2016年10月4日(火)

 

渋谷・イメージフォーラムで、『ジャニス : リトル・ガール・ブルー』。

 

ジャニスの命日に、ドキュメンタリー映画『ジャニス : リトル・ガール・ブルー』を観た。

 

なんとなく知ってるつもりになっていたけど僕はちっとも彼女のことを知らなかった……と思わされる場面が少なからずあり。特にひとりの女性としてのジャニスをよく知ることができたのがよかった。

 

ジャニスの愛に対する希求と孤独がリアルに伝わる場面が多く、とりわけ彼女が家族に書いたいくつもの手紙から本心や葛藤が伺えて胸が詰まる。そのへん、女性監督ならではの作りと言えるだろう。

 

大胆で好き放題やってるように見えるけど、実は繊細で傷つきやすく、いろんなことを恐れていたり。家族の呪縛をどこかに抱え、その反動もあって過剰なほどに愛を求めていたり。愛した男性への思いを赤裸々に歌にして、それがまた絶品だったり。けた外れの才能があるのに決して満たされずいつも孤独を感じていたり。それゆえ薬と酒に頼り、しかもようやくそこから抜け出せる兆しが見えて事態が好転しだした矢先にあっさり死んでしまったり。と、そうして観てたら意外にもエイミー・ワインハウスと共通するところがやけに多くて、尚更切なくなったりも。因みにどちらも享年27歳。うーむ。

 

終映後には、下北のジャニスこと金子マリさんとLeyonaさんのトークも。マリさん「私も27で死ぬと思ってたけど、25のときに子供が生まれたから死ぬわけにいかなくなったのよー」と。また、話のなりゆきからふたり、ア・カペラで「メルセデス・ベンツ」を歌ってくれたりもして、ラッキー!

 

 

 

 

2016年10月3日(月)

 

ストレイ・キャッツのスリム・ジム・ファントムをビルボードライブ東京にて(2ndショー)。

 

楽しかったな。同時代性が薄くとも(だからこそ)ロマンチックでゴキゲンな気持ちになれる明快ロックンロールのあれやこれや。ビートルズ曲やストーンズ曲ではシーンとしてるのにストレイ・キャッツ曲が始まった途端立ち上がって歌い出す皮ジャン&リーゼント客たちのわかりやすい反応がまたよくってね。うんうん。わかるよー、わかる。ストレイ・キャッツってのは言わばひとつのジャンルみたいなものでもあるが故。

 

で、そこに漂う匂い。先日の新宿ロフト40周年イベント「ROCK OF AGES」と通じものがあったりも。即ちそこにいるひとりひとりの“オレの愛したロックンロール”に対する忠誠心。ステキじゃないか。

2016年10月2日(日)

 

六本木TOHOシネマズで、『君の名は。』。

 

これほどまでの大ヒットの理由も、何がそんなにいいんだかも、正直、理解できず。特に最後の数分は映画的に考えたら蛇足にしか思えんのだが、あそこで泣いたという人も多いそうで。うーむ。世代的な感受性の違いというだけじゃ割り切れないものが残るなぁ。

 

2016年10月1日(土)

 

中野サンプラザで、新宿LOFTの40TH ANNIVERSARYライブイベント『ROCK OF AGES2016』。

 

出演は順にベンジーのJUDE(旧編成)→池畑・ヤマジ・百々らからなるセッションバンド+イマイアキノブ、チバユウスケ→ザ・ロッカーズ→ロックンロールジプシーズ→セッションバンド+仲野茂、石橋凌→菊ft.鮎川誠 シーナ&ロケッツ。

 

16時開演で、終演は21時。度々のセットチェンジがあったとはいえ、5時間というなかなかの長丁場。…ではあったけど、けっこう短くも感じられたか。

 

池畑さんがオーガナイズしたとあって博多組多数。「辛子明太子を辛子とんこつにぶちこんだようなメンツ」と陣内が言ってたが、まさにそれぐらいの濃厚さだ。

 

それ、僕的には大好物であって、黙っててもカラダから汗が吹き出るくらいに熱くなる出演者陣なのだが、なかでもとりわけ楽しみだったのがザ・ロッカーズ。絶頂期はルースターズよりも頻々にライブを観に行ってたし、2014年10月に行われた橋本潤さんの追悼イベントにおける再結成ライブもめちゃめちゃかっこよくて大興奮。また数カ月前にCSでドラマ『ライスカレー』の再放送をやってたので久々に見返し、そこでの陣内のチンピラ的なかっこよさに改めて惚れ直してたこともあって、今回の再結成ライブもそりゃ見逃すわけにはいかなかったのだ(先に行われた渋谷WWW公演も観たかったのだがチケットが獲れなかった)。

