBleu Soleil(ブルー・ソレイユ)とLuiza(ルイーザ)の「Soleil bleu」でした。5位に初登場の「Parisienne」でMaître Gims先生とコラボしているLa Mano 1.9(ラ・マノ1.9)は7月8日号で少しご紹介していますが、パリ19区生まれ、コートジボワール系の23歳の若手ラッパー。6月26日に出したファーストアルバム「R.A.T」が好評です。シングル6位にJuLの「Toi et moi」が浮上しました。アルバムチャートはMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」が5週連続1位。先生は夏休み返上でラ・マノ1.9くんらにヒップホップの夏期講習ですか?

 

KPop Demon Hunters

 ヴァカンスシーズンでチャートアクション低調の中、K-POPがフランスに韓流の風を吹かせてアルバム10位初登場。6月20日発売の「KPop Demon Hunters」は、同日公開のアメリカのミュージカル・アニメ映画『KPop Demon Hunters』(ソニー・ピクチャーズ製作/Netflix配給)のサウンドトラック盤で、K-POP3人組ガールズグループ「ハントリックス」(Lumi、Mira、Joy)が、「音楽のチカラ」で悪魔狩りを行って人類の平和を取り戻すというストーリー。正義の味方の諜報部員が副業でロックバンドをやるアメコミの「スーパースリー(The Impossibles)」みたいなもの?(古すぎ)

 

TRIANGLE DES BERMUDES(トリアングル・デ・バルミュデ)


TRIANGLE DES BERMUDES

 シングル「Charger」が7月18日付チャートで初登場4位、7月29日付で2位、8月1日付で2位、今週8月8日付でも2位と安定して上位に食い込んでいるのが、TRIANGLE DES BERMUDES(TDB/トリアングル・デ・バルミュデ)です。

 7月22日号でも少しご紹介しましたが、MC YOSHI、Mauvais djo、Kokosvoiceによる男性ラップグループ3人組で、2023年に結成されました。全員がパリ郊外エソンヌ(Essonne/91)県エブリィ(Évry)出身の幼なじみで、パリのクラブシーンでMC、DJとして活躍中です。なお、リーダーのMC YOSHIは日本人ではありません。Mauvais djo(悪太郎?)は2021年からソロでシングルを多く出してきた実績があり、追悼曲なのか「Maradona(マラドーナ)」というナンバーもあります。

 2023年、まずリーダーがシングル「Y'a une meuf」(女の子おるやん)を出した後、改めて3人でグループを結成することしました。グループ名の由来は、日本でも70年代に「ムー少年」たちが「世界の謎」として夢中になった北大西洋の「魔の海域(空域)」こと「バミューダ・トライアングル」から。海藻がからまって船のスクリューが回らなくなるという「サルガッソー海」も、ほぼ同じ海域です。無線通信やランドサット衛星やGPSがある今は、もう怖くないですか?

 グループとしてのデビュー曲は2023年の「Lunettes」(メガネ)で、2024年にシングル「T'es mort」(おまえ、死んどる)、2025年にシングル「La compil TDB」を出しています。その間、2023年にアルバム「Triangle des bermudes 1.0」、2024年にアルバム「Triangle des bermudes 2.0」、2025年2月にEP「Franchement!」(率直に言えば!)をリリースしました。

 さて、「Franchement!」の収録曲「Charger」がヒットしたきっかけは、6月21日の音楽の日(Fête de la Musique)での彼らのライブがウケたことで、7月にケンドリック・ラマーとSZAのパリ公演のオープニングアクトに起用されてパフォーマンスを披露しています。ストリーム再生回数が今年1月から7月までの間に430%以上の増加をみせて、陳腐な言い方ですが「シンデレラ・ボーイズ」になりました。

 その「Charger」をお聴きいただきますが、歌詞は「Sortez les armes à feu」(銃を取り出せ)と連呼し、「Les armes nucléaires comme en Corée」(コリアのように核兵器を)とまで言ってしまう物騒なもの。だから「charger」は「突撃する」という意味だとわかります。ムー少年変じてミリタリーマニア少年となる? あの、Corée(コリア)とはもちろん、北の将軍様がいるあの国(Corée du Nord)のことですよね……。

 

TRIANGLE DES BERMUDES(トリアングル・デ・バルミュデ) - Charger(突撃する)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年8月5日号

 

2025年8月1日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 2 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 3 Ruinart - R2

 4 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 5 Ninao - Maître Gims

 6 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 7 KYKY2BONDY - Hamza

 8 Paris - Nono La Grinta

 9 Appelle ta copine - Maître Gims

 10 Ciel - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 BĒYĀH - Damso

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Nés pour briller - L2B

 5 Focus - KeBlack

 6 D&P à vie - JuL

 7 BDLM Vol.1 - Tiakola

 8 Tour Eiffel 2000 - 25ème anniversaire - limitée;numerotée - Johnny Hallyday

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 Mania - Hamza

 

 8月はフランスではヴァカンスのシーズンなので、ポピュラー音楽界はニューリリースが極端に少なくなり、チャートアクションも低調になります。そのすき間を埋めるように旧盤の再発や、ベスト盤、ライブ盤、テーマ別に編集したアンソロジー(anthologie)盤の発売が増えます。夏場は企画力で勝負。

 Bleu Soleil(ブルー・ソレイユ)とLuiza(ルイーザ)の「Soleil bleu」が2週連続でシングルチャート1位。トップ10は6位と7位の入れ替わりと、10位にMaître Gims先生の「Ciel」が再浮上した以外は前週と変わりませんでした。アルバムチャートのほうは、1位は4週連続でMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」でした。トップ10は8位以外は前週と同じ顔ぶれです。

