仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗と「Chanson Populaire」の文字
 
2026年2月24日号

 

2026年2月20日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Love You - Nono La Grinta

 5 DtMF - Bad Bunny

 6 Nuevayol - Bad Bunny

 7 Avec moi - RnBOi ft. Nono La Grinta

 8 T'avais raison - Maître Gims, Maes

 9 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 10 Spa - Maître Gims, Théodora

 

【アルバムチャート】

 1 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 2 Méga BBL - Théodora

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 M.I.L.S.4 - Ninho

 5 Pyramide 2 - Werernoi

 6 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 7 Et si j'échoue - Bouss

 8 TP sur TP - JuL

 9 Diamant noir - Werenoi

 10 Nés pour briller - L2B

 

 Disiz(ディジズ)とThéodora(セオドラ)の「Melodrama」(メロドラマ)はこれで19週連続のシングルチャート1位です。1998年にダニエル・ラヴォワ(Daniel Lavoie)、パトリック・フィオーリ(Patrick Fiori)、ガルー(Garou)の3人が歌ったミュージカル『ノートルダム・ド・パリ(Notre-Dame de Paris)』の劇中歌「Belle(美しい人)」の18週連続1位の記録を破り、28年ぶりに新記録を樹立しました。おめでとうございます。なお、全世界で大ヒットしたこのミュージカルについては2022年8月23日号の小特集をご覧ください。

 Maître GimsとMaesというラップフランセ界の大物2人の「T'avais raison」(「あなたは正しかった」「ごもっともでした」という意味)がシングル8位に浮上しました。暴力やドラッグや見栄や贅沢三昧の世界に身を置いていたことを悔いているような歌詞(paroles)です。四旬節(Le Carême)にふさわしい?

 アルバム1位は今週もプエルトリコのBad Bunny(バッド・バニー)の「DeBÍ TiRAR MáS FOToS」です。今週もその収録曲がシングルチャートの5位、6位に入っています。

 

L2B

 L2Bの「Nés pour briller」が10位でアルバムチャートのトップ10に復帰しました。2025年4月のリリース。L2Bは2025年3月4日号でご紹介していますが、2004年生まれのLN、IDS、D2によるラップグループ。全員がパリ郊外のヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県シャンピニー=シュル=マルヌ(Champigny-sur-Marne)に建つ「Bois-l'Abbé」というHLM(公営住宅)で育った幼なじみの男子3人組です。

 

Rambo Goyard(ランボー・ゴヤール)

 

Rambo Goyard

 Rambo Goyard(ランボー・ゴヤール)のシングル「B.M.S.(By my side)」は、1月16日付チャートで7位でトップ10入りし、今週は2位までランクアップしました。ブルターニュ地方、レンヌ(Rennes)に近いコート=ダルモール(Côtes-d'Armor/22)県サン=ブリユー(Saint-Brieuc)出身のラッパーです。

 ステージネームのRamboは有名な詩人のランボー(Rimbaud)ではなくシルヴェスター・スタローン主演の映画シリーズの方のランボーで、Goyardはフランスの高級バッグ、トランクのブランド名です。このブランドは第二帝政時代の1853年の創業で、広告を打たず、卸売もネット販売も拒否し、全世界でパリ本店など十数店しかない直営店舗でしか買えないという徹底した「希少化マーケティング」で知られています。大学の商学部で使う教科書に登場しそうです。

 閑話休題。若手ラッパーのランボー・ゴヤールはヒップホップにR&B、アフロビートを融合させた音楽をやっていて、2021年にシングル「Gaou」でデビューし、2022年にファーストアルバム「Crossover」を出しました。その収録曲の「MABÉ」が2025年にシングル発売されてSpotifyで130万回再生を記録したことはありますが、SNEPシングルチャートでトップ10入りしたのはこの作品が初めてです。

 その曲「B.M.S.(By my side)」をお聴きください。タイトルは英語ですが歌詞(paroles)はフランス語。タイトル通り「僕のそばにいて(ほしかった)」と言い、「二人の仲はもう終わりだ」「君は僕の妻にはなれない」「僕らは別々の道をゆく」「心は空っぽだ」と、別れた恋人に未練たっぷりに呼びかけ続ける物悲しいリリックです。モテぶりを自慢する自信満々のラップよりも、その方が日本人にはウケるかもしれませんね……。

 

Rambo Goyard(ランボー・ゴヤール) - B.M.S.(By my side)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗とChanson Populaireの文字
 
2026年2月17日号

 

2026年2月13日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Theodora

 2 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 3 DtMF - Bad Bunny

 4 Mon bébé - RnBOi

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Avec moi - RnBOi ft. Nono La Grinta

 7 Nuevayol - Bad Bunny

 8 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 9 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 10 Spa - Maître Gims, Théodora

 

【アルバムチャート】

 1 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 2 Clair Obscur:Expedition 33 (Original Soundtrack) - Lorien Testard

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 M.I.L.S.4 - Ninho

 5 Méga BBL - Théodora

 6 Pyramide 2 - Werernoi

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 Et si j'échoue - Bouss

 9 TP sur TP - JuL

 10 Diamant noir - Werenoi

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」は18週連続のシングル1位。いったいどこまで続くのでしょうか?

 今週のアルバムチャート1位はプエルトリコ出身の31歳。「ラテン・トラップのキング」ことBad Bunny(バッド・バニー)のグラミー賞受賞アルバム「DeBÍ TiRAR MáS FOToS(もっとたくさんの写真を撮るべきだった/スペイン語)」でした。フランスでは発売後約1年で初の1位です。シングルチャートでも今週、その収録曲が3位(「DtMF」アルバムタイトル「Debí Tirar Más Fotos」のイニシャル)と7位(「Nuevayol」ニューヨークのスペイン語読みNueva Yorkの省略形)に入っています。

 

Lorien Testard

 アルバム2位。フランスの作曲家Lorien Testard(ロリアン・テスタール)が手がけた「Clair Obscur:Expedition 33」は、フランスで製作されたRPGゲーム『Clair Obscur:Expedition 33』の2枚組サウンドトラック盤です。ゲームは2025年4月24日に発売され、セガが発売元の日本語版もあります。内容は女性キャラクターが加わった「遠征隊33(Expedition 33)」が19世紀末ベル・エポック期のフランスの明と暗、善と悪が交錯する憂鬱でゴシックな世界観の中で、ひたすらに戦いを繰りひろげるというもの。ミレーヌ・ファルメールのPVがお好きな方にはおすすめのゲームでしょうか?

 タイトルの「Clair Obscur(クレール・オスクール)」とはフランス語起源の美術用語で、日本では「明暗法」と訳される絵画技法です。強い光と暗い影を対比させてドラマティックな立体感を表現する、と言えば誰もが思い浮かぶ画家は17世紀のオランダで活躍し、代表作「夜警」などでひろく知られるレンブラントでしょうか?

