仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年12月16日号

 

2025年12月12日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 Bloqué - Maître Gims, L2B

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 TP sur TP - JuL

 2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 3 Il faut que tu saches - Slimane

 4 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 5 Cœur maladroit - Maline

 6 Mega BBL - Théodora

 7 Grandeur nature - Florent Pagny

 8 Bitume Caviar (Vol. 2) - Isha & Limsa D'Aulnay

 9 Memento Mori:Mexico City - Depeche Mode

 10 Recommence-moi - SANTA

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」のシングルチャート1位はこれで9週連続です。記録をどこまで伸ばすのか。9位にMaître GimsとL2Bの「Bloqué」(ブロック)が浮上。これは企画盤GP Explorerの「The Last Race」(今週アルバム11位)に便乗した曲とも言えます。JuL(ジュール)の新作アルバム収録曲がシングル11位、22位、24位、26位、29位、34位に入りましたが、1曲もトップ10に届かなかったのは人気に陰り?

 そのフレンチラップ(ラップフランセ)マルセイユ・コネクションの首領(ドン)、JuLの新作アルバム「TP sur TP」が、12月5日の発売後3日間でフランス音楽史上最高の売上記録を更新してSNEPアルバムチャート1位。この32曲入りダブルCDを購入すれば来年4月のパリとマルセイユのジュールの公演チケット購入権が得られるというAKB48顔負けの抱き合わせ商法を展開したことでいまフランスでは賛否を呼んでおり、SNEPも問題視しています。

 反対派は「支配的地位を乱用した不公正な取引でEU競争法違反だ」と主張しますが、賛成派は「コンサートではCD購入を条件としない座席も用意されている」「アヤ・ナカムラも同じことをやっていた」と反論。CD購入が条件の座席の割合はアヤ・ナカムラ3割に対し、ジュールのほうは8割もあるそうですが、欧州委員会競争総局の判断は、いかに?

 ちなみに日本の公正取引委員会は「CD握手券商法」について、「ファンが自発的に購入しているとみなされれば独占禁止法違反の抱き合わせ販売とは断定しにくい」という見解を出しています。

 5位にMarine(マリーヌ)の6月27日発売「Cœur maladroit」(不器用な心)が再浮上しました。7月に最高2位。マリーヌは2月にTF1「スター アカデミー」のシーズン12で優勝した25歳の女性シンガーソングライター。フランス最北部パ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県アラス(Arras)の生まれで、2025年7月8日号でくわしくご紹介しています。

 

Isha &Limsa D’Aulnay

 今週アルバム8位にIsha & Limsa D'Aulnay(イシャ&リムサ・ダルネー)の「Bitume Caviar (Vol. 2)」がチャートインしました。タイトルは「アスファルトのキャビア」という意味で12月1日リリース。Ishaはベルギーのヴォリュウェ=サン=ランベール(Woluwe-Saint-Lambert)出身、Limsa D'Aulnayはフランスのセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県オルネー=スー=ボワ(Aulnay-sous-Bois)出身で、ともに39歳の中堅ラッパー。タリス改めユーロスター・デュオの13曲入りコラボ盤のコンセプトは「更生したチンピラの憂鬱と30代の人生が交錯する世界」だそうです。

 9位は1980年から活動し2020年に「ロックの殿堂」入りしたUKニューウェイヴの泰斗、Depeche Mode(デペッシュ・モード)のメキシコシティ公演のライブアルバム「Memento Mori:Mexico City」(12月5日発売)。11月2日はメキシコの「死者の日(Día de Muertos)」でした。Memento Mori(メメント・モリ)はラテン語で「死を想え」という意味。インドで撮られた「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」というキャプションがついた衝撃の一枚が今なお「伝説」として語られる同名の藤原新也氏の写真集が発刊されたのは1983年でした。当時「インドに行ったら人生が変わる」と盛んに言われましたが、私はその後、インドには計3回も行ったのに、人生、なんにも変わりませんでした(苦笑)。

 YOASOBIの幾田りらさんも参加したOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」は今週13位で、トップ10から滑り落ちました。盛者必衰の理。

 

Slimane(スリマン)


Slinmane

 12月5日リリースの「Il faut que tu saches」(「君は知る必要がある」という意味)が今週のアルバムチャートで3位に初登場したフレンチポップスのシンガーソングライター、Slimane(スリマン)は、2022年9月13日号と、ユーロヴィジョン・ソングコンテストで4位になった後の2024年5月21日号でくわしく解説していますが、おそらく大ヒットした2019年のVitaa(ヴィタ)とのデュエット曲「Je te le donne」(最高12位)で彼を知った人も少なくないことでしょう。

 1989年10月、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県シェル(Chelles)生まれの36歳。本名はSlimane Nebchiといいアルジェリア系です。少年時代は教会でゴスペルを歌い、学生時代はパリ9区と18区にまたがる盛り場ピガール(Pigalle)地区の酒場でピアノを弾きながら曲を書いていました。2016年、フランス版「The Voice」第5シーズンに出場してフローラン・パニーら審査員全員が推薦し一般投票でも首位という完全優勝を遂げ、26歳でメジャーデビューしています。

 2016年のデビューアルバム「À bout de rêves」は最高1位、2018年のセカンドアルバム「Solune」は最高2位、2019年のVitaaとの共作アルバム「VersuS」は最高1位、2022年のアルバム「Chroniques d'un Cupidon」は最高1位でした。3年ぶりに出した「Il faut que tu saches」は5枚目のアルバムになります。2023年リリースのユーロヴィジョン・ソングコンテスト出場曲「Mon amour」はシングル最高2位というヒットを飛ばしています。

 さて、12曲入りの新作アルバムはアーバンポップ、R&B、ヒップホップなど、さまざまな音楽要素を取り入れていますが、収録曲からMVが11月7日に先行公開された「Mieux que moi」をお聴きください。最後は次のようなリフレインで締めくくっています。

Oh mon dieu dis moi c'que j'fais là. Trop souvent j'me d'mande pourquoi moi. Oh j'espère mon dieu que tu m'pardonneras. Ce monde est fou mon dieu mais tu l'sais mieux que moi. 

(拙訳)「ああ、私の神様、私がここで何をしているのか教えてください。何度も何度も、私はなぜここにいるのかを考えています。ああ、私の神様、私を許してください。この世界は狂っています、神様。とはいえど、あなたはそのことを私よりもよくご存知です」

 まるで告解(confession)のような歌詞(paroles)ですが、おそらく、彼が原点回帰してみたいのは、少年時代に親しんだゴスペルなのでしょう。

 

Slimane(スリマン) - Mieux que moi (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲 Chanson Populaire en France
 
2025年12月9日号

 

2025年12月5日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 +971 - Ninho

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 Hélé - Helena

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Adrénaline - M.Pokora

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Destinée - Aya Nakamura

 9 On s'en rappellera pas - Disiz

 10 IV Saisons - Keen'V

 

「Melodrama」のシングル1位はこれで8週連続。9位にNinhoの「+971」が登場しました。国際電話ならアラブ首長国連邦 (UAE) の国番号ですが、リリックの中身はUAEとは無関係な、やさぐれたラップ・フランセです。下を見ると16位にMariah Carey(マライア・キャリー)の「All I Want For Christmas Is You」、28位にWham!(ワム!)の「Last Christmas」が浮上してきて「ああ、もう12月なんだなぁ」と感じさせます。マライア、ワム!、山下達郎さんで音楽業界の「歳末季節商品御三家」ですね。

 今週はなぜか再浮上組が多いアルバムチャート。1位はMaître Gims先生の「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」。初回ヴァージョンのリリースは2024年9月13日で、日本は甘く見てはいけないチュニジアの守備並みの粘り。2位のHelena(エレナ)の「Hélé」は3月14日発売で、3月21日付では1位でした。2025年3月25日号でくわしくご紹介しましたがベルギーの女性シンガーソングライターで、2023年にTF1「Star Academy」第11シーズンに出場し、準決勝でピエール・ガルニエに敗れましたがメジャーデビューを果たしています。ベスト8の壁を破ったのが評価された? 日本もあやかりたい。

 

M.Pokora

 アルバム4位に、M.Pokora(M・ポコラ/Matt Pokora)が2025年3月21日にリリースし、3月28日付で1位になった通算10枚目の「Adrénaline」が再浮上しました。2025年4月1日号でくわしくご紹介しましたが、ストラスブール(Strasbourg)生まれの40歳のシンガーソングライターで、少年時代から故マイケル・ジャクソンの信奉者でした。現在ヨーロッパツアー中で11月28日に出身地ストラスブールのZénith(ゼニス)で凱旋公演を行っています。

 彼の父親は70-80年代にリーグ・アンのメスやトロワなどに在籍して通算46ゴールをあげたストライカーAndré Tota(アンドレ・トタ)で、ナンシーやサンテティエンヌにいた「涅槃で待ってる」ミシェル・プラティニとほぼ同世代。息子はポーランド系なのでPokoraと名乗っています。

 6位のフレンチポップスの大御所Florent Pagny(フローラン・パニー)の22枚目のアルバム「Grandeur nature」も再浮上組。9月12日リリース。アフロビートの女将軍Aya Nakamura(アヤ・ナカムラ)の前週1位「Destinée」は、再浮上組の群れに押し出され今週、順位を8位まで下げました。このまま引き下がるとは思えませんが、逆襲はあるでしょうか?

