仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲 Chanson Populaire
 
2025年11月4日号

 

2025年10月31日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 5 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 6 Mon bébé - RnBOi

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Adoriano - Niska

 9 Biff pas d'love - Bouss

 10 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 3 Mega BBL - Théodora

 4 The Last Race - GP Explorer

 5 Et si j'échoue? - Bouss

 6 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 7 Le disque bleu - Benjamin Biolay

 8 Pyramide 2 - Werenoi

 9 Nés pour briller - L2B

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 今週のシングルチャートは「Melodrama」(メロドラマ)が3週連続で1位でした。この曲でThéodora(セオドラ/2025年6月17日号参照)とデュエットしているDisiz(ディズ)は、世界遺産のゴシック大聖堂で知られるソンム(Somme/80)県アミアン(Amiens)出身の47歳のラッパー。本名はSérigne M'Baye Gueyeといい、セネガル系です。Disiz la Pesteというステージネームで2000年にデビュー。病気の名前はまずいのかla Pesteを取ってDisizに改めました。2022年にアルバム「L'Amour」が最高4位になっています。

 

RnBoi

 6位に「Mon bébé」がチャートインしたRnBOiは19歳。セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ヌムール(Nemours)の生まれ。ビートメーカー(音楽制作でドラムパターンやベースラインなどを作る人のこと。「トラックメーカー」とも言います)から、Aya Nakamuraが設立したR&Bレーベル「DOUBLE JEU RECORDS」の第1号アーティストになり、6月にEP「My Eyes Only」でデビューしたばかりの新人です。ステージネーム「RnBOi」は、日本のアニメ『進撃の巨人』(フランス語タイトルは「Attaque des Titans」)の主人公エレン・イェーガー(フランス語のスペルはEren Jäger)のことで、自分と顔が似ているからだそう。実写版では故・三浦春馬さんが演じましたが、似てますか?

 シングル9位にBoussの新曲「Biff pas d'love」(le biffはお金を意味するスラングなので「カネに愛はない」)が登場。そこに愛はあるんか? 10位にFranglishとKeBlackの「Génération impolie」が入りました。「Génération impolie, on est culotté (c'est nous)」(拙訳:無礼な世代。俺たち生意気(それが俺たち))と、ラップします。culottéは、フランス革命以前は貴族階級がはきましたが、現代では男の子がはく半ズボン「キュロット(culottes)」が語源で、生意気、あつかましい、子どもじみた、といった意味があります。

 アルバムチャートは新作リリースが乏しかったので、トップ10は前週からの横すべりと旧作の再浮上で占められました。1位はMaître Gims先生、2位はKPop Demon Hunters。Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)の新作は前週の2位から後退しても7位。5位のBouss(ブース)の「Et si j'échoue?」は2024年11月、9位のL2Bの「Nés pour briller」は2025年2月、8位のWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」は2024年10月、10位のWerenoiの「Diamant noir」は2025年4月に発売されたアルバムです。月が替わって11月に出る新作に期待しましょう。

 

Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)


Alexandre Tharaud

 今週は10月17日に発売したアルバム「Pianosong」(邦題:ピアノソング ピアノが唄う)が前週、SNEPクラシックチャートで3位に入ったこの人をとりあげます。ピアニストのAlexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー)です。

 フランスのピアニストと言えば、ラッパーとコラボしたり、パリ五輪の開会式で火がついたピアノを演奏したりなど何かと話題の多い「ネオクラシカルの旗手」ことSofiane Pamart(ソフィアン・パマール)を、このブログでも何度もとりあげてきましたが、アレクサンドル・タローも現代フランスを代表するクラシックのピアニストです。新作の30曲入り企画盤「Pianosong」で彼が主に弾いているのは、古き良き時代の「シャンソン」すなわち「仏蘭西歌謡曲」です。

 アレクサンドル・タローは1968年12月生まれの56歳。パリ14区の出身ですがルーツはケルト文化圏でもあるブルターニュ地方です。父親はシトロエンの自動車修理工場を経営していましたが、かつてはバリトン歌手でした。母親はバレエ、ダンスの教師で、パリのオペラ座(ガルニエ宮)の舞台に立ったこともあるそうです。

 アレクサンドル少年は5歳からピアノを習い始め、祖父母が住むブルターニュで初舞台を踏みます。パリ国立高等音楽院(コンセルヴァトワール)卒業後、「マリア・カナルス・バルセロナ国際音楽演奏コンクール」で2位、「ミュンヘン国際音楽コンクール」で2位になり、ヨーロッパのクラシック音楽界でその名を知られるようになります。その活躍はフランス国内にとどまらず、英国のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、スイスのチューリヒ・トーンハレ管弦楽団などとも共演していて、ヨーロッパ各地で開かれる音楽祭でもそのピアノ演奏を披露しています。

 クラシックの枠内にとどまることなく、ジャンルを超えた「クロスオーバー・プロジェクト」にも意欲的。2012年にはミヒャエル・ハネケ監督、名優ジャン=ルイ・トランティニャン主演の映画『Amour』(邦題:愛、アムール)で、主人公の弟子のピアニスト役で俳優としてデビューしました。2018年にはサーカス出身の異色のダンス・アーティスト、ヨアン・ブルジョワ(Yoann Bourgeois)のパフォーマンス映像にドビュッシーの「月の光(Clair de Lune)」を弾いて参加しています。ヒップホップのブレイクダンスのパフォーマンスで、バロック時代の音楽家フランソワ・クープラン(François Couperin)の曲で伴奏をつけるという、なかなか面白い試みにも挑戦しています。2022年には、故・坂本龍一氏の曲も含めて映画音楽を合計50曲も弾き続ける企画盤「CINEMA」を出しています。

 ピアノを「人間の声のように響かせたい」というのが彼のモットーで、さまざまな歌曲のメロディーをピアノで弾くことがライフワーク。フランス人だけに昔のシャンソンへの関心は強く、2017年にはバルバラ(Barbara)へのトリビュート・アルバムを出したこともあります。今回の「Pianosong」は彼の「シャンソン愛」の集大成と言ってもいいでしょう。

 アルバムには、ユベール・ジロー作曲の「パリの空の下(Sous le Ciel de Paris)」、シャルル・トレネの「詩人の魂(L'âme des poetes)」、ジャック・ブレルの「行かないで(Ne me quitte pas)」、シャルル・アズナブールの「ラ・ボエーム(La Boheme)」、エディット・ピアフの「愛の讃歌(L'Hymne à l'amour)」などなど、シャンソンの著名ナンバーが収められています。

 他にはレオ・フェレ、ジョルジュ・ブラッサンス、バルバラの曲や、フレンチポップスに寄ったところではセルジュ・ゲンズブール、セルジュ・ラマ、ミシェル・フーガン、ミシェル・ベルジェや、ミレーヌ・ファルメールのパートナー、ローラン・ブトナの曲も入っています。

 アルバム収録曲の中から、シャンソンのファンの皆さんには申し訳ありませんが、ロックオペラ「Starmania」(2022年8月23日号参照)を成功させながら1992年に44歳で早世したミシェル・ベルジェ(Michel Berger)が、妻のフランス・ギャル(France Gall)に提供して1987年にヒットした「Évidemment」をお聴きください。

 アレクサンドル・タローはこれまで何度も来日していますが、今年も11月、12月に来ます。11月9日に名古屋「ホール・ルンデ」、11月11日に東京「武蔵野市民文化会館小ホール」(児玉桃さんとのデュオリサイタル)、11月13日に東京「ヤマハホール」、12月7日に東京「かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール」、12月14日に横浜「みなとみらいホール・大ホール」で、コンサートがあります。

