仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年6月17日号

 

2025年6月13日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Paris - Nono La Grinta

 3 Impardonnable - Damso

 4 Ninao - Maître Gims

 5 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 6 Pa pa paw - Damso & Sarah Sey

 7 Piano - Werenoi, Maître Gims

 8 Mia -Seysey,Bolémvn

 9 Dolce camara - Booba

 10 Ciel - Maître Gims

 

【アルバムチャート】

 1 BĒYĀH - Damso

 2 DESIRE:UNLEASH - ENHYPEN

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 D&P à vie - JuL

 5 Mega BBL - Théodora

 6 Diamant noir - Werenoi

 7 Focus - KeBlack

 8 Nés pour briller - L2B

 9 Hit Me Hard And Soft - Billie Eilish

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

【Fête de la musique 2025】

 今週の土曜日、6月21日はミッテラン政権のジャック・ラング文化相の提唱で1982年にスタートした「Fête de la musique(音楽の日)」です。フランス発祥ですが、この日を中心に全世界で、日本で、多くの音楽イベントが開催されます。

・フランス文化省の公式サイト(フランス語)

  https://fetedelamusique.culture.gouv.fr/

・パリとイル=ド=フランス地域圏で開催される「音楽の祭典2025」のプログラム(日本語)  https://www.sortiraparis.com/ja/nyusu/ongaku-sai/guides/53382-paritoiru-do-furansu-de-fangde-kai-cuisareru-yin-leno-ji-dian2025-jian-taosenaikonsato-puroguramu

・音楽の祭日2025(Fête de la musique au Japon/日本語)  https://www.mediatv.ne.jp/ongakunosaijitsu/

・アンスティチュ・フランセ東京(東京日仏学院/6月28日開催)

 https://event.exantenna.net/fete-de-la-musique/#google_vignette

 

 Hamza(ハムザ)の「KYKY2Bondy」が3週連続シングルチャート1位です。Booba(ブーバ)が2024年2月にリリースした「Dolce camara」が9位に再浮上し、最高1位のMaître Gims「Ciel」も10位でシングルトップ10に返り咲きました。

 今週も前週に引き続きDamso(ダムソ)の「BĒYĀH」(ベヤ)がアルバムチャート1位です。前週はその収録曲のうち4曲がシングルチャートのトップ10に入っていましたが、今週は「Impardonnable」「Pa pa paw」の2曲でした。

 

ENHYPEN

 アルバム2位に韓国の男子7人組アイドルグループ、ENHYPEN(エンハイプン)の「DESIRE:UNLEASH」が登場。6月5日リリース。9位にBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)が2024年5月に出したアルバム「Hit Me Hard And Soft」が再浮上し、Werenoi(ウェルノワ)の4月発売のアルバムが6位、2024年10月発売のアルバムが10位に入っていました。ニューリリースに乏しい谷間の週だったので、シングルもアルバムも再浮上が目立っています。

 

Théodora(セオドラ)


Theodora

 5月29日発売の「Mega BBL」がアルバムチャートで前週4位、今週は5位に入っているThéodora(セオドラ)は、2003年10月生まれ、21歳の新進気鋭の女性ラッパーです。本名はLili Théodora Mbangayo Mujingaといい、コンゴ系。父親はコンゴ民主共和国で医師の資格を取りましたが、内戦がひどくなったコンゴを逃れ家族でギリシャ、スイス、フランス海外県のレユニオン島、フランス本土のボルドー、レンヌへと逃避行を続ける途中で、彼女はスイスのルツェルン(Lucerne)で誕生した「難民(réfugié)の子」「亡命希望者(demandeur d'asile)の子」でした。一家は最終的にパリ北郊のセーヌ=サン=ドニ(Seine-Saint-Denis/93)県に落ち着き、セオドラはここで育ってフランス国籍を取得しています。フランス政府による難民受け入れの「共和国モデル(République modèle)」を体現しているとも言えるでしょう。今週の金曜日、6月20日は国連が定めた「世界難民の日」です。

 高校時代は柔道をやっていた「YAWARA!ちゃん」で、体力を活かしてダンスにも自信あり。ブルターニュのレンヌ(Rennes)にある「ENSレンヌD1準備クラス(Classe préparatoire ENS Rennes D1)」の政治学コースに入学して「ブルターニュ地方青年評議会文化委員長」にも選ばれますが、実兄のJeez Suave(ジェズ・スワヴェ)とともに始めた音楽活動に専念するために学業は中断しています。

 15歳だった2018年に「La Thune」というシングルを出していますが、本格的なメジャーデビューは18歳だった2021年にリリースしたEP「Neptune」でした。以来、楽曲制作には実兄がずっと関わっています。2022年のシングル「Daddy Chocolat」、2023年のEP「Lili aux Paradis Artificiels」(Tome 1/Tome 2)の頃からメディア露出が増えて人気も定着。2024年のEP「Bad Boy Lovestory」を経て、2025年6月に行われたコンサートは大成功をおさめています。

 写真を見れば「アフロなギャル系女子」っぽいルックスですが、ありのまま、奔放でダンサブルなノリに乗せて、男女のたわいもない交遊だけでなく、黒人女性の社会的境遇やその悲しみ、性暴力、苦悩、絶望までをも含むストイックな内容のリリックをラップする独自のスタイルを確立していきました。それは、コンゴの政治の混乱で難民になった一家の境遇もあって政治学を学び、将来は政治家になりたいと思っていた「硬派」の側面があることと、無関係ではないでしょう。

 音楽的には、過去に住んだ場所でさまざまな音楽を聴いて影響を受けてきた「ワールドミュージック女子」でもあります。国境を越えての流浪、かえって福となす。父親が大の音楽好き。現在マネジャーも務める実兄が作曲もこなすミュージシャンだというファミリーのバックボーンもあります。「難民出身でスターになった女性」ということでメディアで注目される面もあるようですが、本人は過去で得たものを糧に、純粋に作品で評価されたいと思っています。

 そんなセオドラの音楽の一つの集大成ともいえるのが、収録曲の「KONGOLESE SOUS BBL」がプラチナディスクを獲得した2024年のミックステープ「Bad Boy Lovestory」(略してBBL)で、新作「Mega BBL」はその再発拡大盤の形をとっており、同曲もしっかり収録されています。

 なお、セオドラは自らを「Boss Lady」と名乗っていて、BBLは「Big Boss Lady」の略でもあるようです。今回はヒットした「KONGOLESE SOUS BBL」をお聴きください。80年代にドミニカ国(ハイチの隣のドミニカ共和国ではない方)発祥で隣の島、フランス海外県グアドループ島で発展した「ブヨン(Bouyon)」と呼ばれるカリビアンサウンドに乗せて、「Kongolese baby aimerait sa BBL」とリフレインする黒人女性賛歌になっています。アフロ・カリビアンなその仕上がりは、やっぱりワールドミュージック女子ですね。

 

Théodora(セオドラ) - KONGOLESE SOUS BBL

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年6月10日号

 

2025年6月6日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Impardonnable - Damso

 3 Paris - Nono La Grinta

 4 Ninao - Maître Gims

 5 Love is blind - Damso

 6 Pa pa paw - Damso & Sarah Sey

 7 JCVDEMS - Damso

 8 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 9 Piano - Werenoi, Maître Gims

 10 Mia -Seysey,Bolémvn

 

【アルバムチャート】

 1 BĒYĀH - Damso

 2 D&P à vie - JuL

 3 Nichen - VEN1

 4 Mega BBL - Theodora

 5 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 Diamant noir - Werenoi

 7 Nés pour briller - L2B

 8 Focus - KeBlack

 9 Et si j'échoue? - Bouss

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 今週のチャートですが、5月31日にUEFAチャンピオンズリーグを制覇したパリ・サンジェルマン(PSG)関連の曲(NiskaやRazonなど、いろいろあり)は、シングル50位以内に全くチャートインしませんでした。SNEP本部があるヌイイ=シュル=セーヌには、違う風が吹いているかのようです。

 

 シングルチャート1位は今週もHamza(ハムザ)の「KYKY2Bondy」ですが、2位以下が大変動。まずDamso(ダムソ)の新作アルバム「BĒYĀH」(ベヤ)の収録曲が2位「Impardonnable」、5位「Love is blind」、6位「Pa pa paw」(パリ出身ですがロンドンを拠点とする2021年デビューのラッパー女子Sarah Seyとのコラボ曲)、7位「JCVDEMS」とチャートイン。以下11位、20~24位、27位にもぞろぞろ入っています。

