仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲シャソン・ポピュレール
 
2026年5月5日号

 

2026年5月1日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Pineapple - Leto

 4 Elle voulait - RnBoi

 5 René Caovilla - Gambi

 6 Dracura(Remix) - Tame Impala

 7 Spa - Maître Gims, Theodora

 8 Beauty And A Beat - Justin Bieber ft.Nicki Minaj

 9 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 10 Love You - Nono La Grinta

 

【アルバムチャート】

 1 Michael:Songs From The Motion Picture - Michael Jackson

 2 Décennie - Gradur

 3 Numéro d'écrou - La Rvfleuze

 4 Grand Garçon - PLK

 5 Sombre mélodie - Landy

 6 My Eyes Only-Flashback - RnBoi

 7 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 8 Magma - Le Rat Luciano

 9 Arirang - BTS

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 シングルチャートは今週も1位がDisizとTheodoraの「Melodrama」で、2位がPLKの「Pocahontas」でした。シングル9位に2026年2月24日号でくわしくご紹介したRambo Goyardの「B.M.S.」が、10位に2026年4月14日号でご紹介したNono La Grintaの「Love You」が、それぞれトップ10に再浮上しています。

 今週のアルバムチャートでは「春の新作」が続々と登場しています。1位は人呼んで「King of Pop」ことMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)。不世出のスーパースター・マイコーが2009年5月に亡くなって、早いものでもう17年。アルバム「Michael:Songs From The Motion Picture」は伝記映画『Michael/マイケル』のサウンドトラック盤で、13曲を収録して映画公開に合わせて4月24日、全世界で発売されました。なお、今週のシングル16位に彼の「Billie Jean」が、同23位に「Beat It」がチャートインしています。今ごろ天国でムーンウォークを披露しているでしょうか?

 

Landy

 4月24日リリースの4枚目のスタジオアルバム「Sombre mélodie」がアルバム5位に初登場したLandy(ランディ)は、パリ19区生まれ、サン=ドニ(Saint-Denis)にある団地シテ・ジォリオ=キュリー(Cité Joliot-Curie)で育った30歳。「Le Dyonisien」(サン=ドニっ子)を自称して同名の曲も出すほど地元愛の強いラッパーです。2020年12月29日号でご紹介しました。本名をDylan Gahoussou Syllaといい、両親の出身地はコンゴとコートジボワールで、父親は前号でご紹介したルンバ・コンゴレーズのギタリストです。新作アルバムはTiakola、Genezio、R2、KeBlackらが参加しています。

 今週、「Magma」がアルバム8位に登場したLe Rat Luciano(ル・ラット・ルチアーノ)は、マルセイユ(Marseille)出身の50歳のラッパーにしてプロデューサーにして俳優。フレンチラップシーンでは珍しく(失礼)、後輩の面倒見がいい心やさしい人格者として知られていて、とりわけ同郷のJuL(ジュール)との関係が深く「13'Organisé」のプロジェクトにも参加しています。90年代から活動するベテランですが、4月24日に出した「Magma」は実に26年ぶりになる2枚目のスタジオソロアルバムです。なお、クリスチャン・ヴァンデ率いる同名のフランスのプログレバンドMagmaとは全く無関係です。

 

Gradur(グラドゥール)


Gradur

 今週のアルバムチャート2位に4月24日リリースの4枚目のスタジオアルバム「Décennie」(デセニー/「10年間」という意味)が登場したGradur(グラドゥール)は35歳のラッパーですが、約7年間もアルバムを出していなかったので、2020年1月に始まった当ブログではこれまで、とりあげる機会がありませんでした。

 本名はWanani Gradi Mariadiといい、1990年11月にフランス最北端、ベルギー国境に近いノール(Nord/59)県ルーベ(Roubaix)で生まれますが、父親の出身地がキンシャサ(Kinshasa)なので誕生時の国籍はコンゴ民主共和国(RDC)の旧国名ザイール共和国で、8歳の時に国籍をフランスに変更しています。

 ルーベの高校を卒業後、2011年にフランス軍に志願入隊し、陸軍の砲兵隊に所属しながらサッカーに熱中。選手になるつもりでしたが足をケガして断念。目指す進路をラッパーに変更して2013年頃から作詞を始めます。ところが、兵舎内でいけないクスリをやっていたことが上官にばれ、おまけに軍曹の命令に服従せず言いあいにまで発展する出来事まであって2014年、フランス陸軍をやめてしまいます。『兵隊やくざ』シリーズの勝新太郎顔負けですが営倉入りにも不名誉除隊にも不良行為除隊にもならず、よかったですね。

 ルーベに帰郷して地元のラッパーたちと音楽活動を始め、自主制作でミックステープ「Sheguey Squad」(Shegueyはコンゴのリンガラ語で「ストリートの子」という意味)を出したりしますが、彼に目をつけてメジャーシーンに引き上げた恩人が、2018年のオルリー空港乱闘事件で「武名」を轟かせた武闘派ラッパーのBooba(ブーバ/セネガル系)でした。「prouver qu'il ne se limite pas aux freestyles et à l'égotrip」(拙訳:即興のラップにも、自分自身をむき出しにする表現にも、限界はないことを証明したい)と言う彼と、硬派と硬派でウマが合ったのでしょうか?

 アメリカのシカゴでしばらく修業した後、ファーストシングル「Terrasser」(「地面に打ち倒す」という意味/最高27位)をリリースします。それを収録した2015年のファーストアルバム「L'Homme au bob」はSNEPアルバムチャートでなんと最高1位にのぼりつめました。2016年の2枚目のアルバム「Where is l'album de Gradur」は最高6位で、Heuss L'Enfoiréをフィーチャーし最高1位のシングル「Ne reviens pas」を収録した2019年の「Zone 59」は最高5位になりますが、そこから今作「Décennie」までソロアルバムの発表に約7年のブランクがありました。

 それでも毎年シングルは出し続けていて、2025年には前号でご紹介したFally IpupaやSDM、Tiakola、Letoらコンゴに縁のあるアーティストが集結したコンピレーション・アルバム「Projet Kongo (100%kongo)」に深く関わります。これは、コンゴ民主共和国を武装勢力や外国の搾取から解放し、正義、平和、自己決定権の確立、経済の真の自立を目指す「Free Congo」の政治・社会運動に彼が共感して企画したプロジェクトで、まさに硬派の面目躍如。それだけに政治的な配慮がからむのかリリースが遅れていて、2026年中には実現する見込みです。

 すでに、その収録曲からGradurとNinho、Damso、Kalash Criminel、Josman、Youssouphaがコラボした「Free Congo」(最高34位)をはじめ、 SDM、Rsko、L2B、Zed、Guy2Bezbar、Niskaをフィーチャーした楽曲がシングル発売されています。毎週コンゴ、コンゴで恐縮ですが、ラップフランセにコンゴ系のアーティストが多いことがよくわかります。

 なお、出身地のルーベがベルギー国境に近いことと、コンゴ民主共和国が旧ベルギー領でコンゴ系の人が多いからなのか、ベルギーのワロン地域(フランス語圏)チャートではフランスよりも上位のポジションになる場合が多いようです。

 さて、今回は新作ソロアルバム「Décennie」から、Ninhoをフィーチャーして4月10日にシングルリリースされた「Opps」をお聴きください。タイトルは不覚をとって「しまった」と思った時の表現で、英語では「Opps」ですがフランス語では「Oups」で、「Oh là là!」よりも不覚の度合いがまだ軽い場合に使われます。

 歌詞(paroles)では「Ici,c'est Roubaix,ouais,c'est pas l'Amérique」(拙訳:ここはルーベ、うん、ここはアメリカじゃない)とリフレイン。地元愛とコンゴ愛の男、グラドゥール。郷里のルーベと、ヒップホップの武者修行を積んだ街シカゴを比べていますか?