 

で。昔と同じ真っ赤なスーツで登場した陣内。ちょっとカラダが重たそうで、あの大振りなアクションにはキレがなく、ジャンプも低め。度々の水分補給からも絶好調とは言えない状態であることが感じられたが、まあそれでもやはりかっこいい。エルヴィス譲りの動きがあのように映えるのは、日本では故・安岡力也と陣内くらいだろう、ってなことも思わせる。全9曲と短い時間ではあったが、特に終盤、「ロックンロールレコード」「可愛いアノ娘」「ショック・ゲーム」の連続攻勢にはブチ上がらずにはいられなかった。陣内は「おそらくこのサンプラのステージが最後になるだろうから、よーく目に焼き付けてほしい」というようなことを言ってたが、これがラストじゃ勿体ない。できれば来年以降もまたちょいちょいやってもらいたいものだ。俳優の陣内もいいが、やはりロックヴォーカリストとしての陣内がたまらなく魅力的であるゆえに。

 

ジプシーズはいつも通り(サービスなしの)ジプシーズ。そして石橋凌はというと、この日はソロ曲を選ばず、「R&R AIRMAIL」~「ダディーズ・シューズ」~「AFTER45」と3曲全てARB時代の曲を。それ、ロフトに対しての感謝の気持ちでもあったのだろう(であるなら「LOFT23時」も聴きたかった気がするが)。

 

それから仲野茂。その声ヂカラはいつだってどこだって圧倒的だ。たいていの歌手は歳をとると声の出が弱まるものだが、茂は少しの劣化もなく、相変わらず凄まじい破壊力。恐るべき現役感。のっけから「東京イズバーニング」。まあ、歌詞的なところでこれは正直いまの自分の気分にはフィットしなかったんだが、最後の「デラシネ」にはゾクゾクした。やっぱすっげえヴォーカリストだなぁ、と。僕がもしレコード会社に勤めていたら、いまこそ茂のソロアルバムを出したいところだ(この国の人々は彼のヴォーカルの力・凄さをもっとちゃんと評価しないといけない)。

 

トリは菊ft.鮎川誠 シーナ&ロケッツ。アンコールの「レモンティー」以外は(サンハウスの2曲含めて)全て『ROCK’N ROLL MUSE』収録曲。圧巻。言わずもがな。「魔性の剣」を歌う前に菊さんが「山口冨士夫に捧げます」と言ったのも印象的だった。

 

それにしても、チバといい、陣内といい、茂といい、なにしろ声がバカでかい。凌さんも、菊さんも、その声は実によく通る。イマドキの若手であんなにでかい声、あんなに通る声で歌う歌手はそうそういない。こちとらそういうでかい声で歌われるロックばかり聴いて育ってるので、イマドキのかよわい声で歌われるロック(のライブ)にどうしても物足りなさを覚えてしまう…ってのはもうしょうがないことなんだよなと思ったりも。

 

因みにこの日はセットチェンジの合間にかかるのも、ARBやらじゃがたらやらチャーやら頭脳警察やらフリクションやらアナーキーやらとロフトゆかりのバンドばかり。僕もまあ10代の頃から小滝橋通りのロフトに何度か行ってたけど、一番多く観たバンドはなんだろ…。たぶん、リザードかな。確かリザード観たさに初めて(恐る恐る)ロフトに行ったんだった。並んでるのはカラス族と呼ばれた真っ黒な服を着た人ばっかでね。なかなか勇気がいりましたよ。あと「暴威」時代のBOOWYとか、バーストシティー関連のオールナイトイベントのバトルロッカーズとか、いろいろ観たよなぁ、ってなことを、この日買った写真集『ROCK OF AGES』のページをめくりながら思い出した。RIZEのジェシーが初めてステージに立ったチャーのオールナイトライブなんかもあそこで観たっけな。新宿ロフト、40周年おめでとうございます。

 

 

 

 

2016年9月24日(土)~25(日)

 

長野県松本市・アルプス公園で、りんご音楽祭。

 

りんご音楽祭というフェスに初めて行ってきた。このフェスはいいと、行ったことのある人や出たことのあるアーティストから何度か聞いたことがあったので行きたいと思っていたのだが、なるほどいい感じ。まず環境がいい。緑が多く、景色の眺めもいい。それから、いろいろといい塩梅にユルい。つまらない規制がなく、客の自主性に任せてる(信頼している)ようだ。