 

Johnny Hallyday

 アルバム8位に登場した「Tour Eiffel 2000 - 25ème anniversaire - limitée;numerotée」は、今は亡きフランスを代表するロックンローラー、Johnny Hallyday(ジョニー・アリディ)が2000年6月10日、エッフェル塔の前にある公園、シャン・ドゥ・マルス(Champ de Mars)で行ったデビュー40周年記念コンサートのライブ盤で、7月25日のリリース。この公演は当時、会場とテレビ中継をあわせて約60万人が見たそうです。

 

R2(エール・ドゥ)


R2

 シングルチャートで「Ruinart(ルイナール)」が7月4日付で6位に初登場し、前々週は2位、前週3位、今週も3位と安定したチャートアクションをみせているのがR2(エール・ドゥ)です。2004年にパリ19区で生まれ、エソンヌ(Essonne/91)県ブリュノワ(Brunoy)で育った20歳の新世代ラッパー。ルーツはコートジボワールとエチオピアです。本名はRayannといい、ステージネームの「R2」はそのイニシャルからきています。

 新世代だけにやはり「SNSの子」。YouTubeに自身のチャンネルを開設して2023年7月、MV「A$AP/Mauvais garçon」をアップロードして事実上のデビュー(A$APは英語の「As Soon As Possible」の略で「できるだけすみやかに」というTOEICの出題者が好きそうなビジネス用語)。2024年4月にリリースした「Beriz」はTikTokでブレイクしました。

 2024年には、ファーストアルバム「Full exclu Vol.1」、Biloukiとのコラボ曲「T-Pain」、DMGとのコラボ曲「Scanner」を出し、11月リリースしたアルバム「Héritage」にはBooba(ブーバ)との集団決闘「オルリー空港事件」で知られる45歳の著名ラッパーKaaris(カーリス/コートジボワール系)の過激で下品な傑作「Se-vrak」(2014年)のカヴァーを収録。弱冠20歳でビッグネーム公認のお墨付きを得ました。2025年は3月にアルバム「7/7」が出ています。

 彼の音楽はジャージー・ドリル(Jersey Drill)という、現在は主にUKのクラブでウケているヒップホップのスタイルです。アメリカのニュージャージー州起源の「Jersey」と、シカゴ起源の「Drill」が融合したジャンル。それでいてリリック(paroles)では、20歳とは思えない落ち着いた知的な雰囲気をたたえています。たとえばシングル「Ruinart」の歌詞には、次のような一節があります。

「Faut qu'tu sois malin, rusé, si tu veux durer dans le réseau, empiler les certif'」(拙訳:ネットワークの中で生き残りを望むなら、君が頭がよくて、ずる賢いという証明書を積み重ねないといけない)

 と聞いて、日本のYouTuberにも身につまされる人がいそうですが、群雄割拠のフランスのラップシーンでのし上がるには、そういうクールなスタンスが必要なのでしょう。

 歌詞に「Elle fait mal à la tête,dans l'verre,remets du ruinart」(拙訳:彼女は頭痛をもたらす。そのグラスの中にルイナールをまた入れてくれ)とあるように、タイトルのルイナール(Ruinart)はお酒のブランドです。7月8日号でも触れましたが、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)傘下で、1729年にマルヌ(Marne/51)県エペルネー(Épernay)で創業したシャンパンの高級ブランド。現在のメゾン(醸造所)はマルヌ(Marne/51)県のランス(Reims)にあります。ジャンヌ・ダルクゆかりの大聖堂で知られる町です。

 

R2(エール・ドゥ) - Ruinart(ルイナール)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年7月29日号

 

2025年7月25日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Soleil Bleu - Bleu Soleil, Luiza

 2 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 3 Ruinart - R2

 4 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 5 Ninao - Maître Gims

 6 KYKY2BONDY - Hamza

 7 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 8 Paris - Nono La Grinta

 9 Appelle ta copine - Maître Gims

 10 KAT - Gazo ft.La Rvfleuze

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 BĒYĀH - Damso

 3 D&P à vie - JuL

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Focus - KeBlack

 6 Nés pour briller - L2B

 7 BDLM Vol.1 - Tiakola

 8 Mania - Hamza

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 You'll Be Alright,Kid(Chapter 1) - Alex Warren

 

 今週のシングルチャート1位は、前週に続きBleu Soleil(ブルー・ソレイユ)とLuiza(ルイーザ)の「Soleil bleu」でした。トップ10は順位こそ入れ替わったものの、前週と同じ顔ぶれ。 アルバムチャート1位は3週連続Maître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」で、JuLの「D&P à vie」が3位、Werenoiの「Diamant noir」が9位でトップ10に復帰しました。前週2位のMylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)の「86/97」ですが、今週はトップ10はるか圏外の48位に後退しました。魔法が長続きしなくなった?

