今、宝塚雪組で、現トップさんの退団公演として「ベルサイユのばら」が絶賛上演中。
原作は、1972年~1973年に連載された池田理代子さんの少女漫画。
というと、あれ、そんな短期間だっけ? と思うほどあまりにも有名な名作の大作で、たぶん私と同世代はもちろん、その親世代、若しくは子や孫に至っても、この漫画のおかげでフランス革命には精通している、という方が大勢いらっしゃるはず。
おかげで世界史苦手な私もそれだけはそこそこわかるし、単行本化された全5巻も手元にある。
読み返せば読み返すほど、年を経て再読してみれば尚、そして作り手側の立場で読んでも、この物語は最高に面白く、展開やキャラ設定や時代背景、画力など、すべてにおいてレベルが高すぎる。
読みすぎてストーリーもセリフもすっかり頭に入っているのに何度でも読みたくなる。
今上演中の宝塚の観劇予定はないが、キャスト表などを見て、「ああ、あの人物をこの方が演じるのね」と、そのキャラや登場シーンや名ゼリフがすぐに浮かぶほどで。
中で、私が好きなエピソードを一つ。
オスカルが衛兵隊に移って、隊員たちの反抗に遭う。そのリーダー的存在のアランは、肩書は貴族。けれどご時世柄、平民よりも貧しい暮らしをしていて、隊で支給される豪華な料理を妹のディアンヌに面会ごとに持ち帰らせ、家族に渡らせていた。
けれど結婚を前に幸せそうに輝いていたディアンヌは、相手が裏切って裕福な平民娘と結婚してしまったため、自死。
単に、貴族だから金持ち、貴族だから幸せ、といった短絡的な構図ではなくなっていた時代を強烈に訴えるエピソードだった。何度読んでも哀しい。
最初に「ベルばら」を読んだのは小学生のときだったけれど、その頃はアントワネットらの豪華なドレスを見るのが楽しくて、そのうち悲恋物語に心打たれるようになり、やがて革命やその時代背景を理解し、……などと、年齢が行くにつれ様々な楽しみ方、読み取り方が出てきて奥深い。
今回の宝塚はフェルゼン編なのだが、実は私はフェルゼンはあまり好きではなかった。というか、私の中では影が薄かった。
それよりはロザリーやジャンヌ、ポリニャック伯夫人などの脇を固める強烈なキャラたちに心が躍った。アントワネットとデュバリー夫人の女の闘いの、今でいう「ざまあ系」みたいな展開も読むたびにワクワクする。
つくづく「ベルばら」、宝塚向きだなあと思う。主人公が男装の麗人ということはもちろん、詩的なセリフ回しといい、革命がベースの物語なことといい、お衣装の豪華さ、愛と死の劇的な展開。
チラリと舞台の一部を映像で見たけど、原作での革命の合言葉って確か「自由、平等、博愛」だったのに、「博愛」でなく「友愛」となっていたのは何か意図が? (訳には両バージョンあるようですが)
という疑問を含め、観たかったけど、とんでもないチケット難の人気公演、手元の単行本を読み直して楽しむことで我慢します。
(了)
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バラを育ててはいけません (ファンタジー)