 

初めて行くフェスはワクワクする。が、要領がわからないだけに、多少の不安もある。どこに車をとめて、テントサイトはどこにあって、どんな塩梅で受付を済ませればいいのか、などなど。

 

初めにひとつ不満を書くと、このりんご音楽祭、そのあたりの情報・告知があまりにも少なくて不親切。初めて行く人にはかなりわかりにくい。公式サイトなどを見ても詳しく載ってないし、「ツイッターで随時情報を更新します」みたいに書いてあったけど、それを追ってみたところ新しい状況ツイートも全然してくれない。

 

まず僕らは駐車場に困ってしまった。会場近くの東入口駐車場というところが当日の朝一に埋まってしまったことは公式ツイートでも知らされたが、平瀬口駐車場というところを利用せよとの情報に沿ってそっちへ回ったところ、そこも午前10時過ぎには満車だった様子(ウチらは午後1時過ぎにそこへ行ったのだが、その時点で公式ツイートの情報更新はなされてなかった)。結局松本駅まで行って周辺のコインパーキングにとめられたのだが、グル~っとまわったのでだいぶ時間をくってしまった。そしてそこからシャトルバスで会場へ向かい、テントサイトへ。そのテントサイトもまた会場内ではなく少し離れたところにあって、そこまでシャトルバスで行く。因みにキャンプサイトの周りにコンビニなどは何もなく、水など飲み物は予め買っておかないと終演後はどうにもならない。そのあたりの説明が公式サイトだと不十分なのだ。

 

結局僕らは、テントは設営したものの、フェスをある程度楽しんだあとは松本駅近くの居酒屋に食べに行き、そのあと銭湯に行ったりお茶飲んだりしてから、遅くにまたテントまで戻って寝た。

 

結論。松本駅周辺にはホテルもたくさんあるし、関東や関西からならこのフェスは車じゃなくて電車で行き、フェス後は松本のホテルに宿泊する…というのがいいみたい。キャンプもできることはできるけど、所謂キャンプを楽しむためのフェスではない。松本駅周辺にはいい飲み屋さんがたくさんあるし、フェスをひとしきり楽しんだあとは今度はゆっくり松本の夜を楽しんでホテルに帰る…という行動パターンが一番いいようだ。まあ、それも今回行ってみてわかったこと。何事も経験しないとわからない、っちゅうことで。

 

で、りんご音楽祭。観たのは以下の通り。

 

24日(土)

KAKATO(環ROYと鎮座DOPNESS)→踊ってばかりの国→掟ポルシェ→G.RINA&Midnight Sun→THE King ALL STARS→Shingo2。

 

25日(日)

アナログフィッシュ→水曜日のカンパネラ→YOU THE ROCK★&DJ DA-15→ギターウルフ→Flying Dutchman→Polaris→LEGENDオブ伝説 a.k.a.サイプレス上野→青葉市子→DOTAMA。

 

1日目は(前から好きだったもののライブは今回初めて観ることができた)G.RINAがとてもよかった。ゲストにPUNPEE。彼、すごい人気あるんだね。THE King ALL STARSでも出てきて大いに湧かせてました。2日目はまず水曜日のカンパネラ。今年、フェスでもっとも多く観てる(行くフェス行くフェス、彼女が出てる)アーティストだが、毎回その場でしか生まれない空気を生みだし、何より彼女自身がいつも全力で楽しんでいるのがいい。MCでもそのフェスのよさと思い入れを的確に語ってくれるあたりがまたいいなと。それからDOTAMA。真面目さ故の狂気がビンビン。フリースタイルダンジョン人気で客は後ろのほうまでビッシリいて、そのことに彼自身がウルっときてたあたりにもグッときた。

 

客層的にはこのフェス、ロック好きよりもヒップホップ好きの人が多く、特にDOTAMAとかサイプレス上野とかのフリースタイルダンジョン組にたくさんの人が集まっていたのが印象的だった。

 

あ、あと、もうひとつ。このフェス、フード類は残念ながらイマイチだ。唐揚げとポテトと肉ばっか。胃の強い若者にはいいが、こちとら若くないので肉ばっか食べてられんの。なので、帰りに松本の街で食べた蕎麦と卵焼きがめちゃめちゃ美味しかったです。なにしろ二日間とも雨降らなくて(特に2日目は日に焼けるほどの秋晴れで)よかった!!