 

Keen'V(キーン・ヴェー)


Keen'V

 今週のアルバムチャート10位に11月28日発売の12曲入り新作アルバム「IV Saisons」が登場したKeen'V(キーン・ヴェー)は、レゲエ起源のダンス・ミュージック「ラガ(Ragga)」にかけてはフランスを代表するミュージシャンです。2021年5月18日号でとりあげていますが、それから4年半も経過したので、改めてプロフィールをご紹介します。

 1983年1月、ジャンヌ・ダルクが広場で火あぶりになった町、ノルマンディー地方のセーヌ=マリティーム(Seine-Maritime/76)県ルーアン(Rouen)生まれの42歳。本名はKevin Bonnetで、Keen'Vは「キーン・ヴェー」またはV=5とみなして「キーン・サンク」と読みます。

 カリビアン・ミュージックが大好きな消防団員がルーアンのクラブでたまたまDJを任されたその夜、お客さんに大ウケしたことがプロのミュージシャンになるきっかけでした。DJとして全仏のクラブを回り、「レゲエ」や「ラガ」の定番曲に交じって自作曲もちゃっかり披露。それが認められて25歳だった2008年、「Phenom'N」でアルバムデビューします。

 2011年、シングル「J'aimerais trop」が最高3位、セカンドアルバム「Carpe Diem」が最高9位になり、その名を広く知られます。2012年のアルバム「La vie est belle」が最高2位、2013年のアルバム「Ange ou démon」で初の最高1位になって以降、「Saltimbanque」(2014年)、「Là oú le vent me mène」(2015年)「7」(2017年)が3作連続で最高1位を記録します。2019年の「Thérapie」、2021年の「Rêver」は最高2位でしたが、2022年のアルバム「Diamant」で再び最高1位になっています。シングルでは2013年の「La vie du bon côté」が最高6位とヒットを飛ばしました。

 Keen'Vの音楽の特徴はもともと「歌詞(paroles)はちょっとエッチだけど、曲はダンサブルでノレる」というもの。ラガ、レゲトン、メレンゲ、アフロビートなどがクロスオーバーして、リゾート気分で聴ける「夏男」路線でした。3年ぶりに出したスタジオアルバム「IV Saisons」はどうでしょうか?

 収録曲から、9月にMVが先行公開された「Regarde-moi」(僕を見て)をお聴きください。「エッチ路線」を封印したまじめな歌詞をストレートに訴えかけるような曲調。40歳を過ぎて、イメージチェンジを図っているような感じもしますが……。

 

Keen'V(キーン・ヴェー) - Regarde-moi

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

イベント仕置人

                            寺尾淳

 

其ノ一  国際花と緑の博覧会(花の万博)の巻

 

花と緑でお化粧されたハイテク都市よりも「田園都市」を見たかった

 

 大阪の鶴見緑地で4月1日から開かれていた「国際花と緑の博覧会(花の万博)」は、先日、9月30日をもって閉幕した。入場者は約2300万人を数え、協会では目標入場者数2000万人を達成して黒字決算の見通しもつき、「花の万博」は成功であったと発表している。しかし、実際にこの博覧会の会場を歩いてみると、「都市」と「自然」とがエリア別にはっきりと隔離させられたレイアウトには旧態依然たる都市思想しか感じられず、この博覧会は最初のマスタープランの段階で、時代を先取りした企画の先進性という面では、すでに勝負がついていたのではないかと思わざるを得ない。

 

 140ヘクタールに及ぶ広大な会場は「街のエリア」「山のエリア」「野原のエリア」の3ブロックに分かれている。「山のエリア」は、なだらかな小高い丘を中心に花壇や林があしらわれた庭園であり、散策には絶好の場所といえる。日本全国や世界中の花を見ながら歩くのは気持ちがいい。

 ところが、山から「街のエリア」に下りていくといささか興ざめする。パビリオン群が林立したその区域は「都市」に見立てられているのであるが、その「人工美の競演」だけを写真に撮り、花博未体験の人に見せて「これはつくば博です」「横浜博です」と紹介しても、必ず信じてもらえるだろう。ひょっとすると「70年の大阪万博です」と言っても、だませるのではないか。

 そう、この「街のエリア」に限っては、10年、20年経とうと変化のない博覧会の「究極のワンパターン」ぶりを、再び露呈しているのである。パビリオンの中身といえば、企業が持てるハイテクを駆使して、観客を「いいだろう、すごいだろう」と圧倒する「未来産業見本市」や「勧業博覧会」ばかりだ。

 

 口の悪い人間はそれを「子供だまし」と呼ぶ。

 私は「またか」と思った。

 

 それでも見せ物好きの人間は絶えない。どのパビリオンにも長い行列ができ、「街」の通りは「巡礼」の「善男善女」でごった返していた。たぶん、帰れば皆、ハイテクのありがたい「霊験」や「功徳」を語り広めるのであろう。

 

 もちろん、この「街のエリア」にも花壇や街路樹はある。しかし、それはあくまでも「都市緑化」の範囲にとどまっている。自然をいったん破壊した後に、樹木や花を植えて都市を緑化しようというこの行為は、都市文明が古代メソポタミアで始まって以来何千年もの間、人類が代々受け継いできた一種の「贖罪(しょくざい)行為」に他ならない。それでもなお都市住民たちは「街には自然がない」と嘆きながら、「手つかずの自然」を求めて郊外に足を伸ばした。200年前、現在の東京よりもはるかに緑が多かった「江戸」の都市住民たちさえも、上野の山に花見に「行き」、日光や江ノ島に物見遊山に「行った」。

 花の万博も、その古典的な「都市緑化」のパターンを踏襲しており、ポリシーの点で新味はない。もし「街のエリア」に住民がいるとしたら、本当に自然に親しみたければ「山のエリア」やに「行け」ということらしい。それでは今の東京や大阪の状態と、何ら変わるところがないではないか。

 

 日本には以前から、自然を残しながら都市機能を整備していこうという「田園都市」という構想がある。花の万博に当てはめるなら、「山のエリア」も、「野原のエリア」も、「街のエリア」も全部ごちゃ混ぜにしたような都市を建設しようという構想だ。手つかずの自然に親しみたいと思ったら、すぐそばにそれがあるから、わざわざ電車やクルマで郊外に足を伸ばさなくてもいい。この「田園都市」構想は、これまでの「自然破壊→緑化」というワンパターンの「贖罪(しょくざい)の構造」とは全く異なった、「都市と自然の関わり方」の新発想を示すものではないかと私は思う。

 

「田園都市」に近い形の都市計画を、私は今年6月、オーストラリアで見た。

 

 オーストラリアの南部にアデレードという都市がある。人口はちょうど100万人。訪れた時、南半球では冬の始まりの季節だったが、街はみずみずしい緑にあふれていた。砂漠に近いこの地方では、夏は40度を超えるすさまじい暑さと干ばつに襲われ、植物は一斉に枯れてしまう。だから、雨期の始まる秋は草木が芽ぶく新緑の季節なのである。

 この街は二重都市である。中心部の1キロ四方は「旧市街」で、行政地区や商業地区となっている。それを丸く取り囲むように幅500メートルほどの緑地帯があり、その外側に南欧風のコテージが立ち並ぶ住宅地区の「新市街」がずっと郊外まで広がっている。

 昔は市街地は旧市街の区域だけで、周囲には森が広がっていたそうだが、人口の膨張に伴って、旧市街の周囲の森を伐採して住宅地を作ろうという話が持ちあがった。この時、市議会で自然保護の論議が高まり「旧市街の周囲に森を残し、その外側に住宅地を作るように」という議決が通った。こうして、他の大都市では類を見ない都心の大グリーンベルトが生まれたのである。

