
2026年8月7日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Dai Dai - Shakira, Burna Boy
2 Sexy Nana - Aya Nakamura & La Rvfleuze
3 Maladie - Mauvais djo
4 Pilé - Mauvais djo
5 Melodrama - Disiz, Theodora
6 Jamaican(Bam Bam) - Hugel, Solto(FR)
7 Pineapple - Leto
8 Pocahontas - PLK
9 Séminaire - Bello & Dallas
10 Nuevayol - Bad Bunny
【アルバムチャート】
1 Petal - Ariana Grande
2 Destinée - Aya Nakamura
3 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims
4 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny
5 Et si j'échoue - Bouss
6 Pyramide 2 - Werenoi
7 Numéro d'écrou - La Rvfleuze
8 The Cat - Nono La Grinta
9 Grand garçon - PLK
10 Arirang - BTS
シングルチャート1位は5週連続でShakira(シャキーラ)とバーナ・ボーイ(Burna Boy)のワールドカップ・アンセム「Dai Dai(ダイ・ダイ)」です。でももう8月も中旬で、ヨーロッパ各国では国内リーグ戦が開幕します。
9位にBello & Dallas(ベロ&ダラス)の「Séminaire」が前週の12位から浮上しました。タイトルは日本語にもなっている「セミナー」のことですが、語源は「神学校」です。彼らはブルターニュ地方のレンヌ(Rennes)出身のラップ・デュオ。2026年6月12日付で新作アルバム「Sarah B.」がアルバムチャート3位になり、6月16日号でくわしくご紹介しています。
今週のアルバムチャート1位は、アメリカの33歳の女性シンガーソングライター、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)が7月31日にリリースした約2年ぶり、8枚目のスタジオアルバム「Petal」です。アメリカ、UKでも初登場1位でした。シングルチャートでもタイトルチューンが20位にチャートイン。「花びら」という意味ですが、「petal in the pavement(舗道に落ちた花びら)」という、逆境からのよみがえりを暗示する言葉からきています。彼女、過去にいろいろありましたから。アルバム収録曲「Hate That I Made You Love Me」も今週シングル18位です。
Bekar(ベカール)
今週のアルバムチャートは夏枯れモードで1位以外は前週と顔ぶれが同じなので、久しぶりに北フランスRoubaix(ルーベ)出身のラッパー、Bekar(ベカール)をとりあげます。過去に2023年4月11日号、2024年3月26日号でご紹介しています。台風シーズンなので、アルバム名「Plus fort que l'orage」(嵐よりも強く)にちなみまして(こじつけ?)。
この2023年3月31日リリースのファーストアルバムはコンスタントに売れて、8月にSNEPからプラチナディスクに認定されました。そのタイトルでClaude Lelouch(クロード・ルルーシュ)監督の1966年の映画『Un homme et une femme(男と女)』の挿入歌でフレンチポップスの名曲「Plus fort que nous」(邦題:愛は私たちよりも強く/歌ったのはピエール・バル―とニコル・クロワジール)を連想した人がいるかもしれませんが、特にそれと関係はないようです。
Bekar(ベカール)こと本名Alexandre Becquart(アレクサンドル・ベカール)は1998年1月、スペインの首都マドリード生まれの28歳。7歳からノール(Nord/59)県のRoubaix(ルーベ)で育ちました。ここはベルギーに近いリール都市圏の中核都市の一つで、伝統ある自転車レース「パリ~ルーベ(Paris-Roubaix)」で知られています。
21歳だった2019年3月にミックステープ「Boréal」でラッパーとしてのソロキャリアをスタートし、2020年にミックステープ「Briques Rouges」、2021年にEP「Mira」、2022年にミックステープ「Mirasierra」を出し、2023年3月に出した「Plus fort que l'orage」でさらに注目されます。このアルバムは2024年に「Plus fort」と改題・再リリースされ、収録曲の「Magenta」がヒット。2025年6月にセカンドアルバム「Alba」(スペイン語で「夜明け」という意味)が出ました。
最初のミックステープのメインチューンが「La mort a du goût」(死に味わいあり)で、続いて注目された曲が「Anxiolytique」(抗不安薬)と、タイトルからして「苦悩」「不安」を思わせる内向的なリリック(paroles)が数多くあり、それが独特な持ち味になっています。現代のフレンチラップの多様性と深みを象徴する存在と言えるでしょうか?
日本との関わりで言えば「Yamamoto」(2021年)という曲があります。タイトルはフランスでも著名なファッションデザイナー、ヨウジヤマモト(山本耀司)氏のこと。1981年のパリ・コレのステージで世界のファッション界に「黒の衝撃」をもたらした「伝説」は、45年たった今も語り草になっています。
歌詞でも「Flamme qui sort de la moto. Noir comme Yohji Yamamoto. Noir comme un couteau dans l'dos. Noir comme la couleur de ma galaxie」(拙訳:バイクから噴きあがる炎。ヨウジヤマモトのように黒い。背中に刺さったナイフのように黒い。俺のギャラクシー※の色のように黒い)とあります。「黒の衝撃」の影響は、当時まだ生まれていなかったラッパーにも及んでいるのです。
※サムスンのスマホ「ギャラクシー(Galaxy)」のこと。「アップル(64.08%)にあらざれば人にあらず」の日本と違って、フランスではスマホの販売シェア首位の座をめぐって長年、サムスン(29.19%)がアップル(34.99%)と互角の勝負を続けています(シェアの数値はアウンコンサルティングのシェア調査2026年7月版より)。
さて、今回は7月17日にリリースされた新作シングル「Dunes & Icebergs」(砂丘と氷山)をお聴きください。最初は、こう始まります。
「Six heures trente mort bourré d'vant la boîte. Tout l'monde est parti même ma voix. Il m'reste deux clopes et un briquet qui postillonne des étincelles. J'crois qu'j'ai fait l'tour du museum de mes vingt-sept. Faut qu'je pense à m'ranger」
拙訳:(朝の)6時半、クラブの前で酔いつぶれた。みんないない。声もしない。タバコ2本と、火花を放つライター1本が残っている。僕は自分の27年間の博物館を(走馬灯のように)見たんだと思う。それを自分で整理しなければならないのだが……。
遊び尽くした翌朝、早朝の都市の光景に漂う寂寥感、そして自ら抱いている虚無と絶望、憂鬱なる心情を、つぶやくようにラップしていきます。そして曲の最後は、このように終わります。
「Ici les cœurs et les âmes se perdent. Tu sais ici toutes les vagues se perdent. Entre les dunes et les icebergs」
拙訳:ここでは、心も魂もさまよい、消えていく。ここでは、波もみなさまよい、消えていく。砂丘と氷山の間にだ。わかるかい。
こんなフレーズを「メンヘラ」とか「自虐的」と評するのはたやすいでしょう。でも、もし、日本の大正時代の詩人、萩原朔太郎が100年の時空を超えて「ふらんすへ行きたしと思へどもふらんすはあまりに遠し」(「旅上」)と嘆いたフランスの現代にラッパーとしてよみがえったとしたら、おそらくこんな寂寥感と孤独感に満ちたリリックを書いたのではないかと、私は思います。
Bekar(ベカール) - Dunes & Icebergs
では、また来週
À la semaine prochaine!





















