さて、いきなりタイトルにヘッドホンが生えて来ましたね…最近自分の中ではヘッドホンがアツいんですよ。
やはりイヤホンでは感じられない広い音場、音の波、細かくも分厚い音がヘッドホンの魅力です。
またスピーカーよりも細かい音の聴き方が出来る事もあり、ヘッドホンに手が伸びる事が増えました。
ということで今回はヘッドホンから愛機を一つご紹介しておこうと思います。
DENON AH-D5200
ケーブルに関しては自作しています。
<オススメ度>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 10 (購入済)
国内の音響メーカーはどうしても苦しそうだ、というイメージがありますね。
DENONもマランツと合併し、ONKYOはPioneerと合併し…それでもやはり国産メーカーは良い物を作りますし、なんとか頑張っていって欲しい。
その名門DENONが作るウッドハウジングシリーズとしてAH-D7000・D5000シリーズは有名ですね。
ウッドハウジングシリーズの後継としてゼブラウッド製のAH-D5200・ウォールナット製の7200・孟宗竹製の9200が現在販売されています。
その中でも一番廉価なD5200は定価6万円程です。まぁ十分高価なんですが、単に廉価版で下位互換というわけでもなく、しっかりD5200ならではの特徴があります。
自分なんかはD9200よりD5200の方が好みでしたし、やはり何事も試聴ですねぇ。
一応ハウジングの木材以外のカタログスペック的な違いとしましては、
D5200:50 mm フリーエッジ・ドライバー
D7200/D9200:50 mm ナノファイバー・フリーエッジ・ドライバー
ナノファイバーというのはD7200の為に開発された素材とのことで、マイクロファイバーより軽く硬い素材。
繊維の漉き込みの配分などを工夫しているそうです。
ドライバーの振動板というのは軽ければ瞬発的に動かしやすく、硬い事で鳴らしたい音以外が出づらいので、より軽く硬くというのはどのメーカーも目指す進化の方向性です。
D5200は従来のマイクロファイバー製ですね。
フリーエッジドライバーというのは振動板の周囲が固定されておらず、スピーカーで言うとコーン周囲のゴムの部分のように自由に動くようになっているドライバーです。
振動板が端まで振動できる事によって振動板が曲がらず真っ直ぐ振動でき、より正確で綺麗な音が出せるという事です。
ちなみにドライバーはS-LOGIC等の傾斜配置ではなく、普通の平行配置です。
イヤパッドを外したところはこんな感じになっています。
D5200:4NOFCケーブル(3m)
D7200:7NOFCケーブル(3m)
D9200:7NOFCケーブル(3m/1.3m)
4Nは99.99%、7Nは99.99999%の純銅ということです。
個人的に銅の純度は4Nもあれば十分だと思っていますが、まぁ高いに越したことはない的な部分でしょう。ここもD5200ではコストカットしているようです。
あとはヘッドアームのステッチ意匠がカットされていますね。主な仕様の変化はそのくらいでしょうか。
意外と価格差の割に仕様に差が少ない気がします。
なので、より自分の好みで選んで構わないと思いますね。(流石にD9200は別格の値段ですが)
【本体】
灰色に近いゼブラウッドのハウジングがシックでメチャクチャ良いですね。
全体の造形としてもヘッドホンらしいシルエットでとても好みです。
アジャスター部は頑丈なアルミダイキャストフレームになっており、2本になっている事がシンプルさの中に少しメカニカルなアクセントになっていてカッコいい。伸縮時のクリック感もしっかりあるので調整は簡単です。
イヤーパッドは立体形成になっていて、それほど分厚くない割にしっかり耳を覆って密着してくれます。
硬さもちょうどよく、ふかふかしすぎず硬すぎずで程よい密閉状態を作ります。
この辺りは先代であるD7000/5000をOEMしていたフォスター電機のFOSTEX TH610とかなり似ていますね。正直TH610も欲しい。
廉価版に位置しては居ますが、世間一般で言えば高級な部類に入るだけあって見た目の高級感はしっかりと確保されていますね。
さて、AH-D*200シリーズを語る上で「ヘッドバンド問題」は避けて通れませんが…
最近「こんなにD5200って着けやすかったっけ…」と思うくらい頭頂にバンドがあたって痛い事がなくなりました。