 

Gradur(グラドゥール) - Opps ft.Ninho

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの人気音楽チャート
 
2026年4月28日号

 

2026年4月24日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Elle voulait - RnBoi

 4 Pineapple - Leto

 5 Spa - Maître Gims, Theodora

 6 Dracura(Remix) - Tame Impala

 7 René Caovilla - Gambi

 8 Parlu - La Rvfleuze

 9 Beauty And A Beat - Justin Bieber ft.Nicki Minaj

 10 Argent sale - La Rvfleuze

 

【アルバムチャート】

 1 XX - Fally Ipupa

 2 Numéro d'écrou - La Rvfleuze

 3 Grand Garçon - PLK

 4 Arirang - BTS

 5 Movie - Sofiane Pamart

 6 My Eyes Only-Flashback - RnBoi

 7 Capitale du crime radio Volume 3(Part 2) - La Fouine

 8 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Karma - Bigflo & Oli

 

 今週もシングルチャートは1位がDisizとTheodoraの「Melodrama」で、2位がPLKの「Pocahontas」でした。

 6位にオーストラリアのTame Impala(テーム・インパラ)の「Dracura」が浮上。パース(Perth)出身のケヴィン・パーカー(Kevin Parker)によるサイケデリック・ロックのソロプロジェクトで、曲自体は2025年9月にリリースされていて、そのリミックス盤です。

 9位には4月19日の「コーチェラ2026」のステージにビリー・アイリッシュとともに登場し復活を印象づけたカナダ・オンタリオ州出身のジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)が、トリニダード・トバゴ出身の女性ラッパー、ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)をフィーチャーした「Beauty And A Beat」がランクインしました。もうゴシップメディアなんかじゃなくて、楽曲やステージで目立ってくださいね。

 

Sofiane Pamart

 今週のアルバム5位は、2024年のパリ五輪開会式で火がついたピアノを弾いたピアニスト、Sofiane Pamart(ソフィアン・パマール)が4月17日にリリースした5年ぶり4枚目のスタジオアルバム「Movie」です。リール(Lille)出身の36歳。2022年2月22日号でくわしくご紹介しましたが、2019年のデビュー作「PLANET」が世界的ヒットを記録し、クラシックピアノをベースにジャズ、ロック、ポップスからヒップホップまで大胆にとり入れる「ネオクラシカル(新古典主義)の旗手」として存在感を発揮しています。アルバムはタイトルが「Movie」と言っても映画音楽集ではなく、映画のワンシーンのイメージを自身のピアノを中心に音楽だけで表現しようとする意欲作です。

 7位はLa Fouine(ラ・フイヌ)が1月29日にリリースして最高1位になった「Capitale du Crime Radio Volume 3」が再浮上。Volume 1は2024年11月、Volume 2は2025年9月に出ています。44歳のモロッコ系のラッパーでイヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)出身。2024年12月3日号でくわしくご紹介しています。

 Theodoraの「Mega BBL」がトップ10圏外に去りました。アルバムとしては2025年5月の発売なので、最高2位も含めて約1年もの間、フランスのチャートで上位にいたことになります。

 

Fally Ipupa(ファリー・イプパ)


Fally Ipupa

 今週のアルバムチャートでいきなり1位に初登場したのが、「アフリカの星」Fally Ipupa(ファリー・イプパ)が4月17日にリリースした8枚目のアルバム「XX」(Vingt/ヴァン)です。XXはローマ数字の20で、「20曲入り」と「デビュー20周年」という2つの意味が込められています。

 Fally Ipupaは48歳のコンゴ民主共和国(RDC)のミュージシャンです。本名はFally Ipupa Nsimbaといい、1977年12月に首都キンシャサ(Kinshasa)で生まれ、今やコンゴだけでなく現代のアフリカ音楽を代表する存在になりました。

 余談ですが、アフリカの「音楽首都」といえば、80年代頃のワールドミュージックの時代には「ンバラ」のユッスー・ンドゥール(Youssou N'Dour)が活躍したセネガルの首都ダカール(Dakar)が目立っていましたが、現在はアフリカとキューバの音楽がフュージョンした「リンガラ・ミュージック」や、ダンスミュージックの「スークース(Soukous)」が元気に響き渡るキンシャサに移ったかのような感があります。英語圏ならナイジェリアのラゴスあたりでしょうか?

 ファリー・イプパは、キューバのルンバが「アフリカ化」したダンスミュージック「アフリカン・ルンバ」、フランス語で言えば「Rumba Congolaise(ルンバ・コンゴレーズ)」の第一人者です。かつて「ルンバの王様」と呼ばれユッスー・ンドゥールにもひけをとらないスターだったパパ・ウェンバ(Papa Wemba)が2016年4月に突如ステージで倒れて他界した後、その後継者の地位を確立しています。人呼んで「ルンバの王子」が「王様」を継承して10年が経過しました。

 と言っても、彼は必ずしも伝統派、保守派ではなく、アメリカのR&Bや欧米のポップスその他の要素も取り入れながら「21世紀のルンバ・コンゴレーズは、かくあるべきか?」を模索しており、プロデューサーとして後進の若手たちのプロデュースも手がけつつ、あくまでも「革新者」であろうとする姿勢を崩していません。

 作品の歌詞は地元の部族語リンガラ語のもフランス語のもあり、母国の人口(1億人以上)に比例してコンゴ系のコミュニティが大きいフランスですから、新作アルバムがいきなり1位になっても全く不思議ではありません。ちなみに今週のチャート上では、Maître Gims、Theodora、Letoがコンゴの血をひいています。

 Fally Ipupaは2006年に「Droit Chemin」でアルバムデビューしましたが、フランスで注目されるようになったのは10年後の2016年、Booba(ブーバ/セネガル系)をフィーチャーしたシングル曲「Kiname」がSNEPシングルチャートで最高10位になったことでした。フランスの「Elektra」レーベルから初めてリリースした翌2017年の4枚目のアルバム「Tokooos」はSNEPチャート最高28位になり、プラチナディスクを獲得しています。その後、2017年にはアメリカのビッグネームのR.Kelly(R・ケリー)をフィーチャーした「Nidja」を出しており、フランスではコンゴ系のNinho、Dadju、KeBlack、Damsoや、「黄金の帝国」伝説のマリからやってきたAya Nakamuraとコラボレーションした曲をシングル発売しています。

 さて、4年ぶりの新作アルバム「XX」には、コンゴのベテラン歌手Lokua Kanzaをはじめ、フランスで活動するコンゴ系のGuy2Bezbar、KeBlack、SDMや、南アフリカのDJ Maphorisa、ナイジェリアのWizkid、ベナン(Benin)出身でグラミー賞を5回受賞し2021年の東京五輪開会式でも歌ったアンジェリーク・キジョー(Angélique Kidjo)、アフリカ西海岸沖に浮かぶ旧ポルトガル領の島国サントメ・プリンシペ(São Tomé and Príncipe)の兄弟デュオCalemaが参加しています。まさに「オール・アフリカ」という感じですね。アフリカからカリブ海の島に送り込まれた奴隷が蜂起して1804年にフランスから独立したハイチがルーツのJoé Dwèt Filéも加わっています。

 今回は収録曲から、歌詞がちょっとなまめかしいオープニングチューン「Cinéma」をお聴きください。ニューアルバム発売に続いて5月2日、3日には、サン=ドニのスタッド・ドゥ・フランス(Stade de France)で大がかりなコンサートを開く予定です。ルンバを踊るダンサーも来演するそうで、巨大競技場がアフリカ一色に染まりそうです。

 

Fally Ipupa(ファリー・イプパ) - Cinéma (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲シャンソン・ポピュレール
 
2026年4月21日号

 

2026年4月17日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Elle voulait - RnBoi

 4 Spa - Maître Gims, Theodora

 5 Argent sale - La Rvfleuze

 6 Parlu - La Rvfleuze

 7 René Caovilla - Gambi

 8 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 9 Love you - Nono La Grinta

 10 Pineapple - Leto

 