 

 

 

2016年9月23日(金)

 

TOHOシネマズ新宿で、『ハバナ・ムーン ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』。

 

ストーンズがキューバでやったフリーライブの模様を映画化した『ハバナ・ムーン ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』、その1夜限りのジャパン・プレミア上映をTOHOシネマズ新宿で観てきた。以下、帰りの蕎麦屋でしたツイートのまとめです。

 

「ストーンズのキューバ公演映画『ハバナ・ムーン』。初めに劇場版のみのインタビュー映像が数分。あんなふうに4人が並んで座ってインタビューを受けることがこの数十年であっただろうか。しかもあんなに楽しそうに。もう、その段階でグッときてましたよ、僕は。」

 

「ストーンズ『ハバナ・ムーン』。何が印象的かってキューバの客たちのいい顔、顔、顔。歴史上初めての大規模なロックコンサートに、初めて来てくれたストーンズに、みんなが熱狂し、生きてる喜びを感じているようだった。当たり前にロックコンサートが観られるわけじゃない国の人々の喜び、そりゃ格別。」

 

「ストーンズ『ハバナ・ムーン』。観客たちの幸せそうな表情もさることながら、ストーンズの4人それぞれが何度も見せる嬉しそうな笑顔もまた印象的だった。過去のストーンズ・ライブ映像作品の中で、あんなにメンバーたちの笑顔がたくさん見られるものはない。4人とも本当にいい笑顔を見せるんだよ。」

 

「ストーンズ『ハバナ・ムーン』。それにしてもキューバの観客たちはチャーリーが大好きなんだな。なんだろ、あの何度か起きてたチャーリー・コールは。それを受けてかミック、メンバー紹介のとき「チャーリー・チェ・ワッツ!」言うとりましたなw 」

 

「ストーンズ『ハバナ・ムーン』。「ミックは面倒見がいいんだ。ロニーが酒をやめられなくなっても彼は辛抱強く見守ってた」。正確じゃないけど、こんなようなことをチャーリーが言っててグッときた。あとキースのこの言葉ね。「観客がバンドを繋ぐ絆なんだ」。名言大賞! 」

 

ストーンズ『ハバナ・ムーン』。セットリストは定番メニューだったけど(もちろん演奏されて使われなかった曲もあるとはいえ)、そんななかで「アウト・オブ・コントロール」がなんか新鮮だった。すごいね、あの曲でのまさにアウト・オブ・コントロールなミックの動きは。」

 

誰かもツイートしてたけど、「あの4人、いまが一番仲がいいんじゃないか」と、そういうバンド内ムードのよさが伝わってくる作品でもありました。

 

 

 

2016年9月22日(木・休)

 

東京グローブ座で、リトル・クリーチャーズ。

 

最高にかっこよかった。彼らのライブを観るのはCIRCLE、フジと続いて今年3度目だけど、昨日のライブは円形劇場であるグローブ座のあの独特の作り故に音響も素晴らしく、だから尚更各自のバカテクとバンドアンサンブルのよさが際立っていた。

 

青柳さんの「いかにたくさん弾かないか」に注力したギターと甘くて色っぽい歌声。鈴木さんの“ジミヘンの弾くギター”みたいな変態ベース。栗原さんのマシーンよりも正確でありながら温度の伝わるドラム。そしてその混ざり合い。あんなグルーヴ出せるバンド、世界広しと言えどもどこにもないなと改めて実感。

 

新作の曲群はまたどこかすっとぼけた感覚があって、それ、ケイクに通じるところもちょびっとあったりして。まあ何しろサポートメンバーもいないし映像や光の演出も何一つないし、3人の演奏だけがそこにあるというライブで。なのに約2時間が本当にあっという間だった。観客は誰一人立たなかったけど、僕は立って踊りたくてしょうがなかったです。

 

リトクリにとってこれがデビュー25周年イヤーの区切りだそうだけど、来年はといえば結成30周年だそうで。何かを仕掛けることもせず、渋谷系の波に巻き込まれもせず、いわゆるJの音楽界とは距離を保ちながら、ヘンに目立たずいつだって自分たちの歩幅で自分たちの音楽道を歩いていく。その姿勢のかっこよさ。そういうライターで、僕もありたい。

 

 

2016年9月20日(火)

 

Zeppダイバーシティ東京で、ジル・スコット。

 