 3位にパリ19区出身のコンゴ系ラッパー、Nono La Grinta(ノノ・ラ・グリンタ)の「Paris」が入りましたが、PSGとは無関係。10位の「Mia」は、オー=ド=セーヌ(Hauts-de-seine/92)県シュレンヌ(Suresnes)出身36歳の音楽プロデューサーSeyseyと、イヴリーヌ(Yvelines/78)県マント=ラ=ジョリー(Mantes-la-Jolie)出身28歳のラッパーBolémvnによるコラボ・シングルです。

 

Damso

 Damso(ダムソ)の「BĒYĀH」(ベヤ)が今週、アルバムチャートで1位になりました。1992年5月、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ(Kinshasa)生まれの33歳。内戦を逃れてベルギーに移住し、ブリュッセルのコンゴ人地区で育ちました。戦争、人種差別、貧困、暴力などの問題を訴える硬派のラッパー。5月30日発売の「BĒYĀH」は6枚目のスタジオアルバムで、フランスで1位になったのはこれが4枚目です。昨年、「これが最後のアルバムになる」と本人がアナウンスしています。タイトルですが、収録曲「MAMILĀH」が西アフリカのハウサ語で「問題」という意味なのでこれもハウサ語かと思われますが、Google翻訳では全くわかりませんでした。アフリカの言語に詳しい方、意味を教えてくだされば幸いです。

 アルバム4位に「Mega BBL」(5月29日リリース)が上がってきたTheodora(セオドラ)は、スイスのルツェルン(Lucerne)で生まれた21歳のコンゴ系フランス人のラッパー女子。ステージネームは西太后ともいい勝負する「宮廷の猛女」として知られた東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世の皇后テオドラから。2018年に15歳でメジャーデビュー。2024年11月にミックステープ「Bad Boy Love Story」を出しており、「Mega BBL」はその再発になります。

 Bouss(ブース)が2024年11月22日に出したアルバム「Et si j'échoue?」(で、僕が失敗したらどうなる?)がなぜかアルバム9位に再浮上。オー=ド=セーヌ(Hauts-de-Seine/92)県コロンブ(Columbes)出身で26歳のラッパーです。

 なお、今週アルバム11位に「五月革命、バリケード内ライブ伝説」のレジェンド、73歳のRenaud Séchan(ルノー・セシャン)のライブ盤「Live à la Cigale」が入っています。プロフィールは2020年12月8日号を見てください。

 

VEN1


VEN1

 今週、アルバムチャート3位に5月30日リリースの13曲入りファーストアルバム「Nichen」が初登場したVEN1は、1992年生まれで2024年3月メジャーデビュー。オー=ド=セーヌ(Hauts-de-seine/92)県ナンテール(Nanterre)出身でアルジェリア系という以外は、正体不明の覆面ラッパーです。

 パリの西の郊外にあるナンテールは、当時のパリ大学ナンテール分校(現在のナンテール大学)が1968年5月の五月革命の発火点になり、55年後の2023年6月に警官が交通検問を拒否したマグレヴ系イスラム教徒の17歳の少年を射殺した「ナンテール事件」がパリ首都圏全体、さらに全フランス、ベルギーにまで及ぶ大暴動の発火点になったという、現代フランス史にその名を刻んでいる町です。

 アルバムタイトルの「Nichen」(ニチェン)は、チュニジア産オリーブオイルのブランド名。最高級品として世界的に知られていますが、新作アルバムに収録された「HAKAYET」で「moula, moula, pleins d'billets verts」(拙訳:カネ、カネ、たくさんのドル札)と拝金主義を揶揄するリリックを展開するVEN1がそれを宣伝するはずもなく、「『上級国民』が愛好するぜいたくアイテムの象徴」として斜めに見ています。

 デビューシングル「HAKAYET」(トルコ語で「正義」)は2024年8月6日号でくわしくご紹介していますが、その歌詞はナンテール事件を暗示し、PVもナンテールで撮影されています。

 VEN1は2024年に「Bougie」「Vanilla」、2025年に入ってから「Pêche passion」をシングルリリース。それらもこのアルバムに収録されています。今回は「Pêche passion」をお聴きください。

 リフレインする「P'tite bobo s'balade sur les Champs, elle côtoie les mauvais garçons」(拙訳:小さなボボがシャンゼリゼをぶらぶら散歩する。彼女たちは不良少年たちと付きあっている)の「ボボ(bobo)」とはbourgeois-bohème(ブルジョワ・ボヘミアン)の略で、「こだわりが強くて気ままで気まぐれな小金持ち」というような意味のスラングです。たとえば、ブランド品を身につけながら環境問題を熱く語り、ヨガ教室に通っていてケ・ブランリ美術館が好きでも移民制限には賛成、というような女性。覚えておくと後で何かで役に立つ言葉、かもしれません。

 

VEN1 - Pêche passion

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年6月3日号

 

2025年5月30日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Ninao - Maître Gims

 3 Piano - Werenoi, Maître Gims

 4 Melrose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 5 Ciel - Maître Gims

 6 Mimi - JuL

 7 Phénoménal - JuL

 8 Los Angeles - Siaka

 9 Mood - KeBlack

 10 Feel Good - Charlotte Cardin

 

【アルバムチャート】

 1 D&P à vie - JuL

 2 Rahma - Zamdane

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 Diamant noir - Werenoi

 5 Une Vie - Julien Clerc

 6 Pyramide 2 - Werenoi

 7 Focus - KeBlack

 8 Funny Little Fears - Damiano David

 9 Nés pour briller - L2B

 10 Verano - Ridsa

 

 5月31日(現地時間)、サッカークラブのパリ・サンジェルマン(PSG)が、ドイツ・ミュンヘンでの決勝戦でイタリアのインテルを5-0で破り、UEFAチャンピオンズリーグで初優勝を遂げました。さっそく同日、自称PSG熱烈応援団長のラッパーNiska(ニスカ)が音楽プロデューサーのDJ SNAKEと組んで、デンベレら主力選手の名前を呼んで讃える新曲「PSG Boyz Freestyle」を発表しました(事前に用意していた模様。もし負けてたらお蔵入り?)。来週、チャートインするでしょうか? なお、チャンピオンズリーグ優勝では1993年、JuLらマルセイユ・コネクションの面々がひいきのひき倒し気味に応援するオリンピック・マルセイユに先を越されています。

 

 今週のシングルチャート1位は前週に続いてHamza(ハムザ)の「KYKY2Bondy」でした。8位に浮上してきた「Los Angeles」は、Siaka(シアカ)が2021年にリリースしたシングル。パリの南の郊外、オルリー空港の南に接するエソンヌ(Essonne/91)県アティス=モンス(Athis-Mons)出身のラッパーです。

 アルバムチャート1位はJuLの「D&P à vie」が返り咲き。2位のZamdane(ザムダン)の3枚目のスタジオアルバム「Rahma」は5月22日発売。モロッコの古都マラケシュ生まれの27歳。18歳でマルセイユに渡り、そこを本拠にしているラッパーで、前週でくわしくご紹介したSo La Lune(ソ・ラ・リュンヌ)と同様に私小説的、内向的なリリックが持ち味で「ニューウェイヴ・ラップ」にくくられています。デビュー直後の2022年3月8日号でくわしくご紹介しています。

 

Julien Clerc

 5位に5月23日リリースの新作アルバム「Une Vie」が入ったJulien Clerc(ジュリアン・クレール)はフレンチポップスの超ベテラン・シンガーソングライターで、プロフィールは2021年2月23日号でくわしくご紹介しています。1947年10月、パリ19区生まれの77歳ですが、来年にかけてツアーに出るほど元気。70年代には貴公子然としたルックスで日本でも人気があり、ラジオで「ねえねえ、何くれる? ジュリアン・クレールだよ」というCMが流れていました。ほぼ同世代のデルペッシュ、フュガン、サルドゥーの「フランス三大ミシェル」やミッシェル・ポルナレフの78回転シングルレコード(!)が日本でもよく売れていた時代です。9位はL2Bの「Nés pour briller」で、トップ10に再浮上しました。

 

Ridsa(リッサ)