 ロリアン・テスタールは1994年7月生まれの31歳。ギター教師をしながらゲーム音楽の作曲活動を続けていましたが、2020年にモンペリエにあるゲーム開発会社Sandfall Interactiveの目にとまってこの作品のサウンドクリエイターに抜擢されました。150曲以上、8時間に及ぶ大作は2025年10月に「World Soundtrack Awards(WSA)」のゲーム部門最優秀賞を受賞し、2026年1月には彼自身がフランス政府から「芸術文化勲章(L'ordre des Arts et des Lettres)」の「シュバリエ(Chevalier)」を受章するという栄誉に浴しています。

 

ヴィクトワール音楽賞2026 主要部門の結果


Victoires

 フランス最大の音楽賞「第41回ヴィクトワール音楽賞(Les Victoires de la Musique 2026)」の発表・授賞式が2月13日(現地時間)、ブローニュ・ビヤンクールにあるセーヌ川の中洲、セガン島(L'île Seguin)に建つ「La Seine Musicale」で行われました。主要部門の結果についてお知らせします。

 

・最優秀女性アーティスト賞 Charlotte Cardin(シャーロット・カルダン)

・最優秀男性アーティスト賞 Disiz(ディジズ)

・女性新人賞 Theodora(セオドラ)

・男性新人賞 Sam Sauvage(サム・ソバージュ)

・オリジナルソング賞 Helena(エレナ)「Mauvais garçon」

・最優秀アルバム賞 Theodora(セオドラ)「Méga BBL」

 

 今年は「女性は強し」で、男性ミュージシャンの影がちょっと薄かった授賞式でした。シャーロット・カルダンはモントリオール生まれのフランス系カナダ人、ディジズはセネガル系フランス人、エレナはベルギーの出身、セオドラはコンゴ系フランス人でスイスのルツェルンで生まれました。

 なお、ギリシャのクレタ島の生まれですがフランス語でも「愛の歓び(Plaisir d'amour)」「オンリー・ラブ(L'Amour en héritage)」などのヒット曲を歌って活躍した91歳のNana Mouskouri(ナナ・ムスクーリ)に「名誉賞」が、エレクトロミュージック2人組のJustice(ジャスティス)に「最優秀コンサート賞」が、今やレジェンド級のロックバンド、Indochine(アンドシーヌ)の「Arena Tour(アリーナ・ツアー)」に「特別賞」が、それぞれ授与されました。

 最優秀アルバム賞、女性新人賞をはじめ4冠を獲得した「Boss Lady(ボス・レディ)」ことセオドラと、最優秀男性アーティスト賞受賞のディジズがデュエットする「Melodrama」をお聴きください。今週もシングルチャート1位です。

 

Disiz(ディジズ)、Theodora(セオドラ) - Melodrama

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗とChanson Populaireの文字
 
2026年2月10日号

 

2026年2月6日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Avec moi - RnBOi ft. Nono La Grinta

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 7 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 8 OG - Genezio, Niska

 9 Spa - Maître Gims, Théodora

 10 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Capitale du Crime Radio Vol.3 - La Fouine

 2 M.I.L.S.4 - Ninho

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Pyramide 2 - Werernoi

 6 Et si j'échoue - Bouss

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 TP sur TP - JuL

 9 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 10 Diamant noir - Werenoi

 

※「ヴィクトワール音楽賞」は2月13日発表

 アメリカのグラミー賞が2月1日(現地時間)に発表されましたが、それに相当するフランス最大の音楽賞「第41回ヴィクトワール音楽賞2026」の発表・授賞式が2月13日(現地時間)、ブローニュ・ビヤンクールにあるセーヌ川の中洲、セガン島(L'île Seguin)に建つ「La Seine Musicale」(日本の建築家、坂茂氏が設計に参加して2017年に完成)で行われます。主要部門の結果については次号2月17日号で特集します。

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」は17週連続のシングル1位です。以下、シングルチャートのトップ10は順位の入れ替えだけで顔ぶれは前週と同じ。新たなチャートインはありませんでした。

 

Bad Bunny

 今週のアルバムチャート9位にBad Bunny(バッド・バニー)の6枚目のスタジオソロアルバム「DeBÍ TiRAR MáS FOToS」(スペイン語で「もっとたくさんの写真を撮るべきだった」という意味)が入りました。フランスでは2025年1月17日付で2位になっていますが、2月1日にグラミー賞で最優秀アルバム賞を受賞したことで約1年たってから再浮上。バッド・バニーは2月8日、NFLスーパーボウルのハーフタイムショーに出演し、レディー・ガガとリッキー・マーティンも「乱入」して「ラテン音楽愛」で盛り上がりました(現地時間)。

 2025年1月21日号でくわしく解説していますが、バッド・バニーはプエルトリコ出身の31歳。人呼んで「ラテン・トラップのキング」。2021年にはスペイン語と日本語で歌う「Yonaguni」(与那国)を出しました。プエルトリコでも沖縄・八重山でも、もちろんグアドループでもマルティニークでも、島ん人(しまんちゅ)は良質の音楽を出してきます。

 

La Fouine(ラ・フーイン)


La Fouine

 今週のSNEPアルバムチャートで、La Fouine(ラ・フーイン)が1月29日にリリースした「Capitale du Crime Radio Vol.3(犯罪の首都ラジオVol.3)」が初登場でいきなり1位に躍り出ました。「Vol.1」は2024年11月、「Vol.2」は2025年9月にリリースされていて、ミックステープのシリーズ第3作です。その前のシリーズとして「Capitale du Crime」の4部作があり、こちらはVol.1が2008年、Vol.2が2010年、Vol.3が2011年、Vol.4が2014年に出ています。いずれもラ・フーインが実弟と一緒に2008年に立ち上げたラップレーベル「Banlieue Sale」から出していて、2010年の「Capitale du Crime Vol.2」がアルバムチャートで最高3位になり、ラップフランセの世界での事実上の出世作になりました。

 1981年12月25日、パリの西の郊外、イヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)の生まれで44歳。本名はLaouni Mouhid(ラオウニ・ムヒド)といい、両親はモロッコの商都カサブランカの出身です。くわしい経歴は2024年12月3日号でご紹介していますが、10代で刑務所暮らしを経験し、20~30代は血の気が多くてカメラシアン(Kamelancien)、ブーバ(Booba)らとの数々の「トラブル伝説」を残しました。自身のファッションブランド「Street Swagg」を立ち上げ、経済的にも精神的にも安定したのは40代になってからでした。

 それでも地元イヴリーヌ県へのレペゼン(地元愛)を軸に過激さとユーモアを織り交ぜたリリック(paroles)が愛されていてセールス、チャートアクションは悪くなく、アルバムでは2009年の「Mes Repères」が最高2位、2011年の「La Fouine vs Laouni」が最高1位、2013年の「Drôle de parcours」が最高1位、2020年の「Bénédictions」が最高4位になり、シングルでは2014年、アルジェリア出身のライ(Raï)のミュージシャンReda Taliani(レダ・タリアーニ)をフィーチャーした「Va bene」が最高3位になっています。

 さて、「Capitale du Crime Radio」シリーズは、ラ・フーイン自らがDJ役を務めるコラボレーション集のような構成になっていますが、「Vol.3」の参加アーティストはKaaris、Kodes、D2、HMZ&ZKR、Himra、Mous-K、Le Crime、Ziak、HLD、R2、Ninho、ZZと、ベテランから若手までさまざまな顔ぶれ。界隈にケンカした敵も多いけれど、人望もまた厚いのは、それなりに大物だということでしょうか?