台風の影響というわけでもないのだろうが、観客の入りは会場全体の3分の1もしくは4分の1くらい。ちょっとショック。やはり日本人はソウルミュージックというものにさほど興味がないのか、なんてふうにまで思ってしまう。特に90年代や2000年代に盛り上がっていたR&Bのよさというのはどっかの時点から(恐らくEDMの隆盛期を境に)あとに引き継がれなくなってしまったのだ。と、そう思わずにはいられない。

 

開演は30分ちょっと遅れた。客の入りの少なさにジルさんが機嫌を損ねたんじゃないか、ってな考えがチラっとよぎる。が、実際はそんなことはなく(って当たり前なんだけど)、彼女は最高の笑顔をたくさん見せながら歌っていた。全体的には少ない人数であっても、前のほうに集まっていた観客たちの1曲1曲に対する熱い反応が、彼女はとても嬉しかったに違いない。デビューしてから16年間1度も行ったことのなかった国にも、こんなに自分の歌を好きでいてくれて一緒に歌ってくれてるファンがいる。それは意外なことだったかもしれないし、そのことを嬉しく受け止めての好パフォーマンスだったんじゃないかと、そう思った。

 

横浜赤レンガ倉庫のSOUL CAMPのステージは思いのほかアップめの……例えばファンキーだったりギターがロッキッシュだったりの曲が多めの構成で、彼女の歌唱のパワフルな部分が特に目立っていた。で、単独公演はそこにもっとしっとりめのスローを加えての構成になるだろうと僕は読んでいた(期待していた)のだが、そういうわけではなかった。基本的にはSOUL CAMPとほぼ変わらないセットリスト。増やした部分で目立っていたのは最後、メンバー紹介を兼ねながらそれぞれのソロをフィーチャーして進めた長めのセッション的なそれで、まあそれも楽しかったんだが、僕としてはその分もっとジルさんの歌を聴きたかったというのが正直なところだ。

 

単独公演ならではの膨らみあるセットを期待していたが、正味70分程度で終わりというのはやはり短い。もうちょっと歌ってほしいよー。とは誰もが思ったことだっただろうがしかし、中身の濃さには不満なし。SOUL CAMPでは16年待っていま遂にナマでジル・スコットの歌を聴いているのだ…という興奮が先に立ってウヒャ~となりながら観てたところがあったのだが、それよりは多少冷静に聴くとなると、バンドの音含めてSOUL CAMPでは気づけなかったことに気づいたり、より深く味わうこともできた気がする。

 

バンドはドラムもよかったが、特に金管ふたり(トランペットとサックス)のよさが際立っていた。実にいい音を鳴らす上、いいとこで入ってくるんだ、これが。それとコーラスの男性3人。うまいだけじゃなくダンスもよくって、それを観てるだけでも楽しめるというのは正しいソウルショーとしてのあり方だなと。

 

ジルさんもSOUL CAMPのときとは歌い方変えてるな~という場面があったり。あと、なんといってもこの日の白眉は終盤で披露したオペラ風のあの歌唱。これだよ、これ。曲によってパワフルにも歌うし、柔らかにも歌うし、いろんな歌唱表現ができる人だけど、こんなに美しく聴かせる歌唱方も持ってるのがこの人の凄いとこ。で、まだまだこの人の歌唱表現には幅があって、今回披露しなかったような歌い方もいろいろあるはずなんだけど、出し惜しみしてるのかな。次に来ることがあったら、そのへんをもっと出してほしいものです。

 

いや、それにしてもあの声の艶とハリ。コクのあるスコット汁。しかも「どーだ」と圧倒するというよりは、観客との交歓に重きをおいてるような、そういう表現。素晴らしいね、本当に。これぞソウルって感じでしたね。

 

あ、あと、リズムがゴーゴーになるあたりの楽しさ。あれもいいよな。好きだなぁ。

 

というわけで、今回はフェス出演のための初来日であって、単独公演のセットも完全にフェス仕様だったけど、次は普通にアメリカでやってるセットそのままのショーを観てみたい。って贅沢ですがね。何しろまたそう遠くないうちに来てほしいものです。

 

 

2016年9月18日(日)

 

横浜赤レンガ野外特設ステージで、SOUL CAMP 2016。

 

ブルーノートジャズフェスに続いて、この日も赤レンガ倉庫。2日間でひとつのフェスのような錯覚に襲われないでもない(どちらも去年に続いて2回目の開催だし)。が、客層はガラリと変わって、ブルーノートジャズフェスに比べれば年齢も一回りから二回りくらい下となる(とはいえ若者が多いというわけでもない。今が旬と言えるアーティストはマックルモア&ライアン・ルイスくらいであった故)。