Ridsa

 今週、アルバムチャート10位に「Verano」(5月23日発売)がチャートインしたRidsa(リッサ)は、ポップスもヒップホップもラテンもレパートリーとしているシンガーソングライター。1990年10月、ジャンヌ・ダルクで有名な町、ロワレ(Loiret/45)県オルレアン(Orléans)の生まれで34歳です。本名はMaxence Boitez(マクサンス・ボワテ)といい、ルーツはスペイン。アルバムタイトルのVerano(ベラーノ)もスペイン語で「夏」という意味です。

 10代の頃はサッカー少年。20歳になった2010年、まずヒップホップの曲をオンライン投稿し始め、2011年にFlavieをフィーチャーした「Toi et seulement toi」でシングルデビュー。初期にはベルギーのポップス才女アンジェル(Angèle)とのコラボ曲もありますが、ミュージックシーンで注目されるようになったのは、2013年にフランスのDJウィリー・ウィリアム(Willy William)、カナダ・モントリオール在住のロック・ドラマー、ライアン・スティーブンソン(Ryan Stevenson)をフィーチャーした「Je n'ai pas eu le temps」という曲からでした。

 アンジェルも参加して2014年にリリースしたファーストアルバム「Mes histoires」はアルバムチャート最高44位。2015年のセカンドアルバム「L.O.V.E」は最高16位、同年のサードアルバム「Tranquille」は最高25位と、着実に地歩を固めます。そして2017年のアルバム「Libre」が最高6位になって初のトップ10入り。2019年のアルバム「Vagabond」は最高20位でした。その間、2015年に出したシングル「Là c'est die」で最高5位のヒットを飛ばしています。

 ところが、「Vagabond」の制作中、プロデューサーやレコーディングに参加したミュージシャンからあれこれ言われるのがイヤになり、それがきっかけで音楽活動を停止してしまいます。センシティブなアーティストだと、他人が良かれと思って口にしたアドバイスでも「介入」「指図」と受け取ってしまうこともありそうで、「そこをうまく折り合いをつけるのがプロだろ」と口で言うのは簡単ですが、「自分を見失ってしまいたくない」という防衛本能もあったでしょうか?

「悩んだら、原点に回帰」なのか、そこから脱却できたきっかけが自らのルーツに関わる「ラテン音楽」でした。活動停止中、中南米に旅行して現地のミュージシャンと交流していたようで、約3年間のブランクを経て2022年にシングル「Santa Maria」(シングル最高18位)でミュージックシーン復帰を果たします。中南米は聖母マリア信仰が盛んな土地柄。この曲を収録した2023年のアルバム「Équateur」(赤道/南米の国名エクアドルEcuadorのフランス語でのつづり)はアルバムチャート最高18位で、コロンビアのシンガー、セルヒオ・アレハンドロ(Sergio Alejandro)とコラボした曲「Un Poco」(スペイン語で「ちょっと」という意味)も入っています。

 8年ぶりにトップ10入りした新作アルバム「Verano」には「Guatemala」(国名のグアテマラ)、「Bonita」(スペイン語で「美しい」「美女」)というタイトルの曲もあり、ラテン志向は健在。その一方でポップス、ヒップホップの要素もしっかりあり、リッサの音楽性の幅広さを感じさせてくれます。収録曲から4月にシングルリリースされた「De l'or sur tes doigts」をお聴きください。PVは、サルサ(Salsa)などお好きな方にはおすすめでしょうか。

 

Ridsa(リッサ) - De l'or sur tes doigts(Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年5月27日号

 

2025年5月23日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Piano - Werenoi, Maître Gims

 3 Ninao - Maître Gims

 4 Melorose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 5 Ciel - Maître Gims

 6 Mimi - JuL

 7 Baddies - Aya Nakamura & Joé Dwèt Filé

 8 Poney - Werenoi

 9 Pétunias - Werenoi

 10 Mood - KeBlack

 

【アルバムチャート】

 1 Diamant noir - Werenoi

 2 Funny Little Fears - Damiano David

 3 Vréel 4 - Kekra

 4 Pyramide 2 - Werenoi

 5 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 6 D&P à vie - JuL

 7 Nouveau produit - So La Lune

 8 Carré - Werenoi

 9 Focus - KeBlack

 10 From Zero - Linkin Park

 

 前週に引き続きシングルチャート1位はモロッコ系ベルギー人のHamza(ハムザ)が歌う「KYKY2Bondy」でした。2位、8位、9位とカメルーン系のWerenoi(ウェルノワ)がトップ10に3曲も入っていて、シングルもアルバムもSNEPチャートはさながら「ウェルノワまつり」。そこへ割って入って7位を占めたのがマリ出身のR&Bの大物シンガーAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)とハイチ出身のJoé Dwèt Filé(ジョー・ドゥエ・フィレ)のアフロ&カリビアン連合デュエットによる「Baddies」です。偶然ですが以上4人のミュージシャンは全員30歳です。

 今週のアルバムチャート1位はWerenoi(ウェルノワ)の「Diamant noir」でした。4月11日発売。ウェルノワは他に「Pyramide 2」(2024年10月リリース)が4位、デビューアルバムの「Carré」(2023年3月リリース)が8位で、トップ10にアルバム3作が揃ってチャートインしました。

 

Damiano David

 アルバム2位に5月16日発売「Funny Little Fears」が入ったDamiano David(ダミアーノ・デイヴィッド)は、2021年のサンレモ音楽祭とユーロビジョン・ソングコンテストで優勝したイタリアのロックバンド、Måneskin(マネスキン)のフロントマンです。1999年1月に首都ローマで生まれた26歳。このソロデビューアルバムをひっさげて2025年はワールドツアーに出て、10月下旬には日本でもコンサートを行う予定です。

 今週のアルバム3位に「Vréel 4」(5月16日リリース)が入ったKekra(ケクラ)は年齢不詳・正体不明の覆面ラッパー。パリの新都心デファンスに隣接するオー=ド=セーヌ(Hauts-de-Seine/92)県クールブヴォア(Courbevoie)の出身で、2015年メジャーデビュー。Kekraとはコカインを指すスラングです。「覆面は、やってることをはずかしく思うからだ。ラップは本物の仕事じゃない。ラップはクソだ」と公言するフレンチラップの「創造的破壊者」。2019年に来日し、日本人ラッパーKohhとコラボした「Kohhkra」を収録したミックステープ「Freebase Vol.04」を翌年リリースしています。

 アルバム10位にアメリカのオルタナ・ロックの雄、Linkin Park(リンキン・パーク)が2024年11月に出した「From Zero」が再浮上。5月に新曲3曲、ライブ音源5本を追加した「デラックス・エディション」を出したからでしょう。

 

So La Lune(ソ・ラ・リュンヌ/だから月)


So La Lune

 5月16日リリースの「Nouveau produit」が今週のSNEPアルバムチャートで7位に初登場したSo La Lune(ソ・ラ・リュンヌ)は、リヨン(Lyon)8区出身のラッパーです。日本語のステージネームは「だから月」としてくださいとの本人のご指定。2023年12月19日号で一度、くわしくご紹介しました。

 1997年2月生まれの28歳。両親はコモロ連合(Union des Comores)なるインド洋のほとりの島国(旧フランス植民地で1975年に独立)からの移民です。2019年に22歳でメジャーデビュー。2020年にミックステープ「Tsuki」(日本語の「月」)を出して以来、フレンチラップの主流派とは距離を置いた「ニューウェイヴ・ラップ」を志向しています。

 作風は、曲は明るめながらリリックは多分に私小説的で、空虚感、孤独、死、心的外傷後ストレス障害、統合失調症、ドラッグ中毒など、自らの内面、精神世界に向かったものが多いようです。

 2022年には2作目のミックステープ「Fissure de vie」(人生の亀裂)を、2023年にSCH、Khaliが参加したファーストアルバム「L'enfant de la pluie」(雨ふり小僧)を出しています。文字通り新作の「Nouveau produit」は3作目のミックステープという位置づけです。シングルでは2021年の「Rodé」がゴールドディスクになったことがあります。

 ソ・ラ・リュンヌが好きなものは宇宙とニッポンで、2021年、タイトルに天体や宇宙船の名前をつけたEPを続けざまにリリースしたことがある一方、日本の事物からインスピレーションを受けることも多く、ファーストアルバムのタイトルは日本の妖怪話を題材にした手塚治虫原作のアニメ「雨ふり小僧」からつけられました。「Tsukito(月人)」「Shinobi(忍者)」という曲も出しています。来日して新宿や渋谷で自身の曲のPVを撮影したこともあります。