【アルバムチャート】

 1 Numéro d'écrou - La Rvfleuze

 2 Arirang - BTS

 3 Grand Garçon - PLK

 4 My Eyes Only-Flashback - RnBoi

 5 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 Pyramide 2 - Werenoi

 7 Mega BBL - Theodora

 8 Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny

 9 Et si j'échoue - Bouss

 10 Fête foraine - Christophe Maé

 

 シングルチャート1位は今週もDisizとTheodoraの「Melodrama」、2位は今週もPLKの「Pocahontas」でした。

 

Gambi

 シングル7位にGambi(ガンビ)の「René Caovilla(レネ・カオヴィラ)」が前週の22位からジャンプアップ。ガンビはパリ12区が環状道路(旧城壁)の東に張り出したヴァンセンヌの森(Bois de Vincennes)に接するヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県フォントネー=スー=ボワ(Fontenay-sous-Bois)出身の28歳のラッパー。パリのお寿司屋さんの出前持ちをしながらYouTubeにせっせと自作ラップを投稿し、それが認められ2019年にデビューした苦労人です。2020年7月21日号でご紹介しました。曲のタイトル「René Caovilla」はイタリアのヴェネツィアに本店がある高級婦人靴ブランドで、独裁者ムッソリーニの時代から100年近い歴史があります。

 10位のLeto(レト)の「Pineapple」(パイナップル)は4月10日リリースでランキング初登場。レトはパリ17区出身のコンゴ系の30歳のラッパーでヒップホップグループ「PSO Thug」のメンバー。2022年3月1日号でご紹介しました。

 アルバムチャートのトップ10は、前週くわしくご説明したWallace Cleaver(ウォーレス・クリーバー)の「Marcel」に代わってBouss(ブース)の「Et si j'échoue」が9位にカムバックしましたが、それ以外の顔ぶれは変わりません。

 

U2


U2

 今回はいつものシングルチャート、アルバムチャートからちょっと離れまして、SNEPの「Rock & Metal」チャートからのご紹介になります。このチャートも毎週発表されており、フランスを代表するロックバンド、Indochine(アンドシーヌ)が上位の常連ですが、4月10日付でその5位にU2の「Easter Lily EP」がチャートインしました。これは4月3日(イースターの2日前の聖金曜日)にリリースされた6曲入りのEP(ミニアルバム)です。

 U2はアイルランド・ダブリンで結成された世界的なロックバンドで、改めてご説明するまでもないでしょう。なお、IndochineのフロントマンのNicola Sirkis(ニコラ・シルキス)は1959年6月22日生まれ、U2のフロントマンのBono(ボノ)は1960年5月10日生まれとほぼ同世代で、チャリティーなどバンド外でやっていることも、社会や政治に関する発言も似ていて、ともに「アムネスティ・インターナショナル」「国境なき医師団(MSF)」の長年の支援者です。どちらのバンドもフランス、アイルランドでは「伝説」になっています。

 新しいEPのご説明の前に、フランスにおけるU2のチャートアクションを振り返ってみましょう。

 スタジオアルバムでは1983年の「War」で初めてSNEPチャート入りし最高4位。歴史的名盤との誉れ高い1987年の「The Joshua Tree」で初の最高1位になっています。その後、1991年の「Achtung Baby」、1994年の「Zooropa」、一部で「黒歴史」視される1997年の「Pop」、それを原点回帰で払拭した2000年のグラミー賞7部門受賞の傑作「All That You Can't Leave Behind」、2004年の「How to Dismantle an Atomic Bomb」、2009年の「No Line on the Horizon」、2014年の「Songs of Innocence」まで8作連続で最高1位でしたが、2017年の「Songs of Experience」は最高3位、2023年の「Songs of Surrender」は最高2位でした。

 シングルでトップ10に入ったのは1987年の「With or Without You」が最初で最高10位、1991年の「The Fly」が最高6位、1992年の「Who's Gonna Ride Your Wild Horses」が最高10位、1995年のバットマン映画の挿入歌「Hold Me,Thrill Me,Kiss Me,Kill Me」が最高10位、同年のユーゴ内戦に関わった「Miss Sarajevo」が最高8位、2009年の「Get On Your Boots」が最高6位で、以上の6曲だけです。

 日本では今なおU2の代表曲とみなされることが多い1987年の「I Still Haven't Found What I'm Looking For」は最高37位どまり。2000年の「Beautiful Day」は、MVをシャルル・ド=ゴール空港で撮影したものの最高17位で、それに続いて2年連続でグラミー賞最優秀レコード賞を受賞した「Walk on」は、なんと最高81位という有様でした。

 フランスでは1994年の「トゥーボン法(Loi Toubon)」以来、「ラジオ・エアプレイの40%以上をフランス語の楽曲にせよ」という政府の文化規制が健在なので、その影響は決して小さくないでしょう。ちなみに「抵抗」「独立」というイメージからU2はカナダのケベック州(フランス語圏)やスペインのカタルーニャ自治州で人気がありそうに思えるかもしれませんが、私が調べた限りでは、チャート順位の数字ではむしろ東欧や日本のほうが勝っている傾向がありました。

 さて、新作「Easter Lily EP」ですが、灰の水曜日(Ash Wednesday/Mercredi des Cendres)の2月18日にリリースされた6曲入りEP「Days of Ash」と、四旬節(Lent/Carême)の期間をはさんでペアをなす構成です(アイルランドもフランスもカトリックが優勢な国)。収録曲では友情、喪失、希望、死と再生といったテーマを追求しています。功成り名を遂げたU2の面々ももう60代後半になり、親しい人の帰天(死)に直面したりして、過去を振り返りながら、この混乱する世界にあって、残された人生の心の平安を願う年代になった、ということなのでしょうか?

 全曲32分31秒がYouTubeで公開されていますので、それをお聴きください。

 

U2 - Easter Lily EP (2026)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのChanson Populaire
 
2026年4月14日号

 

2026年4月10日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Elle voulait - RnBoi

 4 Spa - Maître Gims, Theodora

 5 Argent sale - La Rvfleuze

 6 Parlu - La Rvfleuze

 7 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 8 Promenade - La Rvfleuze, Koba Lad

 9 Sex Model - PLK & Theodora

 10 Love you - Nono La Grinta

 

【アルバムチャート】

 1 Numéro d'écrou - La Rvfleuze

 2 Arirang - BTS

 3 Grand Garçon - PLK

 4 My Eyes Only-Flashback - RnBoi

 5 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 Pyramide 2 - Werenoi

 7 Marcel - Wallace Cleaver

 8 Mega BBL - Theodora

 9 Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny

 10 Fête foraine - Christophe Maé

 

 今週もシングルチャートはDisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)とPLKの「Pocahontas」の1-2フィニッシュでした。La Rvfleuzeのシングルが今週も5、6、8位に入っています。女将Theodoraも1、4、9位です。

 

Nono La Grinta

 シングル10位にNono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)の「Love you」(愛してる)が前週の11位から再浮上。パリ19区出身、24歳のコンゴ系ラッパーで、2025年8月19日号でくわしくご紹介しています。2025年夏にはシングル「Paris」が爆発的に売れてチャート上位に食い込みましたが、それはUEFAチャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマン(PSG)が初優勝を遂げた影響が大でした。今季もPSGは準々決勝に進出していて、すでにリヴァプールに2-0と先勝し4月14日に準決勝進出なるか決着がつきます。もしも5月30日の決勝戦で連覇を果たせば、「Paris」が再びトップ10入りしそうです。

 アルバムチャート首位は前週に引き続き24歳のセネガル系ドリルラッパーLa Rvfleuzeの「Numéro d'écrou」で、BTS「Arirang」の2位も変わらず。トップ10にMaître Gims先生、Bad Bunnyが復帰。来月5月17日が一周忌になるWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」も6位で踏ん張っています。心臓発作によって31歳で急逝したのが惜しまれます。お墓は彼の地元、セーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県モントルイユ(Montreuil)にあります。

 

Wallace Cleaver(ウォーレス・クリーバー)


Wallace Cleaver

 4月3日リリースの新作「Marcel(マルセル)」が今週アルバムチャート7位に初登場したWallace Cleaver(ウォーレス・クリーバー)は1998年3月、世界遺産の古城群で知られるロワール地方、ロワール=エ=シェール(Loir-et-Cher/41)県の県庁所在地ブロワ(Blois)で生まれ、同県サン=ローラン=ヌアン(Saint-Laurent-Nouan)で育った28歳のラッパーです。本名はレオ・ゴンド(Léo Gond)といい、パリのソルボンヌ大学で文学とオーディオ・ビジュアル(視聴覚の創作)を専攻して卒業しています。

 少年時代から同じロワール地方のオルレアン(Orléans)出身のラッパーNiro(ニロ)や、オルリー空港乱闘事件で令名をはせた?武闘派ラッパーBooba(ブーバ)のフォロワーで、フードをかぶってラッパーのマネをしていました。まず、形から入る?