 その緑の都市計画ゆえに、アデレードはオーストラリア西海岸のパースとともに「ガーデン・シティ(庭園都市)」と呼ばれている。

 自然の森や沼地をそのまま残したアデレードの緑地帯は動植物の宝庫である。住宅地の間を横切ってリスが走り、ユーカリの木の上には渡り鳥が巣を作る。この街では、自然と親しむのに遠くへ行く必要はない。手つかずの自然が、手の届く範囲にあるからだ。これこそまさに「田園都市」ではないか。

 

 花の万博協会発行の公式ガイドブックには、博覧会の「ねらい」とは「花と緑と人間生活のかかわりをとらえ、21世紀へ向けて潤いのある豊かな社会の創造をめざす」ことであると書いてある。ならば、都市での「花と緑と人間生活のかかわり」とは、花や緑をわざわざ「見に行く」ことではなく、日常生活の手の届く範囲内で「見る」ことではないのか。しかも、その花や緑は人工のものでなく、ありのままの自然であればベストであるはずだ。それを博覧会ならではの目に見えるやり方で、はっきりと具体的に示していただきたかった。

 

 花の万博には、人工物の匂いが、あまりにも多すぎた。

 

 

                          仕 置 控 帖

 

 行きやすい度

 

★★★

 

渋滞ない地下鉄で行ける点は評価していい

 

デラックスだ度

 

★★★

 

70年の大阪万博並みには金をかけている

 

  体が楽だ度

 

 

やたらに広い場内は自分の足だけが頼りだ

 

女の子きれい度

 

★★

 

いい女は大阪には残らないのかと思った

 

 雰囲気いい度

 

★★

 

お祭りムードを盛り上げる演出がイマイチ

 

   遊べる度

 

★★

 

ありきたりの遊園地だけではつまらない

 

  おいしい度

 

 

外食チェーンばかり食いだおれの名が泣く

 

    安い度

 

 

むちゃくちゃボるえげつない大阪商法も

 

   エコロ度

 

★★★

 

透水性の新型舗装は評価できるが不徹底

 

 繁盛してる度

 

★★★

 

猛暑で不入りだが9月は激しく追い込んだ

 

   総合採点

 

★★

 

全般に辛目の採点をせざるを得ないようだ

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのシャンソン ポピュレール
 
2025年12月2日号

 

2025年11月28日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 SKZ IT TAPE 'DO iT' - Stray Kids

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 8 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 9 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Destinée - Aya Nakamura

 2 On s'en rappellera pas - Disiz

 3 Mega BBL - Théodora

 4 La fuite en avant - Orelsan

 5 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 Recommence-moi - SANTA

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Nouveau souffle - Claudio Capéo

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Lux - Rosalía

 

「Melodrama」のシングル1位は今週でなんと7週連続です。3位に韓流8人組ボーイズStray Kids(SKZ/ストレイキッズ)の「SKZ IT TAPE 'DO iT'」が入り、以下前週比で順位1ランクずつ繰り下がりというトップ10でした。この曲は全米ビルボードチャートで1位になっています。10位の「ZOU BISOU」は、60年代にジリアン・ヒルズ、ソフィア・ローレン、森山加代子さんが歌ったイエイエ(Yé-yé)チューン「Zou Bisou Bisou(ズビズビズー)」とは別物の曲でした。

 

Aya Nakamura

 今週のアルバムチャート1位は、今や大物の貫禄あり。マリ出身のAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)のニューアルバム「Destinée」(運命)が登場。18曲入りで11月21日リリース。2023年の「DNK」以来2年ぶり5枚目のスタジオアルバム。収録曲の「No Stress」も今週シングル13位です。

 2位はDisiz(ディズ)の4枚目のスタジオアルバム「On s'en rappellera pas」(「僕らはそれを思い出すことはないだろう」という意味)。20曲入りで11月21日に出ました。ディズはアミアン(Amiens)出身の47歳のセネガル系のラッパーで、2022年にアルバム「L'Amour」が最高4位になった実績があります。Théodoraとのデュエット・チューン「Melodrama」がシングルチャート首位を独走中。

 2週連続1位だったOrelsan(オレールサン)の新作アルバム「La fuite en avant」は4位に後退しました。6位に入ったのが2024年5月24日発売のSANTA(サンタ)のアルバム「Recommence-moi」で約1年半ぶりの再浮上。サンタはニース(Nice)出身の34歳の女性シンガーソングライターで、2024年1月9日号でくわしくご紹介しています。ロックバンドのHyphen Hyphen(ハイフン・ハイフン)にいました。

 

Claudio Capéo(クラウディオ・カペオ)

 

Claudio Capéo

 今週、アルバム8位に3年ぶりの新作「Nouveau souffle」(11月21日リリース、15曲入り)がチャートインしたClaudio Capéo(クラウディオ・カペオ)は、アコーディオンを抱えた姿がトレードマークのフレンチポップスのシンガーソングライターです。1985年1月、アルザス地方南部、オー=ラン(Haut-Rhin/68)県セルネー(Cernay/アルザス語ではSanna/ドイツ語ではSennheim)生まれの40歳。本名はClaudio Ruccolo(クラウディオ・ルッコロ)といいイタリア系です。2020年12月15日号でくわしくとりあげていますが、久しぶりの登場なので音楽歴を改めてご紹介します。

 アコーディオンとの出会いは6歳の時でした。大工さんをしながらバンドを組んで路上や酒場で歌っていましたが、パリの地下鉄の駅でライブをしていたら(交通公団RATPから許可を受ければできます)、TF1のオーディション番組「The Voice:La Plus Belle Voix」の番組スタッフに声をかけられ2016年の第5シーズンに出場。「フレンチポップス三大ミシェル」の一人、ミシェル・デルペッシュの「Chez Laurette」を歌って審査員のフローラン・パニーに高く評価され、上位進出はできなくても異例のメジャーデビューを果たします。31歳でした。

 あのZAZを発掘した大物プロデューサーが関わったので「男性版ZAZ」とも呼ばれ、2016年のアルバム「Claudio Capéo」は5週連続1位。誇り高きホームレスを歌ったシングル「Un homme debout」は最高6位のヒットを記録。彗星のように現れたシンデレラボーイならぬ「シンデレラ中年男」でした。

 かつてドイツ領だったアルザス生まれでしかもイタリア系という「異邦人」視されがちな出自の苦労人が、フランス人が大好きな楽器アコーディオンを操って、人生のほろ苦さがにじみ出るようなフランス語の歌詞を乗せる弾き語りが、酸いも苦いも知る年上世代に好まれました。ジョン・レノンがよく言っていた「Working Class Hero」(曲はNoir Désirがカヴァーしていました)のフランス版とも言えるでしょうか?

 その後の活躍ですが、アルバムは2018年の「Tant que rien ne m'arrête」が最高6位、2020年の「Penso a te」が最高3位、2022年の「Rose des vents」が最高3位で、今回の新作まで5作連続でトップ10に入りするという手堅い人気です。2024年にはPatrick Fiori(パトリック・フィオーリ)のアルバム「Le chant est libre」にアメル・ベント、スリマン、ソプラーノらと参加しています。

 さて、新作アルバムのタイトル「Nouveau souffle」は直訳すれば「新たな息吹」ですが、「深呼吸」や「心機一転」という意味になることもあります。ラストチューンは「Je suis un accordéon」で、ポップスターになっても自らを「一介のアコーディオン弾き」と称する謙虚さは健在。その収録曲から10月に先行配信された「Madame」をお聴きください。

「Je suis un fou madame, fou de la reine, je suis un pitre(僕は狂っています、マダム。女王様に首ったけな、僕は一人のピエロです)」「Et si tu m'aimes plus,j'achèterai tous les cœurs du monde à nouveau(そしてもし、あなたが僕を愛してくれたら、僕は改めて、世界じゅうのハートを買ってきて差し上げます)」といった歌詞(paroles)のラブソングです。

※現在、フランスでの女性への敬称、呼びかけは婚姻歴、年齢に関係なく全てMadameです。Mademoiselle(マドモアゼル)は2012年、サルコジ政権下で「好ましくない」とされ、公文書での使用が禁止されました。お気をつけください。

 

Claudio Capéo(クラウディオ・カペオ) - Madame

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗とChanson Populaireの文字
 
2025年11月25日号

 