「Nouveau produit」はUZI、Rim'K、Soprano、Jolagreen23、Guizmo、Lujipekaらが参加。その収録曲から5月1日に「30 Secondes」と「Motor」の2本のPVを公開していますが、今回は「Motor」のほうをお聴きください。

「J'suis pas l'meilleur, j'suis le pire à venir. Des fois,j'me suis senti près d'la folie」(拙訳:僕は最高じゃない。僕には最悪の時がやって来る。ときどき、僕は自分が狂気に近いんだと感じる)

 こんな感覚は、近代詩の扉を開いたといわれる19世紀、第二帝政時代の象徴主義詩人ボードレール(Baudelaire)の詩集「巴里の憂鬱(Le Spleen de Paris)」に通じるところもあるように思えます。ボードレールのついでで言いますが、いつかはフレンチラップのリリック(paroles)がフランス文学の一ジャンルとして研究される時代が来るような気もします。

 

So La Lune(ソ・ラ・リュンヌ) - Motor

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年5月20日号

 

2025年5月16日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 KYKY2Bondy - Hamza

 2 Ninao - Maître Gims

 3 Piano - Werenoi, Maître Gims

 4 Ciel - Maître Gims

 5 Mimi - JuL

 6 Melorose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 7 Mood - KeBlack

 8 Phénoménal - JuL

 9 Feel Good - Charlotte Cardin

 10 Ordinary - Alex Warren

 

【アルバムチャート】

 1 D&P à vie - JuL

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Diamant noir - Werenoi

 4 Focus - KeBlack

 5 Nés pour briller - L2B

 6 Tiens mon best of - Louane Emera

 7 Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny

 8 Hurry Up Tomorrow - The Weeknd

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 BDLM Vol.1 - Tiakola

 

「ユーロビジョン・ソングコンテスト2025」の結果

 5月17日、スイスのバーゼルで「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2025」の決勝が開催され、英語曲「Wasted Love」を歌ったオーストリア代表のJJことヨハネス・ピーチが優勝しました。フランス代表のルアンヌ・エメラは7位でした(楽曲は後述)。フランス語の楽曲では「Voyage」を歌ったスイス代表のゾエ・メが10位、「C'est la vie」を歌ったオランダ代表のクラウデ・キアンベが12位、「La poupée monte le son」を歌ったルクセンブルク代表のローラ・トルンが22位でした。出場をめぐって悶着があったイスラエル代表は2位、ウクライナ代表は9位でした(ロシア代表は2022年から連続不出場)。

 

 30歳のベルギーのモロッコ系ラッパーHamza(ハムザ)の「KYKY2Bondy」が今週のシングルチャート1位です。シングルトップ10に新たに浮上したのが10位のAlex Warren(アレックス・ウォーレン)の「Ordinary」。24歳のアメリカ・カリフォルニア州出身のシンガーソングライターで、この曲は全米ビルボートチャートでは最高2位で、UK、カナダ、オーストラリアのチャートでは最高1位。カトリック教徒で、グレゴリオ聖歌など教会音楽に影響を受けたと語っています。

 アルバムチャート1位は前週に引き続きJuLの「D&P à vie」でした。2位にはMaître Gimsがつけています。

 

Werenoi

 セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ムラン(Melun)出身の31歳のカメルーン系ラッパー、Werenoi(ウェルノワ)が今週のアルバムチャートで3位に「Diamant noir」(4月11日リリース)、9位に「Pyramide 2」(2024年10月18日リリース)をランクインさせました。シングルチャートでもMaître Gimsとコラボした「Piano」が今週3位です。

 8位にカナダのシンガーソングライター、The Weeknd(ザ・ウィークエンド)が1月31日に出した6枚目のスタジオアルバム「Hurry Up Tomorrow」が再浮上しました。5月16日にアメリカのトレイ・エドワード・シュルツ監督による同名映画『Hurry Up Tomorrow』が劇場公開されたことが背景にあります。ザ・ウィークエンド本人が本名のAbel Makkonen Tesfaye名義で主演したサイコスリラー仕立てのミュージカル映画だそうですが、批評家の評価は最悪レベル。まあ、プロの試写会レビューが散々でも、観客動員が大成功だった映画、(ラジー賞ではない)映画賞を取った映画、後世で名作とされた映画はそれこそ掃いて捨てるほどありますから、いまカンヌまで来てあれこれ言っている映画評論家などという商売も、無責任なものですけれどもね……。

 

Louane Emera(ルワンヌ・エメラ)


Louane Emera

 今週のアルバムチャート6位に、フレンチポップスの女性シンガー(chanteuse)で女優でもあるLouane Emera(ルアンヌ・エメラ)の「Tiens mon best of」が初登場しました。5月8日リリースの彼女のベスト盤です。

 2014年に日本でも公開されアメリカでもリメイクされた映画『エール!』(原題:La Famille Bélier)に17歳で主演してミシェル・サルドゥー(Michel Sardou)の往年のヒット曲「青春の翼(Je Vole)」を熱唱していた彼女も、28歳になりました。ミュージシャンのフロリアン・ロッシ(Florian Rossi)と事実婚して5歳の娘さんもいます。

 1996年11月、フランス最北部、リール(Lille)に近いパ=ド=カレー(Pas-de-Calais/62)県サント・カトリーヌ(Sainte-Catherine/由来が女性の聖人だから女性形)生まれ。本名はAnne Peichertといい、フランス国籍ですがフランス、ドイツ、ポーランド、ポルトガル、ブラジルの血をひいています。ヨーロッパでは別に珍しくもないことですが……。

 歌手としてのキャリアの始まりは2013年に16歳でテレビ番組「ザ・ヴォイス(La plus belle voix)」に出て準決勝まで進出したこと。それが翌年製作の映画『エール!』での主演抜擢と、女優としてのリュミエール賞、セザール賞受賞につながります。2015年にルアンヌ(Louane)名義でデビューアルバム「Chambre 12(邦題:夢見るルアンヌ)」を出し、SNEPチャート最高1位にのぼりつめます。昔から少女歌手の伝統があるフランスとはいえ、まさにシンデレラ・ストーリーでした。

 これまでのディスコグラフィーをご紹介しますと、2017年のセカンドアルバム「Louane」も最高1位、2020年のアルバム「Joie de vivre」は最高6位、2022年のアルバム「Sentiments」は最高9位、私生活でもパートナーのフロリアン・ロッシが全面協力した2024年のアルバム「Solo」は最高8位と、出したアルバムは全てトップ10に入っています。シングルでは2014年の「Jour 1」が最高6位、同年の「Avenir」が最高1位、2022年の「Secret」が最高7位のヒットを飛ばしました。2018年にはジュリアン・ドレ(Julien Doré)、2020年にはグラン・コー・マラード(Grand Corps Malade)とデュエットした曲をシングル発売していて、ルアンヌは今やフレンチポップスの大物と言っても差し支えないでしょう。

 2025年5月17日決勝の2025年の「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」では、フランス代表として初期の自作曲「maman」を歌って出場しました。結果は7位でしたが、今回はこの曲をお聴きください。自身の母親のことを歌い、2015年にシングル発売して最高18位。デビューアルバム「Chambre 12」に収録されていますが、フランス語ヴァージョンが「Tiens mon best of」のオープニングチューンに、英語ヴァージョンがそのラストチューンに収録されています。

 初期のルアンヌ・エメラは年齢が近いことと歌詞の内容で、高校(Lycée)に通うハイティーンの女子高生、俗に言う「リセエンヌ(Lycéenne)」の間で人気がありました。言っておきますが、マガジンハウスの雑誌「オリーブ(Olive)」(2003年休刊)が盛んに言っていたリセエンヌは、まさにファンタジー、おとぎ話の中のフランスの女子高生でした。10代でそれを真に受けた日本の「オリーブ少女」が大人になって、憧れ?のフランスに旅行して、いわゆる「パリ症候群」に陥ったのでしょうか?(このブログを毎週読んでいれば、たぶんそうはならないでしょう)。

