
2026年5月1日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Melodrama - Disiz, Theodora
2 Pocahontas - PLK
3 Pineapple - Leto
4 Elle voulait - RnBoi
5 René Caovilla - Gambi
6 Dracura(Remix) - Tame Impala
7 Spa - Maître Gims, Theodora
8 Beauty And A Beat - Justin Bieber ft.Nicki Minaj
9 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard
10 Love You - Nono La Grinta
【アルバムチャート】
1 Michael:Songs From The Motion Picture - Michael Jackson
2 Décennie - Gradur
3 Numéro d'écrou - La Rvfleuze
4 Grand Garçon - PLK
5 Sombre mélodie - Landy
6 My Eyes Only-Flashback - RnBoi
7 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims
8 Magma - Le Rat Luciano
9 Arirang - BTS
10 Pyramide 2 - Werenoi
シングルチャートは今週も1位がDisizとTheodoraの「Melodrama」で、2位がPLKの「Pocahontas」でした。シングル9位に2026年2月24日号でくわしくご紹介したRambo Goyardの「B.M.S.」が、10位に2026年4月14日号でご紹介したNono La Grintaの「Love You」が、それぞれトップ10に再浮上しています。
今週のアルバムチャートでは「春の新作」が続々と登場しています。1位は人呼んで「King of Pop」ことMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)。不世出のスーパースター・マイコーが2009年5月に亡くなって、早いものでもう17年。アルバム「Michael:Songs From The Motion Picture」は伝記映画『Michael/マイケル』のサウンドトラック盤で、13曲を収録して映画公開に合わせて4月24日、全世界で発売されました。なお、今週のシングル16位に彼の「Billie Jean」が、同23位に「Beat It」がチャートインしています。今ごろ天国でムーンウォークを披露しているでしょうか?
4月24日リリースの4枚目のスタジオアルバム「Sombre mélodie」がアルバム5位に初登場したLandy(ランディ)は、パリ19区生まれ、サン=ドニ(Saint-Denis)にある団地シテ・ジォリオ=キュリー(Cité Joliot-Curie)で育った30歳。「Le Dyonisien」(サン=ドニっ子)を自称して同名の曲も出すほど地元愛の強いラッパーです。2020年12月29日号でご紹介しました。本名をDylan Gahoussou Syllaといい、両親の出身地はコンゴとコートジボワールで、父親は前号でご紹介したルンバ・コンゴレーズのギタリストです。新作アルバムはTiakola、Genezio、R2、KeBlackらが参加しています。
今週、「Magma」がアルバム8位に登場したLe Rat Luciano(ル・ラット・ルチアーノ)は、マルセイユ(Marseille)出身の50歳のラッパーにしてプロデューサーにして俳優。フレンチラップシーンでは珍しく(失礼)、後輩の面倒見がいい心やさしい人格者として知られていて、とりわけ同郷のJuL(ジュール)との関係が深く「13'Organisé」のプロジェクトにも参加しています。90年代から活動するベテランですが、4月24日に出した「Magma」は実に26年ぶりになる2枚目のスタジオソロアルバムです。なお、クリスチャン・ヴァンデ率いる同名のフランスのプログレバンドMagmaとは全く無関係です。
Gradur(グラドゥール)
今週のアルバムチャート2位に4月24日リリースの4枚目のスタジオアルバム「Décennie」(デセニー/「10年間」という意味)が登場したGradur(グラドゥール)は35歳のラッパーですが、約7年間もアルバムを出していなかったので、2020年1月に始まった当ブログではこれまで、とりあげる機会がありませんでした。