 

Alex Warren

 Alex Warren(アレックス・ウォーレン)は、アメリカ・カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad)出身の24歳のシンガーソングライターです。2024年9月リリースのファーストアルバム「You'll Be Alright,Kid(Chapter 1)」がUKで1位になり、今週、フランスのアルバムチャートでも10位に入っています。シングルは「Ordinary」が今週14位です。

 ジャンル的にはアコースティック・ギター一本でステージで弾き語りをする昔なつかしの「フォーク」で、歌詞の中身はカトリックの信仰に根ざし、愛する妻に捧げるようなまじめなものですが、Instagram、TikTok、YouTubeなどソーシャルメディアを駆使して、Netflixへの出演でその人気に火がつくなど、売り出し方は現代的です。

 

Luiza(ルイーザ)


Luiza

 シングルチャートで前々週は5位、前週は1位、今週も1位のLuiza(ルイーザ)の「Soleil Bleu」は、4月11日にリリースされています。トロピカル・サウンドをやっている男性2人組のBleu Soleil(ブルー・ソレイユ)とコラボレーションした、レゲエベースの「トロピカル・エレクトロポップ」ナンバー。彼らのアルバム「Soleil Blue」は今週29位です。

 ルイーザはブルターニュ地方のレンヌ(Rennes)の生まれ。年齢不詳。本名をルイーザ・フェルナンデス(Luiza Fernandes)といい、母親はブラジル出身のコンテンポラリー・ダンサー兼振付師、父親はフランス人のジャズ・ダブルベース奏者という家庭環境の中で「芸術こそ、私の生き方である」という自負心が醸成されました。

 地元のレンヌ音楽院でクラシックの素養を積んだ後、アフリカ沖のインド洋に浮かぶフランス海外県レユニオン(Réunion)島のアートスクールでアフリカやアジアの芸術を学んでいます。デビュー前に母親の郷里のブラジルのアマゾン地域で暮らしたことも、文化のるつぼ、大都会パリで生活したこともあります。そんな経歴もあってか自らを「世界のフランス系ブラジル人(Franco-brasileira du mundo)」と称しています。大風呂敷でよろしい。

 音楽的には、ブラジリアンのリズム、バルカン半島のルーマニアやウクライナの伝統音楽、キューバなどカリブ海のトロピカル・サウンド、さらにエレクトロポップ、ダブといった都会的なグルーヴなどがほとんど闇鍋的に共存するというハイブリッドなものです。文章で説明してもたぶん伝わらないと思いますから、ヒット中の「Soleil Bleu」とともに、2024年6月に出したメジャーデビューシングル「Demain, demain」や、2025年2月に出したEP「Fantastik」(「すばらしい」という意味のポルトガル語。フランス語でいえばFantastique)も聴いてみてください。

「Demain Demain」は、歌詞こそフランス語ですが、キューバ、スペイン、さらにロマ民族独特の歌謡のエッセンスまで織り交ぜた多文化共生の響きあり。彼女はまさに「ワールドミュージックの子」と言えるでしょう。

 80年代、「五月革命を『回収』した」ミッテラン政権のジャック・ラング文化相の文化政策に後押しされ、パリを発信源にひろまったワールドミュージックのムーブメントですが、かつてはパリ7区のケ・ブランリ美術館(Musée du Quai Branly)やパリ5区のアラブ世界研究所(Institut du monde arabe)とともに評論家やインテリから「植民地主義、ヨーロッパ人至上主義のメタファー(隠喩)にすぎない」などと批判を浴び、今はまた「反グローバリズム」の世界的なうねりの脅威にさらされながらも、世代を超えて脈々と受け継がれているようです。

 

Bleu Soleil(ブルー・ソレイユ)&Luiza(ルイーザ)  - Soleil Bleu (Clip officiel)

 

Luiza(ルイーザ) - Demain, demain (CLIP OFFICIEL)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年7月22日号

 

2025年7月18日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Soleil bleu - Luiza

 2 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 3 Ruinart - R2

 4 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 5 KAT - Gazo ft.La Rvfleuze

 6 KYKY2BONDY - Hamza

 7 Ninao - Maître Gims

 8 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 9 Paris - Nono La Grinta

 10 Appelle ta copine - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 86/97 - Mylène Farmer

 3 BĒYĀH - Damso

 4 Terminal 7 - Djadja & Dinaz

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Focus - KeBlack

 7 Mania - Hamza

 8 Nés pour briller - L2B

 9 BDLM Vol.1 - Tiakola

 10 Swag - Justin Bieber

 

 今週のシングルチャート1位は、前週5位のLuiza(ルイーザ)の「Soleil bleu」が入りました。レゲエベースのトロピカルな曲です。Maître GimsとJuLの「Air Force blanche」は今週は2位に後退しました。

 4位に「Charger」が初登場したTRIANGLE DES BERMUDES(トリアングル・デ・バルミュデ)は、2023年に結成されたMC YOSHI、Mauvais djo、Kokosvoiceによる男性3人組。全員がエソンヌ(Essonne/91)県エブリィ(Évry)出身の幼なじみで、パリでクラブMCとして活躍しています。リーダーのMC YOSHIは日本人ではありません。6月21日の音楽の日(Fête de la Musique)に出演し、7月のケンドリック・ラマーとSZAのパリ公演のオープニングアクトでパフォーマンスを披露したことがヒットにつながりました。グループ名は北大西洋の魔の海域として日本でも70年代の少年の間で知られていた「バミューダ・トライアングル」。と聞いてNY出身のシンガーソングライター、バリー・マニロウ(Barry Manilow)の1975年の同名曲を思い出す人は、年齢がばれるけれどもNot so bad!。

 シングル5位にはセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県サン=ドニ(Saint-Denis)出身、ギニア系のドリル・ラッパーのGazo(ガゾ)が、パリ19区出身でセネガル系のラッパー、La Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ)をフィーチャーした「KAT」が入りました。アルバムチャートの1位は今週に引き続きMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」です。

 

Justin Bieber

 アルバムチャートの3位以下のラインナップに新味が乏しい中、10位にカナダ・オンタリオ州出身の31歳のポップスター、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)の「Swag(スワッグ)」が入りました。7月11日リリースで7枚目のスタジオアルバムです。タイトルのSwagは「イケてる」という意味のスラングで、ヒップホップ方面でよく使われます。