 13歳で初めてラップのリリック(paroles)を書き、大学時代はソルボンヌの同級生とともにパリでヒップホップの創作プロジェクトに参加。2018年、ソロアーティストとして本格的な音楽活動を始めました。

 ステージネーム「Wallace Cleaver」は、1957~63年にアメリカCBSが放送したホームコメディシリーズ『Leave It to Beaver』(日本では『ビーバーちゃん』という邦題で1959年から日本テレビ系列で放送)で、トニー・ダウ(Tony Dow/子役俳優から後に監督、プロデューサーになりましたが2022年に死去)が、主人公セオドアくんの優しいお兄さんで、アメフトのチームで活躍する高校生を演じた役名だそうですが、ドラマの中では「ウォーリー(Wally)」と呼ばれました。

 さて、フランス人ラッパーのほうのウォーレス・クリーバーですが、2018年に「Arsène」でシングルデビュー。2019年のEP「98」でその名を知られるようになります。アルバムは2021年の「Cauchemar」(悪夢)、2023年の「baiser」(キスする)、2024年の「merci」(ありがとう)とすでに3作を出していて、「Marcel」は4作目になります。アルバムタイトルは、彼が2021年に同名のEPを出した小説『失われた時を求めて(À la recherche du temps perdu)』で世界の文学史に金字塔を打ち立てた作家マルセル・プルースト(Marcel Proust)、かと思いきや、敬愛してやまない祖父の名前だそうです。その収録曲から1月にリリースした先行シングルでもある「Pasçalavie」をお聴きください。

 曲のタイトルは歌詞にある「C'est pas ça,la vie」(そんなものじゃないんだ。人生は)を略した言葉で、「C'est pas ça,la vie.  C'est plus beau en vrai.  J'ai pas tout compris. Un jour, j'comprendrai.  C'est pas ça,la vie.  C'est plus compliqué.  J'ai pas tout compris.  Un jour, j'comprendrai.(拙訳:そんなものじゃないんだ。人生は/本当はもっと美しいものなんだ/僕は全て理解したわけじゃないが/いつかは理解できるだろう/そんなものじゃないんだ。人生は/もっと複雑なものなんだ/僕は全て理解したわけじゃないが/いつかは理解できるだろう)」とリフレインしています。

 日本人は「中二病」などと言って嘲笑しそうですが、クリティカル・シンキング(批判的思考/フランス語ではpensée critique)のスキルの判断材料として、バカロレア(Baccalauréat/大学入学資格試験)では必ず論文試験が出題されるほど、哲学という学問が深く浸透しているフランスらしい一節ではないかと、私は思います。

 哲学つながりで、実存主義の第一人者だったジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)らが1973年に創刊した新聞「リベラシオン(Libération)」紙が、「pas d'ego trip, de guns, ni de gang,juste une histoire sensible et personnelle sur fond electro-piano. Brillant」(拙訳:エゴの応酬も、銃も、ギャングもない。電子ピアノが基調の繊細で個人的な物語。すばらしい)と評しているように、彼の作風は、郊外(Banlieue)の「乱世」に根ざしたラップとは一線を画しています。21世紀のラップフランセは多様化が進んでいるとはいえ、やはり、ソルボンヌを出たような人がヒップホップをやったら、こうなるのでしょうか?

 

Wallace Cleaver - Pasçalavie

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの国旗とChanson Populaire
 
2026年4月7日号

 

2026年4月3日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Elle voulait - RnBoi

 4 Promenade - La Rvfleuze, Koba Lad

 5 Argent sale - La Rvfleuze

 6 Crypto - La Rvfleuze

 7 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 8 Spa - Maître Gims, Theodora

 9 Avec moi- RnBoi ft. Nono la Grinta

 10 Sex Model - PLK & Theodora

 

【アルバムチャート】

 1 Numéro d'écrou - La Rvfleuze

 2 Arirang - BTS

 3 Grand Garçon - PLK

 4 Backpack - SEB

 5 My Eyes Only-Flashback - RnBoi

 6 This Music May Contain Hope. - Raye

 7 Fête foraine - Christophe Maé

 8 Karma - Bigflo & Oli

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Mega BBL - Theodora

 

 今週もシングルチャート1位はDisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)でした。2位には前々週1位のPLKの「Pocahontas」がピタリとつけています。

 アルバムチャートでは前週のBTSに代わって、パリ19区生まれ24歳のセネガル系ドリルラッパー、La Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ)の新作「Numéro d'écrou」(「囚人番号」という意味/3月27日リリース)が新たな1位に登場しました。その収録曲で2月に先行シングル発売された「Argent Sale」(シングルチャート最高2位)は今週5位に浮上。収録曲では他にKoba Ladをフィーチャーした「Promenade」が4位、「Crypto」が6位で、さらに13位、14位、15位にも入るなどシングルチャートをにぎわせています。

 3月3日号で解説しましたが、La Rvfleuzeは10代の頃はブルゴーニュ地域圏にある現リーグ・アンのサッカークラブ、オセール(AJ Auxerre)の育成組織に所属していました。しかし育成組織の宿命で、プロ選手としての契約の可否が決まる日がやってきます。残念ながらクラブに見切りをつけられた後、2022年に「Serrure」(錠前)でラッパーとしてデビューしますが、その直後にいけないクスリの密売に手を染めていた容疑で逮捕されて刑務所で18か月間、暮らしました。それでも音楽の才能は認められていたようで、出所後はフレンチ・ドリルの若手のホープとして人気を得て、真人間として再起しています。

 アルバム5位には、皇帝ナポレオン1世の宮殿で知られるセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県フォンテーヌブロー(Fontainebleau)出身の19歳のラッパー、RnBoi(エレンボイ)の3月27日発売の新作「My Eyes Only-Flashback」が入りました。ステージネームは日本のアニメ『進撃の巨人(Attaque des Titans)』の主人公エレン・イェーガー(Eren Jäger)に由来します。先週来日したマクロン大統領が高市首相と『ドラゴンボール』の「かめかめ波」を出しあっていましたが、フランスでの日本のアニメの人気は不動。シングルチャートでは今週、「Elle voulait」がトップ10入りして3位、Nono la Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)をフィーチャーした「Avec moi」が9位につけています。「Mon Bébé」は前週の10位から12位に後退。アルバム収録曲「J'pense à toi」では「女王様」Aya Nakamura(アヤ・ナカムラ)とデュエットしています。

 

Raye

 今週のアルバムチャート6位に、UKの女性シンガーソングライターRaye(レイ)の新作「This Music May Contain Hope.」が入りました。3月27日リリース。2024年のブリット・アワードで6部門を受賞し、グラミー賞にも4度ノミネートされた実力派のセカンドアルバムです。収録曲の「I Will Overcome」では、今なお賞賛と批判が入り交じって語られる故・エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)に対して最大限の敬意を込めています。