ヘッドバンドは装着時に広げる事で平らに伸びてしまいます。そうなる事で頭頂の狭い箇所にのみアームが当たって痛くなってしまうのですが、ヘッドバンドの頭頂部を凹ませていたり、頭頂部のRを維持したまま開くようにしたりして工夫する部分になります。
AH-D*200シリーズの場合その対策が甘く、以前より頭頂刺激がキツくダメだとよく言われるモデルです。
しかし以前は確かに着け方によっては1曲持たずに痛くなって着け直しとかしていた事もあるんですが、ここしばらくはパッと着けてそのまま違和感無くずっと着けていられるようになっている事に気付きました。
これは着け方が上手くなったのか、頭が慣れたのか分かりませんがどうやら改善が出来るようです。
以前は「極力イヤーパッドに荷重がかかるように後ろにずらして掛ける」とか「前にずらして痛くない荷重ポイントを探す」とか色々やっていました。
ただ今は普通にほぼ頭頂に乗せても問題がないですね。1度撮影の為にアジャスターを仕舞ったんですが、その後から安定している気がするのでアジャスターの長さの調整なども有効かもしれません。
この手の問題はユーザーの身体に合う合わないの問題も含みますので一概にどうと言いづらいのですが、最悪ヘッドバンドカバー等で緩衝してやればなんとかはなると思います。
ただやはり1度試聴でその辺り自分はどうか、着け方で変わりそうかを試すのが良いかと思います。
ケーブルに関してですが、D5200のケーブルはリケーブルしたほうが良いとよく言われています。
個人的に4Nであることはさほど気にするほどでもないと思っています。
評判の良いケーブルでもN数なんて書いてなかったり、4N程度のものもあります。
ただ、3mのケーブルというのは一般用途としては使いにくいし、リケーブルしたい!
と思ったのは良いのですが、3.5mmモノ両出しのケーブルというのが意外と少なく、また何故かやたら高い。ただのモノモノのアンバランスケーブルが3万弱って、なんで??
線材:HPC-26T V2 ヘッドフォン用 102SSC 平行ケーブル
コネクタ:NOBUNAGA Labs 3.5mm3極ステレオミニ NLP-01B
プラグ:オヤイデ P-3.5G
という事で、極シンプルな1.3m平行アンバランスケーブルを自作しました。
なぜわざわざ作るのにバランス接続にしないんですか?と思われる方も多いかと思いますが、バランスケーブルはNOBUNAGA Labs 竜頭を既に試しておりました。
結果としては、AH-D5200はバランス接続があまりマッチしません。
元々高域は結構出るタイプなのですが、バランス接続にすると分離感が強くなりすぎ、出力が上がり高域が出すぎました。
単純に言えば高域の刺さりがキツくなります。
DENONの方がAH-D5200はアンバランス推奨と言っていたという話も見かけましたが、確かにバランスですと演出が過剰過ぎてまとまりに欠けてしまう印象でした。
なので今回はアンバランスケーブルを作成。3本目だけあってプラグ周りの処理もこなれて大分満足な出来に仕上がりました。線材がちょっと硬くて取り回し辛いのはご愛嬌。
リケーブルの結果なのですが、確かに音質が向上…というとなんか嫌ですが、低域の沈み方・中域の奥行き・高域の刺さりが少し改善したのを感じました。
元々リケーブルでの音質改善には否定的なスタンスでいましたし(費用対効果が悪く、変化が小さく確認がし辛い為)、自作だからという事もあり何度も何度も聴き比べましたが、やはりリファレンス曲の刺さるギリギリの箇所が、気にはなるが僅かに余裕ができ、ドラムの低い所から上がってくる箇所の深さと分離感が増しました。聴き辛いと思っていた箇所が改善したので、特に効果の確認がしやすかったと思います。
ケーブル長の変更が主な要因かと思いますが、D5200のケーブルがあまり良くない、という評判は確かにそうなのかもしれません。個人的にはリケーブル推奨機種と考えています。
【音の特徴】
<帯域バランス>
低域 ☆☆☆☆- 4
中域 ☆☆☆☆★ 4.5
高域 ☆☆☆☆★ 4.5
<印象評価>
低域 8.3
中域 8.1
高域 7.7
音質に関して特筆すべき点があるとすれば、音場の広さです。
空間の広がりがかなり良く出来ていて、特に左右、上下に広く感じます。
ハウジングの反響音をかなり上手く使えている印象があり、開放型の空間の広さとは全く別物の音場の広がり方です。
開放型の音場の広さは、音が1度で抜けていくのでサッパリしていて空の高い屋外のようですが、密閉型のD5200は反響音が濃いのに音場が広いので、よく反響するホールのような深みのある広さに感じます。
