フィクションの物語を書いていて、すさまじく苦しむのがこれ。
辻褄が合わない。
「完成!」と喜んだ後に読み直してみると、出るわ出るわ、辻褄の合わない箇所があっちにもこっちにも。
今まで書いた中でいうと、A子がめでたく意中のB男と結婚したというエピソードが真ん真ん中にあった、とある長編。
A子はその後、昔から憧れていた仕事に転職する機会を得る。
でも奇妙なことに。
結婚したというのに、その後B男が全然出てこなくなる。どころか、A子はいきなりその仕事のために6畳一間に引っ越して、一人暮らしの貧乏状態の描写があったりして。え、B男、どこ行った?
しばらくして、急にB男との初対面……? とかなってる。
実はこれ、当初A子は独身時代に転職する設定だった。でもいろいろ考えて結婚するシーンを付け加えることにし、時系列に並べ直すとこうなってしまい……辻褄が合わなくなった。
こんな基本設定がズレていることに気づかず、何十ページも書いてしまってから、作者は青ざめました。
で、修正するのに四苦八苦。
案1 結婚したがB男はすぐに事故死。
案2 結婚エピソードを削除。
案3 B男がものわかりがよくて単身赴任を認めてくれた。
などと、いくつもの明らかな苦しまぎれ案を試す。
結局、案3を採用したが、この話はそんな男は稀だった時代設定。
やっぱり苦しい展開になったが、作者にとっては、B男という人、もはや死亡や削除とするには忍びない存在になっていた。
ので、その時代には稀な「単身赴任女を認める男」という性格に設定し直し、B男登場シーンから全部書き直しましたとさ(最初は時代に合った男尊女卑みたいな面もある設定だった)。
というように、年がら年中辻褄合わせに苦労している。
一番イヤになるのが、年齢。
長い期間の話を書いていると、登場人物たちはそれぞれ年を取る。主人公はともかく、周りの人たちは今何歳なのか。
何も考えずにイメージ先行で書いてしまっているときがある。
例えば、主人公が母と共にお祭りを見に行ったシーンを書いたはいいが、確認してみたらその年にはまだ生まれてなかったはず、とか……おお怖。
ちなみに年齢の不備は、タイムスリップものを書いているときに起こりやすい。
後から辻褄合わせをするのはとんでもなく面倒なので、年表をしっかり作っておくとか、書き始める前の準備が大事。
これ、仮病を使ってサボる言い訳みたい、と思うときがある。
「3日前から腹痛が治まらなくて」なんて言い訳、前日一緒にビール飲み放題をやった相手に言えばすぐバレる。だから「昨日のビールで冷えたらしくお腹壊した」とかに変える。
こういう、あっちから見てもこっちから見ても辻褄合うようにする言い訳(つまり嘘)を考えてしまうのは、物語作りの副作用かも……。でもすぐバレてるのはなぜ。
(了)
↓「初めての○○」がお題の短編です。14分で読めます。
↓「降りつもる」がお題の短編です。8分で読めます。
↓「おめでとう」がお題の短編です。7分で読めます。
↓「復活」がお題の短編です。12分で読めます。