 マガジンハウスは「クロワッサン症候群」もそうですが、つくづく罪深い雑誌社だと思います。もちろん「罪」と言ってもフランス語では「crime」ではなく「péché」という意味ですが……。

  女子高生といえば、2020年11月3日号でご紹介し、フランスでテレビアニメ化もされているバンド・デシネ(bande dessinée)「Les Cahiers d'Esther(エステルのノート/エステルの日記)」(Riad Sattouf作)の主人公Esther(エステル)。物語は2016年、10歳の小学生の時から始まりましたが、バカロレア(Baccalauréat)を受験して高校を卒業し大学の学士課程に進んだところで週刊誌「L'Obs」(旧名:Le Nouvel Observateur)での約8年間の連載が完結しました。2024年6月に単行本の最終第9巻「Les cahiers d'Esther Tome 9 : Histoires de mes 18 ans」が刊行され、アマゾンなどで入手できます。バンド・デシネ専門書店「メゾン・プティ・ルナール」(東京都北区滝野川)はこちら→https://www.m-petitrenard.com/ 

Les Cahiers d'Esther

 このバンド・デシネの主人公エステルは、かつてマガジンハウスが広告を取るためにイメージを創造して拡散した「リセエンヌ」とは違って、現代を生きる現実のフランスの女子高生なのではないかと、私は思います。かつてケンジ・ジラクやタル(TAL)が好きな少女だったエステルは、バルバラ(Barbara)が歌った世界がわかる女性に成長しています。

  それからの引用:「La vie n'est qu'une succession de Pères Noël qui n'existent pas」(拙訳:人生とは、存在しないサンタクロースの連続に他ならない)

 

Louane Emera(ルワンヌ・エメラ) - maman (Clip Officiel)

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年5月13日号

 

2025年5月9日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Ninao - Maître Gims

 2 Ciel - Maître Gims

 3 Phénoménal - JuL

 4 Piano - Werenoi, Maître Gims

 5 Melorose Place - KeBlack ft.Guy2Bezbar

 6 Mimi - JuL

 7 Mood - KeBlack

 8 KYKY2Bondy - Hamza

 9 Feel Good - Charlotte Cardin

 10 Pélican - L2B

 

【アルバムチャート】

 1 D&P à vie - JuL

 2 Diamant noir - Werenoi

 3 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 4 Focus - KeBlack

 5 Nés pour briller - L2B

 6 Pink Floyd at Pompeii MCMLXXⅡ - Pink Floyd

 7 Debí Tirar Más Fotos - Bad Bunny

 8 Mayhem - Lady Gaga

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 BDLM Vol.1 - Tiakola

 

 今週のシングルチャートは「Maître Gims先生の逆襲」。1位に「Ninao」が返り咲き、2位は「Ciel」で、4位にWerenoiとコラボした「Piano」が新しく登場。前週1位のJuLの「Phénoménal」は3位に後退。8位に「KYKY2Bondy」が入ったHamza(ハムザ)はベルギーのモロッコ系ラッパーで30歳。2023年2月28日号でくわしくご紹介しています。

 

Pink Ployd

 アルバムチャート6位に、どういう風の吹き回しかプログレの祖、UKのPink Floyd(ピンク・フロイド/2014年最終活動停止)が登場。「Pink Floyd at Pompeii MCMLXXⅡ」(MCMLXXⅡはローマ数字で「1972」)は、不朽の名盤「The Dark Side of the Moon(狂気)」が世に出る前々年の1971年10月にイタリア・ナポリ郊外にある世界遺産、帝政ローマ時代に火山灰で埋まった都市遺跡ポンペイ(Pompeii)で観客を入れずに演奏したライブ盤で、CD2枚組で5月1日発売。古代の円形闘技場跡での伝説のライブで、映像版はエイドリアン・メイベン監督による1972年公開の同名映画の4Kレストア版です。

 昨年、故シド・バレットの記録映画が製作され日本でも公開されましたが、再結成についてデヴィッド・ギルモアは「夢物語だ。実現するはずがない」と否定。ロジャー・ウォーターズも懐疑的と伝わります。往年のレジェンドバンドが、サッカーの年金リーグならぬ「年金再結成」を強行して批判されるぐらいなら、こんな形でもいいと思いますが……。

 7位にBad Bunny(バッド・バニー)の「Debí Tirar Más Fotos」、10位にTiakola(ティアコラ)の「BDLM Vol.1」がトップ10再浮上。どちらも昨年のリリースです。

 

JuL(ジュール)


JuL

 今週のSNEPチャートで、シングルは「Phénoménal」が3位、「Mimi」が6位。アルバムは「D&P à vie」が1位とフレンチラップのビッグネームの貫禄を示しているJuL(ジュール)。このブログで何度もご紹介してきました35歳のミュージシャンですが、あらためて彼の簡単なプロフィールと新作アルバムについて触れたいと思います。

 アルバムを出せば必ずフランスのチャートで1位を獲っているという意味では、フレンチラップを代表する男、ジュール(JuL)。フレンチポップスの暗黒の歌姫ミレーヌ・ファルメール(Mylène Farmer)、U2にも匹敵するようなロックバンド・フランス代表のアンドシーヌ(Indochine)、年中行事となったチャリティー・イベントのレザンフォワレ(Les Enfoirés)と並び立つような存在でしょう。

 JuLは本名をJulien Mari(ジュリアン・マリ)といい、1990年1月にマルセイユ5区のサン・ピエール地区で生まれました。市の南部の海岸沿いにあり、大きな墓地がありますが市の北部(3区、13〜16区)と比べてそれほど治安の悪い地域ではありません。父親はコルシカ島出身です。10代の頃はサッカー少年。14歳で名門オリンピック・マルセイユ(OM)の育成組織に入りますが、ケガをして16歳でプロ選手への道を断念。現在でもOMの熱狂的なサポーターです。

 プールなどをつくっていた父親の建設業の仕事を手伝っていましたが1年ぐらいでやめ、高校を卒業すると音楽活動に専念。コンピュータで曲をつくって「Juliano 135」という名で作品を提供するようになります。マルセイユのレーベルで曲を発表していた「Ghetto phénomène」という5人組ラップグループに入ってから「JuL」と名乗るようになり、2013年11月にシングル「Sort le cross volé」(最高73位)でソロデビューしました。

 翌2014年、2月リリースのファーストアルバム「Dans ma paranoïa」が最高7位、6月リリースのミックステープ「Lacrizeomic」が最高4位に駆け上がり、JuLはフレンチラップの世界で頭角をあらわします。2017年にはヴィクトワール音楽賞を受賞しました。2015年以降、ほぼ1年に2枚ないし3枚の多作ペースでスタジオアルバムを出しており、最高1位が16枚を数えます。最高1位のシングルは4枚。ダブルプラチナ・アルバムの数ではミレーヌ・ファルメールやジョニー・アリディを追い越すほどのセールス実績をあげています。それに関し、新作アルバム「D&P à vie」のタイトルチューンで「Pour moi, c'est D'Or et D'Platine à la mort, la mort(私にはゴールドとプラチナは死ぬほどある)」と言っています。

 2014年にマネージャーがパリ近郊で射殺されたり、カネの問題で所属レーベルともめて自身のレーベル「D'or et de platine」を創設したり、2020年に「Bande organisée」でフレンチラップ界のマルセイユ・コネクションを率いて気勢をあげたり、パリのベルシーでのコンサートが乱入者の妨害で中止の憂き目にあったり(パリ・サンジェルマンのサポーターによる「クラスィク場外乱闘」らしいです)、マルセイユ港で五輪の聖火ランナーを務めたり、乱痴気騒ぎやスピード違反などで何度もおまわりさんのお世話になったりと、何かと話題の尽きないJuLです。

 17曲入りの「D&P à vie」はなんと24枚目のスタジオアルバムで、4月25日リリース。その収録曲から「Phénoménal」(「驚くべき」という意味)をお聴きください。前週シングル1位。今週は3位です。

 

JuL(ジュール) - Phénoménal

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年5月6日号

 

2025年5月2日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Phénoménal - JuL

 2 Ninao - Maître Gims

 3 Ciel - Maître Gims

 4 Mood - KeBlack

 5 Melrose place - KeBlack feat.Guy2Bezbar

 6 Mimi - JuL

 7 Feel Good - Charlotte Cardin

 8 Triple V - Werenoi, Damso, Ninho

 9 Pélican - L2B

 10 Chambre 04 - Dj Kawest

 

