2026年4月10日付 SNEPシングル&アルバムチャート
※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)
【シングルチャート】
1 Melodrama - Disiz, Theodora
2 Pocahontas - PLK
3 Elle voulait - RnBoi
4 Spa - Maître Gims, Theodora
5 Argent sale - La Rvfleuze
6 Parlu - La Rvfleuze
7 B.M.S.(By my side) - Rambo Goyard
8 Promenade - La Rvfleuze, Koba Lad
9 Sex Model - PLK & Theodora
10 Love you - Nono La Grinta
【アルバムチャート】
1 Numéro d'écrou - La Rvfleuze
2 Arirang - BTS
3 Grand Garçon - PLK
4 My Eyes Only-Flashback - RnBoi
5 Le nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims
6 Pyramide 2 - Werenoi
7 Marcel - Wallace Cleaver
8 Mega BBL - Theodora
9 Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny
10 Fête foraine - Christophe Maé
今週もシングルチャートはDisizとTheodoraの「Melodrama」(メロドラマ)とPLKの「Pocahontas」の1-2フィニッシュでした。La Rvfleuzeのシングルが今週も5、6、8位に入っています。女将Theodoraも1、4、9位です。
シングル10位にNono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)の「Love you」(愛してる)が前週の11位から再浮上。パリ19区出身、24歳のコンゴ系ラッパーで、2025年8月19日号でくわしくご紹介しています。2025年夏にはシングル「Paris」が爆発的に売れてチャート上位に食い込みましたが、それはUEFAチャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマン(PSG)が初優勝を遂げた影響が大でした。今季もPSGは準々決勝に進出していて、すでにリヴァプールに2-0と先勝し4月14日に準決勝進出なるか決着がつきます。もしも5月30日の決勝戦で連覇を果たせば、「Paris」が再びトップ10入りしそうです。
アルバムチャート首位は前週に引き続き24歳のセネガル系ドリルラッパーLa Rvfleuzeの「Numéro d'écrou」で、BTS「Arirang」の2位も変わらず。トップ10にMaître Gims先生、Bad Bunnyが復帰。来月5月17日が一周忌になるWerenoi(ウェルノワ)の「Pyramide 2」も6位で踏ん張っています。心臓発作によって31歳で急逝したのが惜しまれます。お墓は彼の地元、セーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県モントルイユ(Montreuil)にあります。
Wallace Cleaver(ウォーレス・クリーバー)
4月3日リリースの新作「Marcel(マルセル)」が今週アルバムチャート7位に初登場したWallace Cleaver(ウォーレス・クリーバー)は1998年3月、世界遺産の古城群で知られるロワール地方、ロワール=エ=シェール(Loir-et-Cher/41)県の県庁所在地ブロワ(Blois)で生まれ、同県サン=ローラン=ヌアン(Saint-Laurent-Nouan)で育った28歳のラッパーです。本名はレオ・ゴンド(Léo Gond)といい、パリのソルボンヌ大学で文学とオーディオ・ビジュアル(視聴覚の創作)を専攻して卒業しています。
少年時代から同じロワール地方のオルレアン(Orléans)出身のラッパーNiro(ニロ)や、オルリー空港乱闘事件で令名をはせた?武闘派ラッパーBooba(ブーバ)のフォロワーで、フードをかぶってラッパーのマネをしていました。まず、形から入る?
13歳で初めてラップのリリック(paroles)を書き、大学時代はソルボンヌの同級生とともにパリでヒップホップの創作プロジェクトに参加。2018年、ソロアーティストとして本格的な音楽活動を始めました。
ステージネーム「Wallace Cleaver」は、1957~63年にアメリカCBSが放送したホームコメディシリーズ『Leave It to Beaver』(日本では『ビーバーちゃん』という邦題で1959年から日本テレビ系列で放送)で、トニー・ダウ(Tony Dow/子役俳優から後に監督、プロデューサーになりましたが2022年に死去)が、主人公セオドアくんの優しいお兄さんで、アメフトのチームで活躍する高校生を演じた役名だそうですが、ドラマの中では「ウォーリー(Wally)」と呼ばれました。
さて、フランス人ラッパーのほうのウォーレス・クリーバーですが、2018年に「Arsène」でシングルデビュー。2019年のEP「98」でその名を知られるようになります。アルバムは2021年の「Cauchemar」(悪夢)、2023年の「baiser」(キスする)、2024年の「merci」(ありがとう)とすでに3作を出していて、「Marcel」は4作目になります。アルバムタイトルは、彼が2021年に同名のEPを出した小説『失われた時を求めて(À la recherche du temps perdu)』で世界の文学史に金字塔を打ち立てた作家マルセル・プルースト(Marcel Proust)、かと思いきや、敬愛してやまない祖父の名前だそうです。その収録曲から1月にリリースした先行シングルでもある「Pasçalavie」をお聴きください。
曲のタイトルは歌詞にある「C'est pas ça,la vie」(そんなものじゃないんだ。人生は)を略した言葉で、「C'est pas ça,la vie. C'est plus beau en vrai. J'ai pas tout compris. Un jour, j'comprendrai. C'est pas ça,la vie. C'est plus compliqué. J'ai pas tout compris. Un jour, j'comprendrai.(拙訳:そんなものじゃないんだ。人生は/本当はもっと美しいものなんだ/僕は全て理解したわけじゃないが/いつかは理解できるだろう/そんなものじゃないんだ。人生は/もっと複雑なものなんだ/僕は全て理解したわけじゃないが/いつかは理解できるだろう)」とリフレインしています。
日本人は「中二病」などと言って嘲笑しそうですが、クリティカル・シンキング(批判的思考/フランス語ではpensée critique)のスキルの判断材料として、バカロレア(Baccalauréat/大学入学資格試験)では必ず論文試験が出題されるほど、哲学という学問が深く浸透しているフランスらしい一節ではないかと、私は思います。
哲学つながりで、実存主義の第一人者だったジャン=ポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)らが1973年に創刊した新聞「リベラシオン(Libération)」紙が、「pas d'ego trip, de guns, ni de gang,juste une histoire sensible et personnelle sur fond electro-piano. Brillant」(拙訳:エゴの応酬も、銃も、ギャングもない。電子ピアノが基調の繊細で個人的な物語。すばらしい)と評しているように、彼の作風は、郊外(Banlieue)の「乱世」に根ざしたラップとは一線を画しています。21世紀のラップフランセは多様化が進んでいるとはいえ、やはり、ソルボンヌを出たような人がヒップホップをやったら、こうなるのでしょうか?
Wallace Cleaver - Pasçalavie
では、また来週
À la semaine prochaine!