 

Alexandre Tharaud(アレクサンドル・タロー) - Évidemment

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月28日号

 

2025年10月24日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 6 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 7 En boucle - GP Explorer,Adèle Castillon,Zamdane

 8 Viano - RK,Genezio

 9 Toute la nuit - GP Explorer,Anyme023

 10 Adoriano - Niska

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Le disque bleu - Benjamin Biolay

 3 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 4 The Last Race - GP Explorer

 5 Mega BBL - Théodora

 6 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 7 Vivre...encore - Kendji Girac

 8 Et si j'échoue? - Bouss

 9 Deadbeat - Tame Impala

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 DisizとThéodoraによる「Melodrama」(メロドラマ)が今週のシングルチャートで2週連続の1位。以下9位までは前週のトップ10にも入っていて順位が入れ替わっただけですが、10位にNiskaの「Adoriano」が再浮上しました。この曲は9月12日付で3位になっています。タイトルはセリエAのインテルでFWとして活躍し2016年に引退した元ブラジル代表のアドリアーノ氏のことです。ブラジルではサッカーの「皇帝」と言えば、ドイツの故ベッケンバウアー氏ではなく彼のことを指します。

 

Kendji Girac

 アルバム7位にお久しぶりのKendji Girac(ケンジ・ジラク)登場。「Vivre...encore」は2024年10月にリリースされた6枚目のスタジオアルバム(最高3位)です。2020年10月27日号で最初にくわしくご紹介している彼は現在29歳。南西部アキテーヌ地方ドルドーニュ(Dordogne/24)県ペリグー(Périgueux)の生まれですが、父親はスペイン・カタルーニャ自治州の出身で、ロマ民族※(フランス語でジタンgitan、スペイン語でヒターノgitano)の血を引いています。2014年、TF1のオーディション番組「The Voice,La plus bell voix」シーズン3で優勝後、ポップスターとして人気が急上昇。出したアルバムは全て最高位3位以上です。2024年4月に銃の暴発事故で重傷を負いましたが、すでに音楽活動に復帰してシングル盤を出していて、来年1月からツアー活動も再開します。よかったですね。それに期待してのチャート再浮上でしょうか?

※「ジプシー」は蔑称なので使用を控えるように欧州連合でも国連でも言っていて、日本では放送禁止用語です。

 9位に「Deadbeat」がランクインしたTame Impala(テーム・インパラ)は、オーストラリア・シドニー出身で39歳のサイケデリック・ロックのミュージシャン、ケヴィン・パーカー(Kevin Parker)が、2007年にパース(Perth)で立ち上げ企画・プロデュース、作詞、作曲、演奏、レコーディングを一人で切り回しているプロジェクト名です。テーム・インパラ名義では5枚目のスタジオアルバム「Deadbeat」は10月17日のリリースで、「本業」の60年代風味のサイケロックにEDM、テクノ、サイケ・トランスのようなダンス・ミュージックを融合させている意欲的な新作です。

 

Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)


Benjamin Biolay

 今週のアルバムチャート2位に、フレンチポップスのベテラン・シンガーソングライター、Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ)の「Le disque bleu」が入りました。2年ぶり通算15枚目のスタジオアルバムで24曲入り。10月16日発売です。

 プロフィールをご紹介しますと、1973年1月、リヨン(Lyon)に近いローヌ(Rhône/69D)県ヴィルフランシュ=シュル=ソーヌ(Villefranche-sur-Saône)生まれの52歳。シンガーソングライターとしては2001年のアルバム「Rose Kennedy」(最高66位)でデビューし、女性ウケしそうな低音のウィスパー・ヴォイスで、前号で少し触れたエティエンヌ・ダオ(Étienne Daho)の弟分のようにみられていた時期もありました。

 3位以内に入ったアルバムは、「La Superbe」(最高3位/2009年)、「Vengeance」(最高2位/2012年)、「Palermo Hollywood」(最高3位/2016年)、「Volver」(最高3位/2017年)、「Grand Prix」(最高1位/2020年)、「Saint-Clair」(最高1位/2022年)に今作「Le disque bleu」と7作もあり、40代後半以降に最高1位の大ヒット作が出ています。

 もう一つの顔が敏腕音楽プロデューサーで、フランスのエンタメ界のレジェンドだったアンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)の晩年、82歳の時の名曲「Jardin d'Hiver」を収録したアルバム「Chambre Avec Vue」(2002年)をケレン・アン、アート・メンゴとともにプロデュースし、大ヒットさせました。他にジュリエット・グレコ、ジュリアン・クレール、フランソワーズ・アルディのような大物のアルバムを手がけてきた実績があります。

 さらにもう一つ、俳優としての顔もあり、2010年代に数本の映画に出演しています。2002年にはイタリアの名優マルチェロ・マストロヤンニとフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴの間に生まれた娘、キアラ・マストロヤンニ(Chiara Mastroianni)と結婚しましたが、7年後に離婚。それでも2019年の映画『Chambre 212』では、夫婦役で共演しています。

 さて、アーティストのほうに戻りまして、「Le disque bleu」の収録曲からオープニング・チューンの「Le penseur」をお聴きください。

 タイトルは有名なロダンの彫刻「考える人」と同じですが、歌詞(paroles)の中身は海を眺めている男が、過去を回想しながら、船出するボートに託して死を想え(memento mori/メメント・モリ)と匂わせつつ、「J'aime bien mourir ma non troppo※」(拙訳:俺は喜んで死ぬつもりだが、まあ、そこそこにしておくか)と、シニカルにつぶやきます。自分の人生の物語とその終わりを苦笑いを浮かべながら語れるような渋さが、この人らしい持ち味でしょう。

※「ma non troppo」はイタリア語で「~しすぎないように」と、たしなめる表現です。元妻がイタリア人だったので……。なお、ジュール・マスネ作曲のオペラ『Manon(マノン)』では、魔性の女(femme fatale)のマノンは逃避行の末に港町ル・アーヴルの海辺で「Et c'est là l'histoire de Manon」(これがそう、マノンの物語なのよ)と言い残してこと切れますが、もしかすると「ma non」は、そのラストシーンとかけているのかもしれません。

 

Benjamin Biolay(バンジャマン・ビオレ) - Le penseur (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月21日号

 

2025年10月17日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 En boucle - GP Explorer,Adèle Castillon,Zamdane

 6 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 7 The Fate Of Ophelia - Taylor Swift

 8 Toute la nuit - GP Explorer,Anyme023

 9 Viano - RK,Genezio

 10 Sale état - RK,Ninho

 

【アルバムチャート】

 1 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 2 The Last Race - GP Explorer

 3 Le retour des beaux jours - Vanessa Paradis

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Gloria - Georgio

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Topboy:Tome 1 - RK

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Pretty Dollcorpse - FEMTOGO,Ptite sœur,neophron

 

