さよなら山さん(25/9/7) | 石の上にも○○年~物書き志望女のひとりごと

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日常で気になったことや、長い物書き志望歴で思ったことをランダムに綴ります。

先日のニュースで、俳優の露口茂さんが4月に93歳で亡くなったことを知った。

 

父親よりも歳上だけど、私の初恋の人と言ってもいい「山さん」である。

 

山さんとは、1970年代~80年代にかけての伝説の刑事ドラマ「太陽にほえろ!」での有能警部補の役。

 

血気に逸ったり殴り合いや追走やらの

体力勝負がメインだった刑事たちの中で、「落としの山さん」として頭脳派の知性派だった。あの目でじっと見つめられたりちょっとした沈黙を取られたりすると、犯人はどうも居心地が悪く白状してしまう……という雰囲気が迫真で、静かにかっこよかった。

 

完全犯罪と自負する犯人と対峙して、証拠はなくついに負けてしまうのか、と思わされながら、最後に山さんの機転で大逆転。そんな知恵比べエピソードも多かった。

その度に胸がスッとして、何て頭が切れるんだろう、と惚れ直した。

 

長いスパンのドラマだったので、最初は仕事中に麻雀屋に入り浸ったり、何だかやんちゃな臭いもあったのだけど、徐々に理想の上司、真面目で仕事熱心な性格になったかな、と思う。

 

そして、独身ばかりの七曲署で、家族があったのが長さんとこの山さんだけ。

 

山さんの奥さんは体が弱く、それでも「刑事の妻」の鑑で凛としていた。愛妻家の山さんだけど、彼女が倒れたり生死のかかる局面でも仕事優先。

私は「そんなの他の刑事でも代われること、奥さんには山さんの代わりはいない!」といつもジリジリしていた。


山さんは自宅では着物でくつろいでいた世代であり、このドラマはそんな当時の男性目線で作られていたということを考えると、これがこの時代の究極の「かっこいい男」だったのかもしれない。

 

と、そういう価値観にはブチブチ言っていたものの、「刑事の妻が死んだ日」の回での山さんの悲哀は圧巻で、涙が止まらなかった。


奥さんが病弱だったので二人は養子を迎え、血のつながらない息子がいる。殉職回の「さらば! 山村刑事」では、その息子に「これから帰る」と電話をかけてこと切れる。これも背中が震えるほどに泣けた。

 

その頃の私はひねくれていて、卒業式だの泣ける映画だのには全然涙が出ない体質だったのだけど、これらの演技には心底揺さぶられ、泣かずにはいられなかった。


私の母いわく、「『太陽にほえろ!』以外でも様々な役を演じ分けていた格段に上手い演技派」だったそうで、なるほどそういう俳優さんだったのだな、と身をもって感じた次第。

 

近年はお姿を拝見することはあまりなく、「耳をすませば」や「シャーロック・ホームズの冒険」の吹き替えで存在を感じていた。

あの喉の奥から絞り出すような澄んでいながら渋い声。すぐにわかる。

 

そんな初恋が終わった……さよなら山さん。私の青春時代を彩ってくれてありがとう。

 

(了)

 

 

「雲」がお題の新作短編です! 9分で読めます!(ヒューマンドラマ)

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「旅・冒険」がお題の短編、もう1つ。 12分で読めます!(ヒューマンドラマ)

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