 新作アルバムの収録曲から、2018年にブーバと「オルリー空港乱闘事件」を起こしたカーリス(Kaaris)をフィーチャーして1月16日にシングル発売されたオープニングナンバーの「Vision」をお聴きください。「犯罪の首都ラジオ」である上にコラボする相手が相手なので、リリック(paroles)はアルコール、妖しい女性、贅沢品、暴力、ドラッグ満載にリオネル・メッシにインテル・ミラノ……。 

 

La Fouine(ラ・フーイン)& Kaaris - Vision (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲"Chanson Populaire"
 
2026年2月3日号

 

2026年1月30日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Avec moi - RnBOi

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 7 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 8 Spa - Maître Gims, Théodora

 9 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 10 OG - Genezio, Niska

 

【アルバムチャート】

 1 M.I.L.S.4 - Ninho

 2 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 3 Mega BBL - Théodora

 4 Pyramide 2 - Werernoi

 5 How Did I Get Here? - Louis Tomlinson

 6 Megadeth - Megadeth

 7 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 8 TP sur TP - JuL

 9 Et si j'échoue - Bouss

 10 Hyperlove - MIKA

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama」は16週連続のシングルチャート1位です。FranglishとKeBlackの「Génération impolie」がトップ10に復帰して9位でした。

 

Louis Tomlinson

 今週のアルバムチャート4位にLouis Tomlinson(ルイ・トムリンソン)の3枚目のアルバム「How Did I Get Here?」が登場。1月23日のリリース。10年前に解散したUKのボーイズグループOne Direction(ワン・ダイレクション)の元メンバーで、34歳です。地元ドンカスターのサッカークラブ「ドンカスター・ローヴァーズ」のDFとして試合に出ていました。

 6位のMegadeth(メガデス)の「Megadeth」は1月23日発売で全米ビルボード・アルバムチャート最高1位。43年のキャリアがあるヘヴィメタル・バンドで、メタリカ、スレイヤー、アンスラックスとともに「スラッシュメタル・ビッグ4」と並び称されました。17枚目の新作はスタジオアルバム最終作で、2026年は解散ツアーを行って音楽活動に区切りをつけ、フロントマンのデイヴ・ムステインは『ひょっこりひょうたん島』のドン・ガバチョ元大統領みたいに回顧録を書いて出版するそうです。

 

MIKA(ミーカ)

 

MIKA

 7枚目のアルバム「Hyperlove」(1月23日発売)が今週のSNEPチャートでアルバム10位に入ったMIKA(ミーカ)は、本名をMichael Holbrook Penniman Jr.(マイケル・ホルブルック・ペニマン・ジュニア)といい、1983年8月に中東レバノンの首都ベイルートで生まれ、パリとUKロンドンで育った42歳のシンガーソングライターです。音楽プロデューサー、俳優、パフォーマー、ファッションデザイナー、グラフィックデザイナー、イラストレーター、コラムニストもこなす多芸多才ぶり。2023年5月には来日コンサートも行っています。

 全曲の歌詞がフランス語のアルバム「Que ta tête fleurisse toujours」(邦題:あなたの頭にいつも花が咲きますように)を2023年11月に出し、フランスでアルバムチャート最高5位になった直後の2023年12月12日号でくわしくご紹介しましたが、新作「Hyperlove」は英語曲が主体です。

 ここで彼の母国レバノンについて説明しておきますと、もともとオスマン・トルコ帝国の領土でしたが、悪名高い英仏間のサイクス=ピコ秘密協定(1916年)でシリアなどとともにフランスの勢力圏とされ、1943年の独立までフランスの委任統治領だった歴史があります。そのため現在でもキリスト教徒のコミュニティを中心にフランス語が通用し、フランス語で授業をする学校もあるので、人口の約4割が話せるという統計もあります。文学、食生活、音楽などでフランスの文化的な影響は小さくありません。

 かつてはベイルートが「中東のパリ」と呼ばれたほど経済が繁栄した国でしたが、1975年以降、主要都市を廃墟にするほどの苛酷な内戦が現在までずっと続いているため、多くの国民が欧米に移住しました。父親がアメリカ人、母親がレバノン系シリア人のミーカの一家も、そうでした。1歳で「難民」になり、パリを経てロンドンに落ち着いたミーカですが、ロンドンでフランス語の学校に通ったので英語もフランス語も流ちょうに話せるそうです。

 人呼んで「ミラクル・ポップ・プリンス」。2006年にシングル「Relax, Take It Easy」でデビューしますが、UKでは最高18位でもフランスでは最高1位でした。ファーストアルバムの「Life in Cartoon Motion」(2007年)はUKでもフランスでも、ベルギーでもオランダでもノルウェーでも最高1位。フランスではセカンドアルバムもサードアルバムも最高1位になるほどの人気で、シングルでは2007年の「Love Today」、2009年の「Rain」が最高5位。2011年のフランス語曲の「Elle me dit」が再び最高1位になっています。2016年5月にはベルシーアリーナでのコンサートのライブ盤が出ていて、TF1のオーディション番組「The Voice」フランス版では審査員兼コーチを務め、2010年には20代の若さでフランス政府から「芸術文化勲章・シュヴァリエ(L'Ordre des Arts et des Lettres - Chevalier)」を受章しました。彼はフランスに足を向けて寝てはいけません。

 新作「Hyperlove」の収録曲から、2025年12月に「Modern Times」とともに先行公開されたシングル「Immortal Love」(「不滅の愛」という意味)をお聴きください。歌詞は愛犬に捧げていて、80年代っぽいシンプルなエレクトロ・ポップですが、政治も社会も音楽界も複雑化するばかりの今は、それがかえって新鮮に聞こえるかもしれません。

 

MIKA(ミーカ) - Immortal Love

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス国旗に「Chanson Populaire」と表示
 
2026年1月27日号

 

2026年1月23日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 3 Avec moi - RnBOi

 4 Mon bébé - RnBOi

 5 Love You - Nono La Grinta

 6 Spa - Maître Gims, Théodora

 7 Les Diamants de Bokassa - Ninho & Tiakola

 8 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 9 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 10 OG - Genegio, Niska

 

【アルバムチャート】

 1 M.I.L.S.4 - Ninho

 2 THE SIN:VANISH - ENHYPEN

 3 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 4 ZMIG - Danyl

 5 Mega BBL - Théodora

 6 TP sur TP - JuL

 7 Pyramide 2 - Werernoi

 8 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 9 Et si j'échoue - Bouss

 10 Diamant noir - Werernoi

 