 今週のシングルチャート1位は、前週は6位だったラッパーのDisizとThéodoraによる「Melodrama」(メロドラマ)でした。

 3位、5位、8位はカーレースがらみの企画盤GP Explorer「The Last Race」の収録曲。5位のAdèle Castillon(アデル・カスティヨン)は、ロワール地方メーヌ=エ=ロワール(Maine-et-Loire/49)県アンジェ(Angers)出身の23歳の女性シンガー。2018年から2021年までナント(Nantes)を拠点とする男女ポップデュオ「Videoclub(ビデオクラブ)」のボーカルを務めた後、ソロに転じています。女優としてコメディ映画やスリラー映画に出演しています。Zamdaneはモロッコの赤い街マラケシュ(Marrākish)出身の28歳のラッパー。8位のAnyme023はフランス最北部パ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県リエヴァン(Liévin)出身の22歳。本名はMaxence Turlot(マクサンス・テュルロ)といい、本業は動画配信者ですが、音楽活動では3月にフランス海外県マルティニーク島出身の女性シンガー、シェイディーズ(Shaydee's)とコラボしたシングル「Shamballa(シャンバラ)」をリリースし、好評を博しています。

 アルバムチャート1位がTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の「The Life of a Showgirl」、2位がGP Explorerの「The Last Race」という順位は、前週と変わらずでした。

 

Vanessa Paradis

 今週のアルバムチャート3位はVanessa Paradis(ヴァネッサ・パラディ)の「Le retour des beaux jours」で10月10日発売。かつてはフランス伝統の少女歌手、人呼んで「フレンチ・ロリータ」の代表として一世を風靡し、スクリーンでも活躍したヴァネッサですが、御年52歳。タイトルのようにミュージックシーンで「麗しき日々よ、もう一度」と、なりますかどうか……。通算8枚目のスタジオアルバムはÉtienne Daho(エティエンヌ・ダオ)がプロデュースしています。80年代のフレンチポップス界で「セルジュ・ゲンズブールの後継者」と目されたこの人も、すでに69歳です。

 8位はRKのミックステープ「Topboy:Tome1」。10月10日リリース。「Tome 1」は日本語で言えば「第一巻」という意味です。RKはセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県モー(Meaux)出身の23歳のアルジェリア系ラッパー。2018年9月発売のデビューアルバム「Insolent(傲慢)」がいきなり初登場1位になるという「伝説」を残しています。

 アルバム10位にチャートインしたのが10月10日リリースのFEMTOGO、Ptite sœur、neophronによる「Pretty Dollcorpse」。英語で「かわいい死体人形」という意味の恐ろしげなタイトルで、スリラー映画がモチーフ。中心人物FEMTOGOは24歳の新世代ラッパーで、ステージネームをbaby hayabusaから、故・三浦建太郎氏が中世の剣と魔法の世界を描いたマンガ「ベルセルク(BERSERK)」の登場人物「FEMTOGO」に変えています。Ptite sœurは2023年メジャーデビューのラッパーで「妹」と名乗りながらもトランスジェンダー。10月24日、パリ19区のラ・ヴィレット公園内にあるLa Grande Halle de la Villetteで開催される「Grünt festival」のステージに立ちます。neophronはベルギー出身の音楽プロデューサーで、ラップフランセのビートメーカーとして活躍中。エジプトハゲワシという鳥が名前の由来です。

 

Georgio(ジョルジオ)

 

Georgio

 シャンソン・リテレール(Chanson littéraire/文学的シャンソン)といえば、日本にもファンが多くいたレオ・フェレ(Léo Ferré)が代表的ですが、現代フランスの「ヒップホップ・リテレール(Hip-hop littéraire/文学的ヒップホップ)」といえばこの人、Georgio(ジョルジオ)が挙げられるでしょう。10月10日に出した通算6枚目、15曲入りのスタジオアルバム「Gloria(グロリア)」が、今週のチャートでいきなり6位に躍り出ています。

 1993年1月、セーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県リラ(Lilas)生まれの32歳。ルーツはカリブ海のフランス海外県グアドループ諸島です。家庭が複雑だったこともありストリートで鳴らす不良少年でしたが、親代わりに彼を育ててくれた読書好きの祖母の影響を受けて「文学大好きラッパー」になり、ラッパー集団「75ème Session」を経て2011年に「知性派ラッパー」Valdに引き立てられて出したEP「Une nuit blanche, des idées noires」で注目されます。うつ病の経験も告白しているファーストアルバム「Bleu noir」は最高13位でしたが、2021年の4枚目のアルバム「Sacré」は最高3位、2023年の前作「Années sauvages」は最高2位でした。

 内省的、文学的なリリック(paroles)がひろく好評を得ていて、2023年2月14日号でくわしくご紹介していますが、ライブの舞台ではロベール・デスノス(Robert Desnos)、ルイ=フェルディナン・セリーヌ(Louis-Ferdinand Céline)、ロマン・ガリー(Romain Gary)の詩や小説を朗読するなど、日本の仏文科の大学院生あたりなら泣いて喜びそうなパフォーマンスを披露しています。

 新作「Gloria」は、ファーストアルバムのリリースから10年が経過した彼が、過去の人生を振り返りながら「ノスタルジー(nostalgie)」を軸に据えた作品集になっています。その収録曲から8月にYouTubeで先行公開された「Vendredi 13(13日の金曜日)」をお聴きください。父親の死に際して曲がつくられ、かつての自分の家族の姿を回想しながら愛憎相半ばするリリック(paroles)は、「J'pensais connaître l'amour mais un jour la haine m'a souri(拙訳:僕は愛を知っていると思っていたが、ある日、憎悪が僕に微笑みかけた」というリフレインから始まります。

 アルバムのコンセプトについてジョルジオは「Plus on est jeune, plus on a de premières fois, de choses, après c'est sûr qu'aujourd'hui, maintenant, où je suis plus confortable dans ma vie et je vois cette période avec la nostalgie」(拙訳:人は、若ければ若いほど、初めて経験することが多くある。それが過ぎて今日、確かなのは、自分の人生は今はより快適であり、その時期のことをノスタルジーとともに思い出せる、ということだ)と述べています。

 誰の人生であっても、遅かれ早かれ、立ち止まって過去を振り返りたい時がくるものです。ましてやアーティストなら、創作活動に「煮詰まった」時など、改めて原点回帰してリフレッシュしたい時期は必ずやってくるのでしょう。

 フランスの哲学者ミシェル・フーコー(Michel Foucault)は「歴史とは、直線的で進歩的なものだ」という旧来の考え方を強く批判しましたが、他人が「過去なんか、もう振り返るな」「人生とは、常に直線的で進歩的であらねばならない」という考え方を単純に押しつけてはいけない、ということではないでしょうか。

 

Georgio(ジョルジオ) - Vendredi 13 (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月14日号

 

2025年10月10日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 4 The Fate Of Ophelia - Taylor Swift

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 6 Melodrama - Disiz, Théodora

 7 Viano - RK,Genezio

 8 Sale état - RK,Ninho

 9 Adoriano - Niska

 10 En boucle - GP Explorer,Adèle,Catillon,Zamdane

 

【アルバムチャート】

 1 The Life of a Showgirl - Taylor Swift

 2 The Last Race - GP Explorer

 3 Jeunesse dorée - Guy2Bezber

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 6 Capital du Crime Radio Volume 2 - La Fouine

 7 Mega BBL - Théodora

 8 Brûler Paris - Lujipeka

 9 Grandeur nature - Florent Pagny

 10 Et si j'échoue? - Bouss

 

 シングルチャート1位の「Un monde à l'autre」、10位の「En boucle」は、今週アルバムチャート2位のGP Explorer「The Last Race」の収録曲です。9月23日号でもご紹介しましたが「GP Explorer」とはル・マンのブガッティ・サーキットで10月3~5日に開催された自動車レースです。

