
2025年10月31日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Melodrama - Disiz, Théodora
2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9
3 Golden - KPop Demon Hunters Cast
4 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza
5 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH
6 Mon bébé - RnBOi
7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift
8 Adoriano - Niska
9 Biff pas d'love - Bouss
10 Génération impolie - Franglish, KeBlack
【アルバムチャート】
1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims
2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast
3 Mega BBL - Théodora
4 The Last Race - GP Explorer
5 Et si j'échoue? - Bouss
6 The Life of a Showgirl - Taylor Swift
7 Le disque bleu - Benjamin Biolay
8 Pyramide 2 - Werenoi
9 Nés pour briller - L2B
10 Diamant noir - Werenoi
今週のシングルチャートは「Melodrama」(メロドラマ)が3週連続で1位でした。この曲でThéodora(セオドラ/2025年6月17日号参照)とデュエットしているDisiz(ディズ)は、世界遺産のゴシック大聖堂で知られるソンム(Somme/80)県アミアン(Amiens)出身の47歳のラッパー。本名はSérigne M'Baye Gueyeといい、セネガル系です。Disiz la Pesteというステージネームで2000年にデビュー。病気の名前はまずいのかla Pesteを取ってDisizに改めました。2022年にアルバム「L'Amour」が最高4位になっています。
6位に「Mon bébé」がチャートインしたRnBOiは19歳。セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ヌムール(Nemours)の生まれ。ビートメーカー(音楽制作でドラムパターンやベースラインなどを作る人のこと。「トラックメーカー」とも言います)から、Aya Nakamuraが設立したR&Bレーベル「DOUBLE JEU RECORDS」の第1号アーティストになり、6月にEP「My Eyes Only」でデビューしたばかりの新人です。ステージネーム「RnBOi」は、日本のアニメ『進撃の巨人』(フランス語タイトルは「Attaque des Titans」)の主人公エレン・イェーガー(フランス語のスペルはEren Jäger)のことで、自分と顔が似ているからだそう。実写版では故・三浦春馬さんが演じましたが、似てますか?
シングル9位にBoussの新曲「Biff pas d'love」(le biffはお金を意味するスラングなので「カネに愛はない」)が登場。そこに愛はあるんか? 10位にFranglishとKeBlackの「Génération impolie」が入りました。「Génération impolie, on est culotté (c'est nous)」(拙訳:無礼な世代。俺たち生意気(それが俺たち))と、ラップします。culottéは、フランス革命以前は貴族階級がはきましたが、現代では男の子がはく半ズボン「キュロット(culottes)」が語源で、生意気、あつかましい、子どもじみた、といった意味があります。
アルバムチャートは新作リリースが乏しかったので、トップ10は前週からの横すべりと旧作の再浮上で占められました。1位はMaître Gims先生、2位はKPop Demon Hunters。Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)の新作は前週の2位から後退しても7位。5位のBouss(ブース)の「Et si j'échoue?」は2024年11月、9位のL2Bの「Nés pour briller」は2025年2月、8位のWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」は2024年10月、10位のWerenoiの「Diamant noir」は2025年4月に発売されたアルバムです。月が替わって11月に出る新作に期待しましょう。
Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)