 

Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)


Mylène Farmer

 フレンチポップスの超大物、Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)のアルバムが今週、2位にチャートインしました。「86/97」というタイトルで察しがつくと思いますが、1986年から1997年の間、現在のソニー・ミュージックに移る前のポリドール(Polydor)時代に彼女が出したヒット曲を集めたベスト盤で、7月11日にリリースされました。26曲入りで、全部聴くとトータルで2時間1分もかかります。

「暗黒の歌姫」ミレーヌ姐さんは本ブログの開設第1回、2020年1月7日号でもとりあげているビッグネームですから、プロフィールは改めてご紹介するまでもないでしょう。出身はカナダのケベック州ですが、パリで演劇を学んでからシンガーソングライターとしてデビュー。今や新作スタジオアルバムを出せば必ず初登場1位になり、セールス的にはロックバンドのアンドシーヌ(Indochine)、ヒップホップのJuL(ジュール)、年中行事のLes Enfoirés(レザンフォワレ)と肩を並べるような存在になりました。今年9月で64歳になりますが、その妖艶な世界はいまだに健在です。

 収録曲のラインナップは、1986年のデビュー曲にして背徳の数え唄「Maman a tort」(ママは間違っている)に始まり、ファンが多いロシアで人気の「Tristana」(1986年)、MTVの全盛時代にぶつけてきたPVでロリータ、人形愛、プラトンの言うアンドロギュノス(両性具有)など、日本で言えば澁澤龍彦的倒錯ミクロコスモスを展開した「Sans contrefaçon」(偽物ではなく/1987年)、世界の終わりをにおわせる形而上的な(métaphysique)歌詞で人気がありPomme(ポム)らカヴァーも多数ある1991年の「Désenchantée」(幻滅した/邦題は「夢やぶれて」)などが続きます。

 熱いファンは聴いて「あの曲がない」とか言いそうですが、それは我慢してもらうとして、アルバムのラストチューンで7月にYouTubeで新作ビデオが公開されたこの曲をお聴きください。1997年、パリ12区のベルシー(Bercy)でのコンサートで、アルジェリアの民俗歌謡ライ(Raï)の王様ことシェブ・ハレド(Cheb Khaled)とデュエットしていた、ミッシェル・ポルナレフの1966年のデビュー曲のカヴァー「La poupée qui fait non」(邦題:ノンノン人形)です。

 

Mylène Farmer(ミレーヌ・ファルメール)- La poupée qui fait non

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年7月15日号

 

2025年7月11日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 2 Ruinart - R2

 3 KYKY2BONDY - Hamza

 4 Ninao - Maître Gims

 5 Soleil bleu - Soleil bleu & Luiza

 6 Paris - Nono La Grinta

 7 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 8 Ciel - Maître Gims

 9 Piano - Werenoi, Maître Gims

 10 Appelle ta copine - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Terminal 7 - Djadja & Dinaz

 3 BĒYĀH - Damso

 4 Mania - Hamza

 5 Cœur maladroit - Marine

 6 HAYATI (Episode 1: Du sable et du sang) - Niro

 7 BDLM Vol.1 - Tiakola

 8 Mega BBL - Théodora

 9 Nés pour briller - L2B

 10 R.A.T - La mano 1.9

 

 今週は、7月14日が日本で言うパリ祭、革命記念日(Le Quatorze Juillet)でフランスの祝日だったので、ヒットチャートの発表も、本ブログの配信も1日後にずれ込みました。ご了承ください。

 

 Maître GimsとJuLの「Air Force blanche」は3週連続シングルチャート1位。Maître Gimsは「Appelle ta copine」が10位に浮上するなどシングルのトップ10に計5曲も入っていて、2月発売の「Le Nord se souvient:L'Odyssée」がアルバムチャートで1位に返り咲きました。

 シングル5位の「Soleil Bleu」は、男2人組でトロピカル・サウンドをやっているSoleil bleu(ソレイユ・ブルー)が、ブルターニュ地方のレンヌ(Rennes)生まれでブラジル人の血を引くニューフェース、Luiza(ルイーザ/デビューアルバム「Fantastik」2月発売)とコラボした夏向きのエレクトロ・レゲエナンバー。往年のポップアイコン、シルヴィ・ヴァルタン(Sylvie Vartan)の「Soleil bleu」とは全く別の曲です。

 

Djadja&Dinaz

 Djadja & Dinaz(ジャジャ&ディナズ)の「Terminal 7」が今週は一歩後退して2位。「第7ターミナル」とは、彼らの7枚目のスタジオアルバムだからだそうです(2018年に最高2位になった「Le revers de la médaille」は、その「Partie 2」と合わせて1作と数えます)。デビューは2014年で、彼らはまだ28歳ですがすでに12年目の中堅どころ。アルバムは2021年の「Spleen」、2023年の「Alpha」に続き3作連続の最高1位で、シングルは2021年に「À cœur ouvert」が最高1位になっています。同じラップ・デュオでもBigflo & OliやPNLは兄弟ですが、この二人は小学校の同級生です。

 前週ご紹介した「スターアカデミー(Star Academy)」シーズン12優勝者のMarine(マリーヌ)のアルバム「Cœur maladroit(不器用な心)」ですが、チャート上では今週2位から5位に後退しました。現状ではシーズン11優勝者のピエール・ガルニエ(Pierre Garnier)ほどの人気にはなっていないようです。Tiakola(ティアコラ)の「BDLM Vol.1」が7位、Théodora(セオドラ)の「Mega BBL」が8位で、それぞれアルバムチャートのトップ10に復帰しました。

