会社が年度末に申告する法人税、住民税及び事業税(以下、法人税等)は、複雑な計算過程を経て最終的な申告額が決定されます。
年度末の損益計算書(以下、PL)に計上される「法人税等」は、単に『税引前当期純利益に税率を掛ける』だけでは算出できません。
PLの末尾には、
①税引前当期純利益
②法人税等
③(税引き後)当期純利益
が表示されます。
<参考:PL末尾>
なお、
①税引前当期純利益:年間の収益・費用の積み上げで算出
②法人税等:税務上の課税所得を基礎として算出
という形で、それぞれ異なるロジックで算定されています。
そのため、PLだけを見ると、
「①税引前当期純利益に対して、なぜこの②法人税等の金額になっているのか」
という対応関係が分かりにくくなる場合があります。
このような会計上の利益と法人税等との対応関係を適切に反映するための会計処理が「税効果会計」です。
(この説明だけだと良くわからないですよね・・「税効果会計」の詳細については、↓別記事をご参照ください。)
税効果会計とは?目的や適用対象をわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム
一方、中間決算(上半期決算)においては、年度決算と比較して簡便的な処理が認められています。平たく言うとカンタンな処理ができます。
税効果会計においても簡便的な処理=いわゆる「簡便法」が認められ、
〇PL税引前中間純利益 × 見積実効税率
というシンプルな計算式で法人税等を算定することができます。
経理担当者としては、複雑な法人税計算を年に2回も行う必要がなくなるため、実務上の負担を大きく軽減することができます。
ただし、1点注意が必要です。
簡便法とはいえ、上記算定式の「見積実効税率」が異常値となるような場合は、例外的に見積実効税率ではなく「※法定実効税率」を使用して税金費用を算定する必要があります。
※法定実効税率:税法で定められた法人税率、住民税率、事業税率を基礎に算出された税率をいいます。およそ30%~35%のイメージ。
今回は、その代表的なケースについて解説します。
見積実効税率とは?
中間税効果会計における見積実効税率は、次の算式で計算します。
主に年度予算書の数値などを使います。
〇予想年間税金費用÷予想年間税引前当期純利益
例えば、
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・(A)予想年間税引前当期純利益 |
:1,000 |
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・(B)予想年間税金費用: 300 |
の場合、
300 ÷ 1,000 = 30%
が見積実効税率となります。
そして上期決算における会計上の税引前中間純利益が400であれば、
400 × 30%(見積実効税率) = 120
として中間期の法人税等を計算します。
交際費の損金不算入額に注意
実務上、見積実効税率の計算において重要となるのが、
「一時差異等に該当しない差異」を(A)予想年間税引前当期純利益に加減算する場合です。
です。
「一時差異等に該当しない差異」の代表例が、
〇交際費の損金不算入額
す。
【参考:中間税効果適用指針12(1)】
これは、年度末の税金計算上、接待や飲食費のうち、いわゆる「経費にできない(節税できない)」部分の金額です。
不動産事業会社や広告代理店などでは、取引先との関係構築や営業活動に伴い、交際費が多額になりやすく、税務上損金算入が認められない金額(損金不算入額)が、見積実効税率の算定に重要な影響を与えるケースも少なくありません。
数値例による解説
例えば、
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(a)予想年間税引前当期純利益: |
1,000 |
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(b)交際費(年間の予想額):200 |
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(c)法定実効税率:30% |
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の場合、課税所得は
(a)1,000 +(b) 200 = 1,200(d)
となります。
税金費用は
(d)1,200 ×(c)30% = 360(e)
です。
したがって、見積実効税率は
(e)360 ÷ (a)1,000
=36%
となります。
この程度であれば法定実効税率:約30%と大きな乖離が無く、特に問題ありません。
見積実効税率が異常値となるケース
経理実務上、注意が必要なのは、
上期と下期で利益の変動が大きい会社
です。
例えば不動産事業会社では、物件引渡しのタイミングによって利益が大きく変動することがあります。
次のケースを考えてみましょう。
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(A)上期利益:500 |
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(B)下期損失:▲400 |
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(C)予想年間税引前当期純利益:100 |
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(D)年間交際費予想額(損金不算入額):200 |
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(E)法定実効税率:30% |
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この場合、課税所得は
(C)100 +(D) 200 = (F)300
となります。
結果、税金費用は
(F)300 × (E)30% = (G)90
です。
したがって、見積実効税率
=(G)90 ÷ (C)100(予想年間税前利益)
=90%
となります。
見積実効税率:90%の合理性
上記の通り、
計算結果だけ見ると、見積実効税率は90%です。
しかし、
法定実効税率約30%
↓
見積実効税率90%
というふうに、著しい乖離が生じています。
その理由は、(C)予想年間税引前当期純利益:100が小さいことにより、(D)交際費年間予想額:200に係る税金費用の影響が、相対的に大きくなっているためです。
今回のケースでは、
(A)上期利益:500
(B)下期損失:▲400
(C)予想年間税引前当期純利益:100
となっており、上期及び下期の損益相殺の結果、通期利益が大幅に減少しています。
一方で、「一時差異等に該当しない項目」:(D)交際費等の損金不算入額 200
はそのまま残るため、結果的に税金費用への影響が、予想年間税引前当期純利益に対して、著しく重要なものとなっています。
その結果、
(G)予想年間税金費用:90
(C)予想年間税引前当期純利益:100
となり、
見積実効税率
=90 ÷ 100
=90%
という異常値が算出される形となりました。
異常値の場合は「法定実効税率」を使う
このようなケースについて、中間税効果会計適用指針(以下、適用指針)第14項では、
「見積実効税率を用いて中間会計期間に係る税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合には、法定実効税率を用いる」と定めています。
また、「著しく合理性を欠く結果となる場合」の例として適用指針では
「上期(中間会計期間)と下期の損益が相殺されるため、一時差異等に該当しない項目(Ex:交際費等の損金不算入額など)に係る税金費用の影響が予想年間税引前当期純利益に対して著しく重要となる場合」
が挙げられています。
今回の事例はこのケースに該当すると考えられます。
<参考:適用指針14項>
そのため、異常値といえる見積実効税率90%を用いるのではなく、法定実効税率:30%を用いて税金費用を算定するのが合理的といえます。
仮に、中間決算における税引前中間純利益:400の場合の税金費用は
400 × 30%(法定実効税率) = 120
となります。
まとめ
中間税効果会計の簡便法は、
〇税引前中間純利益 × 見積実効税率
という非常に便利な方法です。
しかし、
- 交際費の発生額が大きい
- 上期と下期の利益変動が大きい
といった状況に置かれやすい会社では、
見積実効税率が80%や90%になるなど、法定実効税率:約30~35%を大幅に超過し、異常値になることがあります。
そのような場合は、
「計算結果が出たから採用する」のではなく、
「その見積実効税率は本当に合理的か」
という観点で検討することが重要です。
特に上述の通り、不動産会社や広告代理店などでは発生しやすい論点であり、中間決算時には一度立ち止まって確認したいポイントといえます。


