 

僕はジャングルブラザーズが始まる20分くらい前に会場に着いたのだが、その時点ではちょっと不安になるくらいの客の少なさ。興行的に大丈夫なのか、これ。…といった感じではあったが、ゆっくり来る人が多かったようで、ジル・スコットが始まる頃にはまあそこそこと言えるくらいにはなっていたか。

 

人が少ない上に天気も悪かったがしかし、ライブステージ初っ端のジャングルブラザーズは気合十分のパフォーマンスを見せてくれて、気分は一気に高まった。オールドスクールヒップホップへの敬意を当たり前に散りばめたステージは、いい塩梅のおっさん感も漂わせた彼らの見かけと相まって、かっこよくありつつもどこかニッコリさせてくれるもの。ステージの脇ではスタッフが時間を気にしながらメンバーに「あと何分」と何度も合図していたが、ふたりは気にすることなく続行。そりゃ終わりたくないよな、特に後半どんどんドライブしていい空気になっていってたから。いやもう、望外に楽しかった。

 

続いてDJステージのほうでは、ネイティヴタン繋がりでクエストのアリ・シャヒード。堅実。そしてライブステージでネリー。正直そんなに通ってきてなかったのだが、それでも「なつかしっ!」と軽あがりする曲がいくつか。「ジレンマ」がキタときはさすがにまわりの姉さんたち共々ウイーってなりました。で、DJステージは続いてピートロック。ノセ上手、ってか、こういうフェスの場でみんなが何を求めてるのかをさすがにわかってる。MJを数曲続け、そこからのプリンス数曲、さらにJBへという流れが最高でした。

 

そしていよいよ、僕のこの日の目当てであったジル・スコット。去年のディアンジェロ、今年8月のマックスウェルと、長く待っての初来日ソウルアクトがみな素晴らしいパフォーマンスを見せてくれてるわけだが、結論から書くとジル・スコットもまさに待った甲斐ありの圧倒的なソウルライブ。ホーンに加えて男性コーラスが3人も入ったバンドをバックに、安定感ありまくりの歌を聴かせてくれた。思いのほかアップめの曲を多めに繋げてパワフルに歌っていく前半ではあったが、中盤からのミディアム~スローでは引きの魅力を感じさせ…といった具合に緩急&剛柔自在。揺れる場面などまったくない。国内外問わず「歌のうまい歌手」「ソウルフルに歌える歌手」はたくさんいるが、ハッキリ言って格が違う。デビュー盤の曲もアレンジを変えていくつか歌ったりするもんだから冷静じゃいられなくなるところがこちらにあったのは確かだが、冷静に聴いてたとしてもこの人は破格だなという印象を持ったに違いないですね。欲を言えばもっとスロー曲もたくさん聴きたかったところではあったが、今夜の単独ではそのへんもきっと叶えてくれるだろう。あれは恐らくフェス用にギュッと凝縮した攻め曲主体の構成だったんだろうから。ああ、それにしても素晴らしかったな。最早「ネオ」の成分(ジャジーって意味ね)は少量で、“王道のソウルを私は堂々とやってるのよ感”がドーンと出てて。今夜のダイバーシティ単独も超楽しみだけど、その前にまず野外フェスの場で観ることができたのは本当によかったと思う。

 

美味なるスコット汁を味わったあとは、DJステージでプリモ御大(DJ PREMIER)。褒め言葉として書くけど、かっこいいというより面白い!  で、一通りのレジェンド系がどれも盛り上がって終わったところで、トリは今が旬のマックルモア&ライアン・ルイスだ。

 

彼らのライブは今回初めて観たんだが、非バンドの形であってもいろんなふうに趣向を凝らしててすごく面白かった。背景の映像も効果的。動きもあれこれ。1曲1曲どれもがグラミーを始めとするアウォードものでやるパフォーマンスみたいな凝り方で、“見せる”ことに力点が置かれているから、とにかく観ていて楽しいのだ。が、その一方、マックルモアはテロ問題とか人種問題とか重みのあるメッセージもズバっと言葉にしていて。それを含めてエンターテイメントに昇華するあたりが、これほどの人気の理由なんだろなと。なにしろ、何がなんでも楽しませようという意気を持った人たちはやっぱり強い。タイムテーブル観たときは、こいつらがトリかい?!  と失礼ながら思ったが、観て納得。それはもう堂々たるものでした。そういや、彼らのライブ時にはいつのまにやらたくさんの人が。これだけ観に来た人も実は少なくなかったみたいだ。