 シングル6位にラッパーのDisizとThéodoraによる「Melodrama」が浮上。タイトルはそのものズバリの「メロドラマ」で、フランス語では「Mélodrame」とつづり、18世紀に啓蒙思想家のジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau)が、当時流行していた音楽伴奏付きの勧善懲悪、お涙頂戴の大衆軽演劇をそう呼んだのが始まりだとされています。その中心地がパリ3区と11区の境界にあるタンプル大通り(Boulevard du Temple)、またの名を犯罪大通り(Boulevard du Crime)で、マルセル・カルネ監督がナチス占領下で撮った傑作映画『天井桟敷の人々(Les enfants du Paradis)』の舞台になりましたが、メロドラマを上演して写真家ダゲール(Daguerre)の「ダゲレオタイプ(daguerréotype)」にも収められた芝居小屋群は、第二帝政下のパリ大改造で解体させられました。東京で言えば浅草六区のような場所でした。

 今週のアルバムチャートは大きく変動しました。1位はTaylor Swift(テイラー・スウィフト)の「The Life of a Showgirl」。10月3日発売のテイラーちゃん12枚目のスタジオアルバムが初登場。サブリナ・カーペンターがゲスト参加しています。収録曲「The Fate Of Ophelia」が今週シングル4位です。2位のGP Explorer「The Last Race」は9月15日リリース。「GP Explorer」は今回第3回大会ですが、来年はもうないので本当の最終戦です。その記念盤をSCHがプロデュースし、SCH、Maitre Gims、La Mano 1.9、Théodora、Zed、Yâme、So La Lune、Dinos、OBOY、1PLIKÉ140、Adèle、Catillon、Zamdaneらラッパーたちとともに、ポップスのClara LucianiやピアニストのSofiane Pamartも参加しています。

 

Guy2Bezber

 アルバム3位に10月3日発売「Jeunesse dorée」がチャートインしたGuy2Bezber(ガイ2ベズバル)はパリ18区生まれ、27歳のコンゴ系ラッパーです。2024年4月23日号でくわしくご紹介していますが、エムバペ選手のおじさんが社長を務めるフランス3部リーグ(CFA2)US Ivry(USイヴリー)所属のサッカー選手でもあります。タイトルは直訳すれば「黄金色の若者」ですが、「裕福でカッコイイ奴ら」を意味する場合も、「金持ちのドラ息子、ドラ娘」を意味する場合もあります。意味に表と裏があるのは、作家マーク・トウェインが名付けた「Gilded Age(金ぴか時代)」みたいなものですね。

 

Lujipeka(ルジペカ)


Lujipeka

 10月3日リリースの13曲入りの新作アルバム「Brûler Paris」が今週8位に入ったLujipeka(ルジペカ)は、ブルターニュ地方、イル=エ=ヴィレーヌ(Ille-et-Vilaine/35)県の県庁所在地レンヌ(Rennes)出身のラッパー。1995年9月生まれで現在30歳です。本名はLucas Taupin(ルーカス・トーピン)。2020年6月2日号でくわしくご紹介しています。

 2014年、19歳で高校時代の同級生たちと「Columbine(コロンビーヌ)」というグループを結成し、そのリーダーでしたが、2019年に解散してソロデビューします。同年、ファーストシングル「Ahou」(フランス語であくびの声)を出し、2020年にはEPの「P.E.K.A.」に続く「L.U.J.I.」(最高2位)がヒットして注目され、スタジオアルバムは2021年にNRJミュージック・アワードを受賞した「Montagnes russes」(最高5位/「ロシアの山」とはジェットコースターのこと)、2023年に「Montagnes russes:Menu XL」(再発盤)を出しています。新作の「Brûler Paris」は3枚目(事実上は2枚目)のスタジオアルバムで、意味は「パリを燃やせ」。ご参考までに1966年のルネ・クレマン監督の米仏合作オールキャスト映画『パリは燃えているか?』の原題は『Is Paris Burning?/Paris brûle-t-il?』です。

 ルジペカは少年時代からの映画マニアで、映画の製作を勉強していたこともあります。所属したバンド名「Columbine」はマイケル・ムーア監督の2002年の作品『ボウリング・フォー・コロンバイン(Bowling for Columbine)』からきていて、北野武監督の作品からインスピレーションを受けたとも語っています。なお、ちょっと意外ですが、2024年のパリ五輪の時には聖火ランナーとして故郷のレンヌを走っています。

  解散したコロンビーヌのメンバーが6年ぶりに再結集してレコーディングに参加したアルバム「Brûler Paris」から、5月にYouTubeで先行公開されたタイトルチューンをお聴きください。タイトル「パリを燃やせ」には、ブルターニュから「上京」した自分がパリに抱く複雑な感情が込められているそうで、いわば原点回帰です。それを「ル・モンド」紙は「rêve de provincial qui monte à la capitale」(首都にのぼってきた地方出身者の夢)と評しています。

 アルバムの別の収録曲「Boys Don't Cry」には「Je me suis perdu dans les rues de Paris,où tout me crie tu n'es pas d'ici」(拙訳:俺はパリの通りで道に迷った。そこではみんなが俺に『お前はここの人間じゃない』と叫ぶんだ)とあり、ラストチューンの「L'eau et le feu」では「Je voulais voir brûler Paris」(俺はパリが燃えるのを見たかった)と言って締めています。

 パリを東京に置き換えたら、長渕剛さんの「とんぼ」の歌詞「死にたいぐらいに憧れた東京のバカヤローが」に通じる部分も、あるでしょうか?

 

Lujipeka(ルジペカ) - Brûler Paris

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年10月7日号

 

2025年10月3日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 2 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 3 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 4 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 5 Sale état - RK,Ninho

 6 Adoriano - Niska

 7 Viano - RK,Genezio

 8 Ruinart - R2

 9 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 10 Ordinary - Alex Warren

 

【アルバムチャート】

 1 Capitale du Crime Radio Volume 2 - La Fouine

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Grandeur nature - Florent Pagny

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Et si j'échoue? - Bouss

 7 Naufragé - Julien Lieb

 8 Nés pour briller - L2B

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 シングルチャート1位はMaître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」が2週連続首位。2位にはKPop Demon Hunters Castの「Golden」が4位からジャンプアップ。アニメも大ヒット中です。人気ラッパーのRKとNinhoによる「Sale état」が5位に初登場しました。タイトルは「ひどい状態」という意味です。10位にAlex Warren(アレックス・ウォーレン)の「Ordinary」が再浮上しました。

 

La Fouine

 今週のアルバムチャート1位はLa Fouine(ラ・フーイン)が9月25日にリリースした「Capitale du Crime Radio Volume 2」(訳せば「犯罪の首都ラジオ2」?)でした。Volume 1のほうは2024年11月に出ています。モロッコ系、43歳のラッパーでパリ郊外イヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)の出身。2024年12月3日号でくわしくご紹介しています。9位、10位には5月17日に心臓発作を起こし31歳で亡くなったカメルーン系のラッパー、Werenoi(ウェルノワ)の旧作が入っています。

 

Julien Lieb(ジュリアン・リーブ)


Julien Lieb

 9月26日発売のファーストアルバム「Naufragé」(「船が難破した」とか「破滅した」という意味)が今週のSNEPアルバムチャートで7位に入っているJulien Lieb(ジュリアン・リーブ)は、25歳の男性シンガーソングライターです。1999年10月、西部アキテーヌ地方、スペイン国境に近いピレネー=アトランティック(Pyrénées-Atlantiques/67)県ポー(Pau)で生まれ、本名はJulien Liebermann(ジュリアン・リーベルマン)といいます。