本名はWanani Gradi Mariadiといい、1990年11月にフランス最北端、ベルギー国境に近いノール(Nord/59)県ルーベ(Roubaix)で生まれますが、父親の出身地がキンシャサ(Kinshasa)なので誕生時の国籍はコンゴ民主共和国(RDC)の旧国名ザイール共和国で、8歳の時に国籍をフランスに変更しています。
ルーベの高校を卒業後、2011年にフランス軍に志願入隊し、陸軍の砲兵隊に所属しながらサッカーに熱中。選手になるつもりでしたが足をケガして断念。目指す進路をラッパーに変更して2013年頃から作詞を始めます。ところが、兵舎内でいけないクスリをやっていたことが上官にばれ、おまけに軍曹の命令に服従せず言いあいにまで発展する出来事まであって2014年、フランス陸軍をやめてしまいます。『兵隊やくざ』シリーズの勝新太郎顔負けですが営倉入りにも不名誉除隊にも不良行為除隊にもならず、よかったですね。
ルーベに帰郷して地元のラッパーたちと音楽活動を始め、自主制作でミックステープ「Sheguey Squad」(Shegueyはコンゴのリンガラ語で「ストリートの子」という意味)を出したりしますが、彼に目をつけてメジャーシーンに引き上げた恩人が、2018年のオルリー空港乱闘事件で「武名」を轟かせた武闘派ラッパーのBooba(ブーバ/セネガル系)でした。「prouver qu'il ne se limite pas aux freestyles et à l'égotrip」(拙訳:即興のラップにも、自分自身をむき出しにする表現にも、限界はないことを証明したい)と言う彼と、硬派と硬派でウマが合ったのでしょうか?
アメリカのシカゴでしばらく修業した後、ファーストシングル「Terrasser」(「地面に打ち倒す」という意味/最高27位)をリリースします。それを収録した2015年のファーストアルバム「L'Homme au bob」はSNEPアルバムチャートでなんと最高1位にのぼりつめました。2016年の2枚目のアルバム「Where is l'album de Gradur」は最高6位で、Heuss L'Enfoiréをフィーチャーし最高1位のシングル「Ne reviens pas」を収録した2019年の「Zone 59」は最高5位になりますが、そこから今作「Décennie」までソロアルバムの発表に約7年のブランクがありました。
それでも毎年シングルは出し続けていて、2025年には前号でご紹介したFally IpupaやSDM、Tiakola、Letoらコンゴに縁のあるアーティストが集結したコンピレーション・アルバム「Projet Kongo (100%kongo)」に深く関わります。これは、コンゴ民主共和国を武装勢力や外国の搾取から解放し、正義、平和、自己決定権の確立、経済の真の自立を目指す「Free Congo」の政治・社会運動に彼が共感して企画したプロジェクトで、まさに硬派の面目躍如。それだけに政治的な配慮がからむのかリリースが遅れていて、2026年中には実現する見込みです。
すでに、その収録曲からGradurとNinho、Damso、Kalash Criminel、Josman、Youssouphaがコラボした「Free Congo」(最高34位)をはじめ、 SDM、Rsko、L2B、Zed、Guy2Bezbar、Niskaをフィーチャーした楽曲がシングル発売されています。毎週コンゴ、コンゴで恐縮ですが、ラップフランセにコンゴ系のアーティストが多いことがよくわかります。
なお、出身地のルーベがベルギー国境に近いことと、コンゴ民主共和国が旧ベルギー領でコンゴ系の人が多いからなのか、ベルギーのワロン地域(フランス語圏)チャートではフランスよりも上位のポジションになる場合が多いようです。
さて、今回は新作ソロアルバム「Décennie」から、Ninhoをフィーチャーして4月10日にシングルリリースされた「Opps」をお聴きください。タイトルは不覚をとって「しまった」と思った時の表現で、英語では「Opps」ですがフランス語では「Oups」で、「Oh là là!」よりも不覚の度合いがまだ軽い場合に使われます。
歌詞(paroles)では「Ici,c'est Roubaix,ouais,c'est pas l'Amérique」(拙訳:ここはルーベ、うん、ここはアメリカじゃない)とリフレイン。地元愛とコンゴ愛の男、グラドゥール。郷里のルーベと、ヒップホップの武者修行を積んだ街シカゴを比べていますか?
Gradur(グラドゥール) - Opps ft.Ninho
では、また来週
À la semaine prochaine!





















