ワクチンを打った後発熱し、横になっても眠れない。寝入るために本が必要な私だけど、具合が悪いときにはちょっとライトな漫画を選ぶ。
今回は「ガラスの仮面」。長年何度も読み込んだせいで疲れず浸れるやつである。
これは知らない人はいないだろう演劇大河ロマン。演技の天才少女北島マヤが師匠月影千草のもと、ライバルの姫川亜弓、影から支える芸能社社長速水真澄などと共に、演劇を極めていく物語である。未だ完結していない。
私が持っているのは文庫20巻までで、今は27巻までが販売されているらしい。
とにかくこの話は読み始めると止まらないので、しかも長いので、普段は手を出さないようにしていたのだけど、熱があるんだから仕方ないよね、と言い訳しながら引っ張り出した。序盤のヘレン・ケラー辺りで熱は下がってしまったけど、そんなことはもうどうでもいい。
何十回となく読んだくせに、何度でもハマる。先がわかっていても、いやわかっているからこそあのシーンを読みたい、あのエピソードまで進みたい、とページをめくる手が止まらなくなるのだ。
この話が面白いのは、一見平凡なマヤが、あれこれ出てくる障害や意地悪を、その天才性で小気味よくひっくり返すところだと思う。
元々、作者の美内すずえさんは、2巻くらいで終わらせる予定だったということ。その当初から登場キャラは基本的に変わっていない。それを、劇中劇が変わっていくだけでこんなに長く読者を引き込み続けるというのは、美内さんこそ天才じゃないかと思う。
私が一番好きなのは、マヤが芸能界を失脚したときのエピソード。
マヤを追い落とすことを画策した乙部のりえという少女を、ライバルのはずの亜弓さんがコテンパンに打ちのめすのだ。それも舞台の上で正面から実力の差を見せつけるという方法で。
いやあ、最初の頃は美人でサラブレッドでちやほやされるお嬢様に描かれていたので、ちっとも好きにはなれなかったけど。この辺りから俄然ファンが激増したんじゃないかと思う。
誰もがマヤを見限る中、亜弓さんだけがマヤの才能と情熱を信じ、それを卑怯な手段で潰そうとした敵を蹴散らした。何て情に厚く気高く素敵な人なんだろうって。
今、ようやく紅天女の資格を得られる舞台「忘れられた荒野」の稽古の場面まで読み進んだところ。一気読みすると、40年以上の月日が経っているのだなあ、と絵柄の変化からも感じ取れる。
それで、紅天女はマヤと亜弓さんのどちらが手にするんでしょうか……。そろそろ結末が知りたい。長いことずっと見守り続けていたファン共通の切実な願いだと思う。
(了)
↓「お迎え」がお題の短編です。13分で読めます!
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