帯域のバランスに関しては比較的フラットではありますが、やや中高域寄りに主張があるようなタイプですね。
低域の量感やアタック感、響きの深さ等は十分にありますが、あまり支配的な鳴り方をせずにしっかりと曲全体を支えるような低域です。
ここがバチバチに主張して全部ドラムパートのようになるヘッドホンもあるのですが、個人的には出るパートでは出て、そうでない時は存在感は持ちつつやや下がるような「音楽的な」低域がとても好感が持てます。
中域は曲のメインとなるパートですが、しっかりと全体の中でも浮き出るように聴こえます。
分離感が良く、低域と高域と同時に鳴るパートでもお互いが空間的には別の場所にいて、重なっていつつも混ざらないです。
この中域と低域・高域の離れ方が広い音場空間を作っているような気がします。
この機種のクセは高域にあると思います。有り体に言えば、高域のアタック感が強く、刺さるギリギリの帯域があります。
この点に関しては曲によってしまうのですが、Voice of Galaxyの場合でシンセパッド系の高音が多用される箇所においてよく分かると思います。Psychedelic Machineでもハイハットの音が少し強いですね。
AH-D5200はゼブラウッドの硬質なエッジの効いたキレの良い音を売りにしています。
そのエッジ感が低域・中域のアタック感や分離感・解像感にとても効いているのですが、高域にもしっかり効いているので、歯擦音の周波数に若干影響しているような気がします。
金属的な響きに嫌な強さを感じる事はないですが、EQで調べたところ私は12kHz帯がちょっと強いと感じている事が分かりました。ここを絞るとかなり聴きやすく調整出来ます。
前述の通り、全体的には硬度のある引き締まった音が特徴になります。
ウッドハウジングだけあって金属的な響きはないので、いろんな音が溶け合うような響きよりはひとつひとつのキレのある音の粒が楽しみたい方にはかなり好みに合うと思います。
自分もそういうタイプで、聴いた時はあまりに好みでびっくりしました。
<ドライ>---★-0-----<ウォーム>
基本的にウォームな要素はありませんが、丸い音を出せないわけではないです。
硬質な音が得意ではありますが、優しい空気を緻密に描く事も出来ます。
ただ、そういった音楽の中でも締まった空気を出しがちではあるので、自分は間違いなくウォームな音が好みだという方にはおそらく合う事は無いと思います。
<薄味> -----0-★--- <濃味>
音の太さや粒立ちからくるパワフルな鳴り方という意味では結構濃い音が出るのですが、基本的には音源を脚色しすぎず、かなり忠実な再現をするタイプだと思います。
硬質な音とキレが特徴ではありますが、曲の風味が変わるような演出はしませんし、総合的に見るとやはり中域を軸として低域と高域が出たり引いたりするバランス感がメインだと思います。
D5200らしい味は確かにありますが、味付けとしてはそれほどといったところですね。
【総評】
AH-D5200は間違いなく優れた機種であると確信しています。
ヘッドバンドの件やケーブルの件等は確かに問題点ではあるのですが、音質と音場の優秀さがこの機種の問題を補って余りある魅力です。
価格帯もミドルエンドということで入手のハードルもそれほど高くなく、非常にオススメ出来る機種です。
何でも卒なく高水準でこなしてくれるタイプの優等生ですね。こういう機種が好きなんですよ。Forsteniとか。
重さも385gあるのでヘッドホンとしてはそこそこに重量級なのですが、自分が姿勢に気をつけてあげてでも1時間以上聴いていたくなります。
HD800Sを聴いたからこそ分かるD5200の音場の頑張りもありますし、この価格帯ではかなりの実力を持ったヘッドホンでしょう。強力なライバルも居るんですが、ヘッドホンというのはなかなか個性が強いものが多く、比較的バランス感の良いAH-D5200が気に入る方も結構いるんじゃないかな?と思います。
なにしろ、今ヨドバシ等で試聴が可能な現役機種ですので是非一度聴いてみて下さい。
ヘッドホン祭などが休止になる中、家に籠もるのにオーディオは最高の趣味だと思います。
皆さんの10万円の使い道の参考になれば幸いですね。
今回は以上となります。
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