 RayeことRachel Agatha Keen(レイチェル・アガサ・キーン)はロンドンの下町トゥーティング(Tooting)地区生まれの28歳。イングランド、ガーナ、スイスの血を引いています。17歳だった2014年に自主制作EPでデビューし、2017年のシングル「Decline」で注目されました。2020年のシングル「Secrets」はUKで6位まで浮上。2021年の「Bed」はUK3位、2022年の「Escapism」と2025年の「Where Is My Husband!」でUK1位にのぼりつめています。フランスのSNEPシングルチャートでは2023年の「Prada」が最高16位、「Where Is My Husband!」が最高14位でした。アルバムは2023年の「My 21st Century Blues」がUK最高2位、新作「This Music May Contain Hope」で初のUK1位になっています。

 ジャンルとしてはジャズの影響を強く受けていますが、ポップス、R&B、カントリー、エレクトロポップの要素も取り入れ、世界市場にアピールしています。2024年夏には初来日して「フジ・ロックフェスティバル」に出演しました。

 月がかわって春の年中行事、Les Enfoiré(レザンフォワレ)の今年のライブ盤はトップ10から外れて16位に後退しています。

 

SEB(セブ)


SEB

 今週アルバム4位に、30歳のユニークなマルチタレントで、ミュージシャンもやっているSEB(セブ)の新作「Backpack」がチャートインしました。彼は自分の職業を「ビデオグラファー」「ユーチューバー」と名乗っています。

 インドに行ってチベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世への単独インタビューに成功。鳥類学者や洞窟探検家とともにインドネシア・西パプア(ニューギニア島)のジャングルを探検したり、天山山脈の麓、シルクロードで栄えたキルギス共和国を取材したりして、ドキュメンタリー番組を制作しています。2023年にはビデオ制作会社「Olibrius」を起業し、コンテンツをテレビ局などに供給しています。古くさく言えば「世界を股にかける快男児」「俺という存在がメディアだ」でしょうか?

 その一方で「L'Histoire du rap(ラップの歴史)」という音楽ドキュメンタリーを制作してネットで700万回近い視聴回数を稼いだり、フランスの若手ラッパーの宣伝プロジェクトを立ち上げるなど、音楽界にもしっかりコミットしています。

 本名はSébastien Anthony Fritといい、SEBはファーストネームを略したものです。同名のLA拠点の「ベッドルーム系」シンガーソングライターや、初音ミクなどをフィーチャーしているエイベックスの「スーパー・ユーロビート(SEB)」シリーズとは無関係です。

 1996年3月、フランス南西部、ギュイエンヌとも呼ばれるアキテーヌ地域圏、ドルドーニュ(Dordogne/24)県の県庁所在地ペリグー(Périgueux)で生まれ、同県のシャンセレード(Chancelade)で育ちました。バカロレア(大学入学資格)は取得しましたが大学には行かず、20代で持ち前の行動力とセンスを発揮して映像制作の世界でその名を知られました。

 さて、SEBのミュージシャンとしての実績ですが、2017年にシングル「Égofrite」でデビューし、以後ラッパーとしてシングルをリリースしていますが、アルバムは今作「Backpack」が第1作で、2月27日の発売日から約1か月かけてトップ10に入りました。タイトルはいわゆるバックパッカーの語源で、世界を旅する彼にふさわしいでしょうか。

 アルバム収録曲(全12曲)も「自身の旅にまつわる内容」で構成されていて、曲はトラップが基本ですが、歌詞はどれも内面的、感傷的なもの(フランス人好み?)が続いています。その中から「J'suis à trois-quatre tours de planète(惑星の4分の3を旅した)」と言っているオープニングチューン「nouvel arc」をお聴きください。

 

SEB - nouvel arc

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲 Chanson Populaire
 
2026年3月31日号

 

2026年3月27日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Pocahontas - PLK

 3 Sex Model - PLK & Theodora

 4 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 5 Spa - Maître Gims, Theodora

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 Avec moi - RnBoi ft. Nono la Grinta

 8 Argent sale-A Colors Show - La Rvfleuze

 9 Swim - BTS

 10 Mon Bébé - RnBoi

 

【アルバムチャート】

 1 Arirang - BTS

 2 Grand Garçon - PLK

 3 Fête foraine - Christophe Maé

 4 Karma - Bigflo & Oli

 5 Méga BBL - Theodora

 6 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 7 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 8 Pyramide 2 - Werenoi

 9 2026, La Ballade des Enfoirés - Les Enfoirés

 10 Et si j'échoue - Bouss

 

 今週、シングルチャートの1位にはDisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)が再浮上しました。前週1位のPLKの「Pocahontas」は2位に後退し、1週だけの天下でした。以下の順位では、前週はPLKのニューアルバム「Grand Garçon」の収録曲に押し出されたLa RvfleuzeやRnBoiの曲がトップ10に復帰しています。

 

BTS

 新たなアルバム1位はBTS(防弾少年団)の「Arirang」です。5枚目のアルバムで3月20日リリース。メンバーの義務兵役もありアルバムは3年9カ月ぶり、フルアルバムは6年1カ月ぶりになります。7名全員が除隊して3月21日にはソウルの光化門広場でカムバック無料公演を開催し、ARMY待望のワールドツアーも再開されます。

 アルバムタイトルは韓国の第二の国歌といわれる有名な民謡「アリラン」で、南北統一チームが国際スポーツ大会に出場すると国歌の代わりに演奏されます。シングルチャートでも9位にこのアルバムの収録曲「Swim」が入りました。

 

Christophe Maé(クリストフ・マエ)


Christophe Maé

 フレンチポップスのベテランミュージシャン、Christophe Maé(クリストフ・マエ)の3月20日発売の3年ぶり7枚目のアルバム「Fête foraine」が今週、アルバム3位に登場しました。

 タイトルのFête foraineは「移動遊園地」という意味で、ヨーロッパでは仮設のメリーゴーランドや観覧車や射的場や食べ物の屋台が、冬の謝肉祭(カーニバル)や秋の収穫祭、町の守護聖人のお祭りが行われる各地の広場や公園に設置されて、カップルや子ども連れでにぎわいます。サーカスや賭け事や占いや、18禁のお姉さんのテントもそれに加わります。

 その担い手の多くはロマ民族でしたが、20世紀にナチスなど各国の独裁政権によって弾圧された悲しい歴史があります。

 クリストフ・マエについては2020年10月27日号で最初にとりあげましたが、それから5年半も経過したので、あらためてプロフィールをご紹介します。

 1975年10月、南仏プロヴァンス地方のヴォークリューズ(Vaucluse/84)県カルパントラ(Carpentras)で生まれ、現在50歳。本名はChristophe Martichonといいます。5歳からバイオリンを習い始め、16歳の時にスポーツで痛めた関節炎が悪化して約1年間、ほとんどベッドで寝たきりの生活を送ります。病床でギターやハーモニカをいじりながらスティービー・ワンダーやボブ・マーリーの曲を聴き込んでポピュラー音楽に目覚めます。

 治って歩けるようになると実家のパン屋さんを手伝うかたわら18歳で音楽活動をスタートし、20代は主に南仏のリゾート地の酒場でギターの弾き語りをやっていました。30歳だった2005年、ルイ14世の生涯を描いたミュージカル「Le Roi Soleil(太陽王)」で準主役の王弟オルレアン公フィリップ役に抜擢されて2006年の NRJ音楽賞新人賞を受賞。2007年3月、32歳の時に出した事実上のファーストアルバム「Mon Paradis(私の楽園)」でメジャーデビューします。このアルバムはSNEPチャートで最高1位になり、日本を含む全世界で累計160万枚以上を売り上げてヴィクトワール音楽賞を受賞。クリストフ・マエはフランスのポピュラー音楽界のシンデレラ・ボーイならぬシンデレラ中年男になったのでした。