【アルバムチャート】

 1 D&P à vie - JuL

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Diamant noir - Werenoi

 4 SKELETÁ - Ghost

 5 Focus - KeBlack

 6 Nés pour briller - L2B

 7 Un temps pour elles - Michel Polnareff

 8 Totem - Lamomali

 9 Mayhem - Lady Gaga

 10 Pyramide 2 - Werenoi

 

 シングルチャート1位は、前週10位だったJuL(ジュール)の「Phénoménal」がMaître Gims先生を抑えてジャンプアップ。6位の「Mimi」とともに新作アルバム「D&P à vie」の収録曲です。マルセイユ・コネクションの首領(ドン)強し。彼が引き倒し気味のひいきにするオリンピック・マルセイユもリーグ・アン終盤でチャンピオンズリーグ圏内の2位につけています。悲願の1部昇格が確定したパリFCとの「裏クラスィク」も来シーズンのお楽しみに加わりました。

 アルバムチャートの新たな1位はフレンチラップのビッグネームJuLの「D&P à vie」。昨年の「Inarrêtable」以来のスタジオアルバムで4月25日のリリース。D&Pとは「D'Or(金)」と「De Platine(白金)」の略です。貴金属の序列はオリンピックのメダルのイメージで「金>銀>銅」と思われがちですが、実際は金の次は「白金(プラチナ)」で、近年の貴金属取引市場ではたびたび、金価格よりも白金価格のほうが高くなる現象が起きました。

 アルバム4位に、スウェーデンのヘヴィメタルバンドGhost(ゴースト/北米ではGhost B.C.名義)が4月25日に出した6枚目のスタジオアルバム「SKELETÁ」(骸骨という意味)が入りました。2010年デビュー。2016年にグラミー賞を受賞し何度も来日しています。素顔を見せない「覆面バンド」で、フロントマンのトビアス・フォージのキャラクター名は「コピア枢機卿」ですが、5月のコンクラーベには当然参加しません。以前は「教皇(Papa)」を名乗ってコスプレしていましたから、格下げ。メンバーから何度も裁判にかけられる内紛の末、「法座」に嫌気がさして「生前退位」されたのですか?

 

Michel Polnareff

 フレンチポップスのレジェンド、80歳になったミッシェル・ポルナレフ(Michel Polnareff)の8曲入りアルバム「Un temps pour elles」が今週、SNEPアルバムチャートで7位に登場しました。4月25日発売。「Enfin!」以来7年ぶりのスタジオアルバムです(2022年11月の「Polnareff chante Polnareff」はセルフカヴァーアルバム)。新作アルバムをひっさげて5月6日、ノルマンディーのカーンを皮切りに6月末までフランス国内ツアー「La dernière tournée」に出ます。パリ公演は12区ベルシー地区のアコー・アレナで6月14日。ミッシェル・ポルナレフのプロフィールについては2022年11月29日号をご覧ください。

 

Lamomali(ラモマリ)


Lamomali

「Totem」(4月25日リリース)が今週のアルバムチャート8位に初登場したLamomali(ラモマリ)は、その名から推測できると思いますが、アフリカのマリ(Mali)共和国の音楽をフランスを本拠にやっているバンドです。バンド名の意味は「マリの魂」。西アフリカの弦楽器コラ(Kola)をフィーチャーしたアフロ・サウンドが特徴です。80年代、ミッテラン政権下のジャック・ラング文化相の文化政策に後押しされ、グアドループのカッサヴやセネガルのユッスー・ンドゥールのようなスターを輩出した「ワールドミュージック」ムーブメントの系譜をひいています。

 マリの首都バマコ(Bamako)で結成されたのは2015年で、今年で10周年になります。メンバーは「-M-」名義でソロ活動を行っていてヴィクトワール音楽賞を何度も受賞した実績があるブローニュ=ビヤンクール生まれ53歳のギタリストMatthieu Chedid(マチュー・シェディッド/2022年6月14日号でご紹介)と、マリ出身のSidiki Diabaté、Fatoumata Diawara、Balla Diabaté、Lubianaの5人です。

 フランス、シリア、レバノン、エジプトの血をひく-M-が、コラ奏者Toumani Diabaté、Sidiki Diabatéのディアバテ親子とともにマリへ旅行したところ、その地の音楽を非常に気に入って一緒にバンドを組もうと提案しそれにFatoumata Diawaraが加わった、というのがラモマリ結成の経緯でした。

 オリジナルメンバーでSidiki、Ballaの父親でもあるToumani Diabatéが2024年7月、バマコで58歳で亡くなり、2024年にBalla Diabatéが、2025年にLubianaがメンバーに加わっています。

 音楽活動はフランス中心に行っており、2016年にファーストシングル「Bal de Bamako」(バマコの酒場)、2017年にファーストアルバム「Lamomali」をリリース後、フランス、ベルギーをツアーして人気を得ました。「Totem」は8年ぶりのセカンドアルバムでToumani Diabatéへの追悼盤でもあります。それをひっさげ秋から本格的にツアーに出る予定です。

 アルバムタイトル「Totem(トーテム)」は、ワシ、ヘビ、樹木、山、月、火など動植物や自然現象を祖先や守護神とみなして信仰することで、北米のネイティブ・アメリカンが建てる「トーテムポール」は日本でもよく知られています。マリはイスラム教が優勢な国ですが、アフリカ土着の伝統宗教には部族ごと、血族ごとにトーテムがあります。

 新作アルバムから2月に先行シングルリリースされた「Je suis Mali」(私はマリ)をお聴きください。歌詞(paroles)は、わが身はパリにあるが、心は祖国のマリにある、といった内容です。PVはアフリカらしく陽気ですが、今やフランスの大スターになったR&Bシンガー、アヤ・ナカムラ(Aya Nakamura)を生んだマリ共和国では現在、政情不安に加えイスラム過激派組織によるテロや誘拐事件が頻発しており、周辺諸国や旧宗主国フランスに避難している人が少なくありません。フロントマンの-M-は「ラモマリはユートピアを目指す」「ラモマリは政治的だ」と言っていますが、この国に平穏な日々はいつ戻ってくるのでしょうか?

 

Lamomali(ラモマリ), -M-, Fatoumata Diawara, Toumani Diabaté, Balla Diabaté - Je suis Mali [Clip officiel]

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年4月29日号

 

2025年4月25日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Ninao - Maître Gims

 2 Ciel - Maître Gims

 3 Mood - KeBlack

 4 Triple V - Werenoi, Damso, Ninho

 5 Poney - Werenoi

 6 Feel Good - Charlotte Cardin

 7 Pélican - L2B

 8 Chambre 04 - Dj Kawest

 9 Melrose place - KeBlack feat.Guy2Bezbar

 10 Phénoménal - JuL

 

【アルバムチャート】

 1 Diamant noir - Werenoi

 2 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 3 Aura - Franglish

 4 Focus - KeBlack

 5 Nés pour briller - L2B

 6 Pandémonium - Vald

 7 Mayhem - Lady Gaga

 8 Pyramide 2 - Werenoi

 9 État des lieux - La Fouine

 10 BDLM Vol.1 - Tiakola

 

 シングルチャートは1位「Ninao」、2位「Ciel」と、Maître Gims先生がワンツー・フィニッシュ返り咲き。9位にはKeBlackが、パリ18区生まれ27歳のコンゴ系ラッパーで、2024年4月23日号でくわしくご紹介したGuy2Bezbar(ガイ2ベズバル)をフィーチャーした「Melrose place」が新たにチャートインしました。JuL「Phénoménal」は今週10位でした。

 前週に引き続きセーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ムラン(Melun)出身の31歳のカメルーン系ラッパー、Werenoi(ウェルノワ)強し。アルバム1位は「Diamant noir」で、前作アルバムの「Pyramide 2」も8位にいます。シングルチャートではDamso、Ninhoとのコラボ作「Triple V」が4位、「Poney」が5位につけています。

 

L2B

 アルバムチャート5位にL2Bの「Nés pour briller」(「輝くために生まれた」という意味)がチャートインしました。「Nés pour briller:Book1 KLN」(2月21日発売)に続いて「Nés pour briller:BookⅡ」が4月18日にリリースされました。