 シングルチャート1位は今週もDisizとThéodoraの「Melodrama」で、これで15週連続1位です。3位、4位には1月13日号でくわしくご紹介したRnBOi(エレンボイ)の「Avec moi」「Mon bébé」が同時ランクインしました。

 6位にThéodoraがMaître Gims先生とデュエットした「Spa」が入りました。1月16日リリース。Spaとはモロッコやトルコなどイスラム圏の伝統的な公衆浴場「スパ・ハマム(Spa Hamam)」のことで、第一次世界大戦末期にドイツ軍が大本営を置いた古い温泉地で、今や地名が世界的に普通名詞化したベルギー・リエージュ州の世界遺産「Spa(スパ)」ではありません。

 

ENHYPEN

 韓国の男子7人組、ENHYPEN(エンハイプン)の1月16日リリースのニューアルバム「THE SIN:VANISH」(罪の消滅)が今週、SNEPアルバムチャート2位に入りました。今さら説明するまでもないですが英語の「crime」は法律上の犯罪で、「sin」は宗教上、道徳上の罪を指します。

 

Danyl(ダニール)

 

Danyl

 今週のアルバムチャート4位にデビューアルバム「ZMIG」が登場したDanyl(ダニール)は、1998年10月にパリの南東の郊外、ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県サン=モーリス(Saint-Maurice)で生まれ、同県クレテイユ(Créteil)を経てパリ13区で育った27歳のラッパーです。本名をDanyl Boudaliといい、アルジェリア系ですが、その中でも少数派である先住民ベルベル人の血をひいています。

 母親と同じクラシックのピアニストを目指し名門のパリ国立音楽舞踊院(CNSMD de Paris)で学びますが、アルジェリアの大衆音楽ライ(Raï/2020年9月8日号でくわしくご紹介しました)や英米のポップス、ロックを好んで聴いているうちに、いつしかポピュラー音楽の方向に進んでいました。アルジェリア出身の親戚の人脈を介してSDMやNinhoらのバックミュージシャンとしてピアノを弾くようになり、ヒップホップの世界との関係を深めていきます。2018年、20歳の時にHashey Sen(ハシェイ・セン)という、なんだかライのミュージシャンっぽいステージネームでデビューしました。

 本名のDanyl(ダニール)名義では2023年にEPシリーズ「Khedma 1」「Khedma 2」「Khedma 3」を出し、2024年にStony Stoneをフィーチャーしたシングル「Ti amo」、Zamdaneをフィーチャーしたシングル「Les zhommes」、Tuerieをフィーチャーしたシングル「Ligne 9」を出し、ラッパーとして実績を積み重ねます。そして満を持して1月16日に「ZMIG」(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどマグレブ地域系のフランス人を指す言葉)をリリースしました。

 そうした経歴から、アルジェリアとフランスという「二つの祖国」感覚と、クラシック、ライ、ポップス、ロック、ヒップホップにまたがる幅広い音楽的素養を持っていて「ただのラッパーじゃない」感たっぷりです。今後の活躍が期待できそうです。

 アルバム収録曲から2025年10月に公開された先行シングル「La voisine」(隣人/女性形)をお聴きください。通りの向かいに住む、訳ありな雰囲気を漂わせていて、イスラム教徒らしいがくわしいことは何も知らない女性のことを歌っています。世界のいたるところから、エリートも政治亡命者も留学生も出稼ぎに来た人も難民も、「行けば何かいいことがあるかもしれないと漠然と思った人」も、寛容に受け入れて「隣人」としてきたフランスらしい曲と言えるでしょうか?

※フランソワ・トリュフォー監督、ファニー・アルダン主演の1981年の映画『隣の女』の原題は、La Voisineではなく『La Femme d'à côté』です。こちらは物理的に本当のお隣さん。

 

Danyl(ダニール) - La voisine

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌謡曲ランキング画像
 
2026年1月20日号

 

2026年1月16日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Les Diamants de Bokassa - Ninho & Tiakola

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Love You - Nono La Grinta

 5 Dictionnaires - Ninho & Freeze Corleone

 6 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 7 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard

 8 Piler - Ninho

 9 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 10 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 M.I.L.S.4 - Ninho

 2 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 3 Mega BBL - Théodora

 4 TP sur TP - JuL

 5 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 6 Pyramide 2 - Werernoi

 7 Et si j'échoue - Bouss

 8 Diamant noir - Werernoi

 9 La fuite en avant - Orelsan

 10 On s'en rappellera pas - Disiz

 

 シングルチャート1位は今週もDisizとThéodoraの「Melodrama」。これで14週連続1位です。シングル2位、5位、8位にNinho(ニーニョ)の新作アルバム「M.I.L.S.4」の収録曲が入りました。2位の「Les Diamants de Bokassa」のBokassa(ボカサ)とは、中央アフリカ共和国の大統領を11年間務めた後、1976年に「中央アフリカ帝国皇帝」に即位した独裁者ボカサ1世のこと。1979年にフランスが仕組んだ軍事クーデターで退位させられ、腹いせに当時のジスカールデスタン大統領にダイヤモンドなどを贈ったワイロ工作(曲のタイトルはこれを指す)を暴露して1981年のフランス大統領選挙で落選させ、「ミッテランを大統領につけた元皇帝」となったのでした。

 7位に「B.M.S.(By my side)」がランクインしたRambo Goyard(ランボー・ゴヤール)は、ブルターニュ地方、コート=ダルモール(Côtes-d'Armor/22)県サン=ブリユー(Saint-Brieuc)出身のラッパー。有名な詩人ではなくシルヴェスター・スタローン主演の映画の方のランボー(Rambo)と高級バッグのブランド名Goyard(ゴヤール)を組み合わせてステージネームとする彼は、ヒップホップにR&B、アフロビートを融合させた音楽をやっています。2022年にアルバム「Crossover」を出しています。

 

Ninho

 Ninho(ニーニョ)の1月9日リリースの2枚組16曲入りニューアルバム「M.I.L.S.4」が今週、アルバムチャート初登場1位。彼のアルバムでは6作連続7作目の1位。セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ネムール(Nemours)出身、コンゴ系で29歳の人気と実力を兼ね備えたラッパー。父親もコンゴでシンガーでした。新作は「M.I.L.S.」シリーズ(1は2016年、2は2018年、3は2020年)の最終章だそうで、4作とも1位です。Freeze Corleone、Tiakola、GAULOIS、Kaneki Ken France(日本人ではありません。日本のアニメ「東京喰種(Tokyo Ghoul)」の主人公、金木研を名乗っているラッパー)が参加したアルバムの中心テーマは「孤独と野心」。ランキング2位以下は前週から1つずつ順位下げです。

 

2025年 SNEP年間チャート


 SNEPから昨年2025年の年間チャートが発表されましたので、シングル、アルバムそれぞれ10位までご紹介します。200位まで公開されていますので、くわしく知りたい方は次のサイトをご覧ください。