 出したアルバムは2008年の「Comme à la maison」に続き、2010年の「On trace la route」、2016年の「L'Attrape-rêves」まで連続最高1位。2019年の「La Vie d'artiste」は最高2位、2023年の「C'est drôle la vie」は最高3位という実績を残しています。シングルでは2007年の「On s'attache」、2010年の「Dingue, dingue, dingue」が最高1位になっています。

 クリストフ・マエの音楽はアコースティック・ギターをベースにしたメロディーラインを重視するポップスが基本ですが、庶民の日常に根ざしながら自分らしいメッセージをさり気なく込めた温かい歌詞と、渋めのハスキーヴォイス、そしてフォークもR&Bもブルースもジャズもファンクもレゲエもラテンも取り入れる音楽性の幅広さが持ち味です。この10曲入りの新作アルバム「Fête foraine」をひっさげて、5月からはツアーに出ます。

 これまでの音楽人生を遊園地にたとえつつ、「C'est pas la fête foraine. C'est pas la grande roue. Ma vie,je l'aime quand même/(拙訳)それは移動遊園地じゃない。それは観覧車じゃない。私の人生だ。それでも私はそれを愛している」というメランコリックなフレーズがあるタイトルチューンや、72歳の超ベテランFrancis Cabrel(フランシス・カブレル)とのデュオ「La boutique des rêves」も話題ですが、今回は2025年10月に先行シングル発売された収録曲「50 ans déjà(もう50歳)」をお聴きください。

 なぜかスペイン語で「もう50歳だが、準備はできた。さあ行くぞ。私の魂はしわくちゃにはなってない」と、意欲を新たにしています。まだまだ老け込む年齢なんかじゃないですから……。

 

Christophe Maé(クリストフ・マエ) - 50 ans déjà

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの国旗と「Chanson Populaire」の文字
 
2026年3月24日号

 

2026年3月20日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Pocahontas - PLK

 2 Melodrama - Disiz, Theodora

 3 Sex Model - PLK & Theodora

 4 Jamie Bynoe-Gittens-single - PLK

 5 B.M.S.(Vervion Acoustique) - Rambo Goyard

 6 Spa - Maître Gims, Theodora

 7 Love You - Nono La Grinta

 8 Façon d'penser - PLK

 9 Tu dors? - PLK

 10 Le Cœur des hommes - PLK

 

【アルバムチャート】

 1 Grand Garçon - PLK

 2 Karma - Bigflo & Oli

 3 23 JOURS PLUS TARD - Jolagreen23

 4 2026, La Ballade des Enfoirés - Les Enfoirés

 5 Méga BBL - Theodora

 6 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 7 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 8 Pyramide 2 - Werernoi

 9 Kiss All The Time. Disco,Occasionally - Harry Styles

 10 Et si j'échoue - Bouss

 

 今週、シングルチャート1位がついに入れ替わりました。PLKの「Pocahontas」(ポカホンタス/1995年にディズニーのアニメ映画になった17世紀のネイティブ・アメリカンのヒロインの名前)がトップに立ち、DisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)は2位に後退。SNEPシングルチャート連続1位の新記録は22週でストップしました。記録は、いつかは止まる運命。

 PLKの17曲入り3枚目のスタジオアルバム「Grand Garçon」(3月13日発売)の収録曲はこの他、シングルチャート3位、4位、8位、9位、10位にも計6曲入っています。4位のタイトルのJamie Bynoe-Gittens(ジェイミー・バイノー=ギッテンス)とは、イングランド・プレミアリーグの強豪チェルシーでFWを務める21歳のサッカー選手です。チェルシーは3月18日にパリ・サンジェルマンに完敗してUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝進出ならず。

 PLKは1997年4月、パリ14区生まれの28歳のラッパー。本名をMathieu Pruskiといいポーランド系です。ステージネームのPLKはポーランド人を指すPolakの略称です。アルバム「Grand Garçon」には、1位陥落でもシングルチャートになおも3曲入り、アルバムも5位と今をときめくTheodora(セオドラ)、3月3日号でご紹介したLa Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ)、今週アルバム3位のJolagreen23(ジョラグリーン23)、Infinit、Limsa d'Aulnay、 STIが参加しています。

 

Bigflo&Oli

 アルバムチャート2位には兄弟ラップデュオBigflo & Oli(ビッグフロー&オリ)の4年ぶり5枚目、13曲入りのスタジオアルバム「Karma」(3月13日リリース)がチャートイン。エアバス本社がある南仏の「バラ色の町(La Ville Rose)」ことToulouse(トゥールーズ)出身のFlorian(フローリアン/33歳)、Olivio(オリヴィオ/29歳)のOrdoñez(オルドニェス)兄弟が結成したユニットで、父親はアルゼンチン出身のサルサ歌手、母親はアルジェリア系です。

 彼らは幼少期からジャック・ブレル、シャルル・アズナヴール、フランシス・カブレルなどフレンチポップスに親しんでいましたが、2015年6月にヒップホップのミュージシャンとして「La Cour des grands」(最高2位)でアルバムデビューしました。アルバムでは2017年の「La Vraie Vie」が最高1位、2018年の「La Vie de rêve」が最高2位、2022年の「Les autres c'est nous」が最高1位という実績があり、たいへんな人気を得ています。

 Les Enfoirésの今年のライブ盤は今週4位。例年と比べてランクダウンが早まった感じです。UKのHarry Styles(ハリー・スタイルズ)の「Kiss All The Time. Disco,Occasionally」は前週の1位から9位へ後退しました。

 

Jolagreen23(ジョラグリーン23)


Jolagreen23

 Jolagreen23(ジョラグリーン23)の3枚目のスタジオアルバム「23 JOURS PLUS TARD」(23日後)が今週、アルバム3位というポジションでチャートインしました。3月13日にリリースされた新作です。

 2001年3月23日生まれで、25歳になったばかり。パリの北西郊外、SNCFの通勤路線トランシリアンーJ(Transilien-J)線の駅があるオー=ド=セーヌ(Hauts-de-Seine/92)県ボワ=コロンブ(Bois-Colombes)出身です。本名はJorghen Monteiro-Mbomboといい、アフリカのアンゴラ、コンゴの血を引いています。ステージネームのJoは本名のJorghenから。lagreenは好きな色が緑なのと、好きなバスケット選手ドレイモンド・グリーン選手、好きなパンクバンド、グリーン・デイから。23は誕生日の23日と、NBAのレジェンド、マイケル・ジョーダンおよびグリーン選手の背番号にちなんでいます。

 少年時代は毎週日曜日、教会に通っていたよい子で、約1年、英国ロンドンに住んでいたので、讃美歌、パンクロック、自らのルーツのアフリカ音楽にブーバ(Booba)の武闘派ラップというハイブリッドな音楽原体験を有しています。

 コロナ禍で自宅にこもっていた頃に曲を書きため、ラッパーとして世に出ることを目指します。英語が得意で英国系のファーストフード企業に勤めていましたが、2023年1月、レーベルと契約した際に退職しました。同年、EP「23」に続いて「Search & destruction」でアルバムデビュー。2024年にはフランスのラッパーLesram、ベルギーのラッパーGreen Montana、フランスのポップシンガーAdèle Castillonの参加を得てセカンドアルバム「+99XP」を出しています。

 なお、音楽活動のかたわら大手モデル事務所と契約していて、バスケット好きのご縁なのかナイキやフットロッカーやH&Mの広告に出ています。

 さて、Tiakola、La Mano1.9、 La Fèveが参加した新作アルバム「23 JOURS PLUS TARD」からタイトルチューンをお聴きください。この曲では、次のフレーズが繰り返されます。

Vingt-trois jours plus tard,  j'ressors du laboratoire.  J'comprends pas j'ai plein d'pouvoirs,  j'me sens comme Peter Parker.