2025年11月21日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 9 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 10 Un monde à l'autre - GP Explorer, Maître Gims, La mano1.9, SCH

 

【アルバムチャート】

 1 La fuite en avant - Orelsan

 2 Survival Mode - Rilés

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Capitale du crime radio Vol.2 - La Fouine

 6 LUX - Rosalía

 7 Marjolaine - Gaëtan Roussel

 8 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Studio Saint-Germain(avec Ours & Pierre Souchon) - Alain Souchon

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)のシングルチャート1位は今週で6週連続です。シングル5位に「Love You」が入ったNono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)はパリ19区出身のコンゴ系ラッパー。夏に「Paris」がヒットし、2025年8月19日号でくわしくご紹介しました。

 6位に人気ラッパーのFranglishとKeBlackによる「Génération impolie」(無礼な世代)が再浮上。7位はテイラーちゃんがトップ10に復帰。9位のThéodoraとJuLの「ZOU BISOU」はフランス語で「早くキスして」という意味。1962年に英国人女優のジリアン・ヒルズ(Gillian Hills)がフランス語で歌ってヒットした「Zou Bisou Bisou(ズビズビズー)」というナツメロの換骨奪胎カヴァー。イタリアではソフィア・ローレン、日本では森山加代子さんが歌ったラブ・チューンでした。10位にGP Explorerの企画盤収録曲が再浮上しました。

 YOASOBIの幾田りらさんをフィーチャーした曲「Plus rien」が収録されていることで日本でも話題のOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」(やぶれかぶれ)は、今週もSNEPアルバムチャート1位です。

 2025年1月17日付のチャートで初登場1位だった「Survival Mode」がアルバム2位に再浮上したRilès(リレス)は1996年1月、ノルマンディー地方の中心都市、セーヌ=マリティーム(Seine-Maritime/76)県ルーアン(Rouen)生まれの29歳のラッパー。本名はリル・カシミ(Rilès Kacimi)といいアルジェリア国籍です。2025年1月21日号でくわしくご紹介しましたが、ルーアン大学で英文学を修め、英語が得意。リリックもその大部分を英語で書いています。

 5位のLa Fouine(ラ・フーイン)の「Capitale du crime radio Vol.2」(犯罪の首都ラジオ2)も再浮上組。2025年9月25日にリリースされ、2025年10月3日付のアルバムチャートで1位になっています。2024年11月に出した「Capitale du crime radio Vol.1」の続編。ラ・フーインはイヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)の出身で43歳のモロッコ系ラッパー。2024年12月3日号でくわしくご紹介しています。

 

Gaëtan Roussel

 アルバム7位に11月14日発売の「Marjolaine」が入ったGaëtan Roussel(ガエタン・ルセール)は、ロックバンドのLouise Attaque(ルイーズ・アタック)のリードヴォーカルを務めていた人です。1972年10月に南仏オクシタニー地方、アヴェロン(Aveyron/12)県の県庁所在地ロデーズ(Rodez)で生まれた53歳。2021年3月30日号でくわしくご紹介しました。アルバムタイトルのMarjolaineとはフランス菓子の「ガトー・マルジョレーヌ」のこと。風貌はゴツいですが彼の趣味はお菓子づくりで、パティシエのように、エスプリのきいた詩的な歌詞と繊細な曲を送り出せる才人です。

 

Alain Souchon(アラン・スーション)

 

Alain Souchon

 Alain Souchon(アラン・スーション)は、フレンチポップスの超ベテランのシンガーソングライター。1944年5月に旧仏領モロッコのカサブランカで生まれ、現在81歳です。ヴィクトワール音楽賞を9回受賞。当ブログでは2020年5月5日号で最初にとりあげました。

 父親は英米文学の教師、母親は小説家というインテリ家庭に育ち、高校時代に第一次ブリティッシュ・インヴェイジョン全盛期のロンドンに留学。それが貴重な音楽体験になります。帰国後は作詞・作曲しながらパリ13区の酒場で歌っていました。1971年、27歳でレコードデビューしますが鳴かず飛ばずで、結婚して子どももいたので金銭的に苦労しました。

 フレデリック・フランソワ(Frédéric François)に提供した曲が好評だったことでようやく音楽で食べていくメドが立ち、1974年のシングル「J'ai 10 ans」(僕は10歳)と同名のアルバムが出世作になりました。1977年の「Jamais content」が初のアルバム1位になります。彼の代表曲といえば、何と言っても1993年にシングルチャート1位になった「Foule Sentementale(センチメンタルな大衆)」で決まりでしょう。これまでに出したスタジオアルバムが最高1位になること7回で、2019年の「Âme fifties」も最高2位になっています。

 俳優としてもクロード・ベリ監督の『ジュ・ヴ・ゼーム(Je vous aime)』(1980年)ではジャン=ルイ・トランティニャン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、セルジュ・ゲンズブールと共演。アニエス・ヴァルダ監督の『アニエス・vによるジェーン・b(Jane B.sur Agnès V.)』(1988年)ではジェーン・バーキン、フィリップ・レオタール、シャルロット・ゲンズブールと共演しています。すごい面々ですね。

 ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠フランソワ・トリュフォー監督のジャン=ピエール・レオ(Jean-Pierre Léaud)が主演する「アントワーヌ・ドワネル君の冒険もの」連作映画の第5作(最終作)『逃げ去る恋(L'Amour en fuite)』(1979年)では、ロック名曲メドレー「Rockollection」で知られる生涯の盟友、ローラン・ヴルジー(Laurent Voulzy)とともに音楽を担当し、同名の主題歌を歌っています。

 さて、今週10位の新作アルバム「Studio Saint-Germain(avec Ours & Pierre Souchon)」は11月14日リリース。Ours(ウルス/写真左)とはアラン・スーション(写真中)の次男シャルル(Charles/47歳)のあだ名で「熊」という意味。人を食べないように。Pierre(ピエール/写真右)は彼の長男(53歳)で、交通事故死した実父の名前を受け継ぎました。この親子3人がパリ6区のセーヌ左岸にある「スタジオ・サンジェルマン」でレコーディングした共作アルバムです。このサンジェルマンはPSGのルーツの「アン=レー(en-Laye)」ではなく「デ=プレ(des-Prés)」のほうですね。アンドレ・ブルトンやサルトルがカフェで語っていたほう。

 収録曲には往年のヒット曲「Foule Sentementale」や「La ballade de Jim」「Et si en plus y'a personne」、映画の主題歌「L'amour en fuite(逃げ去る恋)」なども収録されていますが、今回は1976年につくった曲を3人で歌う「S'asseoir par terre」(「地べたに座れ」という意味)をお聴きください。「君が人生に疲れたら、いったん地べたに座って休んでもいいんだよ」という、アラン・スーションらしい知的で優しいポップスです。

 

 Alain Souchon(アラン・スーション),Ours & Pierre Souchon(ウルス&ピエール・スーション) - S'asseoir par terre

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年11月18日号

 

2025年11月14日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Soleil Levant - Orelsan & SDM

 6 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 7 Ailleurs - Orelsan

 8 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 9 Boss - Orelsan

 10 Encore une fois - Orelsan & Yamê

 

【アルバムチャート】

 1 La fuite en avant - Orelsan

 2 LUX - Rosalía

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 6 Jeune prince - Rsko

 7 Et si j'échoue? - Bouss

 8 The Last Race - GP Explorer

 9 Thug ceremony - Leto

 10 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)のシングルチャート1位は今週で5週連続です。

 アルバムチャートの新たな1位はOrelsan(オレールサン)の新作。大物の貫禄で、Maître Gims先生の「Le Nord se souvient:L'Odyssée」は4位に後退させられました。シングルチャートでもOrelsanはニューアルバム収録曲から4曲がチャートインし、5位の「Soleil Levant」はコンゴ系ラッパーのSDM、10位の「Encore une fois」はカメルーン系ラッパーのYamêをフィーチャーしています。

 

Rosalía

 アルバム2位はスペイン・カタルーニャ自治州生まれ、33歳のアーバン・フラメンコの歌姫Rosalía(ロザリア)が11月7日に出した4枚目のスタジオアルバム「LUX」です。2022年秋から2023年初めにかけて「Despechá」がフランスでもシングルチャートでトップ10入りした彼女は、スペイン伝統のフラメンコにポップス、R&B、EDMなどが融合したスタイルが持ち味ですが、新作はうって変わってロンドン交響楽団が全面協力し、4楽章構成でクラシックの要素を強く押し出した実験作。アルバムのテーマはカトリックの「女性の聖人たち」で、ジャンヌ・ダルクもちゃんと入っています。