年間シングルチャート:

https://snepmusique.com/wp-content/uploads/2025/12/202552-200-Singles-YTD-SNEP.xlsx-200-Singles.pdf

年間アルバムチャート:

https://snepmusique.com/wp-content/uploads/2025/12/202552-200-Albums-YTD-SNEP.xlsx-Top-200-Albums.pdf

 

【シングル年間チャート】

 1 Ciel - Maître Gims

 2 Ninao - Maître Gims

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Feel good - Charlotte Cardin

 5 Soleil bleu - Bleu Soleil, Luiza

 6 Sois pas timide - Maître Gims

 7 Mood - KeBlack

 8 APT. - Rosé & Bruno Mars

 9 Cartier Santos - SDM

 10 Kyky2Bondy - Hamza

 

【アルバム年間チャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 D&P à vie - JuL

 3 Diamant noir - Werernoi

 4 Mega BBL - Théodora

 5 Pyramide 2 - Werernoi

 6 Focus - KeBlack

 7 Beyah - Damso

 8 Nés pour briller - L2B

 9 BDLM Vol.1 - Tiakola

 10 TP sur TP - JuL

 

Maître Gims

 2025年のフランスのポピュラー音楽界は、Maître Gims(メイトル・ギムス)先生の年でした。シングルもアルバムも1位で、シングル年間チャートでは1、2、3、6位に名前を刻んでいます。コンゴ民主共和国の首都キンシャサ生まれの39歳。ヒップホップ、ラッパーの枠にとどまらない活躍をみせており、JuL(ジュール)とともに別格扱いの存在でしょう。

シングル1位 Maître Gims - Ciel

 

●2025年 勝手に三賞&新人賞選考委員会

 

【殊勲賞】Charlotte Cardin(シャーロット・カルダン)

Charlotte Cardin

  カナダ・モントリオール出身の31歳の女性シンガーソングライター。英仏両語を交えて歌う「Feel good」がシングル年間チャート4位。フランスのチャート上位では、フランス語で歌うカナダ勢はセリーヌ・ディオン、ミレーヌ・ファルメール、ガルー、イザベル・ブーレイに続く世代がなかなか出てこなかっただけに、2025年の活躍は殊勲と言えるでしょう。

Charlotte Cardin - Feel good

 

【敢闘賞】Werenoi(ウェルノワ)

Werenoi

 アルバム年間チャート3位に「Diamant noir」、5位に「Pyramide 2」が入り、ともに長くトップ10に入るロングセラーになりました。4月にDamso、Ninhoとコラボした「Triple V」でシングルチャート首位に立ったのですが、残念ながら5月17日、パリの病院で31歳で亡くなりました(報道では循環器系疾患)ので、追悼の意も込めて2年連続敢闘賞を贈ります。

Werenoi - Triple V

 

【技能賞】Théodora(セオドラ)

Théodora

 5月リリース「Mega BBL」が現在も売れていてアルバム年間チャート4位。Disizとのデュエットナンバー「Melodrama」が年末まで11週連続シングルチャート首位を独走しました(年間チャートでは15位)。22歳ですがコンゴ難民としてヨーロッパ各国を流浪した過去があり、ワールドミュージックの素養の上に硬派なリリックを乗せた曲もつくっています。

Théodora - Melodrama

 

【新人賞】Helena(エレナ)

Helena

  ベルギー出身。ファーストアルバム「Hélé」がアルバム年間チャート16位。3月にはアルバムチャート首位に立ちました。2023年の「Star Academy(スター・アカデミー)」第11シーズンは準決勝敗退でしたが、優勝者で2024年に大活躍し殊勲賞受賞のピエール・ガルニエに決して負けないセールスを記録。2026年1月に「Les Enfoiré 2026」に出場しています。 

Helena - Tout a changé (Rien n'a changé)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスの歌番組「Chanson Populaire」
 
2026年1月13日号

 

2026年1月9日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 6 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Bloqué - Maître Gims, L2B

 9 OG - Genezio ft.Niska

 10 End of Beginning - Djo

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 Mega BBL - Théodora

 3 TP sur TP - JuL

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Pyramide 2 - Werernoi

 6 Et si j'échoue - Bouss

 7 Diamant noir - Werernoi

 8 La fuite en avant - Orelsan

 9 On s'en rappellera pas - Disiz

 10 Hélé - Helena

 

 シングルチャート1位は今週もDisizとThéodoraの「Melodrama」です。13週連続1位でヴィクトワール音楽賞獲り確実?

 

Genezio

 9位にGenezio(ジェネジオ)がNiskaをフィーチャーした「OG」が入りました。パリとヴェルサイユ宮殿の間にあるイブリーヌ(Yvelines/78)県ル・シェネ(Le Chesnay)の生まれで、パリ南東のヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)出身の22歳の若手ラッパー。本名はYoan Makangouといい、コンゴ系です。10代の頃、両親の故郷コンゴ共和国のブラザヴィル(ザイール川の対岸はコンゴ民主共和国のキンシャサ)に住んでいたこともあります。学生時代にサウンドエンジニアとしてラッパーの友人の録音を手伝ううちに、自分もラッパーになってしまったそうで、2023年デビュー。2025年11月、Maître Gims、Niskaら大物も参加したファーストアルバム「Les dents du bonheur」(フランスでは前歯のすき間は幸せを呼ぶという言い伝えがある「幸運のすきっ歯」のこと)を出し、「OG」はその収録曲です。トラップ、レゲエ系が主体。

 Djo(ジョー)ことジョー・キーリー(Joe Keery)の「End of Beginning」がシングル10位に急浮上。本業は俳優のアメリカ人で、マサチューセッツ州生まれの33歳。代表的な出演作はネットフリックスのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』です。Djoは「音楽活動上の名義」だそうで、かつてはPost Animalというバンドでギターを弾いていました。

 アルバムチャートは7位を除いて前週と同じ顔ぶれでした。その7位もWerenoi(ウェルノワ)が2025年4月11日にリリースした旧作「Diamant noir」で、チャートに新作アルバムが現れるのは来週くらいからでしょうか。

※2025年のSNEP年間トータルチャートのトップ10は、次号で掲載します。

 

RnBOi(エレンボイ)


RnBOi

 今週のシングルチャート2位はRnBOi(エレンボイ)の「Mon bébé」で、前週も2位でした。本名はSamy Fahli(サミー・ファリ)といい、2006年6月生まれでまだ19歳。父親はイタリア、母親はモロッコの出身です。誕生地は歴代王朝や皇帝ナポレオン1世と縁が深いフォンテーヌブロー宮殿※(Château de Fontainebleau/世界文化遺産)で知られるパリの南の郊外、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県フォンテーヌブロー(Fontainebleau)ですが、育ったのは同県のヌムール(Nemours)でした。

※ここでクイズ。フランス最大の宮殿はどこでしょうか? ヴェルサイユ宮殿と答えると「×」で、フォンテーヌブロー宮殿と答えると「〇」です。大学入試の世界史や世界遺産検定やクイズ番組のひっかけ問題で出題されそうです。