(拙訳)23日後、僕は研究所から飛び出す。どうしてこんなに多くの力を持つのか理解できない。まるでピーター・パーカーになったような気分だ。

 Peter Parker(ピーター・パーカー)とはアメコミのマーベル・ヒーロー『スパイダーマン』の「中の人」の本名です。NYクイーンズに住む高校生で、社会見学でクモにかまれてスパイダーマンになったピーター少年になりきる? 「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というベンおじさんの遺訓を忘れないように……。

 歌詞では他に『BLEACH』の登場人物で斬魄刀の遣い手、瀞霊廷護廷十三隊九番隊隊長・東仙要(Kaname Tosen)が出てきたり、映画になったフランスのパルクール集団「ヤマカシ(Yamakasi)」(コンゴのリンガラ語で「強靭なる者」という意味)が出てきたりで、どうやらジョラグリーン23はバスケットボールだけでなく、アメコミも、日本のアニメも、バンド・デシネ(Bande Dessinée/BD:フランス語圏のコミック)も、大好きなようです。

 

Jolagreen23 - 23 JOURS PLUS TARD

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗とChanson Populaireの文字
 
2026年3月17日号

 

2026年3月13日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 B.M.S.(Vervion Acoustique) - Rambo Goyard

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Spa - Maître Gims, Theodora

 5 Argent Sale-A COLORS SHOW - La Rvfleuze

 6 GMK - WIXO & LA2S

 7 Mon bébé - RnBOi

 8 Avec moi - RnBOi ft.Nono La Grinta

 9 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 10 Sex Model - PLK & Theodora

 

【アルバムチャート】

 1 Kiss All The Time. Disco,Occasionally - Harry Styles

 2 2026, La Ballade des Enfoirés - Les Enfoirés

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 5 Méga BBL - Theodora

 6 Pyramide 2 - Werernoi

 7 The Romantic - Bruno Mars

 8 DEADLINE - BLACKPINK

 9 Et si j'échoue - Bouss

 10 M.I.L.S.4 - Ninho

 

 DisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)はシングルチャート22週連続1位で、今週も自己記録更新。もう、飽きてきた?

 Maître Gims先生とTheodoraによる「Spa」が4位に浮上し、Theodora(セオドラ)がからんだ曲がシングルチャートのトップ10では1、4、10位と3曲入っています。もうすでにフランスのアフロポップのBoss Lady(ボス・レディ)はコンゴ系のこの人で、同じくアフロ・ポップで鳴らしたマリ出身のAya Nakamuraが、このまま黙って引き下がるとは思えませんが……。

 

Harry Styles

 今週のアルバムチャート1位は、2010~2016年に活動したUKのOne Direction(ワン・ダイレクション)の元メンバーで32歳、Harry Styles(ハリー・スタイルズ)が3月6日に発売した「Kiss All The Time. Disco,Occasionally」(直訳すれば「いつでもキスしよう。たまにはディスコに行って」)でした。グラミー賞で最優秀アルバム賞、ポップ・アルバム賞を受賞した2022年の「Harry's House」以来3年半ぶり4枚目のスタジオアルバムです。

 

WIXO & LA2S


WIXO & LA2S

 前週、シングルチャート14位だったWIXO & LA2Sの「GMK」が、今週は6位にジャンプアップしました。2025年12月にリリースされ、3カ月以上をかけて徐々にランクアップしました。

 新進ヒップホップ・デュオのWIXO & LA2Sは「ウィクソ&ラトゥス」と読みます。彼らの地元はヴァル=ドワーズ(Val-d'Oise/95)県のSoisy-sous-Montmorency(ソワジー=ス=モンモランシー)で、サン=ドニの北西にあります。ブルボン王朝時代は田園地帯の貴族の保養地でサクランボが名物でしたが、現在はパリ首都圏の拡大に伴ってその郊外(Banlieue/バンリュー)に組み込まれ、HLM(Habitation à loyer modéré/低家賃の公営住宅)も建っています。

 WIXO & LA2Sはストリートの日常やHLM、自分たちの私生活について、ドリルラップとトラップを融合させたスタイルで元気にラップする「次世代ラッパー」として人気を得ています。音楽メディア「Booska-P」でも、SkyrockFM(日本でもネットで聴けます)でも、「2026年は彼らに注目だ」と紹介されました。

 さて、すでに430万回以上のストリーミング再生数を稼いだというこの曲のタイトル「GMK」ですが、Ghetto, Mes-ar, Kilogramme(ゲットー、メスアール、キログラム)の略です。Ghettoとはバンリューにある主にアフリカ系の移民街のこと、Mes-arとは武器(Armes)の逆さ言葉で銃器のこと、Kilogrammeとはいけないクスリを指すスラング(俗語)です。ゲットー、銃器(暴力犯罪)、ドラッグという郊外の日常は、このブログでとりあげるラップフランセの世界ではもう定番ですね。ちなみにWIXOはおまわりさんのお世話になって拘留された経験があるそうです。

 

WIXO & LA2S - GMK (Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのChanson Populaire
 
2026年3月10日号

 

2026年3月6日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 B.M.S.(Vervion Acoustique) - Rambo Goyard

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Argent Sale-A COLORS SHOW - La Rvfleuze

 5 Mon bébé - RnBOi

 6 Spa - Maître Gims, Theodora

 7 Sex Model - PLK & Theodora

 8 Avec moi - RnBOi ft.Nono La Grinta

 9 Nuevayol - Bad Bunny

 10 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 

【アルバムチャート】

 1 2026, La Ballade des Enfoirés - Les Enfoirés

 2 DEADLINE - BLACKPINK

 3 The Romantic - Bruno Mars

 4 The Mountain - Gorillaz

 5 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 6 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 7 Méga BBL - Theodora

 8 Pyramide 2 - Werernoi

 9 M.I.L.S.4 - Ninho

 10 Et si j'échoue - Bouss

 

 DisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)はシングルチャート21週連続1位で、自己記録を再度更新しました。9位にBad Bunnyの「Nuevayol」(スペイン語でニューヨークのこと)が再浮上しています。今週はシングルでもアルバムでも、昨年秋から猛威をふるったKPop Demon Huntersがトップ10から消えましたが、韓流女子はしぶとく……

 

BLACK PINK

 韓流ガールズグループ、BLACKPINK(ブラックピンク)が2月27日に出した通算3枚目のミニアルバム「DEADLINE」(英語で「締切」「最終期限」という意味)がアルバムチャート2位。3月5日までに全世界で177万枚以上を売上げ、「フランス音楽界最大の年中行事」のあのアルバムと1日違いで発売日がかぶらなかったら、確実に1位だったでしょう。

 BLACKPINKは韓国生まれのJISOO(ジス)とJENNIE(ジェニー)、ニュージーランド生まれのROSÉ(ロゼ)、タイ生まれのLISA(リサ)の4人組。2016年活動開始で10年目です。世界を舞台に活躍し、デュア・リパ、レディー・ガガ、セレーナ・ゴメスともコラボ。彼女たちの目標は90年代に世界にそのパワーを見せつけたUKのスパイス・ガールズだそうです。「DEADLINE」には2025年のヒットシングル「JUMP」と新曲4作が収録されています。

 アルバム3位には、そのBLACKPINKのROSÉとコラボした「APT.」でグラミー賞にノミネートされ、彼女とともに授賞式に現れたBruno Mars(ブルーノ・マーズ)の2月27日リリースの4枚目のスタジオソロアルバム「The Romantic」が入りました。1月発売の先行シングル「I Just Might」(今週シングル20位)が収録されています。

 Blur(ブラー)のフロントマンで、俳優として映画にも出演したDamon Albarn(デーモン・アルバーン)が、マンガ家のJamie Hewlett(ジェイミー・ヒューレット)と組んでプロジェクト化したUKのバーチャルバンド、Gorillaz(ゴリラズ)の9枚目のスタジオアルバム「The Mountain」(2月27日発売)が、フランスでも今週アルバムチャート4位に。今作はインドの伝統音楽をフィーチャーして「死と再生」がテーマだそうです。