 

Niro(ニロ)


Niro

 今週のアルバムチャート6位に「HAYATI (Episode 1: Du sable et du sang)」(7月4日リリース)が初登場したNiro(ニロ)は、プロフィールは2023年2月21日号で触れていますが、2年半が経過しましたので、改めてご紹介します。

 1987年7月、オルレアン(Orléans)生まれの38歳。本名はNourredine Bahri(ヌレディン・バーリ)といいモロッコ系です。誕生後すぐに両親とモロッコの首都ラバト(Rabat)に移り、少年時代にフランスに戻ってロワール=エ=シェール(Loir-et-Cher/41)県ブロワ(Blois)で育ちました。ラッパーのブーバ(Booba/セネガル系)に引き立てられ22歳でメジャーデビューしたのが2009年で、2012年にファーストアルバム「Paraplégique」(最高53位)を出しています。

「Le rap de rue」(英語で言えばStreet Rap)の代表と目されるだけあって路上や酒場でのライブで顔と名前を売り、「その筋」にも顔がきいたのか知りませんがささいなトラブルで逃走の末におまわりさんのお世話になって5カ月間服役。それでも出所後2013年にリリースしたアルバム「Rééducation」は最高13位になりました。さすが武闘派ブーバに見込まれた男。「別荘」暮らしでハクがついたでしょうか? 2023年2月リリースの前作アルバム「Taulier」(「店の主人」という意味)は、SNEPアルバムチャートで初めての最高1位にのぼりつめています。

 なお、ニロには幼少期を過ごしたモロッコへのレぺゼン(地元愛)が強くあり、サッカーのモロッコ代表チームに「Maghreb(マグレブ)」というアンセムを提供したこともあります。2021年にはZKR(両親はモロッコ系とチュニジア系)のアルバム制作に参加し、共作で「Travail d'arabe」(直訳すれば「アラブ人の仕事」ですが、裏で「雑な仕事」とか「悪い冗談」という差別的な意味もはらんでいます)というシングルを出しています。

 新作アルバム「HAYATI (Episode 1: Du sable et du sang)」のタイトルにあるHAYATIとは、モロッコの公用語アラビア語で「私の人生」という意味です。フランス語ならMa vie、英語ならMy lifeです。

 その後の「Du sable et du sang(砂と血)」ですが、セビージャ出身のスペインの闘牛士が主人公のアメリカ映画『血と砂(Blood and Sand)』(ルドルフ・ヴァレンチノ主演の1922年版、タイロン・パワー主演の1941年版があります)とは、特に関係はなさそうです。なお、モロッコはスペインの隣国ですが、イスラム教の不殺生の戒律に反するので闘牛は行われていません。セウタCeutaやメリリャMelillaなどモロッコ領に囲まれたスペインの飛び地も同様です。

 さて、Gazo、Nazaらが参加したアルバム収録曲から、6月にネット公開されたシングル「Assimile」をお聴きください。タイトルは「同化する」という意味で、「Pour de vrai, ça tire, assimile」(拙訳「本当にそれは引っ張られ、同化する」)と繰り返します。歌詞にある「sinon tu vas trembler comme Mohamed Ali aux JO」(拙訳「さもなくば、君はオリンピックのモハメド・アリのように震えるだろう」)は、1996年アトランタ五輪開会式の最終聖火ランナーにモハメド・アリが現れて聖火台に点火したシーンを指していますが、それはパーキンソン病の患者さんに失礼だと思いますよ。

 

Niro(ニロ) - Assimile (Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年7月8日号

 

2025年7月4日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 2 KYKY2BONDY - Hamza

 3 Ninao - Maître Gims

 4 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 5 Paris - Nono La Grinta

 6 Ruinart - R2

 7 Piano - Werenoi, Maître Gims

 8 Ciel - Maître Gims

 9 Mia -Seysey,Bolémvn

 10 Mood - KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Terminal 7 - Djadja & Dinaz

 2 Cœur maladroit - Marine

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 Alba - Bekar

 5 R.A.T - La Mano 1.9

 6 Mania - Hamza

 7 BĒYĀH - Damso

 8 Nés pour briller - L2B

 9 D&P à vie - JuL

 10 Focus - KeBlack

 

 Maître GimsとJuLの「Air Force blanche」が2週連続シングルチャート1位。シングル6位に「Ruinart」がTop10初登場したR2はパリ19区生まれ、エソンヌ(Essonne/91)県ブリュノワ(Brunoy)出身の20歳の新世代ラッパー。ルーツはコートジボワールとエチオピアです。YouTubeに自身のチャンネルを開設して人気を得るという、今どきならではの売り出し方。

 タイトルのRuinartはシャンパンの高級ブランドで、1729年にランス(Reims/ジャンヌ・ダルクに縁のある大聖堂があるほう)で創業した世界最古のシャンパーニュ・メゾン(醸造所)だと、モエ・ヘネシーが言っております。

 今週は6月27日リリースの新作4作が一斉にランクインし、アルバムチャートに大きな変動がありました。

 新たなアルバム1位は28歳のラップ・デュオ、Djadja & Dinaz(ジャジャ&ディナズ)の前作「Alpha」以来2年ぶりの新作「Terminal 7」でした。彼らについては2023年3月14日号でくわしくご紹介していますが、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県モー(Meaux)で同じ学校に通っていたマブダチ(マイメン)な2人組です。