 L2Bは2025年3月4日号でくわしくご紹介していますが、2004年生まれのLN、IDS、D2による男子3人組ラップグループ。全員がパリ郊外のヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県シャンピニー=シュル=マルヌ(Champigny-sur-Marne)にある「Bois-l'Abbé」というHLM(公営住宅)で育った幼なじみで、ローティーンの頃から地元で音楽活動をしていました。L2Bはシングルチャートでも「Pélican」が今週7位で踏ん張っています。

 7位はLady Gaga(レディ・ガガ)の「Mayhem」。前週のジャン=バティスト・ゲガンのご紹介の中で触れたインパーソネーター(なりきりものまねタレント)として「Lady Googoo」と名乗る女性が実際にいて、PVもYouTubeで公開中です。同名の子供向けゲームの赤ちゃんキャラクターもいますが、UKではレディ・ガガ側からの訴えで裁判にかけられました(元ネタのクイーン「Radio Gaga」の歌詞を知らないと虚無な話題?)。

 10位はTiakola(ティアコラ)が2024年9月に出した「BDLM Vol.1」で、トップ10に再浮上しています。

 

Franglish(フラングリッシュ)


Franglish

 今週のアルバムチャートで、4月11日リリースの新作アルバム「Aura」(すでに日本語にもなっている「オーラ」)が、初登場の前週と同じ順位の3位に入っているFranglish(フラングリッシュ)は、本名はGédéon Mundele Ngoloといい、パリ19区生まれで育ったのは20区という、30歳のコンゴ系のラッパーにしてダンサーです(母親はトーゴ系)。プロフィールは2020年8月4日号でご紹介していますが、それから5年近くが経過したので、あらためて音楽活動歴をたどりましょう。

 少年時代からアメリカのR&Bに親しんでいた彼は、アメリカのラッパーのBow Wow、Tygaの影響でヒップホップに目覚め、その米仏ミックスのスタイルから先輩ラッパーに「Franglish」(本来は「英語交じりのフランス語」という意味)と呼ばれ、それをステージネームとして名乗るようになります。

 19歳だった2013年、最初のミックステープ「Franglish Prototype」でデビューし、2016年にDadjuとVegedreamをフィーチャーしたシングル「C'est plus l'heure」、2018年にKeBlackをフィーチャーしたシングル「Plus rien」を出していますが、フランスのオーディエンスの間でその名をひろく知られるようになるのは2019年のアルバム「Monsieur」(最高16位)と、2020年のTory Lanezをフィーチャーしたラテン風味のシングル「My Salsa」(最高5位)あたりからでした。その背景にはDadjuによる推しもあったようです。

 スタジオアルバムはその後、2021年の「Vibe」が最高3位、2022年の「Glish」が最高6位、2024年の「Prime」が最高9位といずれもトップ10圏内に入っていて、新作「Aura」は通算5枚目になります。シングルでは2024年の「Position」が最高3位にのぼりつめました。コラボレーションの相手もImen Es、Alonzo、Gazo、Koba Lad、Ninho、Hamza、Joé Dwèt Filé、Aya Nakamura、Dinos、L'Algérino、Vitaaなど大物ラッパーからR&B、ラテン、ポップス方面にもウィングをひろげ、ミュージシャンとしてすでに中堅の域に達していると言ってもいいでしょう。そうした「音楽的な引き出しの多さ」とリリックでの「英語の多用」、ステージでのダンスパフォーマンスが、フラングリッシュのスタイルになっています。

 ニューアルバムの「Aura」にボーナストラックを追加した「Aura x G-Wave」から、4月12日にリリースされたシングル「Free」をお聴きください。この曲はボーナストラックのほうに入っています。その歌詞(Paroles)は、「もう終わった。自由だ。荷物をまとめて引っ越すさ。せいせいした。他の女を探すさ。人生を楽しむさ」といった内容。別れた後、みんなそうだったら、ストーカー被害など起こらないのですが……。

 

Franglish(フラングリッシュ) - Free

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年4月22日号

 

2025年4月18日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Triple V - Werenoi, Damso, Ninho

 2 Ninao - Maître Gims

 3 Ciel - Maître Gims

 4 Mood - KeBlack

 5 Poney - Werenoi

 6 Feel Good - Charlotte Cardin

 7 Jalouse - Werenoi, SDM, Vacra

 8 Phénoménal - JuL

 9 Chambre 04 - Dj Kawest

 10 Pélican - L2B

 

【アルバムチャート】

 1 Diamant noir - Werenoi

 2 État des lieux - La Fouine

 3 Aura - Franglish

 4 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 5 Focus - KeBlack

 6 De l'ombre à la lumière - Jean-Baptiste Guégan

 7 Pandémonium - Vald

 8 Mayhem - Lady Gaga

 9 Pyramide 2 - Werenoi

 10 Hélé - Helena

 

 今週は、21日の月曜日が復活祭翌日の「イースター・マンデー」だったのでSNEPからの全チャートの発表が遅れ、ブログの配信も遅れました。ご心配をおかけしました。

 

 シングルチャート1位は、セーヌ=エ=マルヌ(Seine-et-Marne/77)県ムラン(Melun)出身の31歳のカメルーン系ラッパー、Werenoi(ウェルノワ)が4月11日にリリースした新作アルバム「Diamant noir」(今週1位)の収録曲です。大物ラッパーのDamso、Ninhoとコラボした「Triple V」が、長くシングル1位、2位を占めていたMaître Gims先生を退けました。5位、7位もウェルノワの新作アルバム収録曲です。

 アルバムタイトル「Diamant noir」は「黒いダイヤモンド」という意味ですが、映画の『ブラック・ダイヤモンド』とは関係なく、タイトルチューンのリリック(paroles)はギャングスタ・ラップ風味たっぷりです。今週は9位にもウェルノワの前作「Pyramide 2」が入っています。

 

La Fouine

 アルバム2位「État des lieux」(4月11日発売)もチャート初登場。La Fouine(ラ・フーイン)はイヴリーヌ(Yvelines/78)県トラップ(Trappes)出身で43歳のモロッコ系ラッパー。2024年12月3日号でくわしくご紹介しています。

 タイトルの「エタデリュ」はフランスやベルギーでアパルトマンの部屋を借りたことがある人はおわかりだと思いますが、引き払う時の「退去時点検」のことです。後で「壁に傷がついていた」などと大家さん側ともめて、弁護士が入った話し合いで解決したりします。もっともNinhoをフィーチャーしたラ・フーインのタイトルチューン(État des lieux Part.1/Part.2)のリリックを見れば、セックスとマリファナ(大麻)の話ばかり。フランスでは大麻は医療用以外は原則禁止ですが、マクロン政権下で刑罰が緩和されている方向です。

 アルバム3位はFranglish(フラングリッシュ)の「Aura」で4月11日リリース。パリ20区出身、30歳のコンゴ系ラッパー。2020年8月4日号でプロフィールをご紹介しています。タイトルは現在すでに日本語になっている「オーラ」で、「夜明け」を意味することもあります。auraといってもフランス語の動詞avoir(持つ)の三人称単数未来形ではありません。

 3月発売の今年のLes Enfoirés(レザンフォワレ)のライブ盤が今週17位でアルバムチャートのトップ10圏外に去りました。支援する非営利団体「Les Restaurants du Cœur(Resto du Cœur/心のレストラン)」は今年で設立40周年ですが、世界的インフレによる食料品高騰で運営が厳しくなっており、このイベントも曲がり角にきているのかもしれません。

 

Jean-Baptiste Guégan(ジャン=バティスト・ゲガン)


Jean-Baptiste Guégan

 Jean-Baptiste Guégan(ジャン=バティスト・ゲガン)が4月11日に出したニューアルバム「De l'ombre à la lumière」(影から光へ)が今週、アルバムチャート6位に初登場しました。フランスを代表するロックンローラー、故ジョニー・アリディ(Johnny Hallyday)に声が似ていることから「la voix de Johnny」(ジョニーの声)とか「Johnny Hallyday Junior」(ジョニー・アリディ・ジュニア)といった異名を持つ彼の、4枚目のアルバムになります。

 1983年5月、北フランス・ブルターニュ半島の北部海岸にあるコート=ダモール(Côtes-d'Armor/22)県トレグー(Trégueux)生まれの41歳。まだ9歳だった1992年、父親に連れられてパリ12区ベルシー(Bercy)地区にある「Palais Omnisports de Paris-Bercy」で行われたジョニー・アリディのコンサートを見て、まるでカミナリに打たれたような衝撃を受けるとともに、「ジョニーになりきるインパーソネーターとして生きていく」という彼の人生が定まりました。