 

ということで、来年以降のこのフェスはレジェンド的なアーティストと共にどれだけ旬のアーティストを入れ込めるかにかかってるのかも。

 

 

2016年9月17日(土)

 

横浜赤レンガパーク野外特設ステージで、Blue Note JAZZ FESTIVAL。

 

去年の初開催に続いて、第2回目となるブルーノートジャズフェス。天気予報では雨だったが、予想外に快晴で、しかも暑い。夏が戻ってきたような1日だった。

 

去年の僕はA席のチケットを買い、BIRD STAGEと呼ばれるメインステージのアクトは席に座って観たものだったが、今年はスタンディング。因みにメインステージに一番近いS席の前売り料金が26000円、会場の真ん中あたりの椅子席となるA席が19000円、スタンディングが10800円と、値段にはかなり開きがある。どこを選んだかでフェス全体に対する印象はかなり変わる……ということが、去年と今年で席ありとスタンディングの両方を経験したことによってハッキリした。

 

DIZ STAGEと呼ばれる(メインステージより)小さめのステージのほうに観たいアクトが集中しているのなら、一番安いスタンディングで十分。DIZ STAGEの前のほうまで自由に行けて、かなり至近距離でアーティストを観ることができる。但し、席のあるエリアとスタンディングエリアは柵(ロープだったっけ?)で区切られて係員がチェックしているため、席ありのほうに動くことができない。よってBIRD STAGEでのアクトはかなり遠目に眺めることになる。おまけにスタンディング客のみんなが少しでも前で観ようと柵の近くに押し寄せるため、そこだけ混み合うことになる。だが、ほんの目の前のA席があるところはガラガラで、ただ無人の椅子が並んでいるだけ。場内ど真ん中のPAの後ろも誰もいない空き地のようなデッドなスペースになっている。そのすぐ後ろの狭い場所にスタンディングの客たちが大勢カタマリになって(身動きとれないような状態で)立って観ているわけだ。すぐ目の前に誰もいない空間が広がっているというのに、そこには行けないというその不自由な状態はシュールというか差別的というか、正直、あまりいい気持ちのしない作りだなぁと思わざるをえなかった。

 

座ってゆっくり観たい年配客のために椅子席のエリアを設けるのはいいことだし、それをひとつの特色として打ち出すのはブルーノートらしいとも思う。それはいいのだが、でもあんなに椅子席エリアを広々ととって、スタンディングエリアを狭くするのは、どうなのか。結局スタンディングで観る観客が一番多いのだから、いっそのことA席を丸ごと取っ払って、S席とスタンディングの2種にしちゃえば、スタンディングの人ももっとメインステージに近いところまで行けるのに…と思ったのだが、そうなると利益が出ないのだろうか。そのへんの事情はわからないけど、フェスなのにこんなにも料金によって条件~待遇の差があからさまなものはほかにないし、いい気持ちがしないという人も少なくないと思うので、こうした場内の区切り方は来年以降考えてほしいと切に願います。

 

と、長々と会場レイアウト問題について書いてしまったけれど、それを除けばこのフェスは出演者もいいし、毎年続けてほしいと思わせるものだ。去年はDIZ STAGEのほうの音響がいまひとつで出音がやけに小さかったのだが、それも今年は改善されていた。

 

まずはGOGO PENGUIN。着くのが遅れて後半20分くらいしか観れなかったのだが、個々の卓越した演奏スキルと緻密なアンサンブルに目を見張るものがあってたちまち引き込まれた。特に最後にやった曲のダイナミズムとグルーヴ感!  これはジャズクラブのような場所でまたいつか改めて聴いてみたい。

 

マーカス・ミラーをしばらくボーっと“眺めて”から、会場外にあるもうひとつのステージでThe Hot Sardines。レトロ・フューチャー感とスウィングするポップ・ジャズの楽しさ。奏者がタップを踊るなど楽しい要素もいくつかあるし、見栄え的にもよし。いい感じだったな。

 