 ステージネームの「RnBOi」ですが、「Rn」は日本のアニメ『進撃の巨人』(フランス語タイトルは「Attaque des Titans」)の主人公エレン・イェーガー(フランス語でのつづりはEren Jäger)に由来していて「エレン」と読み、「BOi」はボワではなく「ボイ」と発音するようです。

 10代ながらキャリアは音楽制作の現場でドラムパターンやベースラインなどを作る「ビートメーカー」(「トラックメーカー」ともいいます)からスタートし、コンポーザー(作曲家)を経てシンガーソングライターになりました。ジャンルは一応、R&Bとなっていますが、ひろくヒップホップ、ポップス、トラップなどから影響を受け、それらのミュージシャンとコラボしています。現在の音楽界でジャンルうんぬんを取り沙汰するのは、mocheな(ダサい)行為と言えるでしょう。

 彼をメジャーシーンに引き上げたのは、アフリカのマリからやってきて、Amel Bent(アメル・ベント)に代わって今やフランスのR&B、アフロの女王になったと言ってもいい存在のAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)です。彼女が設立したR&Bレーベル「DOUBLE JEU RECORDS」の第1号アーティストとして2025年6月にEP「My Eyes Only」を出しています(収録曲の「BTRD」が最高シングル23位)。ただし、それ以前にも2022年にシングル「Poudre」でデビューし、2024年に「Instable」「Ghetto」「Busy Boy」「Collabo」などアーバンR&Bテイストの曲を出して「ただ者ではないアンファン・テリブル」感を漂わせてはいました。

 同年、Kerchak(ケルチャック)のアルバムに収録されたコラボ曲「Mi-temps」、Tiakola(ティアコラ)のミックステープに収録されたコラボ曲「Reste là」でその才能を遺憾なく発揮。それを聴いたアヤ・ナカムラが「この子は私のものよ」と自分のステージに出演させています。なんだか50年以上前のモータウンのダイアナ・ロスとマイケル・ジャクソンの関係に似ているような感じもあります。

 では、ヒット中の「Mon bébé」をお聴きください。「bébé」とはもちろん赤ちゃんではなく「恋人」を意味しています(恋人が女性であっても男性名詞)。昨年末12月28日に亡くなった女優ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)は愛称「BB(BéBé)」で、60年代にはまさに「世界の恋人」でした。「Holà」とあいさつするスペインの女の子といい仲になっている?エレンボイは今後、『進撃の巨人』のエレン・イェーガーのように、フランスのミュージック・シーンで快進撃を続けていくでしょうか?

 

RnBOi(エレンボイ) - Mon bébé(Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

仏蘭西歌謡曲「Chanson Populaire」ロゴ
 
2026年1月6日号

 

2026年1月2日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 4 Love You - Nono La Grinta

 5 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 6 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Bloqué - Maître Gims, L2B

 9 Soleil Bleu - Bleu Soleil, Luiza

 10 Zou Bisou - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 Mega BBL - Théodora

 3 TP sur TP - JuL

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Pyramide 2 - Werernoi

 7 On s'en rappellera pas - Disiz

 8 Et si j'échoue - Bouss

 9 Hélé - Helena

 10 Recommence-moi - SANTA

 

 2026年、あけましておめでとうございます。本年で7年目になる「仏蘭西歌謡曲」をよろしくお願いします。

 新年最初のチャートのシングル1位は年が明けてもDisizとThéodoraの「Melodrama」でした。Théodora(セオドラ)はシングルトップ10では1位、10位、12位、23位に入り、アルバムトップ10でも2位で、2月のヴィクトワール音楽賞が楽しみです。8位にMaître GimsとL2Bの「Bloqué」が浮上。英語から日本語化した「ブロック」と同じ意味です。

 年末のフランスのチャートを「ビルボード化」させたクリスマスソングですが、マライア・キャリーもワム!もブレンダ・リーもあっさり圏外へ去りました。年末にまたお会いしましょう。1月6日はクリスマス飾りをしまってお菓子の「ガレット・デ・ロワ(Galette des Rois)」を食べる「公現祭(L'Épiphanie/レピファニー)」です。

 

Werenoi

 アルバムチャートは6位にWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」(2024年10月リリース)、8位にBouss(ブース)の「Et si j'échoue」(2024年11月リリース)が再浮上した以外は年末最終週と同じ顔ぶれでした。この2作は年越し連続1位のMaître Gims(メイトル・ギムス)先生の「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」(2024年9月リリース)とともに、足掛け3年のトップ10入り。フランスのヒップホップシーンの「ロングランアルバム三羽ガラス」でしょうか?  

 

Les Enfoirés 2026(レザンフォワレ 2026)


Les Enfoirés

 フランスのポピュラー音楽界の新年の恒例イベント「Les Enfoirés(レザンフォワレ)」が来週、1月13日から19日まで、パリ12区のベルシー(Bercy)公園内に建つ「アコー・アレナ(Accor Arena)」で開催されます。パリでの開催は6年ぶりになります。

Les Enfoirésの公式サイト:https://www.enfoires.fr/

 アコー・アレナ(アコーホテルズ・アレナ)は、日本でもよく知られている9区の「オランピア劇場(L'Olympia)」、2015年11月のテロで世界的に有名になってしまった11区の「バラクラン劇場(Bataclan)」、19区のラ・ヴィレット公園内に建つジャック・ラング(Jack Lang)の文化政策の象徴的存在とも言える「ゼニス・パリ(Le Zénith Paris)」、モンマルトルの丘に近い歓楽街ピガール(Pigalle)地区の18区ロシュシュアール大通り(Boulevard de Rochechouart)に面した「ラ・シガール(La Cigale)」「ル・トリアノン(Le Trianon)」と並んで、海外アーティストの公演も行われる首都を代表する音楽コンサートホールです。それ以上の収容人数を求めるなら16区の「パルク・デ・プランス」やサン=ドニの「スタッド・ド・フランス」でのスタジアム・ライブになります。

 レザンフォワレ2026の公演日程は7日間ですが、13日にはゲネプロ(ドレスリハーサル/通し稽古)があり、17、18日の土曜、日曜がメインステージ。日曜日は2回公演です。チケットはすでに完売。3月上旬にはTF1でテレビ放送され、YouTubeでも公開されます。3月の同時期にはDVDやCDアルバムも発売され、アルバムは毎年、発売直後にSNEPアルバムチャートで首位になっています。

 このブログでは何度もご説明してきましたが、日本で言えば萩本欽一さん的な存在の有名コメディアンにして俳優のコリューシュ(Coluche)、ミュージシャンのジャン=ジャック・ゴールドマン(Jean-Jacques Goldman)、サッカーの名選手で「将軍」ことミシェル・プラティニ(Michel Platini/2014年には歌手(!)として公演に参加)が発起人で、コリューシュは1986年に交通事故で亡くなりますが、1989年にゼニス・パリで第1回公演が実現しました。

