その昔、シナリオ学校に通っていた頃、仲間内でシナリオ集を作ろうという話になった。テーマを決めて皆で書いて持ち寄り、結構いい冊子を何回か作ってもらったと思う。
そのテーマや書いたストーリーはもう忘れてしまったが、忘れられないこともある。冬にちなんだ物語を書いたときのこと。
その頃、私は正社員を辞めた直後だったので、どんなシナリオを書いてもそれまでの勤め先で経験したことが大きく反映されていた。といっても、バブルがどうの、経済がどうのとか難しいことではなく、パソコンのない時代の仕事風景とか、若手グループで遊びに行ったこととか、ランチをどうするとか。
当時シナリオを書こうとする人には、こういう普通のOLの普通さを書く人があまりいなくて、「リアルだね」とかずいぶんと誉めてもらったっけ。
若手社員と呼ばれていたあの頃は、休みとなると、夏は海、冬は雪山といった定番のところへ出掛けていた。「彼女が水着にきがえたら」「私をスキーに連れてって」とかの時代で、それを地でいっていたのである。
だから冬のことを書こうとすると、自然と「スキー」場面が登場した。毎度毎度必ず出てきた。自分では意識していなかったが、仲間内で指摘された。
「もうスキーの話はいいから」と。
まあ大体、社内のグループで出掛けて、誰かが転んだり怪我したりなどして、それが仕事や上下関係に影響して、というパターンの話だったので、要は飽きられたのである。
スキーが悪いわけじゃなく、そういう背景が必然の物語を作れればそうは言われなかったんだろうけど、まああんまり考えずに書いていたというのが正直なところ。仕方なし。
そして、今も冬。
何か季節感のある話を書きたいな、と思っているうち、こんな昔のことを思い出した。でも、そのとき以来スキーが出てくる話は書かなくなっていた。そうこうしているうちに、時代はスノボになってしまった。
そもそも雪山に行かなくなってしまったので、今やスキーとスノボの割合がどの程度になっているのか見当がつかない。若い人の会話を聞いていると、「スキー行こう」じゃなく「スノボ行こう」となっているので、スキーを背景に使う話はもう時代遅れじゃないか、と思ったり。
そう気付くと、もうちょっとちゃんとスキーの話を書いておけば良かった、と後悔の念が。いやでもこれ、時代背景に使える。そう思い直してまた前向きに。
1980年代と、2020年が目前の今。若者がグループで楽しむレジャーが、スキーかスノボかで時代が一目瞭然だ。年代を行ったり来たりしても区別がつく。アイコンのように使える。
まあ、「若者が」とか「若い人が」とか言っている時点でその世代を書くのにちょっと難しさを感じる気もする。ただ、「過去の話」としてなら、たとえば時代劇が永遠なように、アラフィフにも書けるはず。
スキーとスノボを背景とした、時を超える話。そんな冬のシナリオを、いずれまとめてみようっと。
(了)