 フランスでは毎回話題になり、第一線のポップシンガーを何人も輩出している合宿制勝ち抜きオーディション番組「Star Academy(スター・アカデミー)」のシーズン11(2023年)に参戦し、ファイナリストになりました。決勝では惜しくもPierre Garnier(ピエール・ガルニエ)に敗れ準優勝で終わりましたが、そのガルニエや準決勝で敗退したHéléna(エレナ)らとともにレコードデビューを果たしています。

 彼は幼少期、重度の吃音だったのですが、それを克服するために音楽好きの母親に励まされて歌や楽器のレッスンを始めました。少年時代の彼のアイコンはジャック・ブレル、シャルル・アズナブールに、クイーンの伝説のフロントマン、フレディ・マーキュリー、それにコンゴ系ラッパーのダムソ(Damso)が加わります。シャンソンも英米のロック、ポップスもヒップホップも分け隔てなく聴いて育ったという、音楽的なバックボーンの広さがあるようです。

 14歳の時に父親が亡くなると、音楽学校に入って音楽教師になることを志します。入学後、友人たちとバンドを結成しましたが、20歳になる前に重いうつ病に悩まされてしまいます。「音楽をやっていくのに自信がない」「将来への不安に押しつぶされそうだ」といった燃え尽き症候群にさいなまれ、彼自身、後で「J'ai l'impression d'avoir été mort pendant quelques années(数年の間は、まるで死んでいたような気がした)」と話すほどの暗い日々に光明をもたらしたのは、一人の女性との出会いでした。彼女の後押しもあり、亡き父親に捧げる「Broken Vow」など数多くの曲を意欲的に作詞・作曲するとともに、「スター・アカデミー」への出場を決意。それが予選通過、決勝戦進出、デビューにまでつながったという、まるで一篇の青春映画のようなエピソードがあります。

 デビューシングルは2024年3月にリリースした「Encore une fois」で、同年11月にセカンドシングル「Le Jeu」、2025年に入るとサードシングル「BPM」とEP「Autrement」を出しています。そうした人生経験と初期の音楽活動の集大成が新作アルバムの「Naufragé」で、まるで難破船のような荒涼とした喪失感や、困難から立ち直らせる「愛の力」といったテーマで貫かれています。今では、過去を優しい気持ちで振り返ることができるようになったそうです。

 アルバム収録曲から、マルセイユ出身の大物シンガーSoprano(ソプラーノ)をフィーチャーした「Ça va (quand même)」をライブヴァージョンでお聴きください。タイトルは「大丈夫だよ(それでも)」というような意味です。

「Ça va, même quand tout va pas. La lumière revient toujours après ça. On s'bat pour y croire, on danse malgré tout. Tant qu'il y a du feu, on s'éteindra pas」(拙訳:大丈夫だよ。全てがうまくいっていない時でも、ともしびはその後、いつでも戻ってくるのさ。僕らはそれを信じて戦うんだ。僕らは何があろうとも踊るんだ。そこにともしびがある限り、僕らは消えたりはしないのさ)と、冒頭から二人でリフレインします。

 うん、ポップスは、人生の応援歌であってもいいのですね。

 

Julien Lieb(ジュリアン・リーブ)ft.Soprano - Ça va (quand même)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年9月30日号

 

2025年9月26日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 2 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 3 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Adoriano - Niska

 6 Viano - RK, Genezio

 7 Ruinart - R2

 8 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 9 5 Bleus - Ninho

 10 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Grandeur nature - Florent Pagny

 3 Sains et saufs - ZAZ

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Et si j'échoue? - Bouss

 7 Sirocco - Houdi

 8 Labyrinthe - Feu! Chatterton

 9 Nés pour briller - L2B

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 シングルチャートは、前週2位のMaître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」が首位奪還。「Un monde à l'autre」は2位に後退しました。9位にラップフランセの大物、Ninhoが9月19日に出した新曲「5 Bleus」が登場しています。

 アルバムチャート1位はMaître Gims先生の「Le Nord se souvient:L'Odyssée」がしぶとく復帰。前週1位のFlorent Pagny(フローラン・パニー)大兄は2位に後退。秋のチャートでは渋い男たちの首位争いに、お久しぶりのZAZ(ザーズ)の新作がからんできそうな情勢です。

 

Houdi

 アルバム7位に9月19日リリースの「Sirocco」が登場したHoudi(ウーディ)は、2022年にデビューしたセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県出身の24歳の覆面ラッパー。2024年1月16日号でくわしくご紹介しています。Houdiとは顔を隠すフードのことで、同じ覆面ラッパーZiakの弟分のような存在です。タイトルの「シロッコ」は初夏にサハラ砂漠から地中海を越え南仏やイタリアに吹く熱くて乾燥した季節風のことで、フォルクスワーゲンの車種名にもなっています。

 

ZAZ(ザーズ)


Zaz

 2010年、デビューシングル「Je veux(邦題:私の欲しいもの)」が最高3位、デビューアルバム「ZAZ(邦題:モンマルトルからのラブレター)」が最高1位になり、そのハスキーヴォイスでフレンチポップスに新しい風を吹き込み、ヨーロッパ各国のチャート上位に入り、さらにフジロックフェスティバル(2009年)を皮切りに何度も来日しては日本でも人気を得た女性シンガーソングライター、ZAZ(ザーズ)。今週、3位でSNEPチャートに戻ってきました。

 9月19日に発売した14曲入りのニューアルバム「Sains et saufs」(「安全で健全」転じて「みんな無事でよかった」という意味)は、2021年の「Isa」(最高2位)以来4年ぶり6枚目のスタジオアルバムです。

 ZAZは1980年5月、ロワール地方のアンドル=エ=ロワール(Indre-et-Loire/37)県の県庁所在地で、732年にフランク王国軍がイスラム帝国軍を破った決戦場、トゥール(Tours)で生まれ現在45歳。本名はIsabelle Geffroy(イザベル・ジュフロワ)といいます。音楽のレッスンとともに空手の道場にも通っていたカンフー少女は14歳でボルドー(Bordeaux)に引っ越し、20歳で同地の音楽学校École de musique à Bordeaux(CIAM)に入学して、クラシックからシャンソン、ジャズ、ラテン、アフリカやバスク地域の民族音楽まで幅広く学んでいます。2006年にパリに出てからはブルースバンドやラップグループにも属したといいますから、音楽的なバックボーンは相当厚いものがあると言えるでしょう。

 パリの場末のバーでピアノを弾きながら朝までぶっ続けで歌い続けたという逸話や、モンマルトルの路上でライブを行って「21世紀のエディット・ピアフ」だと噂されていたことは、今やZAZの「伝説」になっています。

 デビューのきっかけは2009年1月、オランピア劇場で開かれた新人対象の音楽コンクール「Le Tremplin Génération」第3回大会で優勝を果たしたことでした。デビュー曲の「Je veux」は2011年、ヴィクトワール音楽賞で年間最優秀オリジナルソング賞を受賞しています。その後、ワールドツアーを行ってベルギー、カナダ(ケベック州)、ドイツ、ロシアなどでもセールスの実績をあげ、2025年5月にはフランス政府から「Ordre national du Mérite - Chevaliers(国家功労勲章シュヴァリエ)」を受章しています。