 ウクライナ生まれのユダヤ人で、一家がポグロム(大虐殺)を避けてブラジルに亡命した作家クラリス・リスペクター、フランス生まれのユダヤ人でナチス占領下を脱出し英国で客死した哲学者シモーヌ・ヴェイユ(政治家とは別人)の著書にインスピレーションを受け、制作ではアイスランドの才女ビョークが参加しました。なんだか難しそうです。

 アルバム6位に11月7日リリースの2年ぶり3枚目のスタジオアルバム「Jeune prince」(若き王子)が入ったRsko(ルスコ)は、年齢不詳の若手ラッパー。私小説的なリリックが人気です。ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ボワ・ラベ(Bois-l'Abbé)出身で、コンゴ系。2023年11月14日号でくわしくご紹介しました。2020年にシングル「Porsche」(ポルシェ)でデビューし、2021年にEP「En chemin」を出し、スタジオアルバムは2022年に「LMDB」、2023年に「Memory」を出しています。メンバーがみんな同じ町の出身のL2Bは大の親友で、Rskoが加入する話もあったそうです。

 9位に11月7日リリースの新作アルバム「Thug ceremony」(「凶悪犯の儀式」という怖い意味)が登場したLeto(レト)は、2022年3月1日号でくわしくご紹介していますが、パリ17区出身、コンゴ系で27歳のラッパー。今年2月にアルバム「Life」が最高7位になっています。LetoはAéroとヒップホップデュオ「PSO Thug」を組んでいますが、PSOとは彼らの地元にあった旧城壁(ティエールの城壁)の「Porte de Saint-Ouen(サン=トゥアン門)」の略で、同名の地下鉄13号線の駅、21世紀になってからパリ五輪の足となるべく環状道路(Périphérique/ペリフェリック)に沿って建設されたトラム(路面電車)3b線の駅があります。

 

Orelsan(オレールサン)


Orelsan

 今週のSNEPアルバムチャートで、堂々の貫禄でニューリリースの「La fuite en avant」(11月7日リリース)が1位に登場したのが、今やフランスを代表する国民的ミュージシャンとなったOrelsan(オレールサン)です。ヒップホップから出発しながら、ジャンルを超越したアーティストとしてヴィクトワール音楽賞を合計12回受賞の最多記録を保持。2022年に行われたツアーでは49公演で累計60万人のオーディエンスを集めました。

 オレールサンは1982年8月、ノルマンディー地域圏オルヌ(Orne/61)県の県庁所在地アランソン (Alençon)の生まれで43歳。本名はオレリアン・コタンティン(Aurélien Cotentin)といい、「オレリ」に日本語の「さん」をつけてステージネームにしたそうです。明治末の宮武外骨の「滑稽新聞」を彷彿とさせる「過激にして愛嬌あり」なその音楽スタイルから「フランスのエミネム」とも称され、当ブログでは2020年11月24日号で最初にご紹介しました。

 1999年から音楽活動を始め、2009年にファーストアルバム「Perdu d'avance」(最高64位)を出すや、さっそくリリックの言葉づかいが政治家にかみつかれるなど本領を発揮。2011年のセカンドアルバム「Le chant des sirènes」(最高3位)で翌年2月、初のヴィクトワール音楽賞(アーバンミュージック最優秀アルバム賞)を受賞します。ラッパーのGringeとのコンビのヒップホップデュオ「Casseurs Flowters」でも2013年と2015年に2枚のアルバムを出しています。2017年のサードアルバム「La fête est finie」(最高1位)はミリオンセラーになり、2021年の4枚目「Civilization」(最高1位)は2021年、2022年と連続でフランス国内トップセールス。2022年、2023年のヴィクトワール音楽賞では主要3部門で賞を獲得しています。

 移民、格差、孤立など重たいテーマを選んでも、マジ一本にならずアイロニーとユーモアをまぶして軽妙に仕上げるところがいかにもフランス人ウケし、それによってヒップホップの領域にとどまらない国民的な人気を得ています。

 さて、17曲入りの「La fuite en avant」(「後先を考えない無謀で行き当たりばったりの行動」を指す熟語。『論語』述而篇の「暴虎馮河」に相当)は4年ぶり5枚目のスタジオアルバムで、楽曲でコラボレーションしているアーティストは、Yamê、SDM、2021年の解散までDaft Punk(ダフト・パンク)を28年間率いたエレクトロ・ミュージックの第一人者Thomas Bangalter(トマ・バンガルテル)、韓国のK-POP女性グループ「FIFTY FIFTY」に加え、「Plus rien」(今週シングル14位)では大みそかの紅白単独出場の「YOASOBI」の幾田りらさん(Lilas)をゲストボーカルに迎えたという、ユニークなラインナップです。

 アルバム発売に先立って10月、戦国武将のような甲冑をつけた彼を主人公に日本で撮ったデビッド・トマシェフスキ監督の映画『Yoroï(鎧)』が、フランスやベルギー、スイスで公開されました。

 アルバム収録曲から、映画撮影のかたわら東京のドン・キホーテやカラオケ店、富士山麓をめぐったビデオクリップが11月10日に先行公開されている「Ailleurs」(「よそ」「他の場所」という意味)をお聴きください。今週シングルチャート7位です。なお、新作アルバムには「Osaka」(今週シングル17位)という曲もあり、リリックビデオに大阪・道頓堀のコテコテ看板が登場します。「ワンパンマン」「鬼滅の刃」「ドラゴンボール」「鋼の錬金術師」など日本のアニメのファンだと公言するオレールサンですが、ニッポンの旅は楽しかったでしょうか?

 

Orelsan(オレールサン) - Ailleurs

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲チャート
 
2025年11月11日号

 

2025年11月7日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Mon bébé - RnBOi

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 6 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Skywalker Haze - A COLORS SHOW - Ninho

 9 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 10 Biff pas d'love - Bouss

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Dom Pérignon Crying - Josman

 3 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Et si j'échoue? - Bouss

 6 The Last Race - GP Explorer

 7 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 8 Ultraviolent - KYO

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」(メロドラマ)が4週連続のシングルチャート1位です。

 シングル8位にNinhoの「Skywalker Haze - A COLORS SHOW」が登場。大物ラッパーのNinhoが冒頭でいきなり「Binks Binks」と連呼するので「スカイウォーカーに(ジャージャー)ビンクスとくれば『スターウォーズ』かな?」と思うかもしれませんが、リリックの中身はそれとは無関係。荒廃、狂気、暴力、犯罪、無力感、自己嫌悪、拝金主義、社会批判が延々と続く、いつものラップフランセです。タイトルの「Skywalker」「(Amnesia)Haze」は大麻(cannabis)の品種名。「A COLORS SHOW」とはドイツの首都ベルリンにある音楽スタジオ「COLORS」がYouTubeで公開しているパフォーマンス動画で、Ninhoも出演しています。

 

Josman

 アルバムチャート2位に10月31日リリースの「Dom Pérignon Crying」が登場したJosman(ジョスマン)は、オルレアン(Orléans)に近い百年戦争、ユグノー戦争の激戦地、シェール(Cher/18)県ヴィエルゾン(Vierzon)で生まれた33歳のラッパー。両親はコンゴとアンゴラの出身です。2022年3月25日付で「M.A.N (Black roses & Lost feelings)」がアルバム1位になった実績があります。

「Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン)」は、LVMH傘下のモエ・エ・シャンドン(Moët et Chandon)社が生産する最高級ヴィンテージ・シャンパン。メゾン(Maison/醸造所)はシャンパーニュ地方のマルヌ(Marne/51)県※のエペルネ(Épernay)にあります。ベネディクト会のオーヴィレール修道院の修道士ピエール・ペリニヨン(Pierre Pérignon)が太陽王ルイ14世治世下の1668年に発泡性ワインの醸造を任されたことが起源です。「Dom」は修道士の称号。日本で「ドンペリ」と略しているのは、ちょっと失礼です。

※イル=ド=フランス地域圏のヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県とは異なる地域です。お間違えなく。

 

KYO(キョー)


Kyo

 ロックファンの皆様。お待たせしました。今週のアルバムチャート8位に、KYO(キョー)が10月31日に出した4年ぶり7枚目の12曲入りスタジオアルバム「Ultraviolent」が登場しました。タイトルは英語で「超暴力的」という意味です。ちなみに「紫外線」は「Ultraviolet」で、1字違いで大違いです。