今週は10月17日に発売したアルバム「Pianosong」(邦題:ピアノソング ピアノが唄う)が前週、SNEPクラシックチャートで3位に入ったこの人をとりあげます。ピアニストのAlexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)です。
フランスのピアニストと言えば、ラッパーとコラボしたり、パリ五輪の開会式で火がついたピアノを演奏したりなど何かと話題の多い「ネオクラシカルの旗手」ことSofiane Pamart(ソフィアン・パマール)を、このブログでも何度もとりあげてきましたが、アレクサンドル・タローも現代フランスを代表するクラシックのピアニストです。新作の30曲入り企画盤「Pianosong」で彼が主に弾いているのは、古き良き時代の「シャンソン」すなわち「仏蘭西歌謡曲」です。
アレクサンドル・タローは1968年12月生まれの56歳。パリ14区の出身ですがルーツはケルト文化圏でもあるブルターニュ地方です。父親はシトロエンの自動車修理工場を経営していましたが、かつてはバリトン歌手でした。母親はバレエ、ダンスの教師で、パリのオペラ座(ガルニエ宮)の舞台に立ったこともあるそうです。
アレクサンドル少年は5歳からピアノを習い始め、祖父母が住むブルターニュで初舞台を踏みます。パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)卒業後、「マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクール」で2位、「ミュンヘン国際音楽コンクール」で2位になり、ヨーロッパのクラシック音楽界でその名を知られるようになります。その活躍はフランス国内にとどまらず、英国のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、スイスのチューリヒ・トーンハレ管弦楽団などとも共演していて、ヨーロッパ各地で開かれる音楽祭でもそのピアノ演奏を披露しています。
クラシックの枠内にとどまることなく、ジャンルを超えた「クロスオーバー・プロジェクト」にも意欲的。2012年にはミヒャエル・ハネケ監督、名優ジャン=ルイ・トランティニャン主演の映画『Amour』(邦題:愛、アムール)で、主人公の弟子のピアニスト役で俳優としてデビューしました。2018年にはサーカス出身の異色のダンス・アーティスト、ヨアン・ブルジョワ(Yoann Bourgeois)のパフォーマンス映像にドビュッシーの「月の光(Clair de Lune)」を弾いて参加しています。ヒップホップのブレイクダンスのパフォーマンスで、バロック時代の音楽家フランソワ・クープラン(François Couperin)の曲で伴奏をつけるという、なかなか面白い試みにも挑戦しています。2022年には、故・坂本龍一氏の曲も含めて映画音楽を合計50曲も弾き続ける企画盤「CINEMA」を出しています。
ピアノを「人間の声のように響かせたい」というのが彼のモットーで、さまざまな歌曲のメロディーをピアノで弾くことがライフワーク。フランス人だけに昔のシャンソンへの関心は強く、2017年にはバルバラ(Barbara)へのトリビュート・アルバムを出したこともあります。今回の「Pianosong」は彼の「シャンソン愛」の集大成と言ってもいいでしょう。
アルバムには、ユベール・ジロー作曲の「パリの空の下(Sous le Ciel de Paris)」、シャルル・トレネの「詩人の魂(L'âme des poetes)」、ジャック・ブレルの「行かないで(Ne me quitte pas)」、シャルル・アズナブールの「ラ・ボエーム(La Boheme)」、エディット・ピアフの「愛の讃歌(L'Hymne à l'amour)」などなど、シャンソンの著名ナンバーが収められています。
他にはレオ・フェレ、ジョルジュ・ブラッサンス、バルバラの曲や、フレンチポップスに寄ったところではセルジュ・ゲンズブール、セルジュ・ラマ、ミシェル・フーガン、ミシェル・ベルジェや、ミレーヌ・ファルメールのパートナー、ローラン・ブトナの曲も入っています。
アルバム収録曲の中から、シャンソンのファンの皆さんには申し訳ありませんが、ロックオペラ「Starmania」(2022年8月23日号参照)を成功させながら1992年に44歳で早世したミシェル・ベルジェ(Michel Berger)が、妻のフランス・ギャル(France Gall)に提供して1987年にヒットした「Évidemment」をお聴きください。
アレクサンドル・タローはこれまで何度も来日していますが、今年も11月、12月に来ます。11月9日に名古屋「ホール・ルンデ」、11月11日に東京「武蔵野市民文化会館小ホール」(児玉桃さんとのデュオリサイタル)、11月13日に東京「ヤマハホール」、12月7日に東京「かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール」、12月14日に横浜「みなとみらいホール・大ホール」で、コンサートがあります。
Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー) - Évidemment
では、また来週
À la semaine prochaine!




