 では、ニューアルバム「Sains et saufs」から、2025年3月にYouTubeで先行公開されたそのタイトルチューンをお聴きください。歌詞(Paroles)には、こうあります。

「On n'est pas fait pour jouer aux loups. On est des diamants délaissés, mon amour, sains et saufs. Sains et saufs, car l'amour sauve de tout」(拙訳:私たち、オオカミのマネをしてるんじゃないの。私たちは見捨てられたダイヤモンド。私の愛しい人よ。みんな無事でよかった。みんな無事でよかった。なぜなら、愛はみんなを救うのだから)

 やっぱり、ZAZのお姉さんも「せめてポップスぐらいは、こうでなければ」と示してくれています。ヨーロッパも世界も、殺伐としたことばかりあるご時世なので……。

 

ZAZ(ザーズ) - Sains et saufs(Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年9月23日号

 

2025年9月19日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Un monde à l'autre - GP Explorer,Maitre Gims,La Mano 1.9,SCH

 2 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 3 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 4 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 5 Adoriano - Niska

 6 Viano - RK, Genezio

 7 Ruinart - R2

 8 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 9 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 10 Ordinary - Alex Warren

 

【アルバムチャート】

 1 Grandeur nature - Florent Pagny

 2 Labyrinthe - Feu! Chatterton

 3 Play - Ed Sheeran

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Breach - Twenty One Pilots

 6 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 7 Mega BBL - Théodora

 8 Nés pour briller - L2B

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 Et si j'échoue? - Bouss

 

 秋の新作ラッシュ、フランスにもようやく到来です。

 シングルチャート1位は新たに「Un monde à l'autre」が登場。「もう一つの世界へ」という意味で、GP ExplorerとMaitre Gims、La Mano 1.9、SCHのコラボレーションです。GP Explorerというのはフランスのル・マンにあるブガッティ・サーキットで行われる自動車レースの名前で、別名「F4」。その第3回大会が10月3日から5日まで開催される予定です。9月15日にSCHがプロデュースしたアルバム「The Last Race」が発表され、このナンバーはその収録曲です。

 Maître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」は5週連続の1位ならず2位に後退。それ以下は10位まで前週のトップ10にも入っていた顔ぶれです。

 

Florent Pagny

 今週のアルバムチャート1位に夏枯れを吹き飛ばす「真打ち」登場。フレンチポップスの大御所、Florent Pagny(フローラン・パニー)が、2023年の「2bis」以来2年ぶりに9月11日、リリースした新作「Grandeur nature」(「雄大なる大自然」という意味)が入りました。アルバムでは「L'Avenir」「2bis」に続いて3作連続の1位になりました。

 1988年の「N'importe quoi(邦題:無用な愛) 」、1997年の「Savoir aimer(邦題:希望)」、2003年の「Ma Liberté de penser(邦題:考える自由)」でSNEPシングルチャート1位の大ヒットを飛ばした63歳のシンガーソングライターが、まさに雄大なる大自然の中、アルゼンチン・パタゴニア地方の荒野に構えた自宅で、轟々と鳴りわたる風の音を聴きながらつくりあげた17曲です。

 ワイン産地として有名なブルゴーニュ地方のソーヌ=エ=ロワール(Saône-et-Loire/71)県シャロン=シュル=ソーヌ(Chalon-sur-Saône)出身。デビュー以来の活躍は2020年3月31日号、2023年9月5日号をご参照ください。肺がんを患っているそうですが、「Star Academy(スター・アカデミー)」と並んでポップスターを数多く送り出しているオーディション番組「The Voice」(フランス版)の審査員兼コーチは、今年も元気に務めています。

 アルバム3位はご存知、UKのEd Sheeran(エド・シーラン)が9月12日に出した「Play」。5位はアメリカの2人組ロックデュオ、Twenty One Pilots(トゥエンティ・ワン・パイロッツ)の「Breach」で9月12日発売。10位はオー=ド=セーヌ(Hauts-de-Seine/92)県コロンブ(Columbes)出身の27歳のラッパー、Bouss(ブース)が2024年11月22日にリリースしたアルバム「Et si j'échoue?」(「で、僕が失敗したらどうなる?」というような意味)が再浮上しました。

 

Feu! Chatterton(フー!シャテルトン)


Feu! Chatterton

 ロックファンの皆様、お待たせしました。今週のアルバムチャート2位に、2011年デビューのフランスの5人組バンド「Feu! Chatterton(フー!シャテルトン)」が9月12日に出した新作「Labyrinthe」(ラビリンス/ギリシャ神話でクレタ島のミノス王がミノタウロスを閉じ込めた「迷宮」のこと)が登場しました。前作「Palais d'argile」(粘土の宮殿/サウジアラビアの首都リヤドに実在する遺跡)以来、4年半ぶり4枚目のスタジオアルバムです。

 フー!シャテルトンについては2021年3月23日号でくわしく触れていますが、それから4年半も経過したので、改めて彼らのプロフィールをご紹介しておきます。

 まず、「シャテルトン(Chatterton)」とは18世紀の英国の詩人Thomas Chatterton(トーマス・チャタートン)の名字のフランス語読みです。貧窮の末、17歳でヒ素をあおって自死を遂げた早熟の天才詩人で、19世紀のバイロン、キーツ、ワーズワースら英国のロマン派詩人にも影響を及ぼしました。そんな詩人が「燃えよ(Feu!)」というバンド名にしたのは、芸術、文学を愛好し、故フレディ・マーキュリーのようなヒゲをはやし、自ら詩人として詩集を2冊出版しているパリ20区出身のフロントマン、アーサー・テブール(Arthur Teboul)の発案だそうですが、彼が慕うセルジュ・ゲンズブールに「Chatterton」という曲があることも、とりあえず申し添えておきます。

 さて、ロックバンドFeu! Chattertonはパリ5区の名門高校「Lycée Louis-le-Grand」(ルイ大王校/ポンピドゥ大統領、ジスカールデスタン大統領やサルトル、ロラン・バルト、ジャック・デリダ、トマ・ピケティらを輩出)の同級生中心に2011年にパリで活動を開始しました。2014年に出したEP「Feu! Chatterton」、SNEPチャート最高10位のファーストアルバム「Ici le Jour」(「いつも通り」というような意味)で注目され、フランス国内外でロックフェスへの出演やツアーを活発に行うようになります。U2がオープニングアクトに起用したことも話題になりました。

 今年37歳のアーサー・テブールはロック方面ではレディオヘッド、ピンクフロイド、レッド・ツェッペリン、シャンソン方面ではジョルジュ・ブラッサンス、バルバラ、レオ・フェレらから影響を受け、ジャズに関心を寄せる一方でラップも手がけるというように、音楽的な素養が幅広いようです。他のメンバーも、人工知能の研究で物理学の博士号を得た人物、映画音楽の作曲を行う人物、ソロ活動で西アフリカの打楽器や現代音楽と共演する人物もいて、現代美術のビデオアート作品に演奏で参加したり、小説家のリーディングのステージで伴奏したりと、その活動に「知性派バンド」志向が感じられます。

 さて、ニューアルバム「Labyrinthe」では、エドガー・アラン・ポーやジャン=リュック・ゴダールが言う「言葉の力(Puissance de la parole)」を重視する知性派ロックとしての基本線は維持しながらも、サイケやラテンなどの要素を取り入れた曲づくりも試みています。