会場に戻って、DIZ STAGEでMISIA×黒田卓也。まずは黒田卓也がバンドと共に自曲を2曲演奏。これがもう実にかっこよくて、しびれた。なんなら黒田さんとバンドだけを1時間観ていたいと思ったくらいだ。それから黒田さんがMISIAを呼び込み、彼女のオンステージ。MISIAは黒田さんによるジャジーなネオソウル風アレンジで「BELIEVE」を歌ったのだが、このアレンジとMISIAの歌唱がずっぱまり。そのあとのどの曲においても黒田卓也バンドとMISIAの歌の相性は予想を上回るほどによく、僕はちょっと驚いてしまった。こう言っちゃ失礼だが、MISIAがこんなに表現力のあるシンガーであることを、これによって初めて気づいたくらいだ(大昔に横浜アリーナだったかで単独公演を観たことがあったが、そのときはそういう印象を持てなかった)。デビュー・ヒット「つつみ込むように…」もアレンジ、歌唱ともに非常によかったが、最後の大バラード「オルフェンズの涙」ではなんとマーカス・ミラーがベースで飛び入り参加。直前に急遽決まったことだそうだが(実際、ステージ上で黒田さんがマーカスになにやら指示出しをしていた)、後半のマーカスのベース・ソロは聴きものだったし、その最中のMISIAと黒田さんのはしゃぎっぷりも可愛くかった。いやそれにしても黒田さん、吹奏者としてだけではなくアレンジャーとしても素晴らしいことが、この日のMISIA曲のアレンジによってまたハッキリしましたね。MISIAは黒田さんに出会って本当によかったんじゃないか。これ一度限りじゃ勿体ない。またやってくれたら僕は観に行きます。

 

続いてジョージ・ベンソン。本来しっかり観ておくべき人ではあったのだが、やはりスタンディングエリアからでは遠すぎて……。ここは割り切り、オフィシャルバーのあるエリアのベンチで休憩しながら聴くことにした。知り合いにも数人会えて話せたし、BGMとして聴く生ベンソンというのも贅沢でいいじゃないか、とか思ったり。

 

そしてこの日一番観たかったアンドラ・デイをDIZ STAGEで。真ん中近くのかなり前のほうに陣取って観た。結論から書くと、この日もっとも強烈な印象を残したのがこのアンドラ・デイだ。期待以上に素晴らしかった。群を抜いて素晴らしかった。圧倒的な歌唱力で聴かせるというよりは、雰囲気があるというかニュアンスに富んでいるというか。力を入れすぎずに世界を作っていくという意味でエイミー・ワインハウスを想起させるところがあったり、あるいはまたニーナ・シモンの成分を感じさせるところもあったり。で、途中で顔をごしごし拭いてメイクを落としちゃったりするあたりの素の私でいたいというあり方が可愛かったりもしたし。でも一方で女優的だなと感じさせるところもあったし。セクシーでもあるんだけどいやらしさはまったくなくてチャーミングっていうね。いやぁ、惚れましたよ、僕は。CDもいいけどライブのほうが遥かにいい。マイクの持ち方・使い方もいちいち絵になってて、最後のほうで倒れ込むようにして歌ったりしたあたりにも興奮させられた。この人はこれからどんどん大きくなるに違いないけど、いまこの段階で野外フェスで観ることができて本当によかったと思いました。

 

トリはアース・ウインド&ファイアー。初めのうちはスタンディングエリアからステージまでの距離がありすぎて音がバーンと響いてこず、なかなか入り込めずにいたのだが(近くまで行けないのがどうにももどかしかった)、それでも音に集中して観ているうちにその距離感にもまあ慣れてきた。で、アースのライブはこれまで何度も観てるが、何度見てもいいものはいいと実感。何せやる曲全てが名曲なのだから。いつも通りとはいえ、やはりいつもと異なる部分もあって、例えば星になったモーリスの写真をいくつもスクリーンに映しながら「暗黒への挑戦」(←あえて邦題)が始まったところなどは涙なくして観れなかったという。さらに「アフター・ザ・ラブ・ハズ・ゴーン」からの「リーズンズ」とかね。もう一瞬で僕は“あの頃のどこか”に連れていかれた気分だった。まだ10代の頃……アースの曲を聴いてこんなにメロディアスでうっとりするような音楽が外国にはあるんだなぁとしみじみ思っていたあの頃の自分に一瞬で戻れたというか。なんとも青臭い書き方になってしまうけど、音楽の力ってすごいなぁと、このとき僕は素直に思ってましたね。そうそう、もうひとついつものアースのライブと違うところがあって、それは途中でマーカス・ミラーが加わったこと。出てきてすぐにバーディン・ホワイトとステージ中央でベースソロ合戦し(そこ、両者の個性がよくわかる場面だった)、そのあとは普通にバンドの一員のように端っこで弾いていて。これもまたフェスならでは。こういう面白さがあるのだから、やはりこのジャズフェス、会場の区切りやらも改善して長く続けていってほしいものだと思ったのでした。