 KYOは4人組のポップロック・バンド。パリ郊外のイヴリーヌ(Yvelines/78)県ヴェルヌイユ=シュル=セーヌ(Verneuil-sur-Seine)にあるノートルダム・レ・ゾワゾー(Collège Notre-Dame Les Oiseaux)校に通っていたニコラ・シャサニュ(Nicolas Chassagne)、フローリアン・デュボ(Florian Dubos)、ファビアン・デュボ (Fabien Dubos)の兄弟とブノワ・ポエ (Benoît Poher)の4人が1994年に結成しました。彼らは好きなバンドがニルヴァーナ、サウンドガーデン、レディオヘッド、パール・ジャムという共通点があったそうです。

 バンド名は日本の格闘ゲーム「ザ・キング・オブ・ファイターズ」のキャラクターで、当時は高校生という設定の草薙京(Kyo Kusanagi)からきています。日本の古武術と独自の拳法でファイトする草薙京は、後にマンガ、アニメやその実写版もつくられ、格闘家でありながらクールなイケメンという設定なので女性に人気がありました。

 さて、ロックバンドのKYOはパリとその周辺でライブ活動を始めますが、当初は「高校生バンドに毛が生えた程度」と軽くみられて会場はガラガラ。それでも1997年にソニー・ミュージックと契約して、ジョニー・アリディとシルヴィ・ヴァルタンの間の息子、デヴィッド・アリディ(David Hallyday)のライブのオープニングアクト(早い話が「前座」)を務めたりしました。このデヴィッドが、KYOを励まして自身のミュージックビデオの中で演奏をさせ、メジャーシーンへと押し上げてくれた恩人の一人でした。

 2000年、初のスタジオアルバム「KYO」を出しますが、セールスは4万枚程度(最高71位)。しかし2003年、オランダの人気女性シンガーSita(シータ)をフィーチャーしたシングル「Le chemin」、セカンドアルバム「Le chemin」でブレイクします。アルバムはSNEPアルバムチャートで最高2位。翌年2月のヴィクトワール音楽賞(Les Victoires de la Musique)で最優秀アルバム賞、最優秀新人グループ・アーティスト賞、最優秀新人ライブグループ賞を受賞し、「NRJ Music Awards」でも4部門で賞を取っています。続いて全仏ツアーも成功させ、そのライブ盤もヒットしました。2004年のアルバム「300 lésions」では初のアルバム最高1位になり、2005年には父親のほうのジョニー・アリディや女性ポップシンガーのジェニフェール、さらにミュージカル「Le Roi Soleil(太陽王)」にも楽曲提供を行うほどの存在へと出世しました。

 そんなサクセス・ストーリーを実現させたKYOでしたが、2007年、活動を休止してメンバーはそれぞれにソロ活動を開始します。それでも「これは解散ではない」とアナウンスしていました。YMOではないですが軍隊の「散開」のようなものでしょうか?

 バンドあるあるで、ライブがガラガラだった無名時代以来のファンがある種の特権意識を匂わせながら「昔の方がよかった」などと言い出すのを避けるリスク分散という観点でも、戦略的な活動休止は効果がありそうです。

 2013年になってバンド活動を再開します。アルバムは2014年に10年ぶりの「L'Équilibre」(最高2位)を出し、2017年に「Dans la peau」(最高29位)、2021年に「La part des lions」(最高16位)をリリース。そして今作「Ultraviolent」で、11年ぶりにアルバムチャートのトップ10に戻ってきました。新しいファンも獲得できたでしょうか?

 新作アルバムは「仕上がりはよりロック的に」「リリック(paroles)はよりヒップホップ的に」「サウンドはよりアンドシーヌ(Indochine)的に」なっているのだそうです。後輩たちにバンド名を出されてニコラ・シルキス(Nicola Sirkis)は苦笑いしたかもしれません。

 その収録曲から「K17」をライブでお聴きください。その歌詞(paroles)では「Célébré la vie dans nos lits. Roboosté la natalité」(僕らのベッドライフを祝った。出生率が回復した)と「房事」をリフレイン。高市内閣の黄川田少子化担当大臣、結婚制度の外にPACS(連帯市民契約)があるフランスは、出生率向上政策立案の参考になりますか?

 

KYO(キョー) - K17 (Live at Francofolies, La Rochelle 10/07/2025)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲 Chanson Populaire
 
2025年11月4日号

 

2025年10月31日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 5 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 6 Mon bébé - RnBOi

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Adoriano - Niska

 9 Biff pas d'love - Bouss

 10 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 3 Mega BBL - Théodora

 4 The Last Race - GP Explorer

 5 Et si j'échoue? - Bouss

 6 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 7 Le disque bleu - Benjamin Biolay

 8 Pyramide 2 - Werenoi

 9 Nés pour briller - L2B

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 今週のシングルチャートは「Melodrama」(メロドラマ)が3週連続で1位でした。この曲でThéodora(セオドラ/2025年6月17日号参照)とデュエットしているDisiz(ディズ)は、世界遺産のゴシック大聖堂で知られるソンム(Somme/80)県アミアン(Amiens)出身の47歳のラッパー。本名はSérigne M'Baye Gueyeといい、セネガル系です。Disiz la Pesteというステージネームで2000年にデビュー。病気の名前はまずいのかla Pesteを取ってDisizに改めました。2022年にアルバム「L'Amour」が最高4位になっています。

 

RnBoi

 6位に「Mon bébé」がチャートインしたRnBOiは19歳。セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ヌムール(Nemours)の生まれ。ビートメーカー(音楽制作でドラムパターンやベースラインなどを作る人のこと。「トラックメーカー」とも言います)から、Aya Nakamuraが設立したR&Bレーベル「DOUBLE JEU RECORDS」の第1号アーティストになり、6月にEP「My Eyes Only」でデビューしたばかりの新人です。ステージネーム「RnBOi」は、日本のアニメ『進撃の巨人』(フランス語タイトルは「Attaque des Titans」)の主人公エレン・イェーガー(フランス語のスペルはEren Jäger)のことで、自分と顔が似ているからだそう。実写版では故・三浦春馬さんが演じましたが、似てますか?

 シングル9位にBoussの新曲「Biff pas d'love」(le biffはお金を意味するスラングなので「カネに愛はない」)が登場。そこに愛はあるんか? 10位にFranglishとKeBlackの「Génération impolie」が入りました。「Génération impolie, on est culotté (c'est nous)」(拙訳:無礼な世代。俺たち生意気(それが俺たち))と、ラップします。culottéは、フランス革命以前は貴族階級がはきましたが、現代では男の子がはく半ズボン「キュロット(culottes)」が語源で、生意気、あつかましい、子どもじみた、といった意味があります。

 アルバムチャートは新作リリースが乏しかったので、トップ10は前週からの横すべりと旧作の再浮上で占められました。1位はMaître Gims先生、2位はKPop Demon Hunters。Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)の新作は前週の2位から後退しても7位。5位のBouss(ブース)の「Et si j'échoue?」は2024年11月、9位のL2Bの「Nés pour briller」は2025年2月、8位のWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」は2024年10月、10位のWerenoiの「Diamant noir」は2025年4月に発売されたアルバムです。月が替わって11月に出る新作に期待しましょう。

 

Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)


Alexandre Tharaud

 今週は10月17日に発売したアルバム「Pianosong」(邦題:ピアノソング ピアノが唄う)が前週、SNEPクラシックチャートで3位に入ったこの人をとりあげます。ピアニストのAlexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)です。

 フランスのピアニストと言えば、ラッパーとコラボしたり、パリ五輪の開会式で火がついたピアノを演奏したりなど何かと話題の多い「ネオクラシカルの旗手」ことSofiane Pamart(ソフィアン・パマール)を、このブログでも何度もとりあげてきましたが、アレクサンドル・タローも現代フランスを代表するクラシックのピアニストです。新作の30曲入り企画盤「Pianosong」で彼が主に弾いているのは、古き良き時代の「シャンソン」すなわち「仏蘭西歌謡曲」です。

 アレクサンドル・タローは1968年12月生まれの56歳。パリ14区の出身ですがルーツはケルト文化圏でもあるブルターニュ地方です。父親はシトロエンの自動車修理工場を経営していましたが、かつてはバリトン歌手でした。母親はバレエ、ダンスの教師で、パリのオペラ座(ガルニエ宮)の舞台に立ったこともあるそうです。