 アルバム収録曲からポップス色の強い「Allons Voir」をお聴きください。「Allons voir. Ce que la vie nous réserve. N'ayons peur de rien. Prends-moi la main」(拙訳:見に行こう。人生が僕らに何を用意しているのか。何も恐れることはない。僕の手をとって)とリフレイン。ラップフランセの「毒」に慣れきったすれっからしの日本人は「中二病な奴」「何が知性派ロックだ」などと文句を言うかもしれませんが、それがポップスというものです。

 

Feu! Chatterton(フー!シャテルトン) - Allons Voir(Clip officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年9月16日号

 

2025年9月12日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 2 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 3 Adoriano - Niska

 4 Viano - RK, Genezio

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Ruinart - R2

 7 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 8 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 9 Appelle ta copine - Maître Gims

 10 Ordinary - Alex Warren

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 3 Karma - Stray Kids

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Man's Best Frend - Sabrina Carpenter

 6 Nés pour briller - L2B

 7 D&P à vie - JuL

 8 Diamant noir - Werenoi

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 BDLM Vol.1 - Tiakola

 

 シングルチャート1位は4週連続でMaître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」です。そろそろあきてきた? 日本でも話題のKPop Demon Hunters Castの「Golden」は前週の7位から5位へじわじわ上昇。アルバム1位はMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」が返り咲きで、Sabrina Carpenterの「Man's Best Friend」は5位まで後退しました。「KPop Demon Hunters」は前週の4位から2位へランクアップしています。

 

Tiakola

 アルバム10位は前週のKeBlackに代わって、Tiakola(ティアコラ)が2024年9月にリリースした「BDLM Vol.1」が再浮上しました。BDLMは「Bienvenue dans le Milieu」の略。セーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県ボンディ(Bondy)出身の26歳のラッパーで、2022年6月7日号でくわしくご紹介しています。

 シングルもアルバムも、秋の新作ラッシュはもう少し先に始まりそうです。

 

Alex Warren(アレックス・ウォーレン)


Alex Warren

 今週のSNEPシングルチャート10位に、2025年5月16日付で10位に入ったことがあるアメリカのシンガーソングライター、Alex Warren(アレックス・ウォーレン)の「Ordinary」が再浮上しました。2月7日リリースで全米1位、UK1位にのぼりつめています。SNEPアルバムチャートのほうは2025年7月25日付でファーストアルバム「You'll Be Alright,Kid(Chapter 1)」が10位になっています。これはビルボード全米チャートで最高5位、UKチャートで最高1位でした。

 2000年9月18日の生まれで今週の木曜日で25歳になります。出身地はカリフォルニア州の最南部、サンディエゴ郡カールスバッド(Carlsbad)。幼い頃から教会に通っていた敬虔なカトリック信徒で、グレゴリオ聖歌など教会音楽に影響を受け、歌詞も至ってまじめなものです。演奏のスタイルもシンプルで、ステージではアコースティック・ギターの弾き語り。ギャングスタ・ラップやギラギラな電子音楽に疲れたら、こんな曲を聴いてひと休みするのもまた、いいものでしょう。

 とはいえアレックスは「いいとこの子」ではなく、9歳で父親がガンで亡くなり、18歳でアルコール依存症の母親に家を追い出され、高校の友だちのクルマに居候して雨露をしのぐ受難の日々を送ります。そんな生活の中で曲の作詞・作曲を続け、2021年、20歳でデビューシングル「One More I Love You」を自主リリースしますが、当初は鳴かず飛ばずでした。

 そんな彼に福音をもたらしたのがソーシャルメディアでした。小学生の頃からYouTube動画を制作・投稿していましたが、19歳だった2019年12月にLAに出てSNS投稿集団のHype House(ハイプハウス)を結成。Tiktokのおふざけ動画で登録者を集めますが、2022年の解散後は音楽活動に全面シフト。ハイプハウスの活動で知りあったハワイ出身の奥さんと2024年に結婚しています。

 Instagram、TikTok、YouTubeなどで露出を重ね、Netflixのリアリティ番組に出演したことで人気に火がつきアルバムデビュー、全米1位につながりました。そのように、ストリートやライブでの活動ではなくSNSへの投稿から彗星のように台頭したことから、音楽メディアから「Z世代のアイコン」と呼ばれることもあります。

 リスペクトするアーティストはジャスティン・ビーバー、エド・シーラン。「Ordinary」の歌詞は「You're takin' me out of the ordinary(君と出会えたのは普通のことじゃない)」で始まり、「The angels up in the clouds are jealous knowin' we found(雲の上の天使たちは、僕らが見つけたことを知って嫉妬する)」というように、信仰を基盤に奥さんKouvr Annon(クヴァル・アノン)との愛を強調するフレーズが続きます。

 

Alex Warren(アレックス・ウォーレン) - Ordinary

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年9月9日号

 

2025年9月5日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 2 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 3 Viano - RK, Genezio

 4 Adriano - Niska

 5 Ruinart - R2

 6 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 7 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 8 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 9 Appelle ta copine - Maître Gims

 10 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 

【アルバムチャート】

 1 Man's Best Frend - Sabrina Carpenter

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Karma - Stray Kids

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Mega BBL - Théodora

 6 D&P à vie - JuL

 7 Nés pour briller - L2B

 8 Diamant noir - Werenoi

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Focus - KeBlack

 

 シングルチャート1位は3週連続でMaître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」。シングルのトップ10の顔ぶれは、順位こそ変動しても前週と同じでした。

 

Sabrina Carpenter

 今週のアルバムチャート1位にアメリカの女優にしてポップスター、Sabrina Carpenter(サブリナ・カーペンター)が8月29日に出した1年ぶり7枚目の新作アルバム「Man's Best Friend」が入りました。ディズニー・チャンネルのドラマ『Girl Meets World』のMaya役でブレイクし、フランスでも人気の26歳。彼女については2025年2月25日号で少しご紹介しています。

 4位にKPop Demon Hunters Castの映画のサントラ盤「KPop Demon Hunters」が再浮上し、3位のStray Kidsとともに韓流勢が上位に食い込みました。彼女たちのシングル「Golden」は前週の10位から今週は7位に上昇。アルバム8位、9位はセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ムラン(Melun)出身のカメルーン系ラッパー、Werenoi(ウェルノワ)。8位「Diamant noir」は2025年4月、9位「Pyramide 2」は2024年10月のリリースです。

 

Niska(ニスカ)


Niska

 今週のSNEPシングルチャートで前週の7位から4位へ上昇をみせたのが、ラッパーのNiska(ニスカ)が7月11日に出した新曲「Adriano(アドリアーノ)」です。

 Niska(ニスカ)は1994年4月、パリの南の郊外、ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)で生まれ、エソンヌ(Essonne/91)県エヴリィ=クールクーロンヌ(Évry-Courcouronnes)で育った31歳。本名をStanislas Georges Dinga-Pintoといい、両親はコンゴ系です。ラップグループ「ネグロ・ディープ(Negro Deep)」を経て、20歳だった2014年6月、YouTubeに自作の3曲をアップロードしてソロデビュー。そのうちの1曲「Freestyle PSG」はパリ・サンジェルマン(PSG)に捧げた曲で、サポーターの間で話題になり現在までに1億回以上再生されています。そんな経緯で彼はPSGの私設応援団長的なポジションにあります。UEFAチャンピオンズリーグで初優勝を遂げた2025年5月31日には、音楽プロデューサーのDJ SNAKEと組んでデンベレら主力選手の名前を呼んで讃える曲「PSG Boyz Freestyle」を発表しています。

