今回は自分が初めて「高級イヤホン」といえる領域に踏み入れる事になった機種を紹介します。
このイヤホンで知ったことも多く、非常に満足のいく買い物でした。
後に、このROSIEのフェイスプレートが取れてしまったことで、私はSE846と出会う事になります。
JH AUDIO "THE SIREN SERIES" ROSIE
オレンジのフェイスプレートが目印。
<オススメ度>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 10 (購入済)
JH AUDIOというと皆様御存知、超有名12ドライバ機Roxanneから入門にオススメBillie Jeanまで、幅広い価格帯で名機を作るIEMの神様ジェリー・ハービーさんが立ち上げたメーカーです。
JH AUDIOにはAstell&Kernとのコラボ機がいくつかあり、AKR03(Roxanneベース)が成功したため”THE SIREN SERIES”としてLayla、Angieが作られました。
その後、樹脂筐体から金属筐体となった第2世代、Layla II、Roxanne II、Angie IIが発売され、その末妹がROSIEとなります。
四姉妹と言われる金属筐体+JH4pinコネクタのラインナップですね。
ROSIEのドライバーの編成は、低域2BA・中域2BA・高域4BAです。
発売当初は Layla II、Roxanne II: 12BA Angie II: 8BA ROSIE: 6BA というアナウンスでした。
が、海外での発売後に音質に不満があったのか、ROSIEだけ8ドライバにサイレント修正されていたそうで、日本に輸入されたROSIEは実は8BAだった、という逸話があります。
その事が発覚したのがなんと発売から1年後…JH Audioが販売代理店に通知してなかったとか。
なので、シリーズで最も安価(とはいえ発売価格は14万…)の割に音質の良いモデルとしてちょっと有名だったりします。
ケーブルはMOON AUDIO製、低域調整ダイヤル付きJH4pinケーブルです。ネジ式ロックが特徴的ですね。
3.5mm、2.5mm4極の2本が付属します。JH4pinという特殊なコネクタだけに、バランスケーブルが付いてくるのがありがたい。
最近ケーブルがリフレッシュしたので入手しやすくなったけど、以前は数万もする高級リケーブルか個人制作ケーブルしか無かったんですよね。
装着感なんですが、JH AUDIOの特徴としてかなり人を選びます。
最上級の機種が12BAも積んでいるので、同じ形状のROSIEも必然的に筐体が大きいです。
また、この第二世代SIREN Seriesの特徴としてステム長がかなり長く、耳穴の小さい人だと入らない、または装着に苦労します。
私は幸いそれほど困らず済みましたが、女性には厳しい可能性が高いです。
【音の特徴】
<帯域バランス>
低域 ☆☆☆☆★ 4.5
中域 ☆☆☆☆- 4
高域 ☆☆☆☆★ 4.5
<印象評価>
低域 8.1
中域 7.5
高域 7.7
※試聴環境として、イヤピースをSednaEarfit Light、ケーブルは純正ケーブルを使用しています。
低域調整ダイヤルは12時にて視聴しています。
以前計測したROSIEのF特性です。
やはり特徴的なのはBA機らしからぬ低域の太さ。
JH AUDIOの4pin機は「音が濃い」と良く表現されますが、まさにそういった系統の密度の濃い音の太さがあります。
しっかり底から響くような音圧のある低域が出ています。低域ブーストを掛けすぎるとやたらブーミーになってしまいますが、調整してやることで程よい量感とキレの良さを両立出来ます。
元々の傾向としてエッジの効いた輪郭のある元気な音を出す機種なので、アタック感がしっかりした締まった低音が素性といった感触でした。
中域は程よい量感で、埋もれず出過ぎない、いい塩梅に仕上がっています。
女性ボーカルの表現は薄っすら柔らかめな空気を持っていて、高域ほどキレ感はありません。
硬さ、量、音圧それぞれのバランスが良く、良く言えば高水準、悪く言えば平凡ですね。
特に明確な特徴がある帯域では無いと思います。
高域はよく響き、4BAに強化されただけあって音が抜けていく表現もギリギリ最後までしっかりと表現しきれています。
音の粒の揃い方が均質で、ザラつきや薄さを感じない一枚の布のような質感の音です。
ROSIEの謳い文句の「シルキーな音」というのは特に中~高域の音によく現われています。
音の残響の減衰の仕方が丁寧、という感覚でしょうか。アタックの良さはこの帯域でもしっかり出ていて、鋭く立ち上がってスーッと尾を引いて抜けていく音です。
刺さりやすい音もしっかりクリアしており、非常に良く出来ています。
全体的に「JHらしい音の濃さ」が低域では音の太さ、高域では質感の良さに現れており、エントリーモデルとされながらも一切抜かり無いチューニングを感じる事が出来ます。
分離感・解像感はもちろんハイレベルですし、定位もハッキリしていて音像に乱れはありません。
音場感は比較的普通です。半円型の音場で、バランスは良いですが広さは一般的ですね。
プロ用CIEMをメインにしている会社なので、モニターに必要以上の音場は不要という事なのでしょう。
<ドライ>--★--0-----<ウォーム>
ウォームさを感じる事は基本的に無いと思います。
音源にもよりますが、基本的にはシャキッとキレの良いサウンドが特徴です。
音に厚みはありますが、丸い音ではないです。人によっては随分ソリッドに感じるかもしれません。
<薄味> -----0--★-- <濃味>
サウンドとしてはかなり濃密といえます。
音に厚みがある事で、今鳴っている音の主張が強くメリハリの効いたハッキリした音楽表現が特徴です。
低域を程よくブーストしてやると下から支える力が強くなり、かなり音楽のコントラストが強くなりますね。
【総評】
JH AUDIOが世に送り出したあまりにも高価なエントリー機であるROSIEは、比較的万人に受け入れられる分かりやすい「良い音」という意味では確かにエントリー機といえると思います。
とはいえ価格だけ見れば世にいう高級機ですから、ドライバー構成、ビルドクオリティ、付属品共にかなり充実していて高級感はしっかりしていますし、いわゆる「JHらしい音」をしっかり受け継いでいて、JH AUDIOの音を体験するのには非常に良い機種だと思います。
もう発売からかれこれ4年経っていますので、中古価格はまさにエントリーといっていいところまで下がっており、もし状態の良い中古があれば是非オススメしたい機種ですね!
ただ、最近目に見えて中古市場の弾が減ってきている機種でもあり、もうしばらくしたら見なくなってしまうかもしれません。
装着感の関係で試聴は推奨(同型機でも良い)ですが、手元に置いておいて損は無いと思います。
久しぶりのレビューが終息機、しかも買って1年経つ機種という今更感の強い物になってしまいましたが、それだけお気に入りの機種ということで…
次回はまたまとめレビューを一本挟むと思います。
それでは。
※余談
今回の機種でも使用したSednaEarfit Lightですが、本当に耳に良くフィットします。
ホーン型の開口部をしていて、高域を伸ばすのに適していて非常にオススメです。
ステムが太い機種でも大体付けられるので、もしよければ試してみて下さい。ガチでオススメ!
次回→final A8000