 アルバムタイトルですが、現在、シャルル・ド=ゴール空港(CDG)は第3ターミナル、オルリー空港(ORY)は第4ターミナル、LCCが使用する旧ピカルディ地域圏オワーズ(Oise/60)県のボーヴェ・ティレ空港(BVA)は第2ターミナルまでです。リンドバーグで有名なル・ブルジェ空港(LBG)はプライベート機用およびパリ航空ショー会場で、いずれも第7ターミナルは存在しません。LAのLAX空港やNYのJFK空港なら存在し、JFKでは全日空が使用しています。

 

Bekar

 アルバム4位に「Alba」が入ったBekar(ベカール)はスペインの首都マドリードで生まれ、リール(Lille)近郊のノール(Nord/59)県ルーベ(Roubaix)で育った27歳のラッパー。2023年のファーストアルバム「Plus fort que l'orage(嵐よりも強く)」(再発盤が最高6位)以来2年ぶりのセカンドアルバム。少年時代はロックを聴いてスケボーをやったりしていましたが、2016年にリールのラッパー、Stoと出会ってヒップホップに開眼し、2019年3月にメジャーデビューしました。ライブが好評を得ています。

 Tiakola、Vacra、SDMが参加したファーストアルバム「R.A.T」がアルバム5位に登場したLa Mano 1.9(ラ・マノ1.9)は2001年8月にパリ19区で生まれた新進気鋭の23歳。本名をUlrich Zie(ウルリッヒ・ズィ)といいコートジボワール系です。マンブルラップ、トラップに影響を受けたエネルギッシュなステージパフォーマンスが持ち味のハードコアなドリルラッパーで、Tiakolaの「BDLMプロジェクト」にも参加しました。なお「La Mano」はスペイン語で「手」という意味(フランス語ならmain)で、シュルレアリスムの巨匠サルヴァドール・ダリに同名の作品があり、それにパリ19区の「1.9」をくっつけてステージネームにしたらしいです。ダリのシュールな絵と過激なドリルラップ、どこか相性が良さそうです。

 余談ですが、コラージュとサンプリング、自動筆記のような即興性とフリースタイル、身体性表現とブレイキン、創造的破壊と再構築など、シュルレアリスムとヒップホップには接点が少なくありません。大学で比較研究してほしいテーマです。もしアンドレ・ブルトンが100年遅く生まれていたら、おそらくラッパーになったのではないかと、私は思います。

 

Marine(マリーヌ)


Marine

 アルバムチャート2位に6月27日リリースのファーストアルバム「Cœur maladroit」(「不器用な心」という意味)が初登場したMarine(マリーヌ)は、このブログではすでにおなじみの、ポップスター候補生を昔の貴族の城館に合宿させ、視聴者がその様子を見て各ステージの合否を投票で決めるという、TF1テレビの勝ち抜きリアリティ番組「スター・アカデミー(Star Academy)」のシーズン12(2024~2025年)に出場した、フレンチポップスの新星女性シンガーソングライターです。1月25日の決勝でエボニー(Ebony)を破って見事に優勝を遂げました。シーズン11で優勝したピエール・ガルニエ(Pierre Garnier)が昨年、ヒットチャート上で大活躍しましたから、来週のチャートでは1位も望めそうです。

 マリーヌは2000年3月、北フランス、パ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県アラス(Arras)で生まれ、同県のサン=ニコラ(Saint-Nicolas)で育った25歳です。本名はMarine Delplace(マリーヌ・デルプラス)といいます。

 幼少期から歌が大好きでピアノ、チェロ、ウクレレを習っていましたが、デビュー前は歯科衛生士を養成する地元の学校に通っていました。もっとも、まだ14歳だった2014年にはテレビの「The Voice Kids」に出場していて、リール(Lille)周辺やベルギーのワロン地域の南部ではステージにも立ち「サン=ニコラに歌がうまい女の子がいる」とその名を知られていました。ですが、60年代以来の「少女歌手」の伝統があるものの、その多くはミッシェル・ポルナレフが歌ったような「歌うかわい子ちゃん人形」として消費され、それで終わるのがフランス芸能界の現実。それもあって本人は大人になってシンガーソングライターとしての実力をつけてからのデビューを望み、あえて苛酷な狭き門「スター・アカデミー」への挑戦を選んだのでした。

 優勝して10万ユーロの賞金とソニーミュージックとのメジャー契約を獲得した直後の1月31日付のシングルチャートでは自作曲「Ma faute」(私のせいなの)が6位にチャートイン。これは2022年に書いた曲で、以前からYouTubeやSpotifyでは再生回数をけっこう稼いでいました。

 2025年2月にはリーグ・アンのRCランス(※)対ストラスブール戦のハーフタイムで、映画『エマニエル夫人』の主題歌で日本でも知られていたカレー(Calais)出身の往年の大歌手ピエール・バシュレ(Pierre Bachelet/故人/2020年8月4日号参照)の「Les Corons」(坑夫たち/RCランスにとってはリヴァプールの「You'll Never Walk Alone」に相当するような曲)を熱唱。スターアカデミー出場時に彼女を応援し、投票してくれたサポーターたちから大喝采を浴びて、良き「優勝謝恩会」になりました。

※リーグ・アンのRCランス(RC Lens)は、1部残留がリヨンへの降格処分の成り行き次第のスタッド・ランスStade Reimsとは、全く別の町にある別のクラブです。世界文化遺産の大聖堂が存在してジャンヌ・ダルクに縁があるのはReimsのほうです。お間違えなく。なお、Lensのほうも炭鉱関連施設の跡地がユネスコ世界文化遺産になっています。

 今回はマリーヌのファーストアルバム「Cœur maladroit」の収録曲から、5月に先行シングル発売されたタイトルチューンをお聴きください。「J'ai le cœur maladroit」「Mon amour et mon karma」(拙訳「私の心は不器用」「私の愛と私のカルマ」)というフレーズを繰り返す、恋愛への不安な心を歌った曲です。

「karma(カルマ)」はサンスクリット語のkarmanが語源で、本来はヒンズー教や仏教が説く「因果応報」とか「業(ごう)」という考え方ですが、西欧世界ではもっと軽い意味で「みんな自分が悪いから」というニュアンスで使われます。郵便ポストが赤いのも、karma?