 2015年8月、フレンチラップのビッグネーム、メイトル・ギムス(Maître Gims)とコラボした「Sapés comme jamais」がシングルチャートで最高3位になり、一気にその名を知られるようになります。同年10月に出した最初のミックステープ 「Charo Life」はアルバムチャートで最高3位になりました。2017年には「Commando」が初のアルバム1位になり、2019年の「Mr Sal」、2024年のNinhoとの共作「GOAT」も、アルバムチャートで最高1位になっています。シングルのほうでは2017年の「Réseaux」が11週間連続1位の大記録を樹立し、Boobaとコラボした2019年の「Médicament」でも最高1位にのぼりつめています。

 スタイルとしてはアトランタが起源のアフロトラップやハードコア、ギャングスタラップの系統に属しますが、リリックの中の女性に関する部分でたびたび論議を呼び、同棲中のAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)へのDV疑惑が新聞沙汰になったこともあります。

 さて、「Adriano」のリリック(paroles)ですが、「彼女の頭の中はLouis Vui'(ルイ・ヴィトン)やカネのことばかりで、意地悪なビッチだ」とボヤいたり(ここでは「カネ」は「l'cash」と英語を使用)、4-4-2というサッカーの戦術用語が突然飛び出したり(サイドバックが走る距離が長くなるフォーメーション、転じて男と女の「接触プレー」の時間が長くなること)、「草」転じてマリファナを示す「beuh」という言葉が出てきたり、「frontière allemande, nouveau moteur(新車でドイツ国境までぶっ飛ばす)」と比喩的に言ったり。フランス語の幼児語「おっぱい」転じて「巨乳」を指す「lolos」を使ったり……。

「del-bor」とは「Bordel」(売春宿)のこと。日本で昔のジャズメンが「ジャズ」を「ズージャー」、「まずい」を「ずいま」、「銀座」を「ザギン」とひっくり返して言っていたような、いわゆるギョーカイ言葉です。日本のテレビ業界の初期(昭和30年代)は大橋巨泉氏のような「ジャズメンくずれ」が多かったために定着したらしいですが、フランスでも言うんですね。

 そのように妖しい女性、悪所、カネ、ブランド品、ドラッグ、クルマ、サッカーといった、不良系ヒップホップの「ウケる小道具」満載のひねくれたラブソングです。良い子はマネしないように……。

 ほんと、フレンチラップ(ラップフランセ)のリリック(paroles)を説明するには、ラルース(Larousse)が出している仏仏辞典の、最新版の大きいのが必要になるなと痛感しています。

 

Niska(ニスカ) - Adriano(アドリアーノ)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年9月2日号

 

2025年8月29日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Parisienne - Maître Gims, La Mano 1.9

 2 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 3 Viano - RK, Genezio

 4 Charger - TRIANGLE DES BERMUDES

 5 Ruinart - R2

 6 Air Force blanche - Maître Gims & JuL

 7 Adoriano - Niska

 8 Appelle ta copine - Maître Gims

 9 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 10 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 

【アルバムチャート】

 1 Karma - Stray Kids

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 D&P à vie - JuL

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Private music - Deftones

 6 Nés pour briller - L2B

 7 Diamant noir - Werenoi

 8 Focus - KeBlack

 9 Terminal 7 - Djadja & Dinaz

 10 BĒYĀH - Damso

 

 シングルチャート1位は2週連続でMaître GimsとLa Mano 1.9の「Parisienne」でした。10位のKPop Demon Hunters Cast「Golden」は、アメリカのミュージカル・アニメ映画『KPop Demon Hunters』の同名のサウンドトラック盤(6月20日発売)の収録曲です。Lumi、Mira、Joyの韓流3人組ガールズグループ「ハントリックス」(Huntr/x)が、「音楽のチカラ」で悪霊狩りを行って人類の平和を取り戻すというお話。なお、この映画で退治されるDemon(悪霊/フランス語ではDémon)よりもDevil(悪魔/フランス語ではDiable)のほうが格上で、DemonはDevilの家来のような存在です。デーモン小暮閣下よりも、往年の悪役女子プロレスラー、デビル雅美さんのほうがエラいのだ。

 

Stray Kids

 夏の終わりにフランスのチャートに、韓国から新しい風が吹きました。アルバム1位はK-Popの男子8人組Stray kids(ストレイ・キッズ略してSKZ)が8月22日に発売したカムバック作、4枚目のフルアルバム「Karma」でした。前作のミニアルバム「ATE」はパリ五輪開会式当日の2024年7月26日付で1位になっており、フランスでもなかなかの人気者です。

 

Deftones(デフトーンズ)


Deftones

 今週、アルバムチャート5位にもアメリカからも新しい風が吹きました。5人組のオルタナ・メタルバンド、Deftones(デフトーンズ)の5年ぶり10枚目のアルバム「Private music」で、8月22日にリリースされています。

 フロントマンのチノ・モレノ(Chino Moreno/ルーツはメキシコと中国)を中心にカリフォルニア州の州都サクラメント(Sacramento)で結成されたのは1988年で、すでにキャリアは37年。2001年にはグラミー賞の最優秀メタル・パフォーマンス賞を受賞しています。

 オルタナティブもメタルも、フランスには熱いファンがいます。オルタナティブはプログレとともにインテリを自認するような人たちの間で人気があるのですが、デフトーンズはジャンルこそメタルロックですが、その実験的な作風からそうした傾向があるようです。芸術性、前衛性の強さから「メタル界のレディオヘッド」と評した音楽評論家もいました。日本ではヘヴィメタやデスメタルのイメージから「あっち系」(偏見が入った表現)とみられがちなメタルなのですが、世界にはインテリ受けするメタルもあるのです。UKのウォーリック大学が2007年に発表した研究結果によると、UKの11~19歳の成績優秀な「優等生」の間で最も人気がある音楽は、オルタナでもプログレでもクラシックでもなく、メタルだったそうです。

 デフトーンズは1995年、アルバム「Adrenaline(アドレナリン)」でメジャーシーンにデビュー。3作目の「White Pony」(2000年)が全米3位のヒットアルバムになって人気も評価も定着しますが、詩人でもありオルタナ路線を引っ張っていたベーシストのチ・チェン(Chi Cheng/中国系)が2008年に交通事故で昏睡状態に陥り音楽活動ができなくなります(2013年死去)。代役のセルジオ・ヴェガ(Sergio Vega)などメンバーを入れ替えて完成させた2010年のアルバム「Diamond Eyes」は全米6位になり、2012年のアルバム「Koi No Yokan(恋の予感)」は全米11位、2016年の「Gore」は全米2位、UK7位になり、チ・チェンの悲劇を乗り越えました。

 フランスでのアルバムチャート上位の実績は「White Pony」が最高6位、2003年の「Deftones」が最高14位、「Gore」が最高19位、2020年のアルバム「Ohms」が最高23位で、今週5位の「Private music」は25年ぶりのトップ10入りです。

 その収録曲は「My Mind is a Mountain」と「Infinite Source」がシングル発売されていますが、今回は「My Mind is a Mountain」をお聴きください。「山」とは繰り返される試練のことで、それに立ち向かう心象風景をリリックに込めています。回復を信じていた5年間の闘病の末のメンバーの死を乗り越えるのは、大変だったことでしょう。

 

Deftones(デフトーンズ) - My Mind Is a Mountain

 

では、また来週

À la semaine prochaine!