 毎年、ステージでは音楽ライブだけでなくミュージシャン自らが演じるコミカルな寸劇もあり、著名な俳優やスポーツ選手などのゲストも顔を出します。ベンゼマ選手やエムバペ選手も来ました。エンディングは毎回お約束で、ステージのコリューシュの大きな写真の前に出演者全員が勢揃いし、ジャン=ジャック・ゴールドマン作曲「La chanson des restos」を合唱して締めくくります。

 チケット、DVD、CD、記念グッズの販売収益や放送権料、広告収入、ネット収入は、コリューシュが1985年に設立し、昨年、日本の片山さつき財務・金融担当大臣も言及していた生活困窮者に食事を提供する団体「Les Restaurants du cœur(心のレストラン)」に寄付されます。現在、ダイニングカーも含めてフランス全土、ベルギー、ドイツの2000か所以上で食事を提供していますが、最近は世界的なインフレによる食材、光熱費の高騰で、運営が厳しくなっています。

 レザンフォワレはチャリティーイベントですが、日本の某テレビ局が夏の終わりに行って毎年批判が渦巻く某イベントと違って出演者は全員ノーギャラ貫徹。ポップス、ロックのミュージシャンが中心で、ラッパーは排除しているわけではないですが数は少ないです。

 昨年は計53組だった出演者リストは原則事前非公開ですが、出演したらハクがつくからなのか、近年は「レザンフォワレに出ますよ」と自らバラすのが流行っており、2026年はすでにフレンチポップスの大御所フローラン・パニー(Florent Pagny/今週アルバム12位)、6年ぶりに出る56歳のシンガーソングライター、ベナバール(Bénabar)、「スター・アカデミー」出身の若手からエレナ(Helena/今週アルバム9位)が、出演すると明らかにしています。

 SANTA(サンタ/今週アルバム10位)が「Les Enfoirés 2026」のL'hymne(アンセム)「Tout se casse」を作詞・作曲し、YouTubeで1月5日に公開されました。ということは、サンタも出演は確実でしょう。

 Les Enfoirés(レザンフォワレ) - Tout se casse (Visualizer)

 レザンフォワレの原点、発起人の皆さん他による1986年の「La chanson des restos」もお聴きください。

Les Enfoirés(レザンフォワレ) - La chanson des restos (clip officiel HD) (86)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランス歌謡曲 Chanson Populaire
 
2025年12月30日号

 

2025年12月26日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 All I Want For Christmas Is You - Mariah Carey

 3 Mon bébé - RnBOi

 4 Last Chirtmas - WHAM!

 5 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 6 Love You - Nono La Grinta

 7 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 8 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 9 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 10 Rockin' Around The Christmas Tree - Brenda Lee

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 2 TP sur TP - JuL

 3 Mega BBL - Théodora

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 La fuite en avant - Orelsan

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 Recommence-moi - SANTA

 8 Lux - Rosalía

 9 Hélé - Helena

 10 On s'en rappellera pas - Disiz

 

 今週は2025年最後のチャートですが、DisizとThéodoraの「Melodrama(メロドラマ)」のシングルチャート1位がこれで11週連続になりました。トップ10では2位にマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」、4位にワム!の「Last Christmas」、10位にブレンダ・リーの「Rockin' Around The Christmas Tree」が入り、以下13位にアンディ・ウィリアムズ、16位にザ・ロネッツ、17位にマイケル・ブーブレ、19位にエド・シーランとエルトン・ジョンのクリスマス・ソングがチャートインして「ビルボードチャート化」しています。

 アルバムチャート1位にMaître Gimsの「Le Nord se souvient(L'Odyssée)」が返り咲き。2024年9月13日リリースで、実に1年3カ月もチャート上位にいます。

 

KPop Demon Hunters

 アルバム4位は「KPop Demon Hunters」(邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)。6月20日発売で、8月8日にSNEPアルバムチャートのトップ10に初登場して以来のロングラン。アメリカのミュージカル・アニメ映画『KPop Demon Hunters』(ソニー・ピクチャーズ製作/Netflix配給)のサウンドトラック盤で、映画はK-POPガールズグループHUNTR/X(ハントリックス)が、悪霊の化身であるK-POPボーイズグループSaja Boys(サジャ・ボーイズ)と戦って成敗するというストーリーです。女は強い。写真は歌唱を担当するRumi(ルミ)役のEJAE(イジェ)、Mira(ミラ)役のAudrey Nuna(オードリー・ヌナ)、ゾーイ(Zoe)役のREI AMI(レイ・アミ)。今週のシングル7位には彼女たちの「Golden」が入っています。

 9位にHelena(エレナ)、10位にDisiz(ディズ)のアルバムが再浮上しました。 

 

Disiz(ディズ)


Disiz

 今週のアルバム10位にDisiz(ディズ)の14枚目のスタジオアルバム「On s'en rappellera pas」(「僕らはそれを思い出すことはないだろう」というような意味)が再浮上しました。20曲入りで11月21日リリース。11月28日付チャートではAya Nakamuraの「Destinée」に次ぐ2位まで上昇しています。ちなみにその週の3位はシングルのデュエットの相方、Théodora(セオドラ)の「Mega BBL」(今週もアルバム3位)でした。

 ディズは1978年3月にソンム(Somme/80)県アミアン(Amiens)で生まれ、パリ郊外のエソンヌ(Essonne/91)県エブリー(Évry)で育った47歳のラッパーです。セネガル系で本名はSérigne M'Baye Gueye。Disiz la Pesteというステージネームで2000年にデビューしましたが、名義はそれとDisizを併用しています。

 デビューシングル「J'pète les plombs」(「自分のヒューズが飛んだ」転じて「理性を失った」「キレた」というような意味)は最高6位、デビューアルバムの「Le poisson rouge」(金魚)は最高5位と、キャリアは上々のスタート。アルバムでは2012年の「Extra-Lucide」(最高6位)、2017年の「Pacifique」(最高8位)、2022年の「L'Amour」(最高4位)が、シングルでは2022年にDamso(ダムソ)をフィーチャーした「Recontre」(最高1位)がトップ10入りした実績があります。

 ミュージシャンとしての活躍以外に、俳優として映画や演劇やテレビドラマに出演したり、ラジオパーソナリティーとして自分の番組を持ったりもしています。27歳の時にはDenis Thybaud(デニス・ティボー)監督の映画『Dans tes rêves』(2005年)で主演を務めました。ヒップホップの世界でスターになる夢を持った若きラッパーの役です。デビューアルバム「Le poisson rouge」はジョエル・シュマッカー監督のサイコスリラー映画『フォーリング・ダウン』(1993年)にインスパイアを受けて制作したそうで、彼には映画マニアの一面もあるようです。