(UKは日本と同じ赤ですが、フランスのBoîte aux lettresは黄色で、アメリカは青、アイルランドは緑色です)

 

Marine(マリーヌ) - Cœur maladroit(Clip offciel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年7月1日号

 

2025年6月27日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 2 KYKY2Bondy - Hamza

 3 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 4 Ninao - Maître Gims

 5 Paris - Nono La Grinta

 6 Dragons - Hamza & Werenoi

 7 Piano - Werenoi, Maître Gims

 8 Mia -Seysey,Bolémvn

 9 Mood - KeBlack

 10 Ciel - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 Mania - Hamza

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Dans nos mères - DVM

 4 BĒYĀH - Damso

 5 BDLM Vol.1 - Tiakola

 6 Nés pour briller - L2B

 7 Mega BBL - Théodora

 8 Focus - KeBlack

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 D&P à vie - JuL

 

 シングルチャート1位は、Maître GimsとJuLというフレンチラップのビッグネーム2人による「Air Force blanche」。「白い空軍」ではなく、ナイキのスニーカー「Air Force 1」の白色ヴァージョンを指しているようです。もし空軍機の色が白かったら、敵に狙われて撃たれやすくなります。ステルス戦闘機の色は黒です。

 Hamza(ハムザ)の「KYKY2BONDY」の連続1位は4週でストップして今週は2位。6位にHamzaとWerenoiの「Dragons」が登場しました。Hamzaのニューアルバム「Mania」に収録されている曲ですが、名古屋とは関係ありません。

 

DVM

 アルバム「Dans nos mères」が今週アルバムチャート3位になっているDVMとは、アーティストでもグループでもありません。音楽制作、ライブ企画、グッズ販売などを総合的に行うヒップホップの「プロジェクト名」です。中心人物のMedjaはセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県オルネー=スー=ボワ(Aulnay-sous-Bois)出身で、そこを本拠としている26歳の動画配信者(ストリーマー)です。Maître Gimsのような大物も含めたゲストラッパーが2時間以上、自らが選んだアーティストとともにパフォーマンスする動画「DVM show」は、2年前にスタートして1万人以上の視聴者を獲得しています。「Dans nos mères」はそこからスピンアウトしたファーストアルバムで、Freeze Corleone、Favé、Leto、Josman、Naza、Heuss L'enfoiré、RK、La Fouine、Lacrim、Nahirなどが参加しています。

 

Hamza(ハムザ)


Hamza

 今週のアルバムチャートの新たな1位は、ラッパーHamza(ハムザ)の新作「Mania(マニア)」でした。それに収録されたシングル「KYKY2BONDY」は前週まで4週連続1位でした。

 ハムザは1994年8月1日生まれの30歳。ベルギーのブリュッセル首都圏の町ラーケン(Laeken)で生まれ育ち、現在もここに住んでいます。本名はHamza Al-Farissi(ハムザ・アル=ファリッシ)といい、ルーツはモロッコ。フランス語はふつう最初の「H」を発音しないのですが、アラビア語由来の本名なので日本語表記は「ハムザ」で通します。

 10代で友人とキログラム・ギャング(Kilogramme Gang)というラップグループを結成。その解散に伴って2013年、20歳でミックステープ「Recto Verso」(フランス語で「表と裏」という意味)でソロデビューしましたが、出世作は2017年、ベルギーのフランス語圏、ワロン地域アルバムチャートで最高13位、フランスのチャートでは最高9位でプラチナディスクになった「1994」でした。2019年に出したアルバム「Paradise」はワロン地域とフランスで最高2位。その収録曲でSCHをフィーチャーしたシングル「HS」がフランスで最高7位になり、フレンチラップの世界で地歩を固めていきます。

 その後、アルバムでは2021年の「140 BPM 2」、2023年の「Sincèrement」、そして2025年の「Mania」が、いずれもベルギーのワロン地域とフランスのチャートで揃って最高1位になりました。2023年にはDamsoと共作の「Nocif」がフランスでシングル最高1位になっています。

 アルバム「Paradise」ではアフロポップ、R&BのAya Nakamuraや、2020年にロックバンドのアンドシーヌ(Indochine)のニコラ・シルキス(Nicola Sirkis)とデュエットした「3SEX」が話題になったChristine & the Queensとのコラボレーションがありました。2024年には毎年6月にパリ12区のヴァンセンヌの森(Bois de Vincennes)で開かれるエレクトロ・ポップのフェス「We Love Green」に出演しています。そのようにハムザはヒップホップで出発しながらも、積極的にジャンルの境界を超えて自らの音楽性の幅をひろげているミュージシャンです。

 この路線の延長線上にあるのが新作の「Mania」で、ダンスホールレゲエ風味がNYで大ウケしたセント・クリストファー・ネイビス※はキティ島のシンガー、バイロン・メッシア(Byron Messia)や、セレーナ・ゴメスとデュエットした「Calm Down」が世界的に大ヒットしたナイジェリアのレマ(Rema)が参加していて、文字通りマニアックなラインナップになっています。