※インパーソネーター(impersonator)は英語で「なりきりものまねタレント」のこと。アメリカでは故エルヴィス・プレスリーや故マイケル・ジャクソンのインパーソネーターが、それぞれ何人も活躍しています。

 2000年、17歳で「ジョニーの声帯模写」として地元のステージに初めて立ちます。「声がそっくり」と近隣で評判になりますが、本人はブルターニュで家具職人の仕事をそのまま続けていました。ジョニー・アリディが亡くなった翌年の2018年、テレビ番組「La France a un incroyable talent」シーズン13に出演するチャンスを得て、ジョニーのナンバーを歌いフランス全土にその名が知られます。「声そっくりさん」としてジョニーの遺族も公認。「Jean-Baptiste Guégan:La Voix de Johnny」という名のツアーを組んで回り、「ジョニーロス」に陥っていたファンたちをなぐさめました。

 作詞家のミシェル・マロリー(Michel Mallory)が、ジョニー・アリディのために用意した曲を「君が歌え」と提供したという心強い応援も得て2019年、アメリカのナッシュビルで録音したファーストアルバム「Puisque c'est écrit」(最高1位)とファーストシングル「Retourner là-bas」で、36歳の遅咲きメジャーデビューを果たします。

 セカンドアルバムの「Rester la même」(2020年)は最高2位、サードアルバムの「Toutes les larmes sèchent un jour」(2022年)は最高5位で、マルク・ラヴォワーヌ、スリマン、サラ・ブライトマン、フレデリック・フランソワ(今週、新作アルバムが22位)ら大物たちともコラボレーション。吉幾三さん風に言えば「俺は田舎のジョニー・アリディ♪」だったなりきり男が、とうとうスターになったのでした。

 そのあたりの経緯は昭和の時代、九州で大衆劇団を旗揚げし、当時人気絶大だった新国劇を創始した俳優、澤田正二郎から「真正女澤正」と名乗ってよろしいと正式に認められた坂東政之助こと酒井マサ子の逸話を彷彿とさせます。ほぼ同じ時期、喜劇王・榎本健一のインパーソネーターで、「エノケソ一座」を旗揚げし田舎町の公民館を回っていた人物もいました(四代目市川猿之助主演で「エノケソ一代記」というお芝居になっています)。

 新作のアルバムタイトルには、今はすでにジョニー・アリディの「影武者(ombre)」のような存在を超えて「光(lumière)」輝くステージに躍り出たのだという思いが込められています。その収録曲から2024年11月先行リリースのシングル「Lettre à ma voix」(私の声への手紙)をお聴きください。歌詞はジョニーに捧げられたものです。

 

Jean-Baptiste Guégan(ジャン=バティスト・ゲガン) - Lettre à ma voix

 

では、また来週

À la semaine prochaine!

 

 

 

仏蘭西歌謡曲
Chanson Populaire en France

 
2025年4月15日号

 

2025年4月11日付 SNEPシングル&アルバムチャート

※SNEP:Syndicat national de l'édition phonographique(フランス全国音楽出版組合)

 

【シングルチャート】

 1 Ninao - Maître Gims

 2 Ciel - Maître Gims

 3 Mood - KeBlack

 4 Chambre 04 - Dj Kawest

 5 Feel Good - Charlotte Cardin

 6 Pélican - L2B

 7 Anxiety - Doechii

 8 Sois pas timide - Maître Gims

 9 APT. - Rosé & Bruno Mars

 10 Messy - Lola Young

 

【アルバムチャート】

 1 Le Nord se souvient:L'Odyssée - Maître Gims

 2 Pandémonium - Vald

 3 Focus - KeBlack

 4 Olyboy - OBOY

 5 Pyramide 2 - Werenoi

 6 Mayhem - Lady Gaga

 7 Hélé - Helena

 8 BDLM Vol.1 - Tiakola

 9 2025 Au pays des Enfoirés - Les Enfoirés

 10 DeBÍ TiRAR MáS FOToS - Bad Bunny

 

 今週もシングル1位は「Ninao」、2位は「Ciel」で、またまたMaître Gimsのワンツーフィニッシュ。あとは前週比で6位と7位、8位と9位が入れ替わっただけで、アクションが乏しいチャートでした。アルバム1位は前週1位のValdと入れ替わってMaître Gimsの「Le Nord se souvient:L'Odyssée」。先生はシングル、アルバムともトップに立ちました。

 

KeBlack

 オワーズ(Oise/60)県クレイユ(Creil)生まれでコンゴ系の33歳のラッパー、KeBlack(ケブラック)の「Focus」が今週、アルバムチャート3位まで上昇しています。2024年11月リリース。シングルチャートでも彼の「Mood」が今週3位で粘っています。8位のTiakola(ティアコラ)の「BDLM Vol.1」も2024年9月のリリース。Bad Bunny(バッド・バニー)の「DeBÍ TiRAR MáS FOToS」(1月5日発売)が10位になり、アルバムチャートのトップ10に返り咲きました。プエルトリコ出身の31歳のラッパーで、リリックがスペイン語の「ラテン・トラップ」の第一人者です。

 

OBOY(オボイ)


OBOY

 今週のアルバムチャート4位に、OBOY(オボイ)の4月4日発売の4年ぶり3枚目の新作アルバム「Olyboy」が初登場しました。OBOYというステージネームはOmega boy(オメガ・ボーイ)の略で、正式なロゴは「ΩBØY」です。シングル「TDB」が5週連続第1位のメガヒットを記録していた頃の2021年8月24日号でくわしく触れていますが、久しぶりにSNEPチャートに顔を出したので、改めてプロフィールをご紹介します。

 1997年1月生まれで現在28歳。本名はMihaja Ramiarinarivo。生まれたのはアフリカ大陸東方沖のインド洋に浮かぶ島国でフランスから1960年に独立したマダガスカル共和国(Republic of Madagascar)です。6歳の時に両親とともにパリの南の郊外、SNCF(フランス国鉄)のTGVの車両基地や貨物列車の操車場がある鉄道の町、ヴァル=ド=マルヌ(Val-de-Marne/94)県ヴィルヌーヴ=サン=ジョルジュ(Villeneuve-Saint-Georges)に移って、ここで育ちました。

 2015年、18歳でラッパーとしてデビュー。2016年にミックステープ「Olyside」を出し、2019年にリリースしたファーストアルバム「Omega」(最高31位)が、OBOYの名前とアメリカ起源の「マンブルラップ(Mumble rap)」の存在をひろくアピールしました。

 マンブルラップとは、リリックをはっきりとは発音せず、ムニャムニャとつぶやく形式のラップ。そのアンニュイさがウケたのかOBOYはたちまち、そのフランス代表としての地位を確立。大ヒット曲「TDB」を収録した前作セカンドアルバム「No crari」(2021年9月リリース)は最高3位になっています。なお、マンブルラップは発祥の地アメリカではいま、アトランタ出身のPlayboi Carti(プレイボーイ・カーティー)が人気で、フランスでも2025年3月21日付で彼の「Music」がアルバム4位にチャートインしています。

 オボイ自身はボブ・マーリー、マイケル・ジャクソン、2Pac、ASAP Rocky、Migos(ミーゴス)などに影響を受けたと語っています。2020年以降、Aya Nakamura、Koba LaD、PLK、Maes、Uziらフランスのヒップホップ、R&Bの大物たちとよくコラボレーションしています。

 デビュー10周年の今年、「(2016年の「Olyside」の頃への)原点回帰」「自分を再発見する」をテーマにリリースした18曲入りアルバム「Olyboy」は、1PLIKÉ140、Leto、Josmanらがレコーディングに参加しています。

 収録曲から23歳のドリルラッパー、1PLIKÉ140をフィーチャーした「Maybach」をお聴きください。タイトルはメルセデス・ベンツの高級車種「マイバッハ」のことですが、リリックのほうは「Elle aime le luxe, le sexe, elle me dit come on」(あえて訳しません)などと、カネ、高級車、贅沢、オンナの軟派男ぶり全開です。

 

OBOY(オボイ) - Maybach feat.1PLIKÉ140

 

では、また来週

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