 2000年代には父親の故郷のセネガルをたびたび訪問して現地で独自制作のカセットテープ(スマホがまだ普及していない当時のアフリカでは重要な音楽媒体)を出したり、曲の中で「ティアロワイ虐殺事件」(1944年12月)をとりあげてフランス政府のアフリカ政策を批判したり、セネガル生まれで社会党から出馬したフランス大統領候補セゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal)氏を応援したり、弁護士になろうと「DAEU」(バカロレアに代わる大学入学資格。日本の「高卒認定試験(旧・大検)」のようなもの)に合格して法科大学院に入学したりしています。2010年以降は音楽活動に専念しますが、エレクトロポップやパンクロックに接近したこともあります。「いろいろやってみたい人」のようですね。

 2025年はThéodora(2025年6月17日号参照)とのデュエット・チューン「Melodrama(メロドラマ)」が10月からシングルチャート首位を独走中。2月に授賞式があるヴィクトワール音楽賞の有力候補でしょう。今回は新作アルバム「On s'en rappellera pas」から、ロック名曲メドレー「Rockollection」(1977年)で知られる77歳のポップスター、ローラン・ヴルジー(Laurent Voulzy)との異色のコラボチューン「Surfeur」(サーファー)をお聴きください。お前サラサラ、サーファー・ガールと、女性をいとおしんでいる曲です。

 

※新年早々、2026年1月13日から19日まで、日本の片山さつき財務大臣も言及した団体「Restos du cœur」を支援する毎年恒例の音楽イベント「Les Enfoirés」が、パリ12区ベルシー公園内のアコー・アレナ(Accor Arena)で開催されます。

※本ブログの2025年の配信は今回が最終です。この一年、お世話になりました。来年2026年、良いお年をお迎えください。「仏蘭西歌謡曲」もよろしくお願いします。なお、2025年の年間チャートは2026年1月13日号または1月20日号で掲載する予定です。 

 

Disiz - Surfeur feat. Laurent Voulzy

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

フランスのシャンソン人気チャート
 
2025年12月23日号

 

2025年12月19日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Melodrama - Disiz, Théodora

 2 Mon bébé - RnBOi

 3 Love You - Nono La Grinta

 4 Parisienne - Maître Gims,La Mano 1.9

 5 Génération impolie - Franglish, KeBlack

 6 Golden - KPop Demon Hunters Cast

 7 The Fate of Ophelia - Taylor Swift

 8 Bloqué - Maître Gims, L2B

 9 Soleil bleu - Bleu Soleil,Luiza

 10 ZOU BISOU - Théodora, JuL

 

【アルバムチャート】

 1 TP sur TP - JuL

 2 La fuite en avant - Orelsan

 3 Le Nord se souvient(L'Odyssée) - Maître Gims

 4 KPop Demon Hunters - KPop Demon Hunters Cast

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Grandeur nature - Florent Pagny

 7 Recommence-moi - SANTA

 8 Lux - Rosalía

 9 Il faut que tu saches - Slimane

 10 Cœur maladroit - Maline

 

 DisizとThéodoraの「Melodrama(メロドラマ)」のシングルチャート1位はこれで10週連続と2ケタに到達。シングルトップ10を見れば前週と比べて5位と6位、8位と9位が入れ替わっただけでした。クリスマス直前なので、11位にマライア・キャリーの「All I Want For Christmas Is You」が迫っていて、ワム!の「Last Christmas」も15位です。JuL(ジュール)は単独ではシングル最上位が「Nostalgique」の21位にとどまり、アルバムとは好対照です。

 

JuL

 アルバムチャート1位は前週に続いてJuLの「TP sur TP」でした。12月5日の発売後の3日間で11万6783枚を売り上げ、しかもデジタル配信全盛のこの時代に、その94%がアナログ盤またはCDという「形あるもの(physique)」のセールスでした。もちろんそれはパリ、マルセイユでの彼のコンサートのチケット購入権がついているからでした。

 2位には前週は13位だったOrelsan(オレールサン)の「La fuite en avant」がトップ10に再浮上。タイトルは日本語で言えば「やぶれかぶれ」「向こう見ず」というような意味です。8位にスペインの歌姫、Rosalía(ロザリア)の生涯最高のヒット作になった「Lux」が再浮上しました。クリスマス・イヴの夜、静かに聴きたいアルバム、ですか? 

 

Florent Pagny(フローラン・パニー)


Florent Pagny

 フレンチポップスの大御所、というより本ブログでは「The Voice(フランス版)」「Star Academy」のようなオーディション番組の審査員(兼任コーチ)として頻繁にその名が出てくるFlorent Pagny(フローラン・パニー)ですが、9月12日にリリースされた2年ぶりの17曲入りの新作「Grandeur nature」(9月19日付最高1位)が今週、6位に再浮上しました。自身名義のアルバムでは29枚目、スタジオアルバムに限れば22枚目になり、そのうち10枚がSNEPアルバムチャートで1位になっています。

 本ブログでは2020年3月31日号、2023年9月5日号で彼のプロフィールをくわしくご紹介していますが、1961年11月6日、ブルゴーニュ地方のソーヌ=エ=ロワール(Saône-et-Loire/71)県シャロン=シュル=ソーヌ(Chalon-sur-Saône)生まれの64歳。シングル1位になった大ヒット曲には、1988年のデビュー曲「N'importe quoi(邦題:無用な愛)」、1997年の「Savoir aimer(邦題:希望)」、2003年の「Ma Liberté de penser(邦題:考える自由)」があります。

 フローラン・パニーは俳優としても活躍。26歳の時にはフレンチ・ロリータの代表選手ヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis/今週アルバムが24位)当時15歳と浮名を流して(おまわりさん、この人です)芸能メディアに「おいしい話題」を提供しながら、彼らに自作曲「Presse qui roule」で反撃することも忘れませんでした。最近は肺がんを患っていますが、南米アルゼンチン・パタゴニア地方の荒野に建てた自宅兼スタジオには、パスカル・オビスポ(Pascal Obispo)やケンジ・ジラク(Kendji Girac)ら後輩のミュージシャンがはるばる訪れています。2025年にはフランス政府から芸術文化勲章オフィシエ(Officier de l'ordre des Arts et des Lettres)を受章しています。

 さて、新作アルバム「Grandeur nature」のタイトルはフランス語では「雄大な大自然」「ありのままに」「原寸大」「等身大」など複数のニュアンスをはらんでいますが、ヴィアネ(Vianney)やマルク・ラヴォワーヌ(Marc Lavoine)らが曲を提供し、吹きすさぶ風の音を聞きながらパタゴニアの大自然の中でレコーディングをした、という解釈がこの人には最もふさわしいでしょうか。9月18日のラジオ局France Bleu改め「Ici」の番組内では「私の役割はメッセンジャーであること」「すべての人にも、私自身にも響くような普遍的なメッセージを見つけたい」「希望、愛、明るい未来を語るポジティブなメッセージを発信している」と語っています(拙訳)。

 収録曲からタイトルチューン「Grandeur nature」をお聴きください。年を重ねても、がん闘病生活を経験しても、そのポップロック路線はしっかり健在。本人は「タバコをやめたからね」と言ってますが、歌声は艶を失っていません。

 

Florent Pagny(フローラン・パニー) - Grandeur Nature (Clip Officiel)

 

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