(※アンティグア・バーブーダ、セントヴィンセント・グレナディーンとともに、国名を覚えておいて酒席で披露すると座ウケするかもしれないカリブ海に浮かぶ小国)

 そのアルバム収録曲から、大ヒットナンバー「KYKY2BONDY」をお聴きください。歌詞は、よくもまあこんなにファッションブランド名を列記できるなと思わせます。なんせアルバムタイトルが「マニア」ですから。動画には「アフロ・ブラジリアン・ファンク」リミックス版もあります。

 なお、パリ・サンジェルマン(PSG)在籍時のキリアン・エムバペ(Kylian Mbappé)選手に捧げた「KYKY de Bondy」という賛歌があるのですが、昨年レアル・マドリードに移籍してしまったので、「KYKY2BONDY」のタイトルには意趣返しのニュアンスが込められているようです。でも、エムバペが抜けてもPSGはヨーロッパチャンピオンになれたから、もう水に流しましょうや。

 

Hamza(ハムザ) - KYKY2BONDY(Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年6月24日号

 

2025年6月20日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Paris - Nono La Grinta

 3 Ninao - Maître Gims

 4 Impardonnable - Damso

 5 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 6 Piano - Werenoi, Maître Gims

 7 Mia -Seysey, Bolémvn

 8 Mood - KeBlack

 9 Pa pa paw - Damso & Sarah Sey

 10 Ciel - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 BĒYĀH - Damso

 2 Nés pour briller - L2B

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 Hélé - Helena

 5 Mega BBL - Théodora

 6 D&P à vie - JuL

 7 Focus - KeBlack

 8 Diamant noir - Werenoi

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Et si j'échoue - Bouss

 

 Hamza(ハムザ)の「KYKY2Bondy」が4週連続シングルチャート1位。以下もKeBlack「Mood」が8位に再浮上した以外はトップ10は前週との順位の入れ替わりばかりでした。アルバムチャートの方はDamso(ダムソ)の「BĒYĀH」(ベヤ)が3週連続1位です。今週もフランスはシングル、アルバムの新作リリースが少なかったようで、再浮上が目立ちます。日本の梅雨前線ばりに停滞気味のヒットチャートに、誰かが新鮮な風を吹き込んでほしいところです。

 

Helena

 アルバムチャート4位にHelena(エレナ)の「Hélé」が再浮上。3月14日リリースのファーストアルバムで、3月21日付で初登場1位でした。ベルギー生まれ23歳の女性シンガーソングライターで、2023年に「Star Academy(スター・アカデミー)」第11シーズンに出場し準決勝まで進出。彼女のプロフィールは2025年3月25日号でくわしくご紹介しました。

 

Bouss(ブース)


Bouss

 今週のアルバムチャート10位に、Bouss(ブース)が2024年11月22日に出したアルバム「Et si j'échoue」(で、僕が失敗したらどうなる?)が入っています。発売直後の2024年11月29日付チャートは3位、先々週6月6日付で9位でした。

 Boussは1998年6月、パリ郊外のオー=ド=セーヌ(Hauts-de-Seine/92)県コロンブ(Columbes)で生まれた26歳のラッパーです。本名はKevin Sonsa-Kiniといいます。メジャーデビューは2020年。2023年11月に出したシングル「Mirage」がTikTokで火がついて注目されました。2024年にはミックステープ「Depuis le temps」Part.1を5月に、Part.2を6月に、Part.3にあたる「depuis le temps (Pour la miff)」を7月に出して「三部作」が完結。チャート最高順位3位。通算10万枚以上を売り上げたこのプロジェクトは2024年末、SNEPからプラチナディスクに認定されています。

 ブースはジャンルとしてはラッパーですが、リリックだけでなくメロディーにも重きを置いていてポップス色が強いのが特徴で、キューバのルンバ、ハイチのコンパなどアフロ・カリビアンの音楽の影響を大いに受けています。尊敬するミュージシャンはクリス・ブラウン(Chris Brown)、エイコン(Akon)、ジュール(JuL)だそうです。

 彼は「Parler tout bas」(ささやくように歌う)というコンセプトで独自の境地を築きました。2024年のシングル「Parler tout bas」の歌詞では「Parler tout bas comme Alizée」(アリゼのようにささやく)とあります。フレンチポップスに多少触れたことがある人なら、ミレーヌ・ファルメールのイチオシでデビューした少女歌手Alizée(アリゼ)はたぶんご存知だと思います。皇帝ナポレオン1世と同じコルシカ(Corse)島のアジャクシオ(Ajaccio)出身。ナポレオンは軍事力でヨーロッパを席巻しましたが、アリゼは21世紀初頭、「かわいい」で平和的にヨーロッパを席巻しました。40歳になった現在も音楽活動を続けています。

 ブースのアルバム「Et si j'échoue」の収録曲から4月にシングルリリースされた「Nowhere」をお聴きください。なお、歌詞中の「tamien」は大麻入りタバコ、「voyou」は街のゴロツキ、「blé」は小麦ではなくてお金、「dalle」は歩道の敷石(はがしたら砂浜が出てくる?)ではなくて「おなかがペコペコだ」という意味です。フレンチラップを聴くには俗語辞典(仏仏辞典)が必要になりそうです。百科事典、辞書を発行するラルースLarousse社から出版されていますが、頻繁にアップデートされているか、実際に役に立つかどうかはわかりません。

 

Bouss(ブース) - Nowhere(Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!