2016年、イチロー選手がメジャーリーグで3000本安打を記録したとき。
彼のそれまでの年棒を3000で割って、ヒット1本565万とも615万ともネット記事にあった。
当時のサラリーマンの年収平均が514万、なんて比較も出ていて、確かにすごい、イチロー楽に稼いでるよね、とうっかり思ってしまいそうになった。
そんなことを思い出したのは、最近貼りついているプロ野球のプレイを観ていてのこと。
打撃ではなく守備の方。
強烈な打球に反応してグラブに収める。どう見たって抜けるだろうっていう三遊間や二遊間のヒット性の当たりを低い姿勢のまま追いかけあるいは横っ飛び捕球、更に1塁に投げてアウトにする。フェンスにぶつかりながら大飛球をジャンプ一番、これしかないってタイミングでモギ取る。
こういう捕球についても一ついくら、って計算するなら、先のイチローのようにそれまでの年棒を捕球数で単純に割っていいのかな。そうじゃないんじゃないか、って思ってしまった。
強烈な打球に反応できるのも、低い姿勢のまま捕球できるのも、不安定な姿勢なのに1塁を刺せるのも、タイミングよく大飛球にジャンプできるのも、どれだけ足腰鍛えて練習したからなのか、と想像してしまうのである。
よく千本ノックとか言うけど、そういう大変な打球を一つ捕ってアウトにするために費やした捕球練習は、たぶん千本じゃ済まない。
おそらくイチローのヒットだって、裏でどれだけバットを振ったか。ヒット1本打つために素振りや打撃練習を千回したとすると、500万円は5千円になる。
簡単に稼いでるんじゃないだろうなとつくづく思う。
なんて思いを馳せるのは、書くことも同じ気がするから。
漫画家の方に聞いたことがあるのだけど、思い通りの線を一つ描くのに、何十枚、何百枚の紙を使うことがあるという。
漫画家さんは大御所になるとページ1枚何十万円とからしいけど、簡単に稼いでいるわけではない。その1枚を描けるようになったのは、それまで費やしてきた何千枚のページがあったからで、通算するともしかしたら何百円にしかならないのかもしれない。
今、自分が物語を書くことも、レベルは段違いだろうが、そう。
出来はともかく、例えば「この制限枚数なら規模はこのくらいに抑えるべし」「それなら〇日あれば仕上がる」「登場人物は〇人くらいが限度」とかの見当はつき、その通りにいく。
それはこれまで長い長い間書き続けた上でのカンというか、身に着いた技というか。
その出来上がったものに対して百万円もらったとしても、単純にページ数で割って高収入と言えるものでもないと思ったりする。凝れば凝るほど、突き詰めれば突き詰めるほど、簡単にはいかなくなるし。
きっとどの世界でもそうなんだろう。
プロ野球では、2年ぶりのセパ交流戦が始まった。たくさんの好プレー出ている。あの素晴らしいプレー1つできるようになるためどれだけの練習をしたんだろう。
そんな観方をして楽しんでいます。
(了)
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