 昨年、インドを初めて訪れ、聖地ヴァラナシで火葬を見てガンジス川で泳いだ(泳法はバタフライ?)のは強烈な体験だったとデーモンは語っています。インドに行ったら人生変わる? インドに3回も行ったのに人生な~んにも変わらなかった人間も約一名ここにおりますが(苦笑)。 

 

Les Enfoirés 2026(レザンフォワレ 2026)


Les Enfoirés

 今週のアルバムチャート1位は毎年恒例のお約束通りで、リリース直後のLes Enfoirés(レザンフォワレ)の今年のライブ盤が登場しました。通算36枚目になるアルバムタイトルは「La Ballade des Enfoirés」(拙訳「愚か者たちのバラード」)といい、DVDもあり、2月28日にSony musicから発売。全31曲、2枚組で、全部聴くとトータルで3時間もかかります。

 ポップスを中心にスターが集結したフランス最大のチャリティー音楽イベント「Les Enfoirés 2026」は1月13日から19日まで、パリ12区のベルシー(Bercy)地区に建つ「Accor Arena(アコー・アレーナ)」で開催されました。テレビではTF1で2月27日の夜9時すぎ(現地時間)から放送されました。

 このアルバムでは、「レザンフォワレがパリに帰ってきたよ」という趣旨なのかMaître Gims(メイトル・ギムス)先生とLa Mano 1.9の「Parisienne」(今週シングル10位)をオープニングナンバーに、ヴィクトワール音楽賞でオリジナルソング賞を受賞した初参加、Helena(エレナ)の「Mauvais garçon」、同じく最優秀女性アーティスト賞を受賞したCharlotte Cardin(シャーロット・カルダン)の「Feel Good」、Zaz(ザーズ)などとともに最近の参加回数が多いAmel Bent(アメル・ベント)の代表曲「Ma philosophie」をはじめ、ベテランのCalogero(カロジェロ)、Céline Dion(セリーヌ・ディオン)の曲や、ラッパーのJuL(ジュール)、Orelsan(オレールサン)の曲も収録されています。

 大ベテランのFlorent Pagny(フローラン・パニー)の参加も大きなニュースでした。大ヒットしたミュージカル『Starmania(スターマニア)』の劇中歌「Les uns contre les autres」も披露され、そしてラストナンバーはこれまた毎回お約束、Jean-Jacques Goldman(ジャン=ジャック・ゴールドマン)が作曲した「La Chanson des Restos」を全員で合唱してフィナーレ、という構成になっています。サプライズ・ゲストとしてPSGのデンベレ選手が来た日もありました。

 さて、今年のLes EnfoirésのL'Hymnes(アンセム)は2曲あり、1月3日にシングル発売されたSanta(サンタ)の「Tout se casse」(全ては壊れゆく)と、ロックバンドLouise Attaque(ルイーズ・アタック)のフロントマンだったGaëtan Roussel(ガエタン・ルーセル)が作曲した「L'Île aux trésors」(宝の島)です。

 Santaの曲のほうは1月6日号ですでにご紹介していますので、今回は「L'Île aux trésors」のほうをお聴きください。Marine, Amel Bent, Nolwenn Leroy, Claire Keim, Zaz, Florent Pagny, Julien Clerc, Vianneyという豪華なメンバーが揃い、Les Enfoirés名義で2月28日、シングル発売されました。

 

Les Enfoirés(レザンフォワレ) - L'Île aux trésors

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの国旗と「Chanson Populaire」
 
2026年3月3日号

 

2026年2月27日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 Argent Sale-A COLORS SHOW - La Rvfleuze

 3 B.M.S.(Vervion Acoustique) - Rambo Goyard

 4 Sex Model - PLK & Theodora

 5 Mon bébé - RnBOi

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 DtMF - Bad Bunny

 8 Avec moi - RnBOi ft. Nono La Grinta

 9 Spa - Maître Gims, Theodora

 10 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 

【アルバムチャート】

 1 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Méga BBL - Theodora

 4 Pyramide 2 - Werernoi

 5 M.I.L.S.4 - Ninho

 6 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 7 Et si j'échoue - Bouss

 8 TP sur TP - JuL

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 Nés pour briller - L2B

 

 シングルチャート19週連続1位の新記録を達成したDisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)は今週も1位で、これで20週連続1位。自己記録更新です。

 

PLK & Theodora

 シングル4位にPLKとTheodoraの「Sex Model」が初登場。Theodoraはシングルチャートのトップ10では1位、4位、9位と3曲も入っています。デュエットの相手のPLKはパリ14区生まれ、29歳のポーランド系のラッパーです。PLKはポーランド人を指すPolakの略で、彼の祖父は1939年9月、第二次世界大戦勃発時にナチス・ドイツとソ連による同時侵攻を受けたポーランドからフランスに亡命したそうです。2023年4月21日付のSNEPチャートでは、シングルのトップ10で6曲同時にチャートインする快挙を遂げ(1位、3位、4位、6位、9位、10位)、同時に「2069'」がアルバムチャート2位に入り、同年4月25日号でプロフィールをご紹介しました。

 前週11位だったKPop Demon Hunters Castの「Golden」が今週10位でトップ10に復帰です。

 アルバムチャートは大物の新作が出ず、前週と比べると2位と3位、4位と5位が入れ替わっただけで、トップ10の顔ぶれは変わりませんでした。世間の関心がイタリアで開催されていた冬季五輪に移っていたのか? 2月の冬枯れ、8月の夏枯れの「ニッパチ」がフランスにもあるのか? あるいは2月28日発売で3月6日付での1位がほぼ確実なLes Enfoirésの2026年ライブ盤「La Ballade des Enfoirés」とぶつかるのを意図的に避けたのか?

 1位は今週もBad Bunny(バッド・バニー)の「DeBÍ TiRAR MáS FOToS」でした。

 

La Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ)


La Rvflueze

 今週のシングルチャート2位に、前週は31位だったLa Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ)の「Argent Sale-A COLORS SHOW」が浮上しました。

 La Rvfleuzeは2001年7月、パリ19区のオーベルヴィリエ門(Porte d'Aubervilliers)近くで生まれた24歳のセネガル系ドリルラッパーです。パリ市の北北東の端。環状道路(旧城壁)やトラム(路面電車)に近いこの地区は19世紀まではゴミ捨て場にされていましたが、戦間期に市営住宅が建てられ、近年は有名なライブ会場「Zénith」があるラ・ヴィレット公園にかけて都市再開発が進みモダンなエリアに変身中です。シャネルの工房が集まる「19M」という施設もできました。

 とはいえ、そこに住むアフリカ系の自分の現実は決して甘いものではないのだと、このラッパーはリリック(paroles) で独白します。曲のタイトルの「Argent Sale」は「汚いカネ」という意味で、自分はそのカネでMVを制作したり、麻薬を売ったり、売春婦と寝たと言い、刑務所に18カ月服役したと言い、家族を破滅させたと言い、「私は自分の人生について話しています。わざとそう言っているのではありません(j'te raconte ma vie,j'fais même pas exprès)」と締めます。典型的な「ラップフランセ一代」をストレートに表現しています。

「アフリカ系の少年が世に出るには、サッカーの選手になるか、ラッパーになるか、ギャングの手先になるかだ」というその世界を地でいくように、ラッパーになる前、10代にはリーグ・アンのオセール(AJ Auxerre)の育成組織にいてプロのサッカー選手を目指していたというLa Rvfleuze。出世作は2022年の「Serrure」(錠前)で、フリースタイルをYouTubeで公開してウケましたが、直後におまわりさんのお世話になって服役します。2024年に出所すると2025年にサン=ドニ出身のギニア系ラッパーGazo(ガゾ)とのコラボで「KAT」を出し、同年7月18日付SNEPシングルチャートで5位まで浮上し、フレンチ・ドリルの若手のホープとして存在感を示しました。それが今週の2位ジャンプアップの素地にあると言えるでしょう。

 

La Rvfleuze(ラ・ルヴフルーズ) - Argent Sale-A COLORS SHOW

 

では、また来週

À la semaine prochaine!