 アレクサンドル少年は5歳からピアノを習い始め、祖父母が住むブルターニュで初舞台を踏みます。パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)卒業後、「マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクール」で2位、「ミュンヘン国際音楽コンクール」で2位になり、ヨーロッパのクラシック音楽界でその名を知られるようになります。その活躍はフランス国内にとどまらず、英国のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、スイスのチューリヒ・トーンハレ管弦楽団などとも共演していて、ヨーロッパ各地で開かれる音楽祭でもそのピアノ演奏を披露しています。

 クラシックの枠内にとどまることなく、ジャンルを超えた「クロスオーバー・プロジェクト」にも意欲的。2012年にはミヒャエル・ハネケ監督、名優ジャン=ルイ・トランティニャン主演の映画『Amour』(邦題:愛、アムール)で、主人公の弟子のピアニスト役で俳優としてデビューしました。2018年にはサーカス出身の異色のダンス・アーティスト、ヨアン・ブルジョワ(Yoann Bourgeois)のパフォーマンス映像にドビュッシーの「月の光(Clair de Lune)」を弾いて参加しています。ヒップホップのブレイクダンスのパフォーマンスで、バロック時代の音楽家フランソワ・クープラン(François Couperin)の曲で伴奏をつけるという、なかなか面白い試みにも挑戦しています。2022年には、故・坂本龍一氏の曲も含めて映画音楽を合計50曲も弾き続ける企画盤「CINEMA」を出しています。

 ピアノを「人間の声のように響かせたい」というのが彼のモットーで、さまざまな歌曲のメロディーをピアノで弾くことがライフワーク。フランス人だけに昔のシャンソンへの関心は強く、2017年にはバルバラ(Barbara)へのトリビュート・アルバムを出したこともあります。今回の「Pianosong」は彼の「シャンソン愛」の集大成と言ってもいいでしょう。

 アルバムには、ユベール・ジロー作曲の「パリの空の下(Sous le Ciel de Paris)」、シャルル・トレネの「詩人の魂(L'âme des poetes)」、ジャック・ブレルの「行かないで(Ne me quitte pas)」、シャルル・アズナブールの「ラ・ボエーム(La Boheme)」、エディット・ピアフの「愛の讃歌(L'Hymne à l'amour)」などなど、シャンソンの著名ナンバーが収められています。

 他にはレオ・フェレ、ジョルジュ・ブラッサンス、バルバラの曲や、フレンチポップスに寄ったところではセルジュ・ゲンズブール、セルジュ・ラマ、ミシェル・フーガン、ミシェル・ベルジェや、ミレーヌ・ファルメールのパートナー、ローラン・ブトナの曲も入っています。

 アルバム収録曲の中から、シャンソンのファンの皆さんには申し訳ありませんが、ロックオペラ「Starmania」(2022年8月23日号参照)を成功させながら1992年に44歳で早世したミシェル・ベルジェ(Michel Berger)が、妻のフランス・ギャル(France Gall)に提供して1987年にヒットした「Évidemment」をお聴きください。

 アレクサンドル・タローはこれまで何度も来日していますが、今年も11月、12月に来ます。11月9日に名古屋「ホール・ルンデ」、11月11日に東京「武蔵野市民文化会館小ホール」(児玉桃さんとのデュオリサイタル)、11月13日に東京「ヤマハホール」、12月7日に東京「かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール」、12月14日に横浜「みなとみらいホール・大ホール」で、コンサートがあります。

 

Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー) - Évidemment

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月28日号

 

2025年10月24日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 6 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 7 En boucle - GP Explorer,Adèle Castillon,Zamdane

 8 Viano - RK,Genezio

 9 Toute la nuit - GP Explorer,Anyme023

 10 Adoriano - Niska

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Le disque bleu - Benjamin Biolay

 3 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 4 The Last Race - GP Explorer

 5 Mega BBL - Théodora

 6 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 7 Vivre...encore - Kendji Girac

 8 Et si j'échoue? - Bouss

 9 Deadbeat - Tame Impala

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 DisizとThéodoraによる「Melodrama」(メロドラマ)が今週のシングルチャートで2週連続の1位。以下9位までは前週のトップ10にも入っていて順位が入れ替わっただけですが、10位にNiskaの「Adoriano」が再浮上しました。この曲は9月12日付で3位になっています。タイトルはセリエAのインテルでFWとして活躍し2016年に引退した元ブラジル代表のアドリアーノ氏のことです。ブラジルではサッカーの「皇帝」と言えば、ドイツの故ベッケンバウアー氏ではなく彼のことを指します。

 

Kendji Girac

 アルバム7位にお久しぶりのKendji Girac(ケンジ・ジラク)登場。「Vivre...encore」は2024年10月にリリースされた6枚目のスタジオアルバム(最高3位)です。2020年10月27日号で最初にくわしくご紹介している彼は現在29歳。南西部アキテーヌ地方ドルドーニュ(Dordogne/24)県ペリグー(Périgueux)の生まれですが、父親はスペイン・カタルーニャ自治州の出身で、ロマ民族※(フランス語でジタンgitan、スペイン語でヒターノgitano)の血を引いています。2014年、TF1のオーディション番組「The Voice,La plus bell voix」シーズン3で優勝後、ポップスターとして人気が急上昇。出したアルバムは全て最高位3位以上です。2024年4月に銃の暴発事故で重傷を負いましたが、すでに音楽活動に復帰してシングル盤を出していて、来年1月からツアー活動も再開します。よかったですね。それに期待してのチャート再浮上でしょうか?

※「ジプシー」は蔑称なので使用を控えるように欧州連合でも国連でも言っていて、日本では放送禁止用語です。

 9位に「Deadbeat」がランクインしたTame Impala(テーム・インパラ)は、オーストラリア・シドニー出身で39歳のサイケデリック・ロックのミュージシャン、ケヴィン・パーカー(Kevin Parker)が、2007年にパース(Perth)で立ち上げ企画・プロデュース、作詞、作曲、演奏、レコーディングを一人で切り回しているプロジェクト名です。テーム・インパラ名義では5枚目のスタジオアルバム「Deadbeat」は10月17日のリリースで、「本業」の60年代風味のサイケロックにEDM、テクノ、サイケ・トランスのようなダンス・ミュージックを融合させている意欲的な新作です。

 

Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)


Benjamin Biolay

 今週のアルバムチャート2位に、フレンチポップスのベテラン・シンガーソングライター、Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)の「Le disque bleu」が入りました。2年ぶり通算15枚目のスタジオアルバムで24曲入り。10月16日発売です。

 プロフィールをご紹介しますと、1973年1月、リヨン(Lyon)に近いローヌ(Rhône/69D)県ヴィルフランシュ=シュル=ソーヌ(Villefranche-sur-Saône)生まれの52歳。シンガーソングライターとしては2001年のアルバム「Rose Kennedy」(最高66位)でデビューし、女性ウケしそうな低音のウィスパー・ヴォイスで、前号で少し触れたエティエンヌ・ダオ(Étienne Daho)の弟分のようにみられていた時期もありました。

 3位以内に入ったアルバムは、「La Superbe」(最高3位/2009年)、「Vengeance」(最高2位/2012年)、「Palermo Hollywood」(最高3位/2016年)、「Volver」(最高3位/2017年)、「Grand Prix」(最高1位/2020年)、「Saint-Clair」(最高1位/2022年)に今作「Le disque bleu」と7作もあり、40代後半以降に最高1位の大ヒット作が出ています。

 もう一つの顔が敏腕音楽プロデューサーで、フランスのエンタメ界のレジェンドだったアンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)の晩年、82歳の時の名曲「Jardin d'Hiver」を収録したアルバム「Chambre Avec Vue」(2002年)をケレン・アン、アート・メンゴとともにプロデュースし、大ヒットさせました。他にジュリエット・グレコ、ジュリアン・クレール、フランソワーズ・アルディのような大物のアルバムを手がけてきた実績があります。

 さらにもう一つ、俳優としての顔もあり、2010年代に数本の映画に出演しています。2002年にはイタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニとフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴの間に生まれた娘、キアラ・マストロヤンニ(Chiara Mastroianni)と結婚しましたが、7年後に離婚。それでも2019年の映画『Chambre 212』では、夫婦役で共演しています。

 さて、アーティストのほうに戻りまして、「Le disque bleu」の収録曲からオープニング・チューンの「Le penseur」をお聴きください。

 タイトルは有名なロダンの彫刻「考える人」と同じですが、歌詞(paroles)の中身は海を眺めている男が、過去を回想しながら、船出するボートに託して死を想え(memento mori/メメント・モリ)と匂わせつつ、「J'aime bien mourir ma non troppo※」(拙訳:俺は喜んで死ぬつもりだが、まあ、そこそこにしておくか)と、シニカルにつぶやきます。自分の人生の物語とその終わりを苦笑いを浮かべながら語れるような渋さが、この人らしい持ち味でしょう。

※「ma non troppo」はイタリア語で「~しすぎないように」と、たしなめる表現です。元妻がイタリア人だったので……。なお、ジュール・マスネ作曲のオペラ『Manon(マノン)』では、魔性の女(femme fatale)のマノンは逃避行の末に港町ル・アーヴルの海辺で「Et c'est là l'histoire de Manon」(これがそう、マノンの物語なのよ)と言い残してこと切れますが、もしかすると「ma non」は、そのラストシーンとかけているのかもしれません。

 

Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ) - Le penseur (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月21日号

 

2025年10月17日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 En boucle - GP Explorer,Adèle Castillon,Zamdane

 6 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 7 The Fate Of Ophelia - Taylor Swift

 8 Toute la nuit - GP Explorer,Anyme023

 9 Viano - RK,Genezio

 10 Sale état - RK,Ninho

 

【アルバムチャート】

 1 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 2 The Last Race - GP Explorer

 3 Le retour des beaux jours - Vanessa Paradis

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Gloria - Georgio

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Topboy:Tome 1 - RK

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Pretty Dollcorpse - FEMTOGO,Ptite sœur,neophron

 

 今週のシングルチャート1位は、前週は6位だったラッパーのDisizとThéodoraによる「Melodrama」(メロドラマ)でした。

 3位、5位、8位はカーレースがらみの企画盤GP Explorer「The Last Race」の収録曲。5位のAdèle Castillon(アデル・カスティヨン)は、ロワール地方メーヌ=エ=ロワール(Maine-et-Loire/49)県アンジェ(Angers)出身の23歳の女性シンガー。2018年から2021年までナント(Nantes)を拠点とする男女ポップデュオ「Videoclub(ビデオクラブ)」のボーカルを務めた後、ソロに転じています。女優としてコメディ映画やスリラー映画に出演しています。Zamdaneはモロッコの赤い街マラケシュ(Marrākish)出身の28歳のラッパー。8位のAnyme023はフランス最北部パ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県リエヴァン(Liévin)出身の22歳。本名はMaxence Turlot(マクサンス・テュルロ)といい、本業は動画配信者ですが、音楽活動では3月にフランス海外県マルティニーク島出身の女性シンガー、シェイディーズ(Shaydee's)とコラボしたシングル「Shamballa(シャンバラ)」をリリースし、好評を博しています。

 アルバムチャート1位がTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の「The Life of a Showgirl」、2位がGP Explorerの「The Last Race」という順位は、前週と変わらずでした。

 

Vanessa Paradis

 今週のアルバムチャート3位はVanessa Paradis(ヴァネッサ・パラディ)の「Le retour des beaux jours」で10月10日発売。かつてはフランス伝統の少女歌手、人呼んで「フレンチ・ロリータ」の代表として一世を風靡し、スクリーンでも活躍したヴァネッサですが、御年52歳。タイトルのようにミュージックシーンで「麗しき日々よ、もう一度」と、なりますかどうか……。通算8枚目のスタジオアルバムはÉtienne Daho(エティエンヌ・ダオ)がプロデュースしています。80年代のフレンチポップス界で「セルジュ・ゲンズブールの後継者」と目されたこの人も、すでに69歳です。

 8位はRKのミックステープ「Topboy:Tome1」。10月10日リリース。「Tome 1」は日本語で言えば「第一巻」という意味です。RKはセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県モー(Meaux)出身の23歳のアルジェリア系ラッパー。2018年9月発売のデビューアルバム「Insolent(傲慢)」がいきなり初登場1位になるという「伝説」を残しています。

 アルバム10位にチャートインしたのが10月10日リリースのFEMTOGO、Ptite sœur、neophronによる「Pretty Dollcorpse」。英語で「かわいい死体人形」という意味の恐ろしげなタイトルで、スリラー映画がモチーフ。中心人物FEMTOGOは24歳の新世代ラッパーで、ステージネームをbaby hayabusaから、故・三浦建太郎氏が中世の剣と魔法の世界を描いたマンガ「ベルセルク(BERSERK)」の登場人物「FEMTOGO」に変えています。Ptite sœurは2023年メジャーデビューのラッパーで「妹」と名乗りながらもトランスジェンダー。10月24日、パリ19区のラ・ヴィレット公園内にあるLa Grande Halle de la Villetteで開催される「Grünt festival」のステージに立ちます。neophronはベルギー出身の音楽プロデューサーで、ラップフランセのビートメーカーとして活躍中。エジプトハゲワシという鳥が名前の由来です。

 

Georgio(ジョルジオ)

 

Georgio

 シャンソン・リテレール(Chanson littéraire/文学的シャンソン)といえば、日本にもファンが多くいたレオ・フェレ(Léo Ferré)が代表的ですが、現代フランスの「ヒップホップ・リテレール(Hip-hop littéraire/文学的ヒップホップ)」といえばこの人、Georgio(ジョルジオ)が挙げられるでしょう。10月10日に出した通算6枚目、15曲入りのスタジオアルバム「Gloria(グロリア)」が、今週のチャートでいきなり6位に躍り出ています。

 1993年1月、セーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県リラ(Lilas)生まれの32歳。ルーツはカリブ海のフランス海外県グアドループ諸島です。家庭が複雑だったこともありストリートで鳴らす不良少年でしたが、親代わりに彼を育ててくれた読書好きの祖母の影響を受けて「文学大好きラッパー」になり、ラッパー集団「75ème Session」を経て2011年に「知性派ラッパー」Valdに引き立てられて出したEP「Une nuit blanche, des idées noires」で注目されます。うつ病の経験も告白しているファーストアルバム「Bleu noir」は最高13位でしたが、2021年の4枚目のアルバム「Sacré」は最高3位、2023年の前作「Années sauvages」は最高2位でした。

 内省的、文学的なリリック(paroles)がひろく好評を得ていて、2023年2月14日号でくわしくご紹介していますが、ライブの舞台ではロベール・デスノス(Robert Desnos)、ルイ=フェルディナン・セリーヌ(Louis-Ferdinand Céline)、ロマン・ガリー(Romain Gary)の詩や小説を朗読するなど、日本の仏文科の大学院生あたりなら泣いて喜びそうなパフォーマンスを披露しています。

 新作「Gloria」は、ファーストアルバムのリリースから10年が経過した彼が、過去の人生を振り返りながら「ノスタルジー(nostalgie)」を軸に据えた作品集になっています。その収録曲から8月にYouTubeで先行公開された「Vendredi 13(13日の金曜日)」をお聴きください。父親の死に際して曲がつくられ、かつての自分の家族の姿を回想しながら愛憎相半ばするリリック(paroles)は、「J'pensais connaître l'amour mais un jour la haine m'a souri(拙訳:僕は愛を知っていると思っていたが、ある日、憎悪が僕に微笑みかけた」というリフレインから始まります。

 アルバムのコンセプトについてジョルジオは「Plus on est jeune, plus on a de premières fois, de choses, après c'est sûr qu'aujourd'hui, maintenant, où je suis plus confortable dans ma vie et je vois cette période avec la nostalgie」(拙訳:人は、若ければ若いほど、初めて経験することが多くある。それが過ぎて今日、確かなのは、自分の人生は今はより快適であり、その時期のことをノスタルジーとともに思い出せる、ということだ)と述べています。

 誰の人生であっても、遅かれ早かれ、立ち止まって過去を振り返りたい時がくるものです。ましてやアーティストなら、創作活動に「煮詰まった」時など、改めて原点回帰してリフレッシュしたい時期は必ずやってくるのでしょう。

 フランスの哲学者ミシェル・フーコー(Michel Foucault)は「歴史とは、直線的で進歩的なものだ」という旧来の考え方を強く批判しましたが、他人が「過去なんか、もう振り返るな」「人生とは、常に直線的で進歩的であらねばならない」という考え方を単純に押しつけてはいけない、ということではないでしょうか。

 

Georgio(ジョルジオ